岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
75 巻, 2 号
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Review
  • 片岡 竜貴
    2023 年 75 巻 2 号 p. 43-48
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    マスト細胞(肥満細胞)は,教科書的には「循環血液中に存在せず,全身の血管周囲組織中に存在する免疫細胞の一員で,主にTh2反応を担う」「細胞質内の顆粒(酸性プロテオグリカン)が異染性(メタクロマジー)を示す」「膜型チロシンキナーゼ受容体KIT(c-kit・CD117)を強発現する」「高親和性Immunoglobulin E (IgE)受容体(FcεRI)を発現し,それが架橋されることで脱顆粒を行う」「脱顆粒によって,顆粒内容物ヒスタミン・セリンプロテアーゼ(トリプターゼ・キマーゼ・グランザイムBなど)・プロスタグランジン・各種サイトカインが放出され,I型アレルギーの症状を引き起こす」と記載されている.これらの記載より,マスト細胞の研究は一段落したと解釈されることもあるが,現在においてもマスト細胞には問題点や課題が山積している.この綜説ではこの点について紹介したい.
Original
  • Costantine Chasama Kamata, 久保田 美子, 古山 和道
    2023 年 75 巻 2 号 p. 49-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    脊椎動物におけるヘム生合成は5-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS)の2つのアイソフォームにより組織特異的に制御される.全細胞で発現する非特異的アイソフォームのALAS1はミトコンドリアマトリクスのタンパク質分解酵素によりヘム依存性に分解されるが,赤芽球特異的なアイソフォームのALAS2は赤芽球で安定に発現しヘモグロビンにヘムを供給する.このようなALAS1とは異なるALAS2のタンパク質の安定性の詳細を明らかにするため, FLAGタグを付与したALAS1(ALAS1)とALAS2(ALAS2F)の安定性を比較した.その結果,ヘム過剰状態で同じ分解酵素と複合体を形成するにも関わらずALAS2Fの半減期の方が長いことを見出した.さらに,ALAS2F複合体を免疫沈降法により精製した後に質量分析法を用いて解析し,ALAS2Fと結合するタンパク質としてHSPA9を同定した.HSPA9の発現や機能の抑制によりALAS2Fのタンパク質が減少したことから,HSPA9はALAS2タンパク質の分解を抑制し安定化する役割を持つものと考えられた.
  • 鈴木  亘, Costantine Chasama Kamata, 古山 和道
    2023 年 75 巻 2 号 p. 69-79
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    赤芽球特異的5-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS2)は赤芽球におけるヘム生合成系の律速酵素で,ヘモグロビンにヘムを供給する役割を担う.ALAS2遺伝子の発現は転写段階や翻訳段階で制御されることが報告されているが,翻訳後の制御についての情報は限定的である.今回我々はFLAG-tagを付与したALAS2タンパク質(ALAS2F)を線維芽細胞で発現させ,ALAS2Fがどのような分子と複合体を形成するのかを免疫沈降法と質量分析法を用いて明らかにした.そのうちのいくつかのタンパク質についてウエスタンブロット法を用いてALAS2複合体を形成することを確認した.このうち,マトリクスプロテアーゼとして知られるLONP1はALAS2と結合する一方でALAS2の分解には関与しない可能性が高く,翻訳後修飾などの未知の機能を果たしていることが示唆された.今後,ALAS2 タンパク質の機能制御におけるこれらのタンパク質の役割を明らかにすることにより,ALAS2タンパク質の機能制御のメカニズムが解明されることが期待される.
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