草と緑
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10 巻
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  • 伊藤 操子
    2018 年10 巻 p. 2-15
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    生活圏において草本植生で被覆されている領域は鉄道,道路等のインフラ緑地,公園,河川敷,空地・耕作放棄地など多岐・広面積に及ぶが,その大半を構成する大型多年雑草(とくに地下拡張型)群は刈り取り管理下でますます勢力を増している.この深刻な事態に対応する雑草管理を策定するなかで,化学的手段の適材適所的採用は不可欠である.とくにセイタカアワダチソウ,イタドリ,セイバンモロコシ等に代表される地下拡張型多年生雑草の的確な制御には,除草剤の特定の機能を活用する以外にない.なぜ,そういえるのか.本稿では,まず,対象であるこの種の多年草の生理・生態,構造上の特徴を紹介し,その生存戦略の中心が地下部の芽からの萌芽・再生にあることを明確にしている.そのうえで,長期にわたってピンポイント的にこの生育反応を阻害することで,最終的に個体全体を死亡させうる一群の除草剤の存在と特性を,さまざまな研究成果をもとに実証している.共通の特性とは地下部への優れた移行性と芽への集積およびその生長点での形態形成・細胞分裂阻害機能である.単なる ‘刈り取り代用’という誤った認識のもとにある化学的手段を,地下拡張型雑草も的確に制御することで植生の質的調節ができる手段と認識し,他手段との時間的・空間的integrationによって緑地植生の改善に活用することの重要性が強調される.
  • 浅井 元朗
    2018 年10 巻 p. 16-30
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    農耕地および緑地雑草の管理者に必要な素養とは,現場においてさまざまな生育段階にある雑草のすがたかたちを識別し,その生活様式―いきざま―を見きわめ,その地(地域と立地環境)での生態が頭に入っている状態,あるいは初見の草種についても同様のことが識別,類推できることである.雑草は生育環境や季節,生育段階などによってそのみかけが変化するため,種ごとの変化や変異の幅を含めて理解する必要がある.また,管理法(耕起,刈取,除草剤処理等)の種類やその時期・頻度の違いによってその場に生育できる種類が大きく異なる.それらを念頭において,出現草種を識別し,管理に対する反応を予測することが重要である.身近な雑草を識別し,その特性を調べるための基本的な技法として,1)採集・標本の作成,栽培およびデジタル画像の収集の利点と留意点,2)学名および分類体系の理解に基づいた科,属の単位での特徴把握,3)幼植物が掲載されている等,有用な雑草図鑑類の特長と目的に応じた活用法,4)Web資料の特長と利用などについて具体的に解説した.
  • 黒川 俊二
    2018 年10 巻 p. 31-38
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    アレチウリは北米原産の一年生ウリ科植物で,つる性で旺盛な生育をするため世界各地の強害雑草となっている.しかし,原産地では大豆の雑草として問題となるものの非農耕地での問題は報告されていない.日本では各地の河川敷や堤防法面,農耕地で問題となっており,生態系等への悪影響から特定外来生物に指定されている.河川敷や川に近い氾濫原が主な生育地となるが,日本では山間部の畜産飼料畑でも多く発生している.これは輸入飼料を介して侵入しているためと考えられている.侵入・分布拡大メカニズムについては,輸入飼料を介して畜産地帯にまん延した後,水系で拡散し,河川敷や水田地帯に流れ込んでいると考えられる.対策に関しては,一旦まん延させると防除が難しいことから,侵入防止を優先する必要がある.そのため,輸入飼料依存型の畜産からの脱却や輸入検疫体制の整備など,侵入源を絶つ対策が求められる.また,最初に到達する飼料畑での対策によって拡散源を絶つこと,水系での分布拡大メカニズムに基づいたリスクマップづくり,リスクが高い場所における集落全体での管理体制の構築などが必要である.
  • 吉岡 俊人, 日下部 智香
    2018 年10 巻 p. 44-53
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    ヒメムカシヨモギは明治初期、オオアレチノギクは大正末期に帰化が確認されたキク科Erigeron属の外来雑草である。ヒメムカシヨモギにはゴイシング,デンシングサ,テツドーグサなどの方言があって、開発に伴って分布拡大した様相が呼称から読み取れる。よく似た両種の識別点は、舌状花が明瞭か否かあるいは茎葉の毛が粗か密かである。どちらも自殖性,多産性,長距離風散布性,易発芽性,短生活期間など放浪種としての性質を有するが、オオアレチノギクに比べてヒメムカシヨモギではいずれの性質もより顕著だと言える。また、オオアレチノギクが越年草であるのに対してヒメムカシヨモギは一越年草である。これらの生存戦略上の差異は、両種の地理的分布や雑草特性、あるいは優占化する植生遷移段階の違いとなって現われている。
  • 伊藤 幹二
    2018 年10 巻 p. 54-65
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル オープンアクセス
    私たち日本人の多くは,生活圏に蔓延する雑草とその景観に馴らされ,雑草の脅威を肌で感じることはありません.今回の報告は雑草に起因する広義の人身障害について,雑草ウオッチャーならびに雑草インストラクターからの情報を衛生害虫の定義になぞらえ‘ヒトの健康または生活環境を害する雑草類’の視点でまとめました.雑草が関わる公衆衛生学的問題として,1.雑草の構成成分によって発症するアレルギー性炎症,接触性皮膚炎,誤食中毒.2.雑草管理作業によって発生する多様な作業傷害.3.雑草が毀損させた造営・工作物機能によって起きる人身事故.4.雑草地が引き起こしている生活環境被害.5.ヒト感染症に係わる昆虫類・鳥類・哺乳類と雑草との相互関係,および病原菌の生態と雑草の役割,以上五つに類型化して事例を紹介しました.これらの雑草リスク情報から,日本における雑草害の現状と大きさ,そして,なぜ世界貿易機関の加盟国(WTO)が雑草を害虫や病害と同じpest(有害生物)として取り扱い(SPS協定)法規制を行っているかが分かります.地球環境の変動と変貌する雑草のリスクに対して私たちは,平常性バイアス(正しく恐れる)を持ち,‘清潔で健康な植生環境形成’を社会の目標に,科学に裏付けされた知識と多種多様な技術を駆使し対応していくことが求められています.
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