岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
最新号
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Review
  • 栁川 直樹
    2025 年 77 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    肺癌は癌死の原因の上位を占める高悪性腫瘍の一つである.その中で最も多くを占めているのが肺腺癌であり,その割合は徐々に増加してきている.肺腺癌は多彩な組織像を示す.その大多数を占める浸潤性非粘液性腺癌は5 つの亜型にわけられる.2015 年のWHO分類では5 つの組織パターン(置換型,腺房型,乳頭型,微小乳頭型,充実型)が定められ,最も優位なパターン増殖を持って置換型腺癌,腺房型腺癌,乳頭型腺癌,微小乳頭型腺癌,充実型腺癌と分類され予後と の強い相関を認めた.しかしながら,優位組織パターン以外でも微小乳頭型または充実型の存在や複雑腺系型の出現により,2021 年のWHO 分類では最も優位なパターンと高悪性度パターン(微小乳頭型,充実型,複雑腺系型)を組み合わせた分類が発表され,予後予測により優れていた.肺腺癌の組織形態は予後とダイナミックに関連しており,形態学の有用性を改めて認識するものであった.
Original
  • 熊谷 基, 新居 正季子, 栗原 寛人, 脇本 将寛, 中野 雄介, 大畑 光彦, 鈴木 健二
    2025 年 77 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    当院では2022 年11 月にhinotoriTM(HNT)手術ロボットシステムを導入した.費用対効果を評価するためにHNT と最新のda VinciTM(DVC)モデルであるXi の初期費用を比較した.さらにHNT と2012 年から使用しているDVC Si との間で麻酔管理と術後臨床経過を比較した.2020 年11 月1 日~ 2023 年10 月31 日にロボット支援前立腺摘除術を受けた患者を登録した.手術システムによりHNT(1 群)とDVC Si(2 群)に分類し麻酔管理と術後臨床経過を比較した.HNT の初期投資はDVC Xi と比較して1/3 ~ 1/2 であった.1 群では気腹時間,術中輸液量,レミフェンタニル投与量が2 群と比較して長かった(p < 0.05) が,その他のパラメータには有意差はなかった.HNT は導入費用が低く麻酔管理上DVC と大きな差はなかった.HNT は術後入院期間や手術時間を延長させず,非劣性を示した.
  • 下沖 美里, 馬場 誠朗, 家子 義朗, 田村 明生, 二階 春香, 佐々木 章
    2025 年 77 巻 1 号 p. 23-35
    発行日: 2025/05/01
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
    胃癌術後6 カ月のサルコペニアは予後不良に関連し,サルコペニアを早期に予測することは予後の改善につながる.近年,量的・質的な筋力低下を評価できるレディオミクス解析は注目されている.我々は胃癌術後患者におけるサルコペニアの予測法を検討した.2023 年2月から2024 年1 月までに当院で胃切除術を施行した胃癌患者45 名を対象とした.術前後のCT で腸腰筋と脊柱起立筋の関心領域を作成し,腸腰筋面積(cm2 )/ 身長の2 乗(m2 ) から腸腰筋指数(psoas muscle index, PMI)を算出した.術後6 カ月のPMI で男性6.36 cm2 /m2,女性3.92 cm2 /m2 をカットオフ値として,低値群と高値群に分類し解析した.得られたヒストグラム特徴量のうちヒストグラムの尖度と歪度に着目し,術後3 カ月の脊柱起立筋の歪度と腸腰筋の尖度は術後6 カ月のPMI 低値を予測する因子として最も高い曲線下面積を示した.胃癌術後サルコペニアの予測には術後3 カ月のCT が有効で,レディオミクス解析は予後不良患者に早期栄養介入を図れる.
Case report
  • 清野 精康, 及川 慶介, 越前屋 竹寅
    2025 年 77 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2025/05/02
    公開日: 2025/05/01
    ジャーナル オープンアクセス
     再生不良性貧血(AA, aplastic anemia)に対するエルトロンボパグ(EPAG, eltrombopag)併用免疫療法(IST, immunosuppressive therapy)は,症例が少なく治療報告には限りがある.症例は,13 歳の男子.主訴は発熱と紫斑.好中球数(Neutro) 166/μL,ヘモグロビン(Hb) 8.6 g/dL,血小板数(PLT) 0.2 × 104 /μL と汎血球減少を認めた.骨髄検査で低形成と脂肪髄がみられ,巨核球を認めず血球の異形成はみられなかった.染色体は正常核型で脆弱性がなく,発作性夜間へモグロビン尿症血球は検出されずテロメア長の短縮はなかった.以上のことから,最重症型AA と診断した.患児には同胞がいなかったため,EPAG併用IST を施行した.Neutro やHb およびPLT は,9 カ月で完全寛解の基準を満たした.合併症の出現や再発はなく,日常生活に制限はない.今回,EPAG 併用IST が3 系統の造血回復と生活の質を改善した1 例を経験したので報告する.
正誤表
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