岩手医科大学歯学雑誌
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14 巻, 2 号
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原著
  • 八幡 ちか子
    1989 年 14 巻 2 号 p. 79-91
    発行日: 1989/08/31
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    頸部廓清手術材料284例に含まれていたリンパ節828個を用い, これらにおける甲状腺組織の出現状況を病理組織学的に検索した。リンパ節内甲状腺は直径0.2mm前後の微小結節であり, これらの結節周囲には被膜様構造はほとんどみられなかった。甲状腺組織を構成する濾胞は円形で, 濾胞内にはコロイドを満たしていた。乳頭状構築を呈する濾胞は認められなかった。濾胞上皮細胞は正常の甲状腺でみられるものと同様の所見を呈していた。リンパ節内において, 甲状腺組織は被膜ちかくのリンパ髄あるいは被膜内にみられるものが多かった。リンパ節内甲状腺組織は11例(3.87%)の13個(1.57%)にみられた。解剖学的部位別では, 顎下リンパ節で1個(0.66%), 浅頸リンパ節で2個(0.90%), 深頸リンパ節で10個(2.69%)であった。なお, 同一症例で複数個のリンパ節内に甲状腺組織をみたものが2例あった。なお, 異型性を伴った過形成像を呈する甲状腺組織が2個のリンパ節にみられた。酵素抗体法によってthyroglobulin, triiodothyronineならびにthyroxineのリンパ節内甲状腺組織における局在を検索した結果, 約半数で軽度ないし中等度陽性を呈した。

  • 小豆島 正典, 六本木 崇, 鈴木 美智恵, 佐々木 統, 後藤 浩美, 大友 千里, 坂巻 公男, 柳澤 融
    1989 年 14 巻 2 号 p. 92-99
    発行日: 1989/08/31
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    32例の頸部リンパ節転移に対し, 局所温熱放射線併用療法を施行した。加温には2.45GHzのMicrowaveを用いた。放射線療法は通常行なわれている1日2Gy, 週5回の分割照射とし, 総線量は20~80Gyであった。温熱療法は放射線照射終了後60分以内に開始し, 加温は42.5℃で60分間とした。治療効果を腫瘍縮小率で判定したところ, 32例のうち4例(12.5%)はcomplete regression, 16例(50.0%)はpartial regression(PR), そして12例(37.5%)はno regressionという成績が得られた。治療効果の腫瘍組織型に対する依存性は明らかではなかった。リンパ節転移巣に対し, 温熱放射線併用療法は, 一時的制御効果はあったが, 累積生存率で放射線単独療法と比較すると, 2年後の生存率はほぼ同じ(22%)であった。温熱放射線併用療法終了後にリンパ節摘出術が行なわれ, 病理組織学的所見が得られた症例は4例であった。これらはすべてPRであり, 4例中3例には病理組織学的に腫瘍細胞の消失が認められた。これは温熱放射線併用療法による転移性リンパ節の縮小率が100%未満であっても, 腫瘍細胞が消失している場合があることを示す。

    放射線単独治療の際に一般的に認められる照射野内の組織反応以外に, 併用療法による副作用はなかった。

  • 佐々木 実, 金子 克
    1989 年 14 巻 2 号 p. 100-106
    発行日: 1989/08/31
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    Staphylococcus epidermidis の産生するslime proteaseの病原因子としての役割を明らかにする目的で, 精製slime proteaseのマウスにおけるS. epidermidis感染時の影響, および好中球の貧食殺菌活性におよぼす影響について検討した。S. epidermidisのslime産生株はslime非産生株にくらべ,マウスに対する致死性が強いが, 菌体外物質を除去することにより, 致死性は減弱した。これに対して, slime非産生株のマウスに対する致死性は, S. epidermidisの精製 slime proteaseを注射することにより増強され, 注射48時間後の生存菌数も多かった。なお, 精製slime proteaseは in vitro における好中球の貪食殺菌活性を阻害した。これらのことは, slime proteaseがマウスにおけるS. epidermidis 病原性発現の一因子となっている可能性を示唆している。

