日本医真菌学会雑誌
Online ISSN : 2434-5237
Print ISSN : 2434-5229
66 巻, 3 号
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原著
  • 水野 翔馬, 水守 康之, 中原 保治, 平岡 亮太, 平田 展也, 小南 亮太, 東野 幸子, 加藤 智浩, 鏡 亮吾, 横井 陽子, 塚 ...
    2025 年66 巻3 号 p. 61-65
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー
     症例は70歳代男性.X−10年に肺Mycobacterium avium症に対して3剤の標準療法による抗菌化学療法を開始,X−9年に右肺上葉切除術を実施.術後3ヵ月で痒みの副作用のため抗菌化学療法を終了したが,X−4年に胸部X線にて新たな陰影が出現しM. aviumの排菌も認めたため,抗菌化学療法を再開.X−2年には視神経炎のため3剤のうちエタンブトールを中止した.X−1年9月より発熱や食欲不振が出現.ペニシリン系抗生剤の内服加療により一時的に症状軽快するも,X年1月より再度発熱,食欲不振が出現した.胸部CTにて右上肺野に透亮像が出現,術後残存腔の内容液が流出した後の空洞性病変と考えられ,さらにその尾側に浸潤影,すりガラス影を認めた.気管支肺胞洗浄液および空洞性病変に対する単純透視下での経皮肺穿刺吸引液の培養で,非結核性抗酸菌は検出されず糸状菌を検出した.同菌は塩基配列解析によりCunninghamella bertholletiaeと同定され,肺ムーコル症と診断.アムホテリシンBリポソーム製剤による治療を実施し,症状および画像所見の改善が得られ軽快退院となった.肺ムーコル症は診断の遅れが致命的となり得るが,本例では気管支肺胞洗浄のみならず空洞性病変の経皮穿刺を実施し,複数箇所からムーコルを検出したことで迅速に確定診断にいたり,治療に結びつけることができた.
総説
  • 西本 勝太郎
    2025 年66 巻3 号 p. 67-69
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー
     皮膚糸状菌(白癬菌)とそれによる疾患の頻度は時代とともに移り変わる.1950年代以降,頭部白癬患者の頻度は激減し,それとともにMicrosporum ferrugineumやそれについで分離されていたTrichophyton violaceum, Trichophyton schoenleiniiによる黄癬なども,ほとんどみられなくなった.
     これらの菌はその後も散発的に発生していたが,1970年以降は高度成長期にペットに付着した輸入真菌症としてMicrosporum canisによる頭部,体部の白癬が流行した.
     M. canisは現在,猫などのペットに保持され,それを感染源とする,主として小児や女性の頭部白癬,体部白癬から少数ながら分離されている.今後も猫などとの接触者における感染症としてわが国に定着するものと考えられる.
     Trichophyton tonsuransは,アメリカ大陸における小児の頭部白癬原因菌として知られていた.わが国へは柔道競技者からの接触による感染症として2000年ごろから全国的に流行した.現在,一時のような爆発的な流行は終息したものの依然として,より若年層への拡大も含めて柔道競技者における重要な感染症となっている.
     新たな輸入真菌として,ペットがもつTrichophyton erinaseiなどによる感染症があげられる.
     現在最も重要な菌はTrichophyton rubrumである.全病型で70%以上を占める原因菌となっている.また耐性菌の出現も報告されている.
  • 侵襲性糸状菌感染症に着目した医師の立場
    時松 一成
    2025 年66 巻3 号 p. 71-77
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー
     本稿は,おもにAspergillusなどによる侵襲性糸状菌感染症(invasive mold disease:IMD)に焦点を絞り,抗真菌薬適正使用支援(antifungal stewardship:AFS)の重要性と実践について述べる.AFSのエビデンスや重要なコンセンサスを提示し,AFSプログラムのプロセスとして「患者把握」と「モニタリングとフィードバック」の具体的な例を示す.AFSには診療フローチャートや感染症マネージメントバンドルの活用,適切なモニタリングのタイミング,抗真菌薬無効時の対応,ブレイクスルー感染症の評価が重要である.AFSの実践においては,多職種連携が不可欠であり,医師,薬剤師,看護師,検査技師がそれぞれの専門知識を活かし,診療の質を向上させることが求められる.特に医師は,診断が難しいIMDに対し,迅速な診断と治療開始の判断のため,より積極的な参加や介入が必要になる.AFSチームの組織編成の現状,チームにおける医師の役割の重要性について解説し,IMDを意識したAFSプログラムの構築方法を提案する.
  • ~その苦労ばなし~
    鈴木 裕子, 渡邉 哲, 久米 光
    2025 年66 巻3 号 p. 79-82
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー
     筆者らは久米を筆頭として,病理剖検輯報を用いて内臓真菌症の疫学検討を定期的に行っている.一貫して一定のルールを用いて検索を行っている.病名は当初からコード化し,疾患概念が変化した病名についても,一貫して同じ病名としている.現在の問題点は,日本全国の剖検数の減少である.また,その中で,筆者らの疫学報告が十分な精度,有用度を保てるか今後の課題である.
     また,今回の発表にあたって,久米からの真菌症研究当初の苦労話,思い出話も紹介する.
  • 久米 光
    2025 年66 巻3 号 p. 83-89
    発行日: 2025/07/31
    公開日: 2025/08/31
    ジャーナル フリー
     日本の病理剖検例を検索対象とした内臓真菌症の疫学的研究が本稿の題目である.本題目については幾多の報告を行ってきた.ちょうど世界的に話題となったCOVID-19による剖検例が,4年後の2024年の日本病理剖検輯報に記載されたCOVID-19剖検例についても,免疫能との関わりを主軸に一部報告した.このように,日本病理剖検輯報を検索対象とした疫学的検索について,日頃の診療に役立てて頂くべきであるが,学会が開催された時点では新たな有用な情報を提供することは難しい.そこで,本稿では,長年の剖検疫学調査で,一研究者として印象に残っている過去の成績情報に解釈を加えて再度紹介することで本稿執筆の依頼に対する責を果たしたい.
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