日本画像学会誌
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52 巻, 1 号
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巻頭言
原著論文
  • 高島 永光, 高本 徹也, 斎藤 和行, 新井 聖, 阿部 隆夫
    2013 年 52 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
    インクジェットプリンタに要求される重要課題の一つは,長期間において不連続に印刷を行った際にインクの吐出不良を生じないことである.ところが,コンシューマー用インクジェットプリンタにおいて,吐出不良が製品寿命より遥かに短い段階で見られ,商品の長期信頼性の観点から大きな問題を有していた.吐出不良の原因として,プリントヘッドのインク流路内に存在する小さなサイズの気泡が,インク流路内に滞留している間に大きなサイズに成長し,インク流路幅を狭めてインク流量が減少することが知られている.筆者らは,そのことがノズル穴から適正なインク滴の飛翔しない現象に結び付き,インクの吐出に悪影響を与えるだろうと考えた.この問題を解決するために,インク流路を構成する新たな樹脂材質と流路構造を開発した.材質として酸素と水蒸気ガスに対する高バリア性を付加し,流路構造として流路にバイパスとなる数個の溝と,小さいままの気泡を流路中心部へ導くリブを設置した.この解決策により,インク流量が長期間にわたって減少せず,気泡成長にかかる期間が長期化することを明らかにした.この手段により,吐出不良の発生が減少する.
解説
  • 原田 祥宏, 松本 章吾
    2013 年 52 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
    電子写真プロセスにおいて発生する紙しわは,プリンタの信頼性を確保する上で発生してはならない現象である.しかしながら,紙しわはその発生原理や影響因子との関係性が依然として不明確であることから,機種の開発中に問題が発生してしまうと解決することは容易ではない.そこで,効率的な製品開発を行えるようにするため,定着機で生じる紙しわ発生現象についてメカニズム解明を試みている.紙しわの発生因子を明確にするために,定着しわ原理解析装置を構築し,用紙搬送挙動の定量化を行った.搬送中の用紙の速度分布や面外変形形状を計測した結果,速度偏差や用紙に生じる波うちの角度を紙しわ発生に関する代用特性として評価することで,定着機のしわに対する余裕度を事前評価できる見通しを得た.
Advanced Technology
  • 永瀬 隆
    2013 年 52 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
    単一あるいは少数分子を機能ユニットとして用いる分子デバイスは,将来のナノスケールデバイスの候補として大きな期待が寄せられている.分子デバイスの実現には有機分子1個を電極間に架橋させた際の電気特性の解明が不可欠であるが,これには幅数ナノメートルのナノギャップ電極の作製技術が求められる.本稿では,これまでに開発されている代表的なナノギャップ電極の作製法を概説し,著者らが開発した集束イオンビーム (FIB) を用いた作製法とその研究成果について紹介する.FIBによる方法では,電極のエッチング過程を電流測定によってその場観測し,電子的に停止させることでナノギャップを形成する.これより,FIBのスポットビーム径よりも幅の狭いナノギャップ電極を再現良く作製することが可能である.得られた最小のギャップ幅は3nm程度であり,本法によって幅3-6nm程度のナノギャップ電極を約90%の歩留まりで作製することが可能となった.作製したナノギャップ電極は,単一分子計測が可能な10GΩ-1TΩの高い絶縁抵抗を有する.
  • 木口 学, 松下 龍二, 金子 哲, 中住 友香
    2013 年 52 巻 1 号 p. 26-33
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
    金属電極間を単分子で架橋させた単分子接合は,2つの金属-分子接合界面をもつナノ構造体であるので孤立分子とは異なる新物質としての新規物性の発現が期待され,また分子エレクトロニクスへの応用も期待され注目を集めている.本解説では,単分子接合の作製および単分子接合の構造決定についてPt電極に架橋した水素単分子の例を用いて述べる.超高真空極低温で作製された水素単分子接合は,単分子の振動分光により架橋構造,ショットノイズと電気伝導度の同時計測により架橋分子数が厳密に決定された.さらに水素単分子接合を伸長することにより,単分子ワイヤの形成も明らかとなった.この水素単分子接合,ワイヤを用いて,伝導電子と分子振動の相互作用について詳細な解析が可能となった.そして単分子接合の伝導度に依存して分子振動励起が接合の伝導度を増加させたり,減少させたりすることも明らかとなった.最後に単分子接合研究の最先端と今後の展望について述べる.
  • 太田 豊, 下村 武史
    2013 年 52 巻 1 号 p. 34-42
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
    導電性高分子を絶縁性環状分子で被覆した分子被覆導線や,導電性高分子が自発的に集合したナノファイバーは,nmオーダーの直径をもち,高い電気伝導を示す材料として,各種ナノデバイスの有力な材料となることが期待されている.こうしたナノワイヤの1本レベルでの電気物性について解説する.特に,ナノファイバーは作製条件によってその結晶性を制御することができるため,ミクロな構造と電気物性の関係を調査し,電界効果トランジスタとしての機能の評価を行った.さらにナノファイバーのトポロジーと電気物性の関係や,ナノファイバーを汎用高分子と複合化したナノコンポジットの構造と電気物性について紹介し,今後のナノテクノロジーへの応用の可能性について述べる.
  • 野口 裕, 山本 真人
    2013 年 52 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
    単一分子接合に現れる電気伝導特性をエレクトロニクス素子として利用したものは単一分子素子と呼ばれる.究極の微細素子とも言える単一分子素子の実現に向け,これまで様々な機能性分子が考案されてきたが,分子接合の作製の難しさから動作が実証されていないものも多い.分子接合に現れる単一電荷輸送特性を利用した単電子トランジスタ (SET) は,単一分子素子の中でも最もシンプルなものの一つであろう.我々は,これまで,π共役系分子でナノギャップ電極間を架橋した「単分子SET」や,金ナノ粒子を介して分子接合を複数連結した「ナノ粒子SET」の特性について研究してきた.これらのデバイスでは,分子をクーロン島もしくはトンネル層として利用している.さらに,我々は最近,新たな素子構造として,分子をフローティングゲートとして利用した色素ドープSETを提案した.本稿ではこれらの素子の特性,利点,将来展望等を紹介する.
  • 谷口 正輝
    2013 年 52 巻 1 号 p. 51-60
    発行日: 2013/02/10
    公開日: 2013/02/13
    ジャーナル フリー
    ナノポアとナノ電極から構成されるゲーティングナノポアデバイは,全ヒトゲノムを1日と$1000で解読する第3世代DNAシークエンサーのターゲットデバイスである.このバイオナノデバイスの動作原理は,ナノポアを通過する1本のDNA上の塩基分子を,塩基分子を流れるトンネル電流の違いにより識別することにある.現在,トンネル電流による1塩基分子識別技術をDNAシークエンサーへと発展させるため,2つの技術開発を行っている.1つは,1本鎖のDNAとRNAの塩基配列決定技術であり,3つの塩基分子からなるDNAと7つの塩基分子からなるRNAの塩基配列決定に成功している.一方,1分子の塩基配列決定のスループットと精度を決定する1分子速度制御技術を開発しており,ゲート電圧により,1分子DNAがナノポアを通過する速度を数桁のオーダーで変調する方法を開発している.
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