近年,撮像装置は目覚しい進歩を遂げ,ダイナミックレンジの広い画像を容易に撮影できるようになってきた.しかし,ディスプレイデバイスで表示できる輝度レンジは依然として狭く限られている.本論文では,
Retinexの
Center/Surround モデルに基づき,注目輝度と周辺輝度の比から推定した反射率画像を入出力画像で不変に保つことにより,自然なコントラストの見えを維持してダイナミックレンジを圧縮する手法を提案する.提案手法は,[1]空間可変型の変換オペレータ
LCRT(
Local Contrast Range Transform)の作用により,入力画像と同等の視覚的コントラストを維持する,[2]領域内での明るさのバランスや自然な陰影が維持される,[3]単一スケールの周辺領域のみ参照して行う処理であるにも拘らず,輝度差の大きな領域境界付近においても帯状妨害(
Banding)がほとんど現れない,などの特徴を有している.本論文では,
Retinexとの動作特性の違いを理論的考察に基づいて議論するとともに,評価実験を通して提案手法の特徴および有効性を明らかにする.
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