日本画像学会誌
Online ISSN : 1880-4675
Print ISSN : 1344-4425
ISSN-L : 1344-4425
52 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
原著論文
  • 村山 雄亮, 井手 亜里
    2013 年 52 巻 5 号 p. 400-405
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2013/10/13
    ジャーナル フリー
    通常のRGBカラー画像よりも多色のマルチバンド画像を取得し,対象の正確な色再現を行う技術が,近年文化財デジタルアーカイビングにおいて注目を集めている.しかし,マルチバンド画像取得にはカラー画像撮影の数倍以上の時間がかかり,そのことが実用を妨げている.本研究ではマルチバンド画像スキャナにより取得した画像に対して超解像を適用する手法の構築を行った.提案手法は分光反射率推定の手法であるウィナー推定と超解像の手法であるベイズ超解像を組み合わせることにより導かれた.日本画を撮像対象として実験を行い,提案手法による復元画像の精度について定量的な評価を行った.その結果,1.7倍の解像度向上が可能であることがわかった.これは撮像時間を従来の3分の1近くに,さらに画角を1.7倍にすることが可能であることを意味している.
  • 杉原 康平, 伊藤 洋平, 前田 秀一
    2013 年 52 巻 5 号 p. 406-410
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2013/10/13
    ジャーナル フリー
    着色剤として硫化物水溶液を用いて,銀薄膜を発色させる新規で簡易的な方法を発見した.特定の硫化物の存在下にて,発色の条件 (濃度,温度など) をコントロールすることで,黄色,赤色,青色,等にさせることができる.この銀薄膜の色変化のメカニズムの解明は,とても科学的見地から意義があると考える.このメカニズムを探求するために銀薄膜や銀ナノ粒子のモルフォロジー,粒径と化学組成について,走査型電子顕微鏡 (SEM),透過型電子顕微鏡 (TEM),X線光電子分光法 (XPS) などで分析を行った.以上の分析結果より,銀薄膜の色変化は銀ナノ粒子の粒径変化による表面プラズモン共鳴が原因ではなく,Ag及びAg2Sの膜間の薄膜干渉が原因であると考える.
速報
  • 湯川 統央, 青木 逸, 黒田 章裕, 前田 秀一
    2013 年 52 巻 5 号 p. 411-414
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2013/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,固体の蛍光粒子を内包したカポック繊維を漉き込んだ偽造防止用紙を開発することにある.カポック繊維は内径18µm,外径20µmの天然の半透明中空繊維である.撥水性に優れており,毛細管力により油を吸収する性質を有する.一般に合成繊維の中空率が約50%であるのに対し.カポック繊維は80%以上の中空率を有する.我々は,このカポック繊維の特徴を活かすために,固体の蛍光粒子をカポック繊維の中空部に内包させること,そしてそのカポック繊維を紙に漉き込むことを目標とした.その結果,新規な機能性紙を作製することに成功した.この紙は,強い発光性を示す.以上より,固体蛍光粒子を内包したカポック繊維は,偽造防止分野において応用できる可能性があると考える.
Imaging Today
  • 中西 秀彦
    2013 年 52 巻 5 号 p. 416-422
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2013/10/13
    ジャーナル フリー
    PODが市場に投入されて20年近くが経過したが,まだ爆発的な普及を見るに至っていない.これは,デジタルデータ自身の不備,POD製品の品質問題,オフセット印刷のPOD性の獲得が原因と考えられるが,急速にこれらの弱点は解消し,旧来の印刷市場が縮小する中,今後の成長が見込まれる.
    本論では,トランザクション,コマーシャル,出版,フォト,パッケージのそれぞれのPOD市場の現状と将来性について評価を加える.それぞれの市場は,情報媒体として究極的な可変性を持ったインターネットと競合するようになってきているが,紙ならではの強みを活かし独自の市場を形成すると考えられる.
    今後,PODは即時性と可変性を強みとしたニッチ市場にくわえて,環境性能を活かして,オフセットの領域に進出すべきであり,その為の技術開発が望まれる.
  • 森田 直己
    2013 年 52 巻 5 号 p. 423-432
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2013/10/13
    ジャーナル フリー
    デジタル印刷市場は成長を続けており特に連続帳票印刷においては,高速,低ランコストが求められ,一方,画質に対する要求がそれほど高くないためインクジェット技術が好適である.富士ゼロックス(株)は本市場に集約型高速コンパクト設計をコンセプトとする2800 Inkjet Continuous Color Feed Printing System : ICCFPS (200m/分) と分散型低コスト設計をコンセプトとする1400 ICCFPS (100m/分) を導入した.本論文では各々の装置の技術内容を解説するため,共通する主要構成を1) 機械本体 (紙送り系),2) プリントヘッド,3) インク,インク供給系およびメンテナンス系,4) コントローラに分類し,それぞれ要求される特性と採用されている実現手段を説明した.また,今後のインクジェット技術の進展について,インク噴射に関する高速限界,水性インクの乾燥技術,印刷市場への拡張性について議論した.近年,停滞気味だったインクジェット技術が新たに印刷市場という新天地を得て,今後大きく飛躍していくことを期待したい.
