日本画像学会誌
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44 巻, 4 号
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原著論文
  • 須方 一明
    2005 年 44 巻 4 号 p. 192-201
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    二成分現像剤の帯電現象をトナーとキャリア間における電荷移動の平衡過程とする速度論的帯電モデルの適用範囲とその限界を明らかにするため,本モデルから導出されたモデル式をこれまでに飽和帯電量(qet)の逆数とトナー/キャリア比(Ct)が直線関係(1/qetCt関係)を示さないとされた報告データのいくつかに適用した.その結果,試みた全てのデータにおいて,ごく小さなCtでは1/qetCt関係から外れ,1/qetが一定に見えるが,それ以外の非常に広いCt範囲でモデル式の成立することが明らかになった.一方,現像剤の撹拌混合とブローオフ測定時におけるキャリア表面およびブローオフ測定用分離金網表面へのトナー材料固着は避けられず,Ctの小さな領域では無視できないことが分かった.この時同時に,キャリアの一部が分離金網を通過し,その量はCtの小さな領域では無視できないことも判明した.これらの結果から,Ctの小さな領域における1/qetCt関係からの外れはブローオフ測定時のこの様な実験誤差が原因である可能性の高いことが示された.
  • 王 立杰, 小寺 宏曄
    2005 年 44 巻 4 号 p. 202-210
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    人の視覚は,一時に105を超える明暗の変化を知覚でき,109以上の広いダイナミックレンジをもつ外界に順応する.しかし,CRTに代表されるディスプレイデバイスは,高々,100対1程度の狭いレンジしか再現できない.本論文は,統合周辺場を用いたRetinexモデルによる画像の見えの新しい改善法を提案する.新規性の第一は,複数の周辺輝度場を一枚の統合輝度場に集約する点にある.この統合輝度場を,Center/Surroundモデルに基づくSingle-Scale RetinexSSR)に適用することにより,従来のSSRの欠点である帯状妨害(banding artifact)を軽減すると共に,最近のMulti-Scale RetinexMSR)における計算過程を簡略化する.新規性の第二は,周辺輝度場を生成するための高速アルゴリズムにある.筆者らは,時間の掛かる大スケールの周辺輝度場の生成にガウシアンピラミッド(Gaussian Pyramid)の手法を導入した.補間とダウンサンプリングによる画像の縮小,および補間とアップサンプリングによる画像の拡大のシーケンスを経て,縮小画像にガウス関数を畳込むことにより,等価的に大スケールの周辺輝度場を得ることができ計算時間は1/100以下に激減された.提案モデルは,陰影の激しい自然画像のダイナミックレンジの圧縮に安定に動作し,暗部の見えの改善に効果的であった.本論文では,実験室内に設定した模型のシーンから肉眼視の見えを反映した目標画像を合成し,周辺輝度場のスケールの選択と荷重の適正な設定法について論じ,色再現性の定量的評価実験の結果を紹介する.
ショートノート
  • 江 松, 中西 経仁, 石原 秀飛, 星野 坦之
    2005 年 44 巻 4 号 p. 211-214
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    コロナ放電の経時変化に影響を与える要因に種々のものが知られている.シロキサン(シリコーン)ガスがコロナ放電ワイヤに与える影響について多くの報告がある.本研究では,シロキサンガスを含有させた空気流中で,コロナ放電の変化を調べている.シロキサンガスを含有させた空気流,コロナ放電領域に混入させた場合の一定電流を流すのに必要な電圧の変化が観察されている.放電30分後から30分間,シロキサンガスを空気流に含有させた時,一定電流を流すのに必要な電圧が含有させた直後に上昇し,含有を止めた直後に下がることが観察された.これらの電圧変化から,ワイヤが劣化することにより電圧が上昇する成分と,シロキサンガスそのものが放電を抑制することにより上昇する成分があるとしている.
技術資料
  • 稲垣 敏彦
    2005 年 44 巻 4 号 p. 215-223
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    画質評価の目的は,イメージングシステムを人間に最適化することにある.そこで,画質評価は,主観評価と対応の良い客観評価(画質測定)方法が,印刷,銀塩写真,テレビジョン,電子写真,インクジェット,ディジタルカメラなどのイメージングシステムに対して研究されてきた.
     画質評価の国際標準化は,イメージングシステムを共通尺度で定量化するための物理的測定方法が主に進められてきたが,近年は,主観評価と対応の良い画質心理物理量(画質属性)の測定方法の標準化が進められてきている.
     ISO/IEC JTC1/SC28(オフィス機器)では,ハードコピーの画質属性を体系化し,その画質属性を簡単な測定装置で自動的に測定できる国際標準化が進められてきて,ISO/IEC 13660「Measurement of image quality attributes for hardcopy output」を標準化した.ISO/IEC 13660は測定誤差,主観との対応などの課題はあるが,画質属性を規定した最初の国際標準である.SC28国内委員会が担当するISO/IEC 13660の改良と,米国のINCITS W1.1プロジェクトが担当する「Appearance based image quality standards for printers」の国際標準化活動の現状を報告する.
