岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
最新号
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特別講演
  • 石川 健
    原稿種別: 特別講演
    2025 年 76 巻 6 号 p. 191-198
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル オープンアクセス
     胎児・新生児期の環境要因が,成長・発達を経て,成人期以降の健康や疾病に大きな影響を与え,さらに,世代を超えた疾病リスクにも関わるという学説(DOHaD) が提唱され,慢性腎臓病(CKD)にも関与する.サーファクタント補充療法を含む新生児医療の進歩は早産児の死亡率を劇的に改善したが,早産児が成長し年長となった際,CKD・末期腎臓病(ESKD)に進展する例が報告され,新たに取り組むべき課題となっている.当科では,新生児から成人に至る期間,急性腎障害(AKI)・ CKD・ESKD に対し包括的・継続的な医療介入を行っている.新生児期では,AKI に対する腎代替療法(KRT) において,安全性・効率性の確立・機器開発等の研究,CKD 進展のリスク因子解析・フォローアップ体制の構築を行っている.小児期以降では,ESKDにおけるKRT 選択支援・移行期医療を,岩手医科大学附属病院腎センターの他の診療科・多職種の協力で行っている.AKI・CKD・ESKD の影響を最小限にし,子どもたちの健全な成長を促し,社会参加できるよう,医療介入(支援と研究)を今後も続けていく.
  • 岩谷 岳
    原稿種別: 特別講演
    2025 年 76 巻 6 号 p. 199-207
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル オープンアクセス
    がんは遺伝子異常が蓄積して生じる疾患であり,多くのがんで遺伝子検査結果に基づいた治療が行われている.標準治療の終了した進行がん患者に対しては,腫瘍組織や血中腫瘍細胞由来DNA (circulating tumorDNA: ctDNA) を用いて数百遺伝子の同時解析を可能とする「がん遺伝子パネル検査」が推奨治療を見出す手段として実施されるようになった.しかし実際に提案された治療が施行される例は限られている.われわれは遺伝子パネル検査で検出された症例特異的変異から少数を選定しctDNA を用いた定量モニタリングを行うシステムを構築した.このシステムは得られたゲノム情報の血液検査での「追跡」を可能とし,患者に対してタイムリーかつ適切な治療を提供する個別化医療の実現 に寄与することが期待される.
  • 八木 淳子
    原稿種別: 特別講演
    2025 年 76 巻 6 号 p. 209-215
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル オープンアクセス
    虐待や不適切養育,大災害,事件・事故など,子どもが育つ過程で体験するトラウマティックな出来事,いわゆる「小児期逆境体験(Adverse Childhood Experience:ACE)」は,健全な成長発達過程に逆行する有害な体験を指す.米国の疾病予防管理センターが推進する大規模研究ACE Study(Felitti, 1998)において,ACE の蓄積が成人後の健康リスク行動や疾病罹患,寿命の短縮にまで有意に関連することが明らかにされている.東日本大震災後のコホート研究においても,復興過程の様々なストレスが被災地の子どもの発達や精神健康に負の影響を及ぼすことが報告されている.近年,社会問題となっている虐待やドメスティックバイオレンス,頻発する自然災害後の環境の悪化の影響が,人々の健康や能力を脅かすものであること踏まえ,ACE の予防と適切なケアは,精神医学的問題のみならず,医療界を挙げて取り組むべき「健康問題」である.
  • 黒田 英克
    原稿種別: 特別講演
    2025 年 76 巻 6 号 p. 217-223
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル オープンアクセス
    肥満や生活習慣病の世界的な有病率の上昇に伴い,代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)を介した肝細胞癌の発生が問題となっている. この課題に対し,日本肝臓学会は2023 年に早期発見,予防医療推進,地域医療連携を柱とする「奈良宣言2023」を発表した.当科では,この理念に基づいてMASLD 早期診断プロジェクトを実施し,UGAP,BSC,SNR の3 つの超音波パラメータを統合したマルチパラメータ解析による新しい肝脂肪化予測モデルを開発し実践している.この手法は従来の単一パラメータによる評価と比較して統計学的に有意に高い肝脂肪化の診断精度を有し,なかでも軽度脂肪化の診断精度が向上している. また,本診断アプローチは低侵襲かつ高精度であり,奈良宣言2023 が目指す早期発見・予防医療の推進に貢献することが期待される.今後は地域医療連携の枠組みにおける本技術の実装と検証が急務といえる.
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