日本画像学会誌
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最新号
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巻頭言
論文
  • 鈴木 一世, 半那 純一, 飯野 裕明
    2025 年 64 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2025/02/10
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル フリー

    本研究では,液晶性有機半導体Ph-BTBT-10を用いた有機トランジスタ及び,液晶性フタロシアニン誘導体8H2Pcを用いた有機フォトダイオードをPET(polyethylene terephthalate)フィルム上に集積化してイメージセンサピクセルを作製した.有機トランジスタのゲート絶縁膜には光架橋によりパターニングが可能なpoly(vinyl cinnamate)を用いた.作製したイメージセンサピクセルは,光照射下における出力電流が有機トランジスタのオン電流及びオフ電流に律速され,有機トランジスタによるスイッチングが確認された.またリニアダイナミックレンジは51 dBであり,有機トランジスタのオン抵抗が有機フォトダイオードの光照射時の抵抗と比べて小さい100 µW/cm2以下かつ,有機フォトダイオードの暗電流に律速されない10 nW/cm2以上の光強度では高い線形性をもつ光応答を示した.1ピクセルあたりの応答時間は2.6ミリ秒となり,30 fpsで1フレームあたり12行分を出力可能な動作速度であった.

  • 鈴木 拓也, 高橋 浩, 後藤 隆之, 村井 宏亘, 高橋 健太
    2025 年 64 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2025/02/10
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル フリー

    インクジェットプリンタにおいて,打滴干渉に起因する着弾後のドット移動は,粒状性劣化の大きな要因となっている.打滴干渉とは,隣接するドットが干渉・合一することにより,ドット位置や大きさ等が変わってしまうことである.特に,高濃度部など,ドットを大量に打ち込む際には避けられない現象である.本研究では,吐出順により生じるインクの着弾時間差が,打滴干渉に影響を及ぼすことに着目し,画質劣化のメカニズムを解明した.そして,従来のドット分散型ハーフトーンを改良し,滴種混在時のドットの埋まりを向上させるハーフトーン技術を開発した.高速印字モードという画質が劣化しやすい条件において,ドット配置を最適化することで,高濃度部の粒状性を改善できることを示した.さらに,効率的にドットが埋まることで,消費インク量を削減できることも示した.

Imaging Today
  • 酒井 真理
    2025 年 64 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2025/02/10
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    インクジェットプリンターは,写真品質の画像出力を実現した2000年代以降,技術の進化が続いている.特にインクジェットヘッドの改良により,液滴の微小化と高生産性が両立され,大型高速の産業用プリンターの基盤が確立した.また,ヘッドの大型化やインク循環型構造,高粘度インクの使用などの技術革新により,商業印刷やテキスタイル,パッケージ分野でのデジタル印刷化が進展している.さらに,インクジェットプリンターは社会環境の変化への対応が求められ,UV(ultraviolet)硬化インクやハイブリッド印刷システムの開発が進められている.これらの技術は,エレクトロニクスや3Dプリンティングなどの新分野にも応用され,インクジェット技術の可能性を広げている.

  • 小澤 範晃, 高折 靖子, 染手 隆志, 泉地 祥男, 坂田 昌一, 廣島 進
    2025 年 64 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2025/02/10
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    近年,商業・産業用途における印刷分野はオフセット方式を中心としたアナログ印刷からインクジェット印刷などのデジタル印刷に移行しており,短納期の小ロット印刷や人件費削減などの効率化に貢献している.京セラドキュメントソリューションズ株式会社は,このような動向に対応するため,2019年に高速カットシートインクジェットプリンタTASKalfa Pro 15000cを,2024年に捺染インクジェットプリンターFOREARTH(フォレアス)を市場投入した.本報では,これら環境配慮型水系顔料インクを用いたデジタル印刷機器について報告する.

  • 池田 征史, 保坂 憲一郎, 飯島 裕隆
    2025 年 64 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2025/02/10
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    高速印刷においてインク液滴の合一を抑制し,速乾を実現する技術として,相変化型UVインクが開発された.相変化型UVインクは,高温では液体状態であり,紙に着弾すると直ちに冷却されてゲル状態となる.この冷却によりインクに添加されているワックスが析出し,インクをゲル状態に変化させる.この特性を利用して,高生産性と高画質を両立させる技術が用いられてきた.

    しかし,冷却されたワックスが画像表面に析出し,ニスやラミネートの適性が低下する課題があった.そこで,AFM(atomic force microscopy,原子間力顕微鏡)を用いて画像の表面を観察し,ワックスの種類とゲル化および表面物性の関係を評価することで,最適なワックスとインクの配合を選択することに成功した.

