日本画像学会誌
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51 巻, 2 号
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原著論文
  • 尾崎 敬二
    2012 年 51 巻 2 号 p. 118-124
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    屋外自然光下で撮影した草地のデジタルカメラ画像の近赤外域と可視光赤色域の画像から求めた正規化植生指標の評価を行った.可視光赤色域と近赤外域の画像取得には,レンズフィルターを使用し,カメラの自動露出条件下で得た画像の画素値を変換して,正規化植生指標の分布図を作成した.同じ季節の高解像度地球観測衛星データから算出の正規化植生指標と比較検討したところ,植生域を示す範囲での平均値が,カメラ画像から算出の正規化植生指標の0.317に対し,衛星データから算出の値は,0.337となり,ほぼ一致した結果を得た.両者の正規化植生指標のヒストグラムを比較すると,植生域で最頻値となる正規化植生指標は,カメラ画像から算出の値は,0.24に対し,衛星データから算出の値は,0.43となり差異が大きい.この相違の主要な要因のひとつは観測日以前の現地の気象状況ではないかと推定し考察した.また,カメラ画像から植生指標を算出するためには,可視光域遮断フィルター (近赤外フィルター) に加え,近赤外域遮断フィルターとデジタルカメラの自動露出機能の役割が重要であることを示した.
  • 中村 卓, 中村 佐紀子, 宮川 信一, 北村 孝司
    2012 年 51 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    電気泳動表示素子に用いる負帯電白粒子は酸化チタンを,正帯電黒粒子はチタンブラックを原料に,(1)重合性二重結合を有するシランカップリング剤による粒子の表面修飾,および(2)粒子表面の重合性二重結合を介する疎水性モノマーのグラフト重合による粒子の樹脂被覆の2段階反応で作製した.白粒子を青染料で染色したIsopar G中に分散し,透明電極を有する一対のガラス板の間に担持して,1粒子系表示素子を作製した.この素子では泳動度の小さい白粒子を用いた場合,表示は困難であったが,泳動度の大きい粒子を用いることで青白表示が可能となることを確認した.また白および黒粒子を用いる2粒子系表示素子では,泳動度の大きい白黒粒子同士の組合せは表示困難であったが,白粒子を泳動度の小さいものに変えることで,白黒表示が可能となり,1粒子系より優れた表示特性を実現できた.泳動度の大きい白黒粒子の組合せでは,お互い凝集により電気泳動が困難となるため,原理的に表示は困難と推定している.
  • 瀬尾 学, 塚本 武雄, 法兼 義浩
    2012 年 51 巻 2 号 p. 131-138
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    オンデマンド型インクジェットシステムにおいて,溶媒乾燥によるノズル詰りは重要な関心事である.我々は,ノズル部の乾燥過程を研究するためノズル部のインク粘度変化を測定する新しい手法を開発した.この手法では,メニスカスの振動をレーザードップラー振動計により測定し,その結果をインクジェットヘッドの等価回路シミュレーションによって校正することで,インク粘度を推定している.
    乾燥過程を詳しく理解するために,グリセリン水溶液の乾燥による粘度変化を1次元移流拡散モデルによってシミュレーションし,その結果を粘度測定結果と比較した.シミュレーション結果は実験結果と良い一致を示し,グリセリン水溶液のような単純な系の乾燥過程は1次元移流拡散モデルで良く表現出来ることが確認出来た.また,実験およびシミュレーションの結果から,ノズル部の乾燥はノズル部表層の乾燥と加圧液室部の乾燥という二段階で進行することが明らかとなった.