  • 本田 寿子, 金子 克, 斎藤 勝明, 村田 政美, 佐藤 政明
    1989 年 14 巻 2 号 p. 107-116
    発行日: 1989/08/31
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    α溶血を示し, グラム陽性球菌で, オプトヒンディスク(5μg)に感受性を示した433株の分離菌株を被検菌とし, オプトヒン感受性試験によるStreptococcus pneumoniae同定法について検討した。被検菌のうち胆汁で溶解した株については生物学的性状, 血清学的検査から, S. pneumoniae と同定し, オプトヒンに対する最小発育阻止濃度を測定した。

    その結果, 胆汁で溶解したものは, 433株のうち398株, 非溶解のものは35株であった。この35株の内訳はS. sanguis Ⅰ 2株, S. mutans 1株, S. salivarius 2株, S. mitis 28株, S. anginosus 2株であった。胆汁溶解のS. pneumoniae398株のうち67株(16.8%)がオプトヒンに耐性(≧5μg/ml)で, そのMICは6.25~>200μg/mlに分布していた。

    また, オプトヒン耐性S. pneumoniaeはmucoid型colonyにはみられず, smoothあるいはrough型colonyに多く認めた。さらに, S. pneumoniae398株はpenicillin, cephem系薬剤に対して感受性を示したが, macrolide, lincomycin, tetracycline系薬剤には耐性株も多く, オプトヒン感受性, 耐性別に31薬剤に対する感受性を検討した結果, 後者は前者に比して耐性の傾向を認めた。

    これらのことから, S. pneumoniaeをオプトヒン感受性試験のみで同定することは十分とはいえず, S. pneumoniaeに特異的な胆汁溶解性による同定を重視する必要性が示唆された。

  • 鈴木 尚英, 中野 廣一, 清野 幸男, 小早川 志津子, 森岡 尚, 亀谷 哲也, 石川 富士郎, 小豆島 正典
    1989 年 14 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 1989/08/31
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    臨床上, 容易に利用可能な顎骨の骨梁密度の定性的判定法を探るため, 成人ヒト乾燥下顎骨の薄切標本とそのX線像を比較検討した。

    1)下顎骨21体のX線写真から, 骨梁の疎なもの, 中等度のもの, 緻密なものに分類し, その中から特徴的なもの各1例を選択し, 基準標本とした。

    2)それぞれのX線写真をmicrodensitometerで走査したところ, 骨梁相当部は黒化度曲線のピークとして認められ, 単位長さあたりのピーク数は緻密なものになるにしたがい増大した。

    3)基準となる下顎骨の骨体部横断面薄切標本から, 骨梁面積と骨髄腔面積の比率(骨梁比=骨梁面積/骨髄腔面積)を求めた。その結果, 骨梁密度の疎な標本, 中等度の標本, 緻密な標本の比はそれぞれ0.240, 0.499, 0.492となり, 中等度と緻密との間の標本の差は認められなかった。また, 骨梁密度は下顎骨体部の厚径が大きいものほど高くなるため, 厚径の大きい下顎骨では骨梁比が等しい場合でもX線写真上では緻密と判定されることが示唆された。

    以上のことから, 顎骨の厚径を考慮すれば, 骨梁密度をデンタル型X線写真上で定性的に評価することは, 骨梁の緻密性を推測する有効な手段になると考える。

  • 高橋 栄司, 宮手 義和, 赤坂 善昭, 工藤 賢三, 池田 實, 伊藤 忠信
    1989 年 14 巻 2 号 p. 124-129
    発行日: 1989/08/31
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    血圧維持に関する交感神経系とカテコールアミンとの関連性を究明する目的で, 正常血圧ラットに化学的交感神経遮断作用を有する物質5-ヒドロキシドーパミン(5-OHDA)を投与し, 尾動脈から血圧および心拍数を継続的に測定した。血圧は5-OHDA投与後, 一過性の著明な上昇に続いて急速な下降を示したのち, 徐々に回復するという二相性の変動を示した。心拍数は5-OHDA投与後, 著明な減少を示したが, その後すみやかに初期値まで回復した。また, 血圧および心拍数は5-OHDAの投与に対し用量依存性の反応を示した。

    この事から, 5-OHDAが交感神経末端のアミン貯蔵顆粒内で内因性ノルアドレナリンと置換・放出した後, 代謝産物である5-ヒドロキシノルアドレナリンが偽伝達物質として作用した可能性が示唆された。

症例報告
総会記事
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