岩手医科大学歯学雑誌
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12 巻, 1 号
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原著
  • 武田 泰典, 中屋敷 修, 八幡 ちか子
    1987 年 12 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 1987/04/30
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    厚生省特定疾患シーェグレン病調査研究班の診断基準により確実例と診断されたシェーグレン症候群患者14名から採取された剥離口腔粘膜上皮細胞を用いて蛍光抗体直接法により IgA, IgG, IgM, C3 の沈着の有無を検討した。なお, 対照には5名の健常人から得られた剥離口腔粘膜上皮細胞を用いた。 その結果, シェーグレン症候群14例中5例が IgG に, 1例が IgG と IgA に陽性を呈した。対照群5例はすべて陰性であった。Ig が陽性であった6症例の病型別内訳は, 乾燥症候群単独例が4例, RA 合併例と MCTD 合併例とがそれぞれ1例ずつであった。

    以上の結果より, 剥離口腔粘膜上皮細胞は採取が容易なためにさらに症例を重ねて本法の診断的価値を検討する意義があるものと考えられた。

  • 橋場 友幹
    1987 年 12 巻 1 号 p. 5-23
    発行日: 1987/04/30
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    口腔領域における骨創治癒過程を骨塩量の観点より検索するため, 犬抜歯創治癒過程を対象とし125I-photon absorptiometryにて抜歯直後より84日目まで検索した。また, photodensitometryならびに組織学的検索結果と対比し検討した。

    犬抜歯創部骨塩量は125I-photon absorptiometryにより0.270~0.720g/cm2の値を示し, 観察期間を通して根尖部が高く, 次いで中央部, 辺縁部の順に低い値を示した。抜歯創部骨塩量は雄後3日目, 7日目の減少傾向から漸次増加し, 抜歯後84日目には辺縁部への骨塩沈着および中央部~根尖部での改造機転により骨塩量の均一化を呈し恒常状態への移行をうかがわせた。また, 骨塩量の経時的変化は組織学的にみた骨組織所見の変化の傾向とも一致し, photodensitometryの結果はその経時的変化において125I-photon absorptiometryによる骨塩量と同様の傾向を示した。

  • 船木 康博
    1987 年 12 巻 1 号 p. 24-34
    発行日: 1987/04/30
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    可移植性自然発生扁平上皮癌を担った近交系WHT/Htマウスの担癌早期における細胞性免疫動態について検討を行った。ブタノール処理により同癌細胞から膜蛋白質の抽出を試み可溶化抗原の作製を行った。非担癌マウス脾リンパ系細胞と抽出液とのあいだで, リンパ球一腫瘍細胞混合培養反応(Mixed lymphocyte-tumor culture reaction, 以下MLTRと略す)を行い, リンパ球反応が認められたことから抽出液には腫瘍関連抗原の存在が示された。そこでMLTRにおける至適条件の検索を行い, 培養日数は3日, 脾リンパ系細胞数は1×106個/ml, 可溶化抗原蛋白質濃度は0.13μg/mlと設定された。同条件下で担癌1日目から腫瘍が触知可能となる担癌9日目にかけ連日リンパ球反応の推移を観察した。免疫応答は担癌1日目で一時低下したが, 担癌4日目にかけ亢進し, 以降は漸次低下傾向を示した。以上より, 自然発生癌を担ったWHT/Htマウスにおいて担癌早期より負の免疫応答が出現することが示唆された。

  • 菅原 教修, 今村 伸一, 摂待 友宏, 大阿久 国賢, 清水 隆公, 熊谷 敦史, 中林 良行, 松丸 健三郎, 上野 和之
    1987 年 12 巻 1 号 p. 35-45
    発行日: 1987/04/30
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    歯肉や口腔粘膜の創傷に対する刺激を物理的に遮断し, あわせて薬剤の滞留性を向上させることを目的として, 新しく開発された接着性医療用品SI-3906の有効性および有用性について臨床的に検索した。被験者は, 岩手医科大学歯学部付属病院第2保存科を訪れた患者のうち, 口内炎8例, 知覚過敏症8例, スケーリング処置6例, 歯周外科処置7例, その他の損傷6例の計35例である。その結果は次の通りである。

