1979年から1988年までの10年間に上気道炎患児5,011名の咽頭から分離したβ溶血レンサ球菌1,602株について, 溶血レンサ球菌用免疫血清を用いて群別, T型別を行った。さらに, 分離したA群レンサ球菌1,518株についてpenicillin(PCG), ampicillin(ABPC), cephaloridine(CER), cephalexin(CEX), erythromycin(EM), oleandomycin(OL), lincomycin(LCM), tetracycline(TC)およびchloramphenicol(CP) の9薬剤に対する感受性を調べた。
β溶血レンサ球菌1,602株のうちA群は1,546株(96.5%), B, C, G群は56株(3.5%)であった。T型別でみると1987年まではT12型が常に首位を占めていたが, 1988年にはT1型が首位となった。T1 型は1979年, 1983年にも高率に分離された。また, A群レンサ球菌の薬剤感受性はPCG, ABPC, CERおよびCEXではminimum inhibitory concentration(MIC)が0.0031~6.25μg/mlに分布して耐性菌(MIC≧25μg/ml)はみられず優れた感受性を示し, 年次的変動もみられなかった。EM, OLおよびLCMではそれぞれ高度耐性菌(MIC≧200μg/ml)が, 1979年には40.4%, 46.8%および44.7%みられたが逐年的に減少し, 1988年には全く見られなくなった。TCとCPにおいても耐性菌が逐年的に減少する傾向がみられた。また, T型別と薬剤耐性の関連をみると, T3型, T4型およびT12型においては耐性菌が多く, 特にT4型はTC単剤耐性との関連が深くT12型には多剤耐性菌が多くみられた。
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