日本画像学会誌
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54 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
巻頭言
原著論文
  • 須原 浩之, 橘 弘人
    2015 年 54 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    電子ビームをプローブとして用いる静電潜像計測装置に,真空内で露光可能なレーザー走査光学ユニット (LSU) を開発して搭載し,動的レーザービーム露光による潜像形成及び潜像計測を可能とした.LSUは,ポリゴンミラーおよびこれを回転駆動するポリゴンモータ起因の振動や電磁場ノイズが電子ビームの軌道に影響を与えないように,電子ビーム軌道位置から遠ざけて真空チャンバの外に配置した.また,半導体レーザー (LD) のバイアス電流に伴うオフセット発光を遮光するためにシャッタ機能を搭載することで,所望の静電潜像形成を可能とした.光源を2チャンネル使用したツインビームとすることで,副走査方向に最大2ライン分任意の画像パターンを形成することが可能となっている.実際の電子写真プロセスで起こりうるLDパワー,サイドローブ強度,書込開始位置ずれ,ドットパターンといった走査時の書込条件をパラメータとして様々な静電潜像の解析を行った.サイドローブ強度が1/e2以下でも潜像として可視化されることや,孤立ドットと繰り返しドットで潜像の大きさに差異が見られることなど新たな知見を得た.
  • 南光 進, 星野 坦之
    2015 年 54 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    LSIパッケージングのバンプ形成において,はんだボールを用いる方式は,バンプの同一平面精度が高く,電気的接続性に優れている.この方式では,所望のパターンに,はんだボールを配列する技術が必須である.従来技術では,予めボールを整列しておくマスクと称するテンプレートが必要であるが,マスクを用いないマスクレス方式が実現できればパッケージ製造工程におけるプロセスの簡略化,リードタイムの短縮化を実現きるものと期待できる.本論文では,電子写真技術を応用した新しいマスクレスのボール実装方式を提案する.感光ドラムに所望の潜像パターンを形成し,その潜像に,はんだボールを静電気的に捕捉させた後,感光ドラムから回路基板に転写させるもので,バンプ配列毎に,潜像パターンを書き換えることでマスクレス化が可能となる.最近のトレンドである微小はんだボール (球径60~100 μm) を対象とした電場における,はんだボールの飛翔解析,潜像へのはんだボール捕捉条件を明らかにし,それら条件に基づいたマスクレスボールマウンターの実現例について述べる.
  • 山口 隆, 根本 伸樹, 三木 武郎
    2015 年 54 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    従業員カードに代表されるID証は,物理セキュリティシステムを構成する重要なアイテムである.スキャナやプリンタが広く普及している最近は,ID証が複製などで悪用されるリスクが高まっている.ID証の悪用を防止する目的で,顔写真などの印刷画像に色差を利用した電子透かしを埋め込む方法を提案する.人間の視覚には,約300 (dpi) 以上の解像度で印刷すると,画素間の色の違いを感知しにくくなる特性がある.この特性を利用して,透かし情報を微細な色差変調パターンとして印刷物に埋め込む「電子透かし埋め込み方法」を溶融型熱転写記録方式に適用する技術を開発した.本技術を用いることで,溶融型熱転写記録方式特有なドット配列に対して正しく透かし情報を埋め込むこと,および正しく透かし情報を復元することが可能になる.実際に熱転写プリンタに適用し,電子透かし埋め込み済み画像の露見性,透かし情報の復元性の評価を実施し良好な結果を得た.さらに透かし情報の機械読み取りコード対応について検討した.
新年のご挨拶~画像関連学会連合会~
Imaging Today
  • 阿部 隆夫
    2015 年 54 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    かつて画質改善は銀塩写真技術の開発において感度アップと並んで最も重要な研究課題の一つとして位置付けられていた.そのとき,画質に影響を与える因子が多くある中で,階調性,粒状性,鮮鋭性,色再現性が特に注目されて研究された.そこで得られた結果は銀塩写真とは技術内容が変わってしまった今日のデジタル画像システムにも適用できる.画質は今後も重要な研究課題であることに変わりはないだろうが,研究の目的と目標を明確にしておくべきである.さもないとその研究は終わりのないサイクルに陥ることになる.画質評価はしばしば精密な装置によるデータに基づいて客観的に行われる.しかし,最終的にはわれわれの目を通して得た印象に基づく主観的評価が必要となる.研究開発を推進するとき,これらのことを考慮しておくことは重要である.
