日本画像学会誌
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59 巻, 4 号
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巻頭言
論文
  • 高橋 良輔
    2020 年 59 巻 4 号 p. 359-365
    発行日: 2020/08/10
    公開日: 2020/08/10
    ジャーナル フリー

    インクジェット方式における画像構造形成プロセスを理解,予測するため,インク滴の乾燥,浸透挙動のシミュレーション技術の構築を行った.乾燥モデルではインク表面からの蒸発と,それによって生じた濃度勾配に基づいた濃度拡散によるインク内濃度分布を有限差分法により逐次,解析する.その際,インクに含まれる複数の液体成分や,個体粒子の濃度を個別に計算することで,液体成分ごとの残留量や顔料粒子の表面濃縮などを再現できるようになった.浸透モデルでは,メディア内の浸透流をポアズイユ流れで近似し,メディア内に設けたセルごとにラプラス圧による駆動力と流路抵抗の関係を満たすように,圧力分布を解き,セル間の流量を解析する.構築したモデルにより,コート紙のように浸透特性が異なるメディアに対しても,浸透挙動を定量的に再現できた.構築した技術を応用することで,乾燥,浸透現象による画像形成プロセスによって決定される画像固着強度に起因するスマッジ (smudge) 現象の発生メカニズムを明確化した.

Imaging Today
  • 田中 眞人
    2020 年 59 巻 4 号 p. 367-375
    発行日: 2020/08/10
    公開日: 2020/08/10
    ジャーナル フリー

    これまでに各種のマイクロカプセルが開発され多くの分野,例えば,電子材料分野,建築土木材料分野,医薬品,農業材料分野,情報記録材料分野,繊維材料分野,熱エネルギー貯蔵材料分野,文房具材料分野,化粧品材料分野,食品分野などで応用されてきた.

    また,コア剤とシェル材との組み合わせによる,さらなる新規機能 (例えば複数刺激応答性) を呈するマイクロカプセルの研究開発が活発におこなわれている.ここでは,マイクロカプセルの基礎的事項,すなわちマイクロカプセル化の目的や機能,構造·サイズ,マイクロカプセル調製法と調製に必要な事前情報などについて解説する.さらに,代表的なマイクロカプセルの応用例として,自己修復材,潜熱蓄熱技術,食品,医薬品,ハイブリッドシェルマイクロカプセル調製例などについて紹介する.

  • 西川 雄大, 橋本 拓
    2020 年 59 巻 4 号 p. 376-386
    発行日: 2020/08/10
    公開日: 2020/08/10
    ジャーナル フリー

    森下仁丹はヘルスケア事業とシームレスカプセルを製造·販売するカプセル受託事業を通じて幅広く社会にサービス·価値を提供している.シームレスカプセルとはソフトゲルカプセルの一種であり,当社独自の滴下法により作製される.当社のシームレスカプセル技術は1970代初頭に溯り,以来,様々な多層構造を持つシームレスカプセル (2層カプセル (親油性フレーバー),3層カプセル (親水性コア,プロバイオ菌末分散液),4層カプセル (カプセルinカプセル) を開発してきた.当社はシームレスカプセル技術を活用した自社製品の販売やカプセル受託製造サービスのグローバル展開に取り組んできた.近年,当社のシームレスカプセル技術は食品,化粧品,医薬品への応用のみならず,日用品,住宅,輸送,機械,電子機器など幅広い産業分野に展開しつつある.様々な顧客要望に応えるため,森下仁丹は従来の基盤カプセル技術を更新するだけでなく,新たな用途に対する新たな技術を開発し続けている.例えば,非可食用皮膜を有するシームレスカプセルの技術開発やマイクロカプセルの開発がそれに当たる.本論文では,森下仁丹におけるカプセル技術について解説する.

  • 島田 浩一
    2020 年 59 巻 4 号 p. 387-394
    発行日: 2020/08/10
    公開日: 2020/08/10
    ジャーナル フリー

    富士フイルムでは,長年にわたり“ポリウレタンウレア壁マイクロカプセル技術”を導入した感熱·感圧記録材料を開発~販売している.ポリウレタンウレアによるマイクロカプセル壁は界面重合法により形成されるが,マイクロカプセル壁のガラス転移点や力学特性の制御が容易であることから,様々な感熱·感圧記録材料の高機能化に貢献してきた.

