日本画像学会誌
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39 巻, 4 号
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論文
  • 井出 収
    2000 年 39 巻 4 号 p. 390-399
    発行日: 2000年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    我々は種々のハーフトーン画像のドット構造を比較するため,「ソリッド部の色材層に対するドット厚みの薄層化を伴ったドット面積率の増大現象」という広義のドットゲインを提案した.この定義に基づくと,ドット断面形状観察でドットゲインの度合いを比べられるが,この評価には時間と手間を要す.そこで,測色解析が有効な評価法となる.本報告では,新しい定義に基づいて測色解析の原理を定量的に説明し,実効的な解析手法に言及する.前報で述べたように,ドットゲイン量は白地とソリッド部の色度座標の加法混色で決まるMurray-Daviesの直線からのずれの大きさで評価される.このずれは主吸収に対する副吸収の割合がドット厚みで変化することで生ずる.従って,短波長域に大きな副吸収を有する典型的なMagenta顔料を例にとれば,主吸収と副吸収に対応するy-z平面で解析を行うことが望ましい.適切な平面を選ぶことで解析精度が上がり,スクリーン構造などによるドットゲインの僅かな差も検出可能となる.
  • —光熱変換材料の検討—
    木下 正兒, Katsuyoshi HOSHINO, 北村 孝司
    2000 年 39 巻 4 号 p. 400-407
    発行日: 2000年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    高解像度化と濃度階調表現の両立が可能な染料昇華型レーザー熱転写記録について,その記録機構の解明を中心に検討を行っている.
     本報では,本記録方式に用いる積層型インクシートの光熱変換層に注目し,光熱変換材料を変化させてインクシートを作成した.染料転写実験の結果,光熱変換材料により階調特性に違いが見られた.光熱変換層の吸収スペクトルはレーザー照射前後で変化し,レーザー照射時間に依存して近赤外域での吸光度の減少が確認された.インク層表面の時間分解観察により,レーザー照射中においてインク層の溶融変形が観察され,材料によってインク層の穴あき現象の開始時間に差異が認められた.これらの事実より,光熱変換材料はレーザー照射中から熱分解,光退色,結晶転移などが生じてレーザーの波長での吸収率が減少し,結果としてレーザー光の利用効率を低下させると考えられる.
  • —表示原理と表示特性—
    趙 国来, Katsuyoshi HOSHINO, 北村 孝司
    2000 年 39 巻 4 号 p. 408-413
    発行日: 2000年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    導電性トナーと白色粒子を電荷輸送層が塗布された2枚の透明電極で挟んだサンドイッチ型セルに封入し,電圧印加の極性を切り換えることにより黒と白の表示が出来ることを示した.この表示原理は,導電性トナーが電荷輸送層からの正孔注入により正電荷を有し,白色粒子層中をクローン力により電界移動することにより行われる.トナーディスプレイの黒色表示時の反射濃度は0.9,白色表示時の反射濃度は0.6であった.また,導電性トナーと白色粒子の混合重量比1:1の時に最大コントラストを示した.さらに,電圧を遮断しても表示が保持できる特徴を持っているため,書換え可能な反射型表示に利用できることがわかった.
  • 小堀 康功, 能村 岳之, 中野 哲夫, Yuuichi TAKANO
    2000 年 39 巻 4 号 p. 414-420
    発行日: 2000年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    昇華型熱転写ビデオプリンタは,その中間調制御部のフルカラー化などにより高画質プリントを実現している.ところが昨今のグラフィック画像やオーバーレイ画像のプリントにおいては,色調の偏りが激しいことにより画像内のグレイバランスがずれてしまう現象が見られる.また同一画像の連続プリントにおいては,最初と最後のプリント画質がわずかに異なり,特にグレイバランスにおいてその差が目立つなどの現象がみられる.そこでこれらの原因を調査し,その改善策に関して検討したので報告する.
     まずは現状の感熱ヘッドにおけるプリント方式と温度補償方式を明確にするとともに,プリント画像と感熱ヘッドの検出温度との関係を把握した.これらの関係をもとに,プリント中のヘッド温度に応じて温度データを逐次切替える新方式の温度補償方式を提案した.この新方式の確立にあたり,温度切替え時の濃度段差の検知限を明確にし,必要な温度データの切替え精度を確立した.以上の検討により中間調制御部の温度補償精度を大幅に改善して,グレイバランスの平均ばらつきを従来の半分に低減したので報告する.
  • —エネルギー分割法によるアプローチ—
    望月 美里, 千住 孝俊, 水口 仁
    2000 年 39 巻 4 号 p. 421-428
    発行日: 2000年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    4, 4', 7, 7'-テトラクロロチオインジゴ(TCTI)ならびに4, 4',5, 5',7, 7'-ヘキサクロロチオインジゴ(HCTI)はそれぞれチオインジゴの4塩素ならびに6塩素置換体である.両者は共に赤味を帯びた紫色の有機顔料である.両者は分子構造が酷似しているにもかかわらず,TCTIの方が有機溶媒に対する溶解度が低く,光電導特性もはるかに優れている.この相異は明らかに固体状態における分子間相互作用に起因している.我々は分子軌道計算に現れる2中心積分に注目し,この物理量が分子間相互作用の指標になり得ると考えた.すなわち,2中心積分が原子間の結合エネルギーにほぼ比例することに着目し,その適用範囲を分子内から2分子間の非結合原子ペアに拡張した場合には分子間相互作用の尺度になると判断した.この考えのもとに結晶構造から典型的な分子ペアを切り出し,分子間力の評価を行った.その結果,CH…Oの水素結合ネットワークを始めとする分子間力が認められ,TCTIの局所的に作用する分子間力はHCTIに較べて大きい事が明らかになった.
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