岩手医科大学歯学雑誌
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13 巻, 3 号
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原著
  • 熊谷 啓二, 松木 和彦, 南舘 祐二, 八重樫 寿人, 岩淵 壮之助, 大川 義之, 本間 秀裕, 小倉 一也, 長谷 剛史, 山田 芳夫 ...
    1988 年 13 巻 3 号 p. 197-205
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    著者らは, 顔面各部が経年的にどのように変化するか, 20~60歳代の健常人184名を対象として顔面のモアレ縞を幾何学的に分析し, 顔貌の経年的変化について検討した。

    男性の20~30歳代において年齢とBH, LHとの間に負の相関関係を認めた。また, 男性の40~60歳代において年齢とBH, LHとの間に正の相関関係を認めた。このことより, 30歳代までは表皮と真皮の薄い部分に脂肪の蓄積が起こり, 骨構造を修飾するような外形の変化として現れ, 比較的ふくよかな顔貌になっていき, 40歳代以降は脂肪の減少, 皮膚の萎縮などにより骨構造の外形に皮膚を弛ませたような, 頬骨部が突出した, 鼻唇溝が深い老人的顔貌に変化していくものと考えられた。また, 第1報と同様に高齢者においてもBHとLHの間に正の相関関係を認めたことより, 無歯顎になっても比較的変化しにくい頰部の豊隆状態は, 無歯顎になり下顔面が変化している患者の審美性, とくに口唇周辺の豊隆を回復する際の目安となりうると思われた。

  • 佐々木 実, 金子 克
    1988 年 13 巻 3 号 p. 206-211
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    Staphylococcus epidermidis の産生するslime中にみられる糖タンパク質の生物学的活性を明らかにする目的で, S. epidermidis の産生する活性物質の諸性状を比較検討した。S. epidermidis のslime産生性とマウスに対する致死性との間には相関が認められ, S. epidermidis slime 産生株の菌体外物質(slime)中には分子量約24,000の糖タンパク質が認められた。また S. epidermidis のslime産生性とプロテアーゼ活性との間には相関がみられたが, 溶血毒, スパーオキシドジスムターゼ活性との間には関連は認められなかった。

    以上のことから, S. epidermidis のslime中に認められるこの活性が S. epidermidis のvirulenceに深く関与しているものと推察された。

  • 本田 寿子, 金子 克
    1988 年 13 巻 3 号 p. 212-221
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    健康な成人118名の歯垢から分離・同定した Capnocytophaga ochracea 95株について, 日本化学療法学会標準法に基づきMICを測定した。使用薬剤はpenicillin系薬剤 (PCG, ABPC, CBPC, SBPC, TIPC, PIPC, AMPC, ASPC), cephem系薬剤 (CER, CEZ, CEX, CCL CDX, CXM, CAZ, CZON, CPIZ, CPM, CFIX, CFX, CMZ, CTT, LMOX, CBPZ, CMNX), β-lactamase阻害剤 (CVA/AMPC, SBT/CPZ) aminoglycoside系薬剤 (GM, AMK), tetracycline系薬剤 (TC, DOXY, MINO), macrolide系薬剤 (EM, MDM, RKM), 合成抗菌剤 (ST, MTZ), pyridone carboxylic acid系薬剤 (NA, PA, PPA, NFLX, OFLX, ENX, CPFX), imipenem/cilastatin sodium, aztreonam, chloramphenicolの合計48剤である。C. ochracea はpenicillin系薬剤, cephem系薬剤 (CAZ, CZON, CPIZ), IPM/CS, AZT, new quinolone系薬剤 (NFLX, OFLX, ENX, CPFX) に良い感受性を示した。なかでもIPM/CS(MIC≦0.05μg/mlで95株[100%]が感受性)は優れていた。しかし, penicillin系薬剤のABPC, cephem系薬剤のCER, CEZ, CTT, LMOX, CBPZ, CMNX, aminoglycoside系薬剤, pyridone carboxylic acid系薬剤のNA, PA, PPA, ST合剤には低い感受性を示し, 耐性株もみられた。

  • 細川 貢
    1988 年 13 巻 3 号 p. 222-236
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    歯肉を中心とした外傷後の歯周組織の再生機構を検討するために, 歯肉と歯質の両者を削除し, その治癒経過の観察を試みた。