  • 兒玉 智史, 藤井 博, 佐藤 真一, 植草 秀裕
    2012 年 51 巻 2 号 p. 139-146
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    感熱記録紙とは含有する染料と顕色剤の熱反応により,任意の可視像形成が可能な機能紙であるが,光に対する耐性が低く,未発色部位の黄変着色や発色部位の退色が進行するという問題を抱えている.この問題点を解決するため,紫外線吸収能を付与した新規顕色剤である桂皮酸アミド誘導体を開発した.本化合物群を使用した感熱記録紙の耐光性試験を実施したところ,未発色部位のみならず発色部位の耐光性も付与することに成功した.一方,一連の誘導体を開発する過程において,同様の紫外線吸収能を有するにも関わらず,耐光性付与能力には誘導体による差が存在することが明らかとなった.感熱記録紙へ耐光性を付与出来なかった誘導体は光照射により劣化することを明らかにし,桂皮酸アミド誘導体を用いて耐光性を付与するには結晶状態で光劣化が進行しないことが重要であることを見出した.また結晶構造解析結果から,桂皮酸アミド誘導体の光劣化の原因は結晶中で進行した光二量化反応であることを特定した.
Imaging Today
  • 藤井 雅彦, 竹本 清彦, 大倉 浩和, 岡田 真一, 江口 裕俊, 高田 雅之, 中島 一浩, 竹内 寛
    2012 年 51 巻 2 号 p. 148-164
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    インクジェットの歴史を振り返るとともに,各方式の記録原理と特徴を説明する.さらにこれらの方式の現況を簡単に紹介する.次にインクジェットプリンタの基本性能向上と,課題解決のために1980年代から導入された新規技術,および導入の背景をまとめる.
    シンプルなプロセスを特徴とした機能集中型のマーキング技術であるインクジェットは,主に基本構成要素技術の性能向上や機能付加に依存しながら発展し,応用領域を拡大してきた.基本構成要素技術の性能向上の鈍化が見られる現在,これまでの発展モデルでこれまでと同じ方向に進んだ場合,大きな成長は望めない.
    今後もインクジェットの成長を持続するためには2つの進むべき道が残されている.1つは基本構成要素技術の性能向上による機能集中型のまま価値提供を続けられる応用へ成長の方向を変更することであり,もう1つは周辺技術を付加し,機能を分担してより上位の課題解決を図る,すなわち 「機能分担型」 マーキングへ成長モデルを変換することである.
  • 齋藤 将史
    2012 年 51 巻 2 号 p. 165-176
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    経済産業省の調べによれば2009年の印刷業全体に占めるオフセット印刷 (紙に対するもの) の割合は75%となっている.一方でその歴史は1904年にアメリカのアイラ · ルーベルの考案,もしくは1914年の国産技術が始まりであり,比較的新しい技術である.オフセット印刷は文字品質と画像品質が両立でき,大量のカラー印刷に適しているため,急激に発展していった.その技術は大量生産時代,安定品質要求時代を経て,環境対応時代に入りほぼ成熟したといってよい.オフセット印刷技術は,1914年から続く国産印刷機の改良と,安定して版が出力できること,そしてインキや紙の違いを考慮したCMSの技術に支えられてきた.今後は,環境単体ではなくQCDと一体となった技術開発や,規格化によるメリットが大きい生活環境 · 産業資材関連への転用が進んでいくと思われる.
  • 永瀬 幸雄, 校條 健, 服部 好弘, 渡辺 靖晃, 松代 博之
    2012 年 51 巻 2 号 p. 177-190
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    電子写真は,発明以来約70年にわたり,常にオフィス業務における記録技術の主流として発展を遂げてきた.本稿では,情報のデジタル化,カラー化という重大な変換期おいても,電子写真が淘汰されずに勝ち残れた要因が何なのかを技術的,歴史的に振り返る.電子写真は,光導電現象を利用して,原稿画像情報を普通紙上の複写画像情報として再生する物理量変換プロセスであり,その変換過程の巧妙さに多くの技術者が魅了され,数多くの改良発明が生みだされた.発展の歴史は,(1) カートリッジ方式の考案,(2) デジタル化への対応,(3) カラー化,(4) POD (Print on Demand) 分野への進出に代表され,オフィス業務の効率化を主軸として,個人用途から生産設備産業に至るまでの事業の拡大がなされてきた.また,乾式現像法と並行して,液体現像法も今日に至るまで存続し,特徴的発展を遂げた.今後,情報の取り扱いが電子メディアへと急速に移行している中で,紙出力の価値の変化に伴い新たな領域が開拓できるか,電子写真における技術開発への期待は大きい.
