岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
最新号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
特別講演
  • 川田 一郎
    原稿種別: 特別講演
    2026 年77 巻4 号 p. 113-120
    発行日: 2026/03/02
    公開日: 2026/03/02
    ジャーナル オープンアクセス
    肺癌は日本の部位別癌死亡数の第1 位であり,人口の高齢化に伴い死亡数は増加傾向にある.一方,喫煙率の低下や治療技術の目覚ましい進歩により,年齢調整死亡率は1990 年代から減少している.近年,分子標的治療や免疫療法の発展により,バイオマーカーを活用した個別化医療が進み,Ⅳ期肺癌においても生存期間延長と生活の質(Quality Of Life,QOL)改善が示されている.治療方針は外科・内科・放射線科に加え,看護師や薬剤師を含む多職種が参画するキャンサーボードで検討され,集学的治療の最適化が図られる.肺癌の最大の危険因子は喫煙であり,喫煙率の高い当県では依然として肺癌患者が多い.また当県は医師数や呼吸器専門医数は全国と比較して少なく,呼吸器診療の需要増に十分対応できていない現状がある.地域の特性を踏まえた医療体制整備と専門医育成が急務である.安全で質の高い肺癌診療を提供するため,我々は地域医療機関と連携し医療体制の整備に取り組んでいる.
  • 赤松 洋祐
    原稿種別: 特別講演
    2026 年77 巻4 号 p. 121-126
    発行日: 2026/03/02
    公開日: 2026/03/02
    ジャーナル オープンアクセス
    令和6年12月24日発行の厚生労働省のデータでは岩手県における脳血管疾患の年齢調整死亡率が男女ともに全国ワースト1位となった.このデータは令和2年のデータを集計したものではあるが,岩手県はワースト3位の常連でもあり脳卒中診療の大きな課題と考える.私は,脳血管障害に関する基礎研究と臨床研究・診療を主戦場としてやってきた脳外科医として,そして岩手県で生まれ地元の大学の脳神経外科を任せていただいた立場としてこの課題に立ち向かう必然性を感じる.岩手医科大学は,脳神経外科だけでなく脳神経内科・老年化と救急科が連携して包括的脳卒中診療を行える大学病院であり,診療と研究のレベルは全国的にも高いと自負している.では,何故脳卒中死亡率が多いのか?今回の講演では脳神経外科の立場から脳卒中の外科治療の均霑化をテーマに述べさせていただく. “Time is brain.”と言われるように脳血管閉塞後は1分毎に190,000個の神経細胞が死んでいくことが知られている.2015年以降は脳梗塞の中でも最も重篤な脳主幹動脈閉塞に対するカテーテル治療(血栓回収療法)の効果が示され脳卒中診療のパラダイムシフトが起こった.しかし,岩手県では本治療が行える病院は少なく,総務省のデータにある通り2021年(令和3年)までは盛岡と中部地区だけで本治療が行われていたにすぎなかった.しかし,一分一秒を争う致死的な病態であり,県土の広い岩手県においては搬送に時間をかけ ず関連病院で完結すべき疾患である.そこで,当科では2018年より血管内治療専門医の育成を行い,脳主幹動脈閉塞に対する血栓回収療法や脳動脈瘤破裂に伴うくも膜下出血のコイル塞栓術などの脳卒中急性期の血管内治療が行える術者育成に力を入れてきた.その結果,2025年度には当科が関連病院を有さない県南地域を除いて,1時間以内に血管内治療専 門医のいる関連病院に搬送可能な体制を整えることができた.この成果は,何年先に出るかまだわからないが今後も術者育成とともに,地域で活躍できる人材の育成に尽力していきたい.また,大学病院としての使命である研究活動に関しても,先に挙げた日常臨床が高いレベルで均霑化することによってAll岩手のデータベースから独自のインハウス研究を世界に発信していく.外科医にとって逆風が吹く現代において,脳神経外科医を志してくれる心意気のある若者とともに岩手の脳卒中医療の均霑化と脳卒中死亡率の改善に挑戦していく.
  • 鈴森 伸宏
    原稿種別: 特別講演
    2025 年77 巻4 号 p. 127-133
    発行日: 2026/03/02
    公開日: 2026/03/02
    ジャーナル オープンアクセス
    遺伝カウンセリングとは,遺伝学的情報を中心として動的に繰り広げられる心理教育的プロセスである.実際の遺伝カウンセリングでは主に,①生殖・周産期医療,②小児期,③がんゲノム,家族性・遺伝性腫瘍の3つがある.遺伝カウンセリング外来ではクライエントから本人や家系の情報収集をして遺伝医学的な診断と評価をして,家系図を作成,遺伝的リスクを 推定し,遺伝学的検査,出生前診断,保因者診断,発症前診断などについて必要の応じて示し,希望時にはそれぞれの検査のメリット,デメリットについて説明する.クライエントの理解度,背景などに配慮しながら,遺伝カウンセリングして,自律的意思決定支援をするという順序となる.今回,出生前診断を中心に臨床遺伝学と遺伝カウンセリングについて報告する.
  • 仲村 究
    原稿種別: 特別講演
    2025 年77 巻4 号 p. 135-142
    発行日: 2026/03/02
    公開日: 2026/03/02
    ジャーナル オープンアクセス
    2019年12月下旬に中国で存在を確認された新型コロナウイルス感染症 (以下,COVID-19) は,それまでの一般市民の社会生活を大きく変える程の影響を及ぼし,医療・介護施設における感染症の発生や感染対策により強く関心が持たれるようになった.COVID-19に対するパンデミック対応は終了したが,それに伴いインバウンド・アウトバウンドが増加しており,想定外の病原体が国内に持ち込まれる事による感染症アウトブレイクが発生しやすくなっている.また,つつが虫病や日本紅斑熱,重症熱性血小板減少症候群などのダニ媒介性感染症についても注意が必要であり,それらは気候変化の影響も受けて東北地域での発生増加が予測されている.本稿ではCOVID-19への対応経過や最近の知見,輸入感染症の動向,およびダニ媒介性感染症の診療や検査診断における注意点について述べながら,今後の感染症対策において求められる事項を検討する.
feedback
Top