人間の疲労に関する最初の研究方法論である生理的実体理論が、労働者の疲労研究に有効ではなかった理由を歴史的に明らかにした。この理論では、作業によって労働者の作業能力は必ず低下すること、そして疲労の原因は乳酸などの化学物質の蓄積やエネルギ―消費に基づくと仮定された。労働者の疲労研究は、彼らが職場で作業を行うときモチベーションや欲求などの心理的機能が作用して、彼らの作業パフォーマンスは必ずしも減少するとは限らないことを示してきた。また、その研究は、作業時間の短縮、休憩の挿入、物理的環境の改善、機械の設計の改良などの方策によって、彼らの疲労が軽減することを明らかにしてきた。20世紀前半の終わりには、労働者の疲労の原因は生理的実体理論によって説明できないことが明白になった。
中小運送事業所において運転業務に従事する男性従業員を対象に健康教室を実施し,知識の習得及び行動変容,メタボリックシンドロームの改善等に及ぼす効果を明らかにすることを目的として研究を行った。短期間の健康教室では,参加者の体重コントロールや収縮期血圧を除くメタボリックシンドローム関連指標の改善効果を及ぼすことは困難であったが,食習慣及び昼食摂取状況において各自が実践可能な項目の取り組みの実践を促すことは可能であった。健康教育の機会に恵まれにくい業種への普及を目指すには,経営者等に従業員の健康管理の必要性を認識させるとともに,小規模事業所においても実践可能な負荷の小さなプログラムの検討が重要であることが示唆された。(表4)