  • 小森 智裕
    2012 年 51 巻 2 号 p. 191-198
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    インパクトプリンタの印字プロセスは,インクリボンや複写紙など色材担持体を印字媒体との間に置き,ハンマー等で刻打するという,きわめて簡単で原始的な方法であり,現在はワイヤの先端で刻打し,形成するドットの集合体により文字や図形を印字するというドットマトリックス型が主流である.
    現在,さらに優れた多くの印刷プロセスが開発されているにも関わらず,複写紙を刻打する事により生成されるコピーという簡単かつ確かな原理の印字方法により,未だに伝票等印刷等の業務の需要に支えられている.その為,窓口での伝票印刷業務などを想定した,媒体ハンドリング技術や,使い勝手向上の面での技術の改良が進められている.
    また本解説での技術的な説明では,その心臓部である印字ヘッド (ワイヤドットインパクトヘッド) の技術を中心に紹介する.
  • 五十嵐 明
    2012 年 51 巻 2 号 p. 199-206
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    直接感熱記録法は,他の記録方式にはない特徴を有する.即ち,直接感熱記録材料は,記録材料中に,加熱により自ら色素を生成する機能を内包しているため,インクやトナー,現像液などの消耗品の供給なしに画像記録が可能である.結果,非常に小型,軽量,簡便で信頼性の高い記録システムを構築することができる.この特長故に,キャッシュレジスタ,券売機,ファクシミリなどに多く導入されてきた.
    フルカラー記録に代表される,高付加価値直接感熱システムの開発も並行して,ここ20年の間に行われている.しかし,これらの多くは必ずしも商品として成功していない.その理由として,付加価値を上げるためにプリンタや材料が複雑化し,直接感熱記録システムの特徴である簡便性が失われたことがあげられる.
  • 吉田 和哉
    2012 年 51 巻 2 号 p. 207-212
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    近年,エレクトロニクス技術の発展に伴うデジタル機器の性能向上にはめざましいものがあり,高画質 · 大容量データをオンデマンドで付加価値をつけて作像したいというニーズが増えている.様々な作像技術がある中で,熱転写記録方式が,現在もなお一定の地位を維持できているのは,作像原理が簡単で,小型化 · 低価格化が実現でき,さらに,ドライプロセスで作像できるという特徴をもっていることである.
    熱転写記録方式には,昇華型熱転写記録方式と溶融型熱転写記録方式という2つの方式がある.両方式ともに,サーマルヘッドの熱量により作像するものであるが,昇華型熱記録の特徴としては,熱量に応じ染料の転写量をコントロールする濃度階調であるため階調性豊かな画像表現が可能である.一方,溶融型熱記録は,熱量により,色材を含有するバインダー層を全転写するため,耐久性が高く,細線やドットの再現性の高い画像表現が可能である.本稿では,2つの熱転写記録方式について,作像原理と特徴について解説する.
  • 堀田 吉彦
    2012 年 51 巻 2 号 p. 213-222
    発行日: 2012/04/10
    公開日: 2012/04/13
    ジャーナル フリー
    リライタブル作像技術は,1980年代から1990年代にかけて各種の方式が開発された.その方式は高分子や液晶などの相変化を利用した物理変化タイプとロイコ染料の可逆性を利用した化学変化タイプに大別できる.物理変化タイプは耐光性などの保存性に優れるという特徴を持ち,化学変化タイプは画像コントラストが優れるという特徴を持つ.実用化されたのは物理変化タイプの高分子/長鎖低分子分散型と化学変化タイプのロイコ染料/長鎖顕色剤型であった.これらが実用化されたのは,温度制御だけで書き換え可能であるため,記録機器の既存の熱制御技術の流用が可能だったという技術面とカード表示用途が立ちあがる時期だったという市場面の両方のタイミングがうまく合致したためである.他の用途 (消えるインキ) に展開された技術,液晶やフォトクロミックなど技術は発表されたがリライタブル作像技術として実用化されていない技術,カラー化やレーザ記録など次世代の技術についても紹介する.
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