マスト細胞(肥満細胞)は,教科書的には「循環血液中に存在せず,全身の血管周囲組織中に存在する免疫細胞の一員で,主にTh2反応を担う」「細胞質内の顆粒(酸性プロテオグリカン)が異染性(メタクロマジー)を示す」「膜型チロシンキナーゼ受容体KIT(c-kit・CD117)を強発現する」「高親和性Immunoglobulin E (IgE)受容体(FcεRI)を発現し,それが架橋されることで脱顆粒を行う」「脱顆粒によって,顆粒内容物ヒスタミン・セリンプロテアーゼ(トリプターゼ・キマーゼ・グランザイムBなど)・プロスタグランジン・各種サイトカインが放出され,I型アレルギーの症状を引き起こす」と記載されている.これらの記載より,マスト細胞の研究は一段落したと解釈されることもあるが,現在においてもマスト細胞には問題点や課題が山積している.この綜説ではこの点について紹介したい.