昭和41年から58年までに岩手医科大学歯学部小児歯科を受診した患児, ならびに昭和57年の盛岡布における3歳児歯科健診を受診した幼児3043人 (男1553人, 女1490人)の中から, 145人の乳歯癒合歯, ならびに乳歯先天性欠如歯について, 病態写真, 石膏模型, X線写真を用いて検討を行った結果, つぎのような結論を得た。
1)乳歯癒合歯の発現頻度は, 診査総数の4.53%であった。また, 性差はみられなかった。
2)乳歯癒合歯の発現部位は前歯部のみで, その91.2%が下顎に発現したが, 左右差はみられなかった。
3)歯種別ではAB癒合歯69人, BC癒合歯64人と多く, AB癒合歯は12人と少なかった。また, AB癒合歯は男児に有意に多く発現していた。
4)両側性の発現例は女児に多かった。
5)癒合形態を完全型と不完全型に分けると, その発現頻度には差がなかった。また, 歯冠外形と歯髄腔との関係を4型に分類したところ, 完全型64歯は全て1型 (髄室, 根管がともに1つのもの) を示し, 不完全型80歯中47歯がIV型 (髄室, 根管ともに2分するもの) を示した。
6)後継永久歯は, 癒合歯を有する全症例の53.7%において欠如を示した。その内訳はBC癒合歯39.6%AB癒合歯7.4%, AB癒合歯6.7%であった。
7)乳歯先天性欠如歯は7人 (0.23%) に発現し, 癒合歯に比較して非常に低い値であった。しかも, その後継永久歯は全例において欠如, または癒合を示していた。
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