岩手医学雑誌
Online ISSN : 2434-0855
Print ISSN : 0021-3284
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Original
  • 佐藤 千絵, 尾上 洋樹, 中村 世菜, 渡辺 亜紗子, 小岩 佳夏子, 村上 一行, 馬場 長
    2025 年77 巻3 号 p. 85-91
    発行日: 2025/11/01
    公開日: 2025/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    思春期・若年( adolescent and young adult: AYA )世代のがんサバイバーが増加していることに伴い,妊孕性温存療法(fertility preservation therapy: FPT)への取り組みが世界的に広まってきている.岩手医科大学は2016 年よりFPT を実施しているが,取り組み内容への認識と理解は依然として不十分である.本研究は,岩手医科大学でのFPT の現状を評価し,岩手県におけるがん・生殖医療ネットワーク構築に向けての課題を明らかにすることを目的とした.FPT を希 望した症例の平均年齢,原疾患の内訳,紹介科の内訳,受診までの日数や妊孕性温存を実施するまでに要した日数等を検討した.FPT 実施数は年々増加傾向にあったが,紹介元の診療科は偏在がみられた.当院においては,精子凍結症例が胚・卵子凍結症例より多い状態であり,時間的制約や侵襲的な処置が原因と考えた.がん診療に携わるすべての医療従事者のがん生殖に関する知識と理解を強化することがFPT の向上と実施のために重要である.
Case report
  • 西村 和佳乃, 吉田 太郎, 及川 慶介, 遠藤 幹也, 赤坂 真奈美
    2025 年77 巻3 号 p. 93-98
    発行日: 2025/11/01
    公開日: 2025/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    神経芽腫はカテコラミンの過剰分泌や腫瘍による腎動脈狭窄により高血圧を呈することがあるが,報告は稀である.巨大腹部神経芽腫に高血圧を伴った1 歳3 カ月の女児例を経験した.食思不振と失調で前医を受診し,右肋骨弓下に8cm の腫瘤を触知した.造影C T 検査で石灰化を伴う巨大腹部腫瘤を認め,神経芽腫が疑われ当院を受診した.受診時に高血圧を認めた.血中ノルアドレナリンとアドレナリンは正常で,レニン– アンギオテンシン– アルドステロン(RAA)系の亢進を認めた.降圧薬を開始し,腫瘍生検により神経芽腫と診断した後化学療法を開始した.治療により腫瘤の縮小が得られ,それに伴い血圧は正常化した.治療前に血中カテコラミンは正常で,RAA 系の亢進がみられたこと,腫瘍縮小に伴う血圧の改善を認め,腫瘍による腎血管性高血圧と診断した.高血圧を伴う腹部腫瘍では,迅速な原因検索と原疾患に対する治療介入および適切な血圧管理が重要である.
  • 大浦 慎之介, 千葉 祐胤, 藤本 亜美, 菖蒲澤 大樹, 八鍬 一博, 片桐 紘, 堀井 洋祐, 川田 一郎
    2025 年77 巻3 号 p. 99-104
    発行日: 2025/11/01
    公開日: 2025/11/05
    ジャーナル オープンアクセス
    65 歳女性.難治性喘息に対して加療中で,非特異的間質性肺炎(NSIP)として長年経過観察されていた.冬季に呼吸困難を主訴に入院し,胸部CT で間質影の増悪を認めた.末梢血に好酸球増多を認めなかったため,好酸球関連疾患は考慮せず,感染によるNSIP 増悪として治療を行った.数カ月後,再度呼吸困難が出現し再入院となった.この際,末梢血で好 酸球増多を認め,気管支肺胞洗浄液中の好酸球分画は89 . 7%であった.慢性好酸球性肺炎(CEP)と診断し,ステロイドパルス療法を施行したところ,臨床症状および画像所見は改善し,末梢血好酸球数も正常化した.本症例は,NSIP 様の非典型的CT 所見を呈したCEPの一例であり,喘息に対する経口ステロイド治療によりCEP の典型像がマスクされていた可能性が示唆された.
学位報告
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