    実験には8週齢Wistar系雄性ラットを用い, ダイヤモンドポイントにて上顎第一臼歯の辺縁部歯周組織に創傷を与えると同時に, 象牙質が露出するように歯質をも削除し, 露出象牙質面に対する歯周組織の治癒進行過程を, 光顕的, 電顕的に観察した。

    創傷付与後3~5日目にかけて, 歯肉創面は上皮で覆われるとともに, 再生上皮は歯肉溝上皮と付着上皮に分化した。10~14日目になると再生上皮と露出象牙質面との間に上皮性付着が形成され, 露出象牙質面は付着上皮により覆われた。その後, 付着上皮の位置が歯冠側に向かって移動し, 象牙質削除面に結合組織性付着が形成された。また, この様な部分には膠原線維を埋入したセメント質様構造物の形成も認められた。

    以上の結果より, ラットにおいて, 健常歯周組織に歯質削除をともなう外傷を付与した場合にも, 歯周組織はほぼ完全に再生し, 露出象牙質面には上皮性付着とセメント質様構造物の新生をともなった結合組織性付着が形成されるものと考えられた。

  • 中屋敷 修
    1988 年 13 巻 3 号 p. 237-251
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    ヒト顎下腺の手術摘出材料を用い, 微小石灰化物 (以下CP) の出現状況とその組織学的性状, 形成初期の唾石との関連を検討した。CPの多くは類円形あるいは不定形であり, 均一無構造を呈した。 組織化学的所見より, CPの主成分は燐酸カルシウムと粘液多糖類と思われた。 CPは顎下腺の退行性変化が高度になるにしたがって出現頻度が高くなる傾向にあった。CPの出現部位は導管腔内, 導管上皮内, 導管上皮下, 間質内の4か所であった。さらに, 上皮細胞胞体内には微細顆粒状のCPがみられた。導管の部位別にCPの出現状況をみると, 線状部導管での出現頻度が最も高かった。形成初期の唾石は, 定型的な唾石の組織所見を呈するものと, 不定型な構造を呈するものとがあったが, いずれも組織化学的所見はCPとは異なっていた。エネルギー分散型X線分析装置により元素分析をした結果, CPではカルシウムと燐が, 形成初期の唾石の高石灰化部ではカルシウム, 燐, カリウムが, 低石灰化部ではカルシウム, 燐, 硫黄が検出された。形成初期の唾石の高石灰化部のカルシウムと燐のエネルギー強度は, それぞれCPよりも高かった

    以上の結果より, ヒト顎下腺におけるCPと唾石の成因との間には直接的な関連はないものと推察された。

  • 佐藤 理一郎
    1988 年 13 巻 3 号 p. 252-261
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は辺縁歯肉の色調を的確に評価するうえで重要な歯肉の光透過性に関する組織学的要素ならびに歯肉色の色成分を分析, 検討することである。

    実験材料として雑種成犬を用い, 口腔生体顕微鏡所見から健康と判断された辺縁歯肉を対象とし, メラニン沈着の認められる群と認められない群に分けた。測色にはライトガイド方式色差計CD-270を用い, 白色および黒色の色票を歯肉溝内に挿入した際の色差dEを光透過性の程度を表す指標とした。

    光透過性に及ぼす組織学的要素として, Melanin群ではメラニン沈着密度および毛細血管面積密度が, Non-melanin群では毛細血管面積密度が最も関与していた。光透過性に及ぼす歯肉色の色成分としてNon-melanin群では明度および彩度が関与していたが, 色相との関連は認められなかった。Melanin群ではいずれの色成分においても一定の傾向はみいだせなかった。

  • Alkaline phosphatase 活性に対する細胞密度ならびにprostaglandin E2の影響
    永井 雅純
    1988 年 13 巻 3 号 p. 262-268
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    18日鶏胚大腿骨および脛骨の骨梁面より二つのcell populationを分離, 培養しそのアルカリフォスファターゼについて検討した。今回分離, 培養した細胞のうち, 酵素消化の前半に得られた細胞は, 比較的高いアルカリフォスファターゼ活性をもっていた。また,プロスタグランジンの生合成を阻害するインドメタシンを加えると, アルカリフォスファターゼ活性は有意に低下し (p〈0.01), インドメタシンと共にプロスタグランジンE2を添加するとその活性は僅かに増加した。さらに, この細胞は増殖が盛んなことから未分化な骨原性細胞であると思われる。一方, 後半に分離されてくる細胞は, 一般に骨芽細胞様の細胞として広く実験に用いられている頭頂骨由来の細胞よりもアルカリフォスファターゼ活性が高かった。この細胞は, インドメタシンによるアルカリフォスファターゼ活性の低下が少いことや, プロスタグランジンE2に応答して活性は有意(p<0.01)に増加することから, より分化の進んだ細胞であることが示唆された。

