母子世帯の貧困原因に関する情報を得るために,母子世帯の貧困率の推定とその要因分析を行う実証研究を試みた。まず,住宅・土地統計調査の所得階級別世帯数の公開データを用いて都道府県別の母子世帯の貧困率を推定し,貧困の地域格差を検証した。次に,母子世帯の貧困の決定要因を探るために,都道府県別の貧困率を目的変数とし,それと何らかの関連が想定される母親の就労など30種の説明変数を用いた非線形回帰分析を実施した。その結果,貧困率の決定要因として,母親の生産工程職,専門・技術職,販売職,サービス職への就業率,臨時雇率,高卒率,幼児世帯率の7種が求まり,これらの要因が母子世帯の貧困率に影響しているという新たな知見を得た。(図3 表6)
1895(明治28)年,「所謂脳膜炎」と仮称される乳幼児の疾病が伊東祐彦らによって報告された。その後,約30年にわたる研究を経て,1923(大正12)年,平井毓太郎によって,その主たる原因が母親の用いる白粉中の鉛白による中毒であることが究明された。著者らは年代を追って,「児科雑誌」により,該疾患に対する研究の足跡を論考してきた。今回は,1930(昭和5)年,鉛白使用化粧品に対する規制が明文化されて以降,1931(昭和6)年から上記規則が実施に移された1935(昭和10)までの5年間に発表された関連文献のうち,前報に取り上げた検査項目(生体試料及び白粉・膏薬中の鉛測定)に続く血液関連の検査,各種生理学的・生化学的検査,骨・歯牙のレントゲン検査,その他の検査を取り上げて論考した。(写真1)