岩手医科大学歯学雑誌
Online ISSN : 2424-1822
Print ISSN : 0385-1311
ISSN-L : 0385-1311
14 巻, 3 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著
  • 大滝 洋
    1989 年 14 巻 3 号 p. 179-194
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    血管新生中の毛細血管内皮細胞の細胞外基質におけるglycosaminoglycans (GAGs) の微細構造的分布を, chick chorioallantoic membrane (CAM) を用いて組織化学的にin vivo と in vitro で検索した。in vitro の検索のため, 血管新生の単純なモデルをコラーゲン・ゲル培養法によって準備した。in vitroで新しく形成された内皮細胞による管腔構造は, in vivo における脈管と類似していた。in vivoとin vitro における管腔を, 過ヨーソ酸hexamethylenetetramine 銀(PAM), Ruthenium Red (RR) とAlcian Blue (AB) で染色し, GAGsを同定するため4種の酵素(睾丸 hyaluronidase, 放線菌hyaluronidase, chondroitinase ABC, chondroitinase AC)で消化した。その結果, hyaluronic acidが血管新生の初期において細胞外基質の構成要素の細いcollagen線維に蓄積し, 血管の成長とともに硫酸化GAGs, 特にdermatan sulfateに置きかわることが示唆された。

  • 佐々木 実, 金子 克
    1989 年 14 巻 3 号 p. 195-200
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    Staphylococcus epidermidis の産生するslime中のproteaseが, 生体制御タンパクである血清中のprotease inhibitorにおよぼす影響について検討した。S. epidermidis slime protease は, α1-antitrypsin (α1-AT) の抗trypsin活性をモル比1:1から1:100, 抗elastase活性をモル比1:1から1:50で阻害した。一方, α1-AT, antithrombinⅢはS. epidermidis slime proteaseの処理によりSDS-polyacrylamide gel electrophoresisから分子量が約5,000 dalton低い位置にもfragmentが認められ, 低分子量化が観察された。以上の結果からS. epidermidis slime proteaseは血清中のprotease inhibitorを分解し, 不活化することにより, 生体制御機構の破たんをきたし, S. epidermidisによる感染を助長させる可能性が示唆された。

  • 本田 寿子, 金子 克, 小川 英治, 小川 婦美子
    1989 年 14 巻 3 号 p. 201-210
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    1979年から1988年までの10年間に上気道炎患児5,011名の咽頭から分離したβ溶血レンサ球菌1,602株について, 溶血レンサ球菌用免疫血清を用いて群別, T型別を行った。さらに, 分離したA群レンサ球菌1,518株についてpenicillin(PCG), ampicillin(ABPC), cephaloridine(CER), cephalexin(CEX), erythromycin(EM), oleandomycin(OL), lincomycin(LCM), tetracycline(TC)およびchloramphenicol(CP) の9薬剤に対する感受性を調べた。

    β溶血レンサ球菌1,602株のうちA群は1,546株(96.5%), B, C, G群は56株(3.5%)であった。T型別でみると1987年まではT12型が常に首位を占めていたが, 1988年にはT1型が首位となった。T1 型は1979年, 1983年にも高率に分離された。また, A群レンサ球菌の薬剤感受性はPCG, ABPC, CERおよびCEXではminimum inhibitory concentration(MIC)が0.0031~6.25μg/mlに分布して耐性菌(MIC≧25μg/ml)はみられず優れた感受性を示し, 年次的変動もみられなかった。EM, OLおよびLCMではそれぞれ高度耐性菌(MIC≧200μg/ml)が, 1979年には40.4%, 46.8%および44.7%みられたが逐年的に減少し, 1988年には全く見られなくなった。TCとCPにおいても耐性菌が逐年的に減少する傾向がみられた。また, T型別と薬剤耐性の関連をみると, T3型, T4型およびT12型においては耐性菌が多く, 特にT4型はTC単剤耐性との関連が深くT12型には多剤耐性菌が多くみられた。

  • 菅原 光孝
    1989 年 14 巻 3 号 p. 211-223
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    咀嚼運動の完成していない授乳期マウス(ddY系生後3日目)を用いて, 1α-OH-D3(アルファロール)連続投与の下顎頭軟骨への影響を検討した。1α-OH-D3投与により血清Ca濃度の上昇, 軟骨細胞層の厚さの減少が見られた。1α-OH-D3投与群では対照群に比較して光顕的には増殖層と成熟層の区別が不明瞭となり, 電顕的には1α-OH-D3投与群の増殖層と成熟層に著しい形態的変化が認められた。

    増殖層と成熟層の3H-thymidineの標識細胞数は対照群の⅓以下となり1α-OH-D3投与により軟骨細胞の増殖抑制が認められた。また, alcian blue染色とPAS反応からみて, 1α-OH-D3投与群ではglycosaminoglycanと糖質合成の抑制がみられた。

  • 斎藤 祐一
    1989 年 14 巻 3 号 p. 224-232
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    糖尿病態下での矯正治療によるストレスの影響の一端を明らかにするため, 糖尿病マウスにおける脳内の3-methoxy-4-hydroxyphenylglycol(MHPG), 血糖値, そして脳内アミノ酸系神経伝達物質に及ぼす実験的歯の移動処置の影響を検討した。

    実験は体重約30gのddY系雄性マウスにStreptozotocinを投与し, 糖尿病モデルを作製して行った。歯の移動は, 上顎切歯間にプラスティック片を挿入して行った。血糖値の測定は尾静脈から採血して行った。MHPGは線条体と視床下部, 脳内アミノ酸は線条体, 視床下部, 海馬, 大脳皮質について電気化学検出器付き高速液体クロマトグラフィーを用い測定した。

