草と緑
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8 巻
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 伊藤 操子
    2016 年8 巻 p. 3-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    除草剤の存在は世界の食糧生産を支える上で不可欠だが,生活圏の雑草問題である衛生被害の回避,環境保全,インフラ保護にとっても重要である.しかし,未だに除草剤への拒否反応がはびこる日本の現状に鑑み,今日あるような除草剤がなぜ生まれ,科学・技術としてどう発達し,現在どういう段階にあるのか,世界の流れを振り返る.化学物質で雑草を撲滅するという発想は19世紀中頃から始まり,手取りや機械で防除できない多年草に大量の無機物質の投与が試みられた.一方,本格的な除草剤の発展は,1940年代初頭の選択的有機除草剤2,4-Dから始まった.これは世界の雑草防除自体のありようを一変させた画期的出来事である.その後1080年代にかけて,作物―雑草間の選択性の追求,新規作用点の開発,低処理薬量・低残留性,新規剤型の開発等が世界的に進展し,効果,作物や環境に対する安全性において優れた多くの除草剤が生まれた.しかし,その後徐々に縮小されて今日に至っている.理由は,除草剤のマーケットが成熟し,既剤を上回るものを開発しにくい,安全性試験へのコストの増大,グルホサート抵抗性遺伝子組換え作物の普及で,対抗できるインセンテイブが低下したなどである.化学的防除の著しい発展は,他方で,雑草防除実施者が創意工夫の意思の喪失,簡単に成果が期待できるという思い込みを生んだ.その最も顕著なしっぺ返しは,未だに止むことのない世界的な除草剤抵抗性雑草の増加である.
  • 伊藤 幹二
    2016 年8 巻 p. 12-27
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    雑草を化学薬剤で防除するという技術は,明治政府の近代化施策の一つとして欧米から「雑草と戦う学問」として導入された,しかし,日本においては,有害生物を化学的に制御するという考えが定着することはなかった.戦後,連合国軍総司令部(GHQ)の日本における占領政策によって初めて雑草や害虫を化学的に防除するという技術が紹介された.雑草防除を科学として扱い発展してきた欧米の先端除草剤の紹介は,それまでの労力を媒体とする除草法によって制約されていた日本の小農業栽培を大きく転換する技術として捉えられた.除草剤による雑草防除技術は,模倣、改良,国産化と変化しながら発展し,除草労力の軽減と労働生産性(一人当たりの作付面積の拡大)の著しい改善をもたらすことになる.一方,現在の除草剤の利用は,今日の農業就業人口の減少と高齢化のもとでの農園芸栽培を可能にしているものの,本来の使用目的である生産コストの削減,言い換えれば栽培技術の向上や経済的利益追求のための資材として機能していない現状がある.今私たちに必要なことは,生活圏における雑草害と環境的・経済的損失を認識し,除草剤をはじめ機械やマルチなど雑草防除技術を適切に利用した雑草の最良管理慣行を策定することである.
  • 吉岡 俊人, 高橋 智子
    2016 年8 巻 p. 28-47
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    ヒトと係って生きる植物である雑草は,人為攪乱が引き起こす個体群全滅のリスクを巧妙に分散している.種子の散布による空間的リスク分散,種子の休眠・発芽による時間的リスク分散,表現型変異によるリスク分散,および他種との関係によるリスク分散である.種子散布には一次散布と二次散布があるが,雑草の繁茂を考えるうえで大事なのは意図的および非意図的な人為による二次散布である.種子休眠・発芽に関わる最近のトピックは遺伝子の解明である.種子休眠遺伝子として2006年にDOG1が同定され,種子発芽がABAとGAの遺伝子発現クロストークによって制御されることが明らかになりつつある.雑草個体群の表現型変異は,遺伝的変異と可塑的変異が合わさって生じる.表現型変異の幅が大きければ,生育する場の攪乱に対して,個体群として柔軟に対応できる.除草剤散布や機械除草のように,強度が大きくても,単純で,定期的な攪乱であれば,雑草は,個体群の保有する表現型変異によってそのリスクを分散させ得る.他種との関係によるリスク分散は,言及されることは少ないが,雑草に特徴的で重要な事象である.雑草が,ヒトという他種が創り出す環境において生存しているからである.その典型的事例として,タイヌビエが水田だけに生える秘密が解説される.
  • 中山 祐一郎
    2016 年8 巻 p. 48-58
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
  • 長沼 和夫
    2016 年8 巻 p. 59-63
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    バミューダグラスはギョウギシバ属の総称として使われている。もともとは牧草としての利用だったが、現在では擦り切れに強く回復力が旺盛なので、ゴルフ場やサッカー場のスポーツターフとして広く用いられている。バミューダグラスの代表とも言えるティフトン(ティフトン419)は病気に強く大型なギョウギシバと繊細なアフリカギョウギシバを掛け合わせて、繊細で病気に強いゴルフ場のフェアウエー用のシバとして作出された。現在では暖地型スポーツターフの標準シバとして世界中で利用されている。日本でも戦後ティフトンの栽培が行われるようになり、関東以西の競技場のスポーツターフとして広く利用されている。日本で流通しているティフトンをアメリカに保存されているものと比べてみると、外見やDNAレベルで違っている。生産地で栽培されているうちに取り違いが起きたものと思われるが、日本でも米国のように芝生の品質を保証する機構の設立が望まれる。
  • 芝池 博幸
    2016 年8 巻 p. 64-72
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    「セイヨウタンポポ」の学名は「Taraxacum officinale Weber ex F.H. Wigg.」と表記されることが一般的である。しかし、「外来性タンポポ種群」として「Taraxacum officinale agg.」が用いられる場合もある。この場合、命名者の位置にあるagg.は何を意味しているのだろうか。agg.はセイヨウタンポポが倍数性や無融合生殖によって、形態的に識別が困難な種の複合体(species aggregate)であることを意味している。学名を見ているだけでも、セイヨウタンポポが興味深い特性を持っていることがうかがえる。本稿では、日本列島におけるセイヨウタンポポの侵入・定着・交雑の過程を理解するために、タンポポ属植物の分類や生活史、生殖様式等について解説する。そして、重点的に対策すべき外来種という観点から、外来性タンポポ種群による遺伝的攪乱の問題を指摘する。 <引用文献の差し替え> 「渡邉弘晴 2013. タンポポ 風でたねをとばす植物. あかね書房, 東京.」として引用した文献は、「小田英智・久保秀一 2009. 自然の観察辞典② タンポポ観察辞典. 偕成社, 東京.」と差し替えをお願いします(著者)。
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