カーナビゲーションシステム,テレビやDVDプレーヤなどのエンターテイメント機器など,安全,快適を目指して自動車に搭載される電子機器が増大している.また,近年,車両の周辺監視システムとして,複数のカメラが搭載されるようになってきた.音声や映像のデータは,従来,アナログ信号として伝送されていたが,2001年にMOST (Media Oriented Systems Transport)が普及し始め,音声データはデジタル信号としてネットワークを伝送することが一般的となってきた.MOSTは,CDのサンプリングレート(44.1kHz)あるいは48kHzにネットワークを同期させることで音声データの帯域を保証しており,22.5Mbpsの帯域をサポートしている.一方,ナビゲーションシステムやテレビ,カメラの映像を伝送するにはより大きな帯域が必要であり,また,それぞれの映像データはフォーマットが異なるため,単一周期に同期させたデータ伝送方式では効率が悪い.そこで,これらの音声や映像データ,制御信号を伝送するため,家電やPCで利用されているIEEE1394(iLinkあるいはFire Wireともよばれる)の採用が検討され始めた.IEEE1394は,現在800Mbpsの伝送速度(仕様としては3.2Gbps)をサポートしている高速シリアルバスインタフェースであり,通信方式には,音声や映像のストリームデータ伝送用のisochronous伝送モードと,制御信号などの非同期伝送用のasynchronous伝送モードを備えている.IEEE1394はマルチマスタであり,PCなどの機器を介さず家電機器のみでネットワークを構成し,非圧縮カメラ映像や,著作権保護を実現しデジタル放送や,DVDビデオのデータを伝送することが可能である.これらのマルチメディアデータを統合的に伝送する車載ネットワークとしてIEEE1394 (iLink,Fire Wire)技術の利用が検討されている.ここでは,もともと家電やPC用途に開発されたIEEE1394技術の車載ネットワークへ適応する際の問題点とその解決について解説する.
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