    歯の移動処置は視床下部のMHPGレベルを糖尿病群でのみ増加させた。同様に, 血糖値においても, 糖尿病群にのみ上昇を認めた。歯の移動処置は, 正常および糖尿病群の視床下部と海馬において一部のアミノ酸系神経伝達物質レベルに影響を与えたが, その変化は脳部位により種類と方向が異なり, 一定ではなかった。線条体と大脳皮質では変化は認められなかった。

    本実験の結果は歯の移動処置によるストレスの影響が, 糖尿病群においてより強く発現したことを示している。従って, 糖尿病患者に対して矯正治療を行うに際し, 一層の注意を払う必要があると思われる。

  • -低カルシウム食飼育の影響について-
    坂岡 丈利
    1989 年 14 巻 3 号 p. 233-248
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    犬下顎骨辺縁切除創の骨形成に及ぼす低Ca食の影響を骨創部骨塩量の増減より検討する目的で, 125I-photon absorptiometryを用い, 1~24週目まで検索した。さらにH-E標本, CMRおよびラベリング像の組織所見と対比するとともに, 橈骨骨塩量を測定し骨創部以外の骨への影響を検討した。

    下顎骨対照側骨塩量は術後4週目でわずかに, 16週目で著明に減少し, 骨創部以外の骨に対する低Ca食の影響はこの時期より明らかとなった。骨創部骨塩量は正常食群と比較して術後16~24週目にかけて減少し, 骨創部に対する低Ca食の影響は16週目以降明らかとなった。対照側との比較において骨創部骨塩量は術後1週目で減少を示したが, 2週目で増加に転じ24週目まで継続した。その増加量は16~24週目にかけて正常食群よりむしろ高値を示した。これは16~24週目において骨創部で造骨は進むが骨創部以外の骨とともに骨塩量は低下を示し, 骨創部と全身的な骨における骨塩代謝との関連性が示唆された。

  • -歯科インプラント法への応用-
    守屋 光孝
    1989 年 14 巻 3 号 p. 249-264
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    インプラント埋植後のインプラント周囲の骨形成を促進する目的で歯科インプラント法に微小電流刺激を応用した。実験には成熟したビーグル犬6頭を用いた。

    微小電流刺激装置を口腔内の狭小な位置に装着するために, 小型のdual field effect transistorを用いて装置の小型化を行った。電極はインプラントと一体化した構造のものをインプラント体として試作した。これらの装置を用いて電極を兼ね備えたインプラント体を下顎無歯部顎堤に埋植し, 同時に電圧1.55Vで10μAの電流を14日間および28日間連続して通電し, インプラント体周囲の骨形成への有効性を病理組織学的に検索した。また, 微小電流刺激を中止した後の骨組織の変化を検索するために実験開始後28日目に通電を中止し, その後の骨動態の検索を行った。その結果, 今回試作した装置を用いてインプラント体周囲組織に微小電流刺激を与えることにより骨形成が促進され, その有効性を認めた。

  • 高橋 栄司, 宮手 義和, 赤坂 善昭, 工藤 賢三, 池田 實, 伊藤 忠信, 清水 澄, 立川 英一, 樫本 威志
    1989 年 14 巻 3 号 p. 265-272
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    正常血圧ラットにおいて5-ヒドロキシドーパミン(5-OHDA)を腹腔内投与したのち, 交感神経興奮作用を有する紅参を10日間経口投与し, 紅参が5-OHDA処置ラットの血圧および心拍数に対してどのような影響を与えるか, また, この際の血漿および副腎内カテコールアミン濃度について検討を行った。

    その結果, 5-OHDA投与後, 血圧は紅参投与群および非投与群とも一過性の著しい上昇がみられ, その後急速に投与前値よりはるかに低い値まで下降したのち, 徐々に前値に上昇回復するという二相性の変動を示した。この際の, 血圧の投与前値までの回復時間は紅参投与群が有意に短縮しうる興味ある知見を得た。このことは紅参投与により交感神経系の機能回復が早まったものと推察された。

    一方, 心拍数は両群とも5-OHDA投与後, 著明な減少がみられたが, その後はすみやかに投与前値まで回復した。その回復時間も紅参投与群で有意に短縮した。

    また, 紅参投与後10日目に測定した血漿中カテコールアミンは紅参投与群が非投与群に比較して有意な増加を示した。これに対して, 副腎内カテコールアミンはむしろ紅参投与群で減少する傾向が見られた。

    これらのことから, 紅参が5-OHDA処置によって変化退行した交感神経系の機能を回復させる可能性があることが示唆された。

症例報告
  • 八幡 智恵子, 八木 正篤, 小早川 隆文, 横田 光正, 小原 敏博, 工藤 啓吾, 藤岡 幸雄
    1989 年 14 巻 3 号 p. 273-277
    発行日: 1989/12/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    患者は74歳の男性で, 過去6年間に口底癌に対して185Gyの照射が行われ, その経過観察中に腫瘍が再発, 再再発をきたしたため, 当科に紹介されてきた。本例に対しPeplomycin 5㎎/日×4日間計20㎎投与後, 右側舌・口底部の部分切除と下顎骨の頬側皮質骨を可及的に保存するために辺縁切除が行われ, 欠損部は大胸筋皮弁によって即時再健された。しかしながら, 術後約1.5カ月目に同部に骨折をきたしたので, チタンプレートによる整復と, 腸骨海綿骨移植が行われた。その後の経過は良好で, 患者の審美的, 機能的満足が得られている。

総索引(総目次)第14巻(平成元年)
著者名索引 第14巻(平成元年)
feedback
Top