Imaging Today
『環境対応イメージング関連技術の最新動向』
  • 佐藤 孝夫
    2005 年 44 巻 4 号 p. 225-234
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    EUは,2010年までに世界で最も競争力のある経済圏になるとの戦略のもとで,環境分野でも高い理念と目標を掲げ,地球環境問題へ取り組んでいる.その取組みは,環境方針,戦略,行動計画,法規制及びEU規格の整合性を高め,行動計画を推進するにあたって多様な手段を導入する.その中で実施効果の高い手段を見極め,その手段を他の分野にも幅広く展開し,効果を高める.製品づくりに関する政策で特に顕著に現れている傾向は,今後,EU域内で事業を展開する企業はこれまでの生産活動が中心の環境対応のみならず,資材調達,設計,生産,販売,回収,リサイクルにわたる製品のライフサイクル全体を考慮した活動が求められることである.過去数年,EUで施行された法規制及び現在検討中の法規制はこのような背景と狙いで施行されており,今後もその基本的な方向性は変わらず規制の施行が加速されるものと思われる.製品の生産者はこのような基本的な流れを理解して,規制が施行されてもあわてることの無い様に普段から高い環境目標を掲げ製品づくりを進める必要ある.
  • 立松 英樹
    2005 年 44 巻 4 号 p. 235-241
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    電子写真装置において,その消費電力の大半は定着器によって消費されており,環境保護の観点から定着器の省エネルギー化が求められている.定着器は動作時に必要な電力よりも待機時に消費する電力の方が大きく,そのため各社とも待機電力を削減するために,急速加熱可能な定着器の開発を行っている.定着器を急速加熱するためには,強力な熱源と低熱容量の定着器が必要である.さらに,低熱容量化した定着器では,小サイズ印字時にローラ端部が過昇温する弊害が生じるため,その対策等も必要となっている.本稿では以上の観点から最近の省エネ定着技術を紹介する.
  • 奥田 幸一, 竹内 達夫
    2005 年 44 巻 4 号 p. 242-249
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    電子写真技術を基盤にした複写機・プリンタは従来から使用環境に配慮して省エネ,エコロジーに対する技術開発を行ってきている.近年,オフィス環境ではいかに無駄をなくすかという観点からさらなる環境への優しさを要求してきている.今回,環境に優しいという面から,電子写真における消耗品削減として感光ドラムの長寿命技術,ノーエミッションを達成する廃トナーレス,クリーナレスシステムなどの技術の変遷と現状を取り上げ,作像システムにおける環境配慮の現状を考察していく.
  • 青木 孝義
    2005 年 44 巻 4 号 p. 250-258
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    近年の環境規制や京都議定書に基づく二酸化炭素排出抑制は鉄鋼,自動車などの基幹産業はもとより,事務機や家庭電化製品にも及びつつある.また官公庁,民間企業,さらには一般家庭においても省資源,省エネを尊重する傾向を強めつつある.これらの動きは近年の原油価格に代表される一次産品の高騰や着実に増加を続ける二酸化炭素濃度上昇問題などに後押しされて一層強固なものとなりつつあり,小型化,省エネ,公害防止で世界をリードしてきた日本は,国際社会においてさらなる主導的役割を期待されている.複写機やプリンターに使用されるトナー,現像剤もこの流れのなかで格段の環境への優しさが要求されており,各社が先を争って省エネ,省資源,法規制の先取りなどに注力している状況である.本報告ではここ数年の新製法トナー化の流れを環境側面から概説した.
  • 亀山 敏明, 鈴木 健太郎
    2005 年 44 巻 4 号 p. 259-265
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    再生複写機(リコンディショニング機)は,循環型社会実現に貢献することをコンセプトに開発された商品である.再生機は再使用部品使用率80%以上としながらも,最新の安全規格に対応し,各種環境ラベルも取得している.再生機の量産にあたり,製品回収システムの構築,レベルアップした再生・診断技術の投入し,再使用部品率の向上とコスト削減を図っている.更に再生機の環境負荷削減効果をLCAを実施することにより確認し,新造機に比べ大幅に環境負荷を削減していることを確認した.
  • —酸化チタンの熱励起を利用した分解システム—
    水口 仁
    2005 年 44 巻 4 号 p. 265-269
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    酸化チタン等の半導体を高温に加熱すると電子ならびに正孔は指数関数的に増加する.この温度領域で溶融状態にあるプラスチック等を強力な酸化力をもつ正孔により効率良く炭酸ガスと水に完全分解するシステムを開発した.熱可塑型ならびに熱硬化型ポリマー等の固体ばかりでなく,液体,気体の分解も可能であり,医療廃棄物,悪臭,ダイオキシン,ディーゼルエンジンの排気ガス等の処理にも有効である.
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