  • 日比野 勝
    2015 年 54 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    電子写真は,デジタル化,カラー化,高解像化といった大きな変換期をトナーや感光体の技術革新に加えプロセス安定化技術の進化により乗り越え,オフィス業務における記録技術の主流として発展を遂げてきた.今日では,電子写真の強みを生かした様々なプリントシステムがデジタル印刷市場にも提供されている.  しかしながら,電子写真の画質は,オフセット印刷に迫る高画質画像が出力できるまでになってきてはいるものの,追い越すまでには至っていない.  本報では,乾式二成分現像方式の現像プロセスにおける高画質化の取り組みについて,現在までの取り組みと今後の対策の方向性について考察する.
  • 青木 信次
    2015 年 54 巻 1 号 p. 53-60
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    電子写真で高画質化を進める上で,転写プロセスでは感光体上のトナー像を劣化させることなく,中間転写体や紙に忠実に転写する技術が要求される.忠実な転写を実現するには,画像劣化現象を含む転写の物理を押さえる必要があり,可視化や計測,シミュレーションといった基盤技術が重要な役割を担っている.転写プロセスでの代表的な課題であるチリや画像濃度ムラなどの画像劣化現象は基盤技術によって解析され,近年の商品は物理に則った技術の搭載によって高画質化が進められている.そこで本稿ではこれらの画像劣化現象についての基盤技術による解析事例を交えながら,実際の商品でどのようにして高画質化が実現されているかを見ていく.その中で,エンボス紙での画像濃度ムラ低減技術として開発されたリコーの「AC転写技術」を紹介し,今後の高画質化技術の方向性について論じる.
  • 上原 康博
    2015 年 54 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    定着は電子写真の最終プロセスであり,定着で最終画質が決まる.白黒からカラー定着に進化してきたことで,定着は単にトナーを用紙に固定するという機能以外に,狙いの画像構造を作るという重要な機能が追加されるようになった.高画質定着実現のキーポイントの1つは,トナーの流動を制御して狙いの発色と画像グロスを獲得することにある.  それを実現するために,各社新技術を採用した特徴ある定着コンセプトを商品化している.それは画像グロスの均一安定化,高速化,メディアフリー化,高信頼化を目指したものである.将来さらなる進化は定着プロセス単独の改善ではなく,トナーを含めた電子写真プロセス全体の技術革新から生まれてくると考える.ニップ内冷却固化技術は画像構造制御の観点より将来有望な技術の1つであると考えられる.
  • 大柴 知美
    2015 年 54 巻 1 号 p. 70-76
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    電子写真技術は,その歴史において常に高画質化を目指して開発が進められてきた.約75年前に電子写真の原理が発明されてから現在に至るまでの画質の向上は著しい.一方,電子写真技術において,現像,転写,定着,クリーニングなど,各プロセスと密接に関係し,最終的にメディア上に残るトナーに対しては様々な観点からの要求事項が多い.ここでは,高画質化を目的としたトナーの変遷を中心に,現像剤の立場から高画質化にどのように取り組んできたかを振り返り,今後の方向性を探る一助としたい.  また,「高画質」を考えるにあたり,基本的な性能としての「解像度の向上」「ノイズの抑制」に加え,「色域の拡大」「質感のコントロール」という付加価値にも視点を広げてみたい.
  • 芳野 康洋
    2015 年 54 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    デジタルプリンティングユーザーの幅広いニーズに対応するため,当社では,様々なタイプの電子写真用紙の開発に取り組んできた.例えば,湿式トナー用として,プライマー処理を必要としないHP Indigo認証紙「三菱EP-Lシリーズ」が挙げられる.プライマー処理とは,印刷品質の安定化を目的とし,印刷前の用紙の表面に反応性の高いポリマーベースの特殊薬剤を塗布する工程のことであるが,コストアップや用紙の経時劣化等が問題となるため,好ましくない.「三菱EP-Lシリーズ」は,プライマー処理に類似する物質を使用することなく,用紙の表面性を制御することによって,湿式トナーと用紙との相互作用を向上させている.  本報では,乾式トナー及び湿式トナー用電子写真用紙に関する開発動向の概要,並びに印刷品質に影響を与える特性について紹介する.
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