  • 角谷 賢治
    2013 年 52 巻 5 号 p. 433-441
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2013/10/13
    ジャーナル フリー
    2009年にオセ社はOcé VarioPrint 6000 Ultraシリーズを発表した.本機種はA4分速170ページから314ページまでの印刷を行うモノクロプロダクションプリンタである.顧客にとっての生産性を追求するために,スループット,印刷品質,信頼性,使いやすさを高めるというコンセプトで開発された.オセ社の主要技術であるコピープレス方式をベースに開発されたOcé Geminiテクノロジーによる1パス両面印刷を実現しており,両面印刷速度の飛躍的な向上と,高い表裏見当精度,紙ジャムの軽減を実現した.コントローラーにはOcé PRISMAsyncコントローラーを新たに搭載している.これは従来のSmart Imagerコントローラーを更に発展させたカラー·モノクロ機共通のコントローラープラットフォームである.スケジューラーによる作業時間の可視化や,Screen Point Technologyによる出力時の暗部·明部の階調性向上,Océ VarioStream等の連帳プリンタで採用されているSRAコントローラーの搭載などにより,PODだけでなくオフセット印刷からの移行や,システムプリンタとしての利用を可能にした.
  • 安田 理, 酒井 浩司, 岡野 覚, 小松 真, 中井 洋志, 石川 誠一
    2013 年 52 巻 5 号 p. 442-448
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2013/10/13
    ジャーナル フリー
    RICOH Pro C751EX/C651EXは,RICOH Pro C901シリーズと共にリコーのプロダクションプリンターのラインナップを強化し,印刷物の多品種化·小ロット化·短納期化など多様化するPOD市場ニーズに対応したデジタルフルカラープリンターである.主な特徴は以下の通りである.
    1) カラー/モノクロともに毎分75枚 (C751EX) /65枚 (C651EX) の出力
    2) 安定した高画質出力 (ATDCによる濃度変動抑制,VCSELによる高精度補正)
    3) 生産性の維持 (大量給紙トレイ,現像冷却液冷システム)
    4) 多彩な用紙対応力 (ショックジターキャンセル機能,統合用紙システム)
  • 大村 厚夫, 服部 好弘
    2013 年 52 巻 5 号 p. 448-455
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2013/10/13
    ジャーナル フリー
    コニカミノルタbizhub PRESS C8000は,高速,高信頼性,高耐久を満たしつつ印刷業界特有の塗工紙への紙種対応の拡大を図った本格的プロダクションプリント市場向けカラーデジタル印刷機である.本報では,本機を支える数々の要素技術,及び製品化技術を,我々が目指した『安心·簡単·快適』のコンセプトに照らして,紹介する.
    第一の『安心』では,高い信頼性を追求した給紙搬送機構,レーザー光学系,電子写真プロセスの改良点を紹介する.第二の『簡単』では,印刷職人の高い技術と経験を簡単な操作で実現する画像処理,画像濃度調整技術およびカラーマネジメント技術を紹介する.最後の『快適』では,複雑な印刷業務を最終の仕上がりまでミスなく,効率的に処理させる後処理装置,ワークフローアプリケーションおよび,快適さを演出するデザイン開発の事例を紹介する.
  • 中尾 誠一
    2013 年 52 巻 5 号 p. 456-461
    発行日: 2013/10/10
    公開日: 2013/10/13
    ジャーナル フリー
    近年,インクジェット技術をベースにしたフルカラーのプロダクションプリンターを使った,個人向けのダイレクトメールなどの提案型の販促手法への応用がさかんになってきている.これは,プリンターの品質向上,高速化,低コスト化など「印刷をする仕組み」の改善がその一助となった結果である.しかしながら,可変データからなる印刷物の品質管理やデータ管理の方法,すなわち「正しく印刷されたことの保証する仕組み」の実現が課題となっている.
    本稿では,ベストセラー機として定評のあるTruepress Jet520シリーズをレビューすると共に,上記の課題へのソリューションとしてインラインの検査装置Jetinspectionを紹介し,課題をどう解決するのか,その解説を行う.
教育講座
feedback
Top