    1. SI-3906の平均付着時間は, 最短はその他の損傷例の3時間43分, 最長はスケーリング処置例の5時間38分であり, 全症例の平均付着時間は4時間56分であった。

    2. SI-3906を単独で適用した際の平均付着時間は4時間27分で, 一方薬剤と併用した際は5時間29分であり, 薬剤併用例で1時間程長かった。適用部位別平均付着時間は, 歯肉6時間強, 舌3時間15分, 口唇3時間弱であった。

    3. 有効性は, 処置日では28例中26例(93%), 再診日では35例中全例に認められた。

    4. 副作用はいずれの症例においても認められなかった。

    以上の結果より, SI-3906は適用した35例中34例(97%)に有用性があると判定された。

  • 板垣 光信, 梅原 正年, 武田 泰典, 鈴木 鍾美
    1987 年 12 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 1987/04/30
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    オーバーデンチャーのための生活歯根骨内埋伏法について, 歯の切断面を粘膜骨膜弁で完全に被覆する方法を考案し, イヌの前臼歯を用いて, その組織所見を観察した。その結果, 歯根埋伏後28日目では被験歯の約半数で歯髄切断面は新生象牙質により覆われていた。また, 歯髄切断面に象牙質の新生のみられなかったものでも, 何らの病的所見は認められなかった。

    埋伏後55日では歯髄切断面を覆う象牙質はさらに厚くなり, その細管構造も規則的であった。歯髄切断面の象牙質の形成量が少ない例では, 切断面のやや上方に多くの梁状骨が形成されていた。埋伏後28日経過例および55日経過例のいずれにおいても治癒経過の不良と思われるものはなかった。以上の結果より, 歯の切断面を粘膜骨膜弁で被覆することは生活歯根骨内埋伏法をより確実にする有用な方法と考えられた。

  • 歯肉溝剥離上皮細胞と好中球の動態について
    塩山 司
    1987 年 12 巻 1 号 p. 52-62
    発行日: 1987/04/30
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    歯肉溝内部の微小な病態変化を経時的かつ客観的に把握することを目的として, 歯肉溝内細胞成分のうち歯肉溝剥離上皮細胞と好中球の量的ならびに質的検索を行った。 歯肉溝内細胞成分の採取方法は改良を試みた歯肉溝内洗浄法と歯肉溝内擦過法とした。 本法により得られた細胞成分の動態と病理組織所見とを比較検討した。

    その結果, 剥離上皮細胞は上皮細胞間隙の拡大がある場合に増加が認められた。 また炎症の程度により染色態度の異なった各型の細胞の出現傾向を示した。 好中球は細胞間隙の拡大, 毛細血管の拡張が認められたり, 好中球の浸潤が広い範囲にみられると著しく増加していた。

    以上のことから, 病理組織所見の状態が歯肉溝内細胞成分に十分反映していることがわかった。 また本装置を使用し歯肉溝内細胞成分の採取を行い評価することは, 臨床的な判定を行う場合に有効であっ た。

  • 山ロ ー成
    1987 年 12 巻 1 号 p. 63-78
    発行日: 1987/04/30
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    ラット下顎部への照射が, 移植骨の血管再構築におよぼす影響を追求するために, 80匹には電子線(5Gy, 10Gy, 20Gy, 30Gy) 照射後14日目に, また8匹には照射なしに架橋的肋骨移植を行い, 墨汁透明とH.E.染色標本の作製, 血管面積率の計測を行った。体重は5Gyと10Gyでは単峰性に, 20Gyと30Gyでは二峰性に減少した。移植後7日目, 14日目では緻密骨に吸収窩がみられ, 新生血管がフォルクマン管とババース管から骨髄内に侵入, 増殖し, 新生骨を形成した。30日目では移植骨内外側へ新生骨が添加し, 骨髄腔は狭窄され, 架橋がみられた。60日目では骨膜部の血管新生と新生骨の形成が活発となり, 架橋骨は太く, 骨髄腔は広く, 血管は類洞様構造を呈し, ほぼ血管再構築の様相がみられた。 移植骨の緻密骨と骨髄の血管面積率は非照射群および照射群とも7日目, 14日目, 30日目までは漸増し, 60日目では減少するが, 照射群の骨髄のみは増加する, などの傾向を示した。一方, 非照射群に比べて照射群では5Gyと10Gyの多くは低値の傾向を示すが, 20Gyの多くは非照射群の値と近似していた。

症例報告
総会記事
岩手医科大学歯学会第12回総会抄録
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