    今後も,画質と後加工を向上させる技術が進歩し,インクジェットの応用がさらに発展していくことが期待される.

  • 幡谷 航暉, 瀬戸 信二
    2025 年 64 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2025/02/10
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    富士フイルムビジネスイノベーション(株)は2022年にJet Press 1160CFを市場導入した.本装置は2013年にトランザクション市場向けに発売した1400 Inkjet Color Continuous Feed Printing Systemの後継機種であり,高濃度インクによる高品質印刷と最高速度160 m/minの高い生産性を実現している.

    近年は生産現場の環境変化を背景に,プロダクションプリンターへの要求もこれまでの画質や印刷速度といった単純なマシンスペックだけではなく,操作性や省エネ性能,生産性の効率化といった多様なものへと変化している.本報では,このような市場要求を踏まえたJet Press 1160CFの製品コンセプトを紹介するとともに,高速で高品位な描画を可能とするために新たに採用した主要技術の概要,そして2024年8月に新たに上市したマットコート紙対応インクの概要について説明する.

  • 木内 豊, 田中 有周, 久家 秀喜, 馬場 俊彰
    2025 年 64 巻 1 号 p. 43-53
    発行日: 2025/02/10
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    富士フイルムは,印刷展示会Drupa2024でデジタル印刷機Revoria Press GC12500を出展した.本印刷機は,商業印刷向けにB2用紙サイズに適応した世界初の乾式電子写真技術を搭載し,B2サイズを上回るB2 XLサイズ(extra large:最大750×662 mm)の用紙への印刷が可能であることを示した.乾式電子写真方式において,定着プロセスの遠赤外線によるトナー加熱,及び,現像プロセスの磁気ブラシの高密度化により,用紙変形の抑制と画像面内の濃度均一性の確保を可能としB2XL用紙サイズへの適性が得られる.これにより,乾式電子写真でオフセット印刷と同様の品質が得られ,かつ印刷ワークフローの効率化が可能となる.これらの技術を搭載した乾式電子写真方式のB2デジタル印刷機は,オフセット印刷機と共存することで両機をハイブリッドに配置し,印刷業務の効率化や人材確保を容易にして印刷会社の課題を解決する可能性を持つ.

  • 湯淺 周太郎, 青木 悠貴, 小川 禎史, 窪田 啓介, 菅原 祥樹, 徳田 哲生
    2025 年 64 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 2025/02/10
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    RICOH Pro C9000シリーズは,商用印刷市場においてオフセット機からデジタル機への移行を促進するフラッグシップ機として位置づけられている.C9200シリーズでは,坪量52.3 g/m2までの対応を実現していたが,辞書やチラシなどの印刷物においては,坪量がさらに低いニーズが存在し,幅広い印刷物への対応が求められていた.

    最新モデルであるRICOH Pro C9500は,定着方式に新たな構成である摺動定着方式を導入している.この方式は摺動パッドと加圧ローラを用いてニップ部を形成し,品質の向上を図っている.特に薄紙におけるシワや合成紙の波うちによる光沢ムラの改善が実現されており,坪量40 g/m2までの対応を実現した.また,方式変更に伴い新たな課題として耐久性が挙げられるが摺動シートとオイル塗布機構の導入により解決されている.これらの独自の摺動定着技術により,多種多様なメディアへの対応と高い生産性を実現している.本稿では,この定着技術の詳細について紹介する.

  • 岡本 慶子
    2025 年 64 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 2025/02/10
    公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり

    インクジェットプリントの技術は,「インクジェット捺染」,「デジタルテキスタイル」として,テキスタイル・アパレル業界,ファッション流通に進出し,近年存在感を増している.その技術はファッションビジネスのDX(デジタルトランスフォーメーション)に重要な役割を果たす可能性が高い.しかし,この二つの単語の意味するところは,インクジェットプリンターメーカーを含む長いファッション流通の間で,共通の理解がなされているとは言い難い.本稿ではデジタルテキスタイルの広義に意味するところを現在の使用状況からまとめるとともに,日本の近代染織の中で「捺染」という言葉がどの様な染色技法に使われてきたか確認する.日本のファッションビジネスの可能性を展望する中で,インクジェット捺染を単なる技術としてではなく,日本が得意としてきた多品種の高付加価値商品を作り出してきた歴史的染色技法の,その先に位置付けることによって,日本のインクジェット捺染を他国と差別化することを提案する.

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