Trichophyton interdigitaleおよび
Trichophyton rubrumによる足白癬は,国民の4~5人に1人は感染しているため,国民病とも呼ばれている.治療薬の1つとして1990年代からテルビナフィン(TRF)が使用されているが,国内外の白癬から本剤に耐性を示す株の分離報告が増加している.しかしながら耐性株に対する疫学的調査は,ほとんど報告されていないため,われわれが実施した調査について紹介する.
2020年に東京,埼玉,千葉,静岡,兵庫,山口,熊本における210名の白癬患者から分離した
T. interdigitale(82株)および
T. rubrum(128株)の210株からTRF耐性株を5株分離した.すべて
T. rubrumで,TRFに対する最小発育阻止濃度は,32 mg/L以上を示したが,アゾール系抗真菌薬には感受性であった.またスクワレンエポキシダーゼ(
SQLE)遺伝子のシーケンス結果から,全株にL393Fの変異が認められた.国内白癬患者の約2.3%は耐性株に感染し,
T. rubrum感染に限定すると約3.9%の耐性率となることが判明した.
一方,インドにおいて2018年から,TRF耐性
Trichophyton mentagrophytes/
T. interdigitaleによる体部白癬が流行しており,ヨーロッパ,中国にも感染報告が相次いでいる.国内でも2020年から流行地域からの渡航者から感染が認められている.われわれは,この流行株の遺伝子性状,生理学的性状,病態から従来の
T. interdigitaleとは異なる新種の
Trichophyton indotineaeとして命名した.
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