周波数利用効率を向上させる技術として,複数通信信号のスペクトラムを重ね合わせて伝送するマルチキャリア重畳伝送が検討されている.重畳帯域では,干渉により対数尤度(LLR)を正しく設定できず,特性が劣化してしまう.干渉の影響を低減する方法として,重畳帯域に対応する対数尤度を0で置き換えるFEC (Forward Error Correction:前方誤り訂正)尤度マスクが提案されている.この方法は重畳帯域の検出が必要であり,またチャネル推定誤差を考慮していない.筆者らは文献[6]において,チャネル推定誤差を考慮したLLRを用いた,1パケットを繰り返し復号することで不要信号電力を推定する方法を提案した.この方法では,復号結果からレプリカ信号を作成し,それらをデータシンボルから差し引いた残留電力からサブキャリアごとに不要信号電力を推定するため,重畳帯域の検出は不要であった.しかし,不要信号電力の推定誤差のため,LLRを正しく設定できず,電力推定が完全な場合に比べBERが大きく劣化するという問題があった.本稿では,正しく対数尤度設定をするための不要信号電力推定及び,干渉帯域推定法を提案する.提案法では,1パケット内で繰り返し干渉帯域を推定し,得られた干渉帯域を用い,不要信号電力をパイロットシンボルを用いて推定する.計算機シミュレーションにより,提案手法により干渉検出率が改善し,パイロットシンボルの数を増やすにつれ,BER特性が[6]よりも改善し,不要信号電力推定が完全な場合のBERに近づくことを示す.
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