動物の真菌症の多くは人獣共通感染症であるため,動物に抗真菌薬耐性感染株が蔓延すると,人へ容易に感染が拡大する危険性が高いと予想される.われわれは,初めて北京の皮膚糸状菌症の猫からからテルビナフィン (TRBF) 耐性
Microsporum canis の分離をした.この株は,TRBFに対する最小発育阻止濃度 (MIC) は,>16 μg/mLで,イトラコナゾール (ITCZ) に対するMICは,0.023 μg/mLであったことから,TRBFに対して耐性でITCZについては感受性を示した.このTRBF耐性株および感受性株において,ABCトランスポーター遺伝子発現 (pleiotropic drug resistance [
PDR1],multidrug resistance protein [
MDR1],
MDR2,
MDR4) についてリアルタイムPCRで発現量を解析したところ,耐性株は感受性株よりも2~4倍発現量が増加することが確認された.
つぎにマラセチア症の飼い犬からアゾール系抗真菌剤耐性株を分離した.この株に対する微量液体希釈法による感受性試験では,ITCZに対するMIC値が320 μg/mlであった.またE-Testにおいても,ITCZに対するMIC値が >32 μg/mlで,ケトコナゾール (KTCZ) に対しても >32 μg/mlと,アゾール系抗真菌剤に対して強い耐性を示した.アゾール系抗真菌剤の標的酵素である,lanosterol 14-alpha demethylaseの保存遺伝子である
ERG11 について,本耐性株のシーケンスを解析した.その結果,推定されるアミノ酸配列で,138アミノ酸残基目でメチオニンからバリンへ,302アミノ酸残基目でバリンからアラニンへの変異が認められた.
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