病原微生物の薬剤耐性化が21世紀の問題として世界的にクローズアップされるなか,真菌感染症のなかでも特に罹患者の多い白癬においても,原因菌(皮膚糸状菌,以下,白癬菌)の薬剤耐性問題が顕在化しつつある.2017年に筆者を含む日本とスイスの国際共同研究チームが白癬の中核治療薬の1つであるテルビナフィンへの低感受性(ここでは耐性と同義とする)白癬菌を多数分離したことが契機となり,国内外の臨床現場でテルビナフィン低感受性白癬菌が次々分離されている.また最近,もう1つの中核治療薬であるアゾール系抗真菌薬の低感受性白癬菌も複数分離されている.さらに,2020年に新種の白癬菌として提案された
Trichophyton indotineaeのアゾール系抗真菌薬低感受性株において,アゾール系抗真菌薬の作用標的の1つであるCYP51B(lanosterol 14α-demethylase)が絡む病原真菌の新たな薬剤低感受性機構の存在が明らかとなった.
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