    現在,感熱記録材料として,医療用ドライサーマルイメージャー「DRYPIX Lite」用記録フィルム「DI-HT」などを販売しており,マイクロカプセル技術によって長期保存性と高い透明性による高画質化を実現している.また感圧記録材料としては,マイクロカプセル技術により幅広い圧力領域での圧力分布/圧力バランス測定を可能にした“圧力測定フイルム;Prescale (プレスケール)”の販売も行っている.

    本稿では,上記“ポリウレタンウレア壁マイクロカプセル”を形成する技術を解説するとともに,現在販売されている記録材料に導入した技術を紹介する.

  • 朴 峻秀, 大﨑 基史, 髙島 義徳, 原田 明
    2020 年 59 巻 4 号 p. 395-403
    発行日: 2020/08/10
    公開日: 2020/08/10
    ジャーナル フリー

    2000年代に入りマイクロカプセル型自己修復材料をはじめとして様々な原理からなる自己修復材料が報告されており,自己修復材料は持続可能な社会の実現に欠かせないものとして注目を浴びてきた.自己修復性の実現により資源の節約,環境問題の低減,材料機能性の長寿命化等が期待される.自己修復性高分子材料の実現するために,可逆性架橋を用いる方法がよく利用されてきた.近年,さらに精密に設計した共重合体を作製しセグメント同士の相互作用を活用する研究も報告されている.本総説では,自己修復性高分子材料の歴史における重要な研究と近年の展開を紹介·解説する.

  • 曽我 哲徳
    2020 年 59 巻 4 号 p. 404-408
    発行日: 2020/08/10
    公開日: 2020/08/10
    ジャーナル フリー

    プレコートボルト加工は,ボルトなどのネジ部に特殊ナイロンや高反応性固着剤を加工し,ネジ自体にロック機能やシール機能を持たせる加工技術である.

    特にMEC加工 (MEC=micro encapsulation) は,シール剤·固着剤が封入されたマイクロカプセルの配合物をボルト,ビス,プラグ,パイプなどのネジ部に特殊加工することで,シール,ロック,潤滑と言った機能を持たせることができる.

    MEC加工したものや嫌気性封着剤は長く産業界で使用されているが,MEC加工品はネジ面にあらかじめ接着剤が塗布加工されているため,作業性に優れ且つ接着剤の塗布時不適合を防止できると言った有用性がある.

    マイクロカプセルをネジ表面に加工する際に従来有機溶剤を用いていたが環境対応の観点から水性タイプの開発を行い,全ての溶剤タイプの商品に代わる水性タイプの商品ラインナップ化が完了したためそれぞれの水性タイプ商品の特徴について本稿にて紹介する.

  • 山﨑 弘
    2020 年 59 巻 4 号 p. 409-418
    発行日: 2020/08/10
    公開日: 2020/08/10
    ジャーナル フリー

    カプセル化技術は機能分離技術である.電子写真ではトナーを紙などに定着させ,画像を形成する.その際,トナーは保管·輸送·補給·現像の段階では粉体としての機能が要求される.一方,定着段階では紙などへトナーが接着しなくてはならない.このように相反する機能をトナーには求められている.さらに,二成分系現像剤では,トナーに帯電を付与するためにキャリアが使用される.現像部ではキャリアは磁力で保持され,表面で摩擦帯電によりトナーへ電荷が付与される.このように,キャリアでは複数の機能を求められている.

    このように,相反する機能及び複数の機能を発揮させるため,トナーではコアとシェルで機能分離させたカプセルトナーが,キャリアではコアに樹脂被覆した樹脂被覆型キャリアがカプセル化技術として使用されている.

    本解説ではこれら技術の流れを俯瞰するとともに,技術を解説していく.

Imaging Highlight
  • 内村 元一
    2020 年 59 巻 4 号 p. 419-422
    発行日: 2020/08/10
    公開日: 2020/08/10
    ジャーナル 認証あり

    昨今,海洋プラスチックごみや地球温暖化問題への関心が高まる中,パッケージにおいても 「サステナビリティ (持続可能性) 」 や 「環境配慮 (再生可能資源の活用) 」 といった観点から様々な対策ならびに技術開発が進められている.

    当社では長年培ってきた製紙技術を基に,再生可能な循環型素材である 「紙」 に様々な機能を付与する取組みを展開しているが,この度 「紙」 に酸素や水蒸気,フレーバーなどのバリア性を付与した環境に優しいパッケージ用素材 「シールドプラス®」 を開発.更に,紙ストロー 「シルフィールTM」,シャンプー用差し替え容器 「スポップス®」 など,あらゆる分野·用途でのプラスチック代替製品を開発し,循環型社会形成の一助となる製品提案を行っている.

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