岩手医科大学歯学雑誌
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13 巻, 1 号
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原著
  • 精神科の立場から
    三田 俊夫
    1988 年 13 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1988/04/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    過去5年間に歯科より精神科に紹介された患者は31例あり, その内訳は18例は精神科治療中の患者の精神科管理の相談を目的とし, 残り13例は歯科治療, 即ちBridge, Crown装着後に生じた神経症症状を呈した患者であった。後者の患者は, いわゆる歯科領域では歯科心身症あるいは顎機能異常症の範疇に入る症例であった。著者は顎機能異常症の一例を精神科医の立場から分析し, 最近の診断学的な捉え方, そのような患者の扱い方あるいは, 治療の導入について述べた。さらに医科および歯科学の専門分野にまたがる症例に注目し, すなわち心身にまたがる症例をどのように扱うかを取り上げ検討し, 各分野の相互協力により, 包括的な捉え方が必要であることを精神科の立場から考察した。

  • 佐々木 実, 金子 克
    1988 年 13 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 1988/04/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    Staphylococcus epidermidis のslime産生性とS. epidermidis のプラスチックシャーレへの付着性および菌体表面の疎水性との関係, さらにS. epidermidisのslime中に特徴的に認められる糖タンパク質について検討した。その結果, S. epidermidis のslime産生性とプラスチックシャーレへの付着性, 菌体表面の疎水性との関連は認められず, S. epidermidis slime産生株の非洗浄菌 (菌体表面を洗浄しなかった菌) はslime非産生株にくらべ, 付着性が弱く疎水性も低かった。S.epidermidis slime産生株の菌体外産生物質(slime)と S. epidermidis非産生株の菌体外物質をくらべると, slime産生株では明らかにタンパク質が増量していた。また, それぞれの菌体外物質をSDS-PAGEによる分析を行ったところ, slime中に特徴的なタンパク質のバンドを認めた。このタンパク質はPAS陽性の糖タンパク質であり, 分子量約24,000であった。

    一方, マウスの感染実験で S.epidermidis slime産生株およびslime非産生株のvirulenceをマウスに対する致死性を指標として検討したところ, S. epidermidis slime産生株のvirulenceが明らかに強かった。

    これらのことから, S. epidermidis のslimeに特徴的にみらる分子量約24,000の糖タンパク質は S. epidermidis の病原性に深い関わりのあることが示唆された。

  • 本田 寿子, 金子 克
    1988 年 13 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 1988/04/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    健康者, 歯周炎患者, 若年性歯周炎患者からHaemophilus actinomycetemcomitansを分離し, 各種薬剤の感受性を比較検討した。健康な成人65名の歯垢と唾液, 歯周炎患者25名, 若年性歯周炎患者5名の歯垢からH. actinomycetemcomitans 54株を分離し, 日本化学療法学会標準法に基づいてMICを測定した。使用薬剤はpenicillin系薬剤 (PCG, ABPC, AMPC, CBPC, SBPC, PIPC, APPC), cephem系薬剤 (CET, CER, CZX, CCL, CDX, CXM, CTX, CAZ, CPM, CFIX, CMZ, CTT, CMNX, LMOX), aminoglycoside系薬剤 (KM, AMK, SISO), tetracycline系薬剤 (TC, DOXY, MINO), macrolide系薬剤 (EM, RKM, MDM), pyridone carboxylic acid系薬剤 (NA, PA, PPA, NFLX, OFLX, ENX, CPFX), aztreonam, chloramphenicol, sulfamethoxazoie-trimethoprimの計40剤である。H. actinomycetemcomitansはcephem系薬剤のCMZ, CMNXでMIC50 0.025~0.1μg/ml, MIC90 0.05~1.56μg/ml であり, pyridone carboxylic acid系薬剤のうちOFLX, ENX, CPFXのMIC50は0.1~0.2μg/ml, MIC90は0.1~0.39μg/mlと高い感受性を示した。一方, sulfamethoxazole-trimethoprim合剤に対するMIC50は1.56~3.13μg/ml, MIC90,は12.5~25μg/mlと低い感受性であった。若年性歯周炎患者由来のH. actinomycetemcomitansはPIPC, CMX, CMZ, KM, AMK, SISO, PA, PPAへの感受性が他の群より低かった。これは若年性歯周炎患者から分離したH. actinomycetemcomitansが治療のためSISOなどの投与を受けていた事がaminoglycoside系薬剤の感受性低下の一因になった事も考えられる。

