本研究では,十字架状の主観的輪郭図形を用い,歪み錯視(Nakayama&Shimojo,1992)の知覚の剛性を調べた.その結果,知覚の剛性は,十字架の可視部分の長さや,十字架を主観的に補間すべき領域の長さによって変化することが分かった.つまり,可視部分が長くなると,十字架は歪んでいるようには見え難いが,十字架を補間しなければならない領域が長くなれば,歪んで知覚され易くやすくなった.このような知覚特性は,実世界において強度が変わる梁の性質になぞらえると理解しやすい.ただ,今回の実験では形状や幅といった変数も操作したが,その場合知覚の剛性は生じなかった.
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