    DNAあたりのアルカリフォスファターゼ活性の強さは, 培養細胞密度に依存しており2cm2の培養面あたり3.0-4.0μgDNAのときに最も活性が高かった。

  • 岩崎 浩二郎
    1988 年 13 巻 3 号 p. 269-282
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    犬顎骨に実質欠損を伴う骨創を作製し, その治癒過程を125I-photon absorptiometry, photodensitometry, 三次元的画像表示ならびに組織学的検索と対比し術後1週目より24週目までの治癒経過を検討した。

    骨創部骨塩量は, 125I-photon absorptiometry により0.058~0.197g/cm2の値を示した。骨塩量は術後1~2週目で減少傾向がみられたが, 3~8週目にかけて逆に増加傾向を示した。8週目以降は緩慢な変動をみせながら, 16週目で最高値を示すものの, 骨梁の粗鬆化に伴い, 24週目では減少傾向を示した。骨塩量の経時的変化は, 組織学的にみた骨組織所見及び三次元的画像表示の変化の傾向とも一致し, photodensitometryの結果と高い相関性を示した。

  • 小野 実
    1988 年 13 巻 3 号 p. 283-289
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    近交系WHT/Htマウスに自然発生した可移植性扁平上皮癌のブタノールによる粗抽出液(crude butanol extract)の性状について検索を行った。DEAE-Sephacel column chromatographyにより粗抽出抗原を部分精製するとNaClの濃度により4つの画分に分離溶出された。各画分は, リンパ球-腫瘍抗原混合培養反応(Mixed lymphocyte-tumor antigen culture reaction)では, PⅢ画分で, 蛋白量が101μgの時, 有意に[3H]-thymidineの取り込みが高値を示した。 PⅢは, pH約6.6で弱酸性の蛋白であることが示唆され, かつ, SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分析した結果その蛋白は, 約18Kであった。また, PI, PIVで[3H]-thymidineの取り込みが抑制されたことよりPⅢにはimmunogenic antigen PI, PIVにはsuppressogenic antigenの存在が示唆された。

  • 久慈 昭慶
    1988 年 13 巻 3 号 p. 290-307
    発行日: 1988/11/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    ハムスター誘発舌癌における腫瘍血管内皮細胞の物質透過性を, 超微形態的に検討した。腫瘍形成後, ヘパリンとハイドロコーチゾンを1日1回1週間皮下投与し, 対照には生理食塩水を同様に投与した。物質透過を観察するため, トレーサーとして血管内にタンニン酸を注入し, 注入開始から15秒後に2倍希釈のKarnovsky固定液により潅流固定を施し, タンニン酸透過部と内皮細胞の超微形態を観察した。

    fenestra型内皮細胞は下記の3群すべてにみられ, 少量のタンニン酸がこのfenestra直下の血管外に漏出していた。しかしfenestra型内皮細胞の細胞間接合部では, ほとんどタンニン酸の漏出はみられなかった。これに対し, 非fenestra型内皮細胞のうち, 対照群とヘパリン群では内皮細胞が不整形で多数のluminal projectionを有するものがあり, その内皮細胞の細胞間接合部を通って多量のタンニン酸の漏出がみられた。また, ハイドロコーチゾン群では多量のタンニン酸の漏出は, 内皮細胞が紡錘形で, luminal projectionのほとんど存在しない内皮細胞の細胞間接合部にみられた。

    これらの相違から多量のタンニン酸漏出は, 対照群とヘパリン群では新生されて間もない内皮細胞の細胞間接合部にみられるのに対し, ハイドロコーチゾン群では活動の抑制された内皮細胞の細胞間接合部にみられることが示唆された。

症例報告
総索引(総目次)第13巻(昭和63年)
著者名索引 第13巻(昭和63年)
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