  • 粘膜骨膜弁と歯肉粘膜弁との比較検討
    板垣 光信
    1988 年 13 巻 1 号 p. 25-41
    発行日: 1988/04/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    顎堤の骨吸収防止のための生活歯根骨内埋伏法の改善を目的として, 切断歯根面を粘膜骨膜弁で被ったもの(実験群)と粘膜弁のみで被ったもの(対照群)との治癒経過の差異について比較検討した。実験には1歳3ヵ月前後の純系ビーグル成大8頭の前臼歯, 計146歯根を用いた。観察期間は術後1, 3, 6, 12, 24週とし, 治癒経過を病理組織学的に検索した。その結果, 術後の炎症性反応と肉芽組織の形成はともに実験群においてより軽度であり, かつ早期に線維化する傾向がみられた。また, 切断面上部に形成された新生骨組織は実験群においてより早期に出現し, とくに6週目以降ではその形成量が対照群と比較して著しく増加していた。なお, 歯髄切断部には種々の程度に新生象牙質が形成されていたが, 切断面を被う骨組織の形成が顕著な例では新生象牙質の形成は少ない傾向にあった。

    以上の結果より, 生活歯根骨内埋伏法において, 切断歯根面を粘膜骨膜弁で確実に被うことは安定した治癒経過がより早期に得られるものと考えられた。

  • 武田 泰典, 鈴木 鍾美, 福田 容子, 戸塚 盛雄, 工藤 啓吾, 藤岡 幸雄, 関山 三郎
    1988 年 13 巻 1 号 p. 40-51
    発行日: 1988/04/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    過去22年間に岩手医科大学歯学部付属病院で取り扱った小唾液腺に生じた多形性腺腫について, その実態を調査した。その結果, 小唾液腺腫瘍110例中, 多形性腺腫は67例60.9%を占めていた。また, 良性腫瘍のみでは多形性腺腫は98.5%とそのほとんどを占めていた。発症年齢は16歳から93歳までで, 平均46.1歳であった。また, 男女比は2:3で, 女性例がやや多かった。多形性腺腫の最も多くみられた部位は硬口蓋で, 次いで軟口蓋, 頬部と上口唇の順であった。

  • 深澤 肇, 関山 三郎, 矢川 寛一
    1988 年 13 巻 1 号 p. 42-46
    発行日: 1988/04/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    著者らは, 1980年にWHT/Htマウスを使用して, MLTRにより腫瘍の増大にともない, 担癌リンパ球の腫瘍抗原の認識力が低下することを示した。さらに, 癌細胞の免疫学的特異性を証明するには, 発癌個体の自家癌に対する免疫の成立を証明する事が必要であると考え, 自家腫瘍細胞を用いて作成した免疫マウスに, 同系の自家腫瘍細胞を再移植し, その増殖状態を観察した。

    武田式結紮開放法, Klein法, ホルマリン処理, 同マウスの継代培養腫瘍細胞, 60Co照射処理細胞により免疫マウスを作り, 自家腫瘍細胞を再移植した。結果: 結紮開放法においては, 免疫マウスは作り得なかった。それ以外の免疫方法においては, 対照に比していずれも再移植した自家腫瘍の出現時期は遅延し, 更に生存期間も延長した。特にKlein法らの方法においては, 実験群の1/3に自家腫瘍の出現がみられなかった。しかし, その他のマウスには, いずれも再移植した自家腫瘍の出現をみた。

    以上より自然発生癌に対する自家免疫の存在が想定された。

    さらにFITC標識抗マウスC3を使用し, 腫瘍移植後7, 14, 20日の3時点で, 癌先進部位について蛍光抗体法にて観察した。7および14日目で蛍光を認めたが, 20日目では認めなかった。これにより癌に対する宿主の免疫反応は, 初期に惹起されるが, 腫瘍の増大に伴って担癌生体は免疫寛容の状態に陥るものと考えられた。

症例報告
総会記事
岩手医科大学歯学会第13回総会抄録
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