岩手医科大学歯学雑誌
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3 巻, 2 号
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原著
  • (乳歯列, 混合歯列, 永久歯列の比較検討)
    伊藤 一三, 大沢 得二, 都筑 文男, 野坂 洋一郎
    1978 年 3 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 1978/07/30
    公開日: 2018/12/24
    ジャーナル フリー

    顔面頭蓋計測の水平基準平面として, 眼耳平面が用いられる。歯科医学では, 広く咬合関係を知るために臨床上, 咬合平面を使用する場合がある。この咬合平面は, 有歯顎について研究がなされたが, 主に永久歯列を対象としたものが大部分であり, 乳歯列や混合歯列については, 咬合平面の決定が困難な場合が多いことから報告はあまりない。そこで各歯列期における, 咬合平面が眼耳平面および Camper 氏平面との間にいかなる関係を有するかを比較検討するため, 上顎模型の基底面に眼耳平面と Camper 氏平面を表わし, 下顎模型に咬合平面をあらわし, 中心咬合位の状態で接着固定した規格模型を正中矢状断面と前額断面を作成し, 規格撮影された写真上で計測して次の結果を得た。

    1)正中矢状断面において眼耳平面に対する咬合平面のなす角度は, 乳歯列, 混合歯列, 永久歯列と年齢増加に伴いそれぞれ, 15.85°, 12.28°, 7.73°と傾斜角度が, 約4~5°減少していく, 一方, 眼耳平面に対する Camper 氏平面のなす角度は逆に各歯列期において, 3.67°, 4.58°, 5.43°と約1°づつ増加していく, したがって年齢増加と共に咬合平面と Camper 氏平面との間の平行性が増していく。

    2)前額断面において左右的傾きをみると, 咬合平面は眼耳平面および Camper 氏平面に対してなす角度は, 各歯列群ともほとんど0°とみなしてよかった。

    3)乳歯列及び混合歯列においては, 咬合平面と Camper 氏平面との相関性は低い。しかし, 永久歯列においては, 咬合平面と Camper 氏平面との間には高い相関性がみいだせた。

  • 第2報 口腔内諸組織 特に歯肉インピーダンスの部位的変動について
    鈴木 隆, 平 孝清, 松本 範雄 , 林 謙一郎 , 八幡 文和
    1978 年 3 巻 2 号 p. 145-159
    発行日: 1978/07/30
    公開日: 2018/12/24
    ジャーナル フリー

    三田の考案による装置を用い, 口腔内軟組織とくに歯肉のインピーダンス(|Z|)を計測した。使用した周波数は主に3Hzで, 直径5mmの木綿糸の束を関電極とした。軟組織のうち, 最高値(17.4KΩ)を示すのは硬口蓋で, 最低値(5.OKΩ)は舌根で計測された。交流の周波数をかえると, その増加とともに|Z|は減少し, 部位差を表わす最適周波数は3Hzであった。歯肉|Z|の男女平均値はそれぞれ7.OKΩと9.3 KΩで女性の|Z|が高い。歯肉|Z|の日内変動は規則的で早朝時に高く, 午後になると低値に安定する。摂食, 会話, 刷掃などは|Z|を低下させ, 睡眠は|Z|を上昇させる。歯肉の左右対称部位の|Z|はほぼ等値で, その差は20%を越えることは少ない。上顎の歯肉|Z|は舌側と唇側を比較すると舌側で高値を示す。永久歯の萌出直前の歯肉|Z|は高いが, 萌出直後に急速に低下する。歯の病的動揺度が増大するとその部の歯肉|Z|は減少する。上記の事実は, 歯肉|Z|の計測を臨床診断へ応用する可能性を暗示する。

  • 田沢 光正, 飯島 洋一, 松田 和弘, 三浦 陽子, 高江洲 義矩
    1978 年 3 巻 2 号 p. 160-170
    発行日: 1978/11/30
    公開日: 2018/12/24
    ジャーナル フリー

    前報において, 東北地区農山村地域(東目屋・北津軽・松尾・宮守・中川の5地区)の小学校学童(1〜6年生)1,888名についての永久歯う蝕罹患状況(1976年検診)を報告した。今回, 同資料にもとづいて, 歯種別および歯群別についての萌出歯率, DMF歯率および処置歯率の分析結果を考察した。5地区のうち, 北津軽はフッ素地区(天然フッ素含有飲料水地区)であり, フッ素濃度は0.3〜3.2ppmの範囲にある。他の4地区は0.1ppm以下の飲料水地区である。

    萌出歯率については, 1年生時の新学期(5〜6月)において, 第1大臼歯は上顎が61.0%, 下顎: 83.5 %, 中切歯は上顎:34.6%, 下顎: 77.2%, 側切歯は上顎7.1%, 下顎: 35.3%であり, その他の歯種は1%以下であった。上顎切歯群の萌出状況は3年生時で中切歯: 99.4%, 側切歯: 71.9%, 5年生時でほぼ100%に達する。歯種別および歯群別のDMF歯率で特異的なことは, この上顎切歯群罹患であり, 2年生時で中切歯: 2.0%, 側切歯: 2.4%であるが, 4〜5年生時から急激な上昇を示して, 6年生時には中切歯: 23 .2%, 側切歯:26.2%に達する。

    従来, 大臼歯群の保護にのみ重点がおかれたきらいがあるが, 著老らは, むしろ学童期における上顎切歯群の異常な高罹患状況を指摘したい。それは処置歯率の分析結果から考察されるように, 上顎中切歯の保存修復を学童期に行なうことは適切でなく, この歯群こそ Cariesfree (う蝕ゼロ) として保護することが容易に可能であり, う蝕の断面観察分析の資料から緊急のう蝕予防の焦点が上顎切歯群であることを強調する。

症例報告
  • 野坂 洋一郎, 横須賀 均, 大沢 得二, 伊藤 一三
    1978 年 3 巻 2 号 p. 172-178
    発行日: 1978/07/30
    公開日: 2018/12/24
    ジャーナル フリー

    29才男性の口腔診査時に,上顎第2小臼歯の頬面に2結節性の臼労結節を認めた。 上顎第1大臼歯にCarabem結節が, 下顎第1大臼歯には protoslylid が出現していた。 この過剰結節の出現は cingulum 由来と考えたい症例である。

  • 田中 誠, 伊藤 修, 亀谷 哲也, 石川 富士郎
    1978 年 3 巻 2 号 p. 179-188
    発行日: 1978/07/30
    公開日: 2018/12/24
    ジャーナル フリー

    LundstrÖmDによつて提唱された歯槽基底論は,矯正治療の1手段として永久歯の抜去の必然性を定着させた。以来,今日では,不正咬合を改善するにあたって永久歯の抜去が広く取り入れられており2),なかでも,第1小臼歯が最も高い頻度で選択されている。3めしかしながら,症例によっては第1大臼歯の抜去される場合も稀ではない。それらは,歯冠巾径の大きさと,歯槽基底部の大きさに著しい差のあるdiscrepancyの過大な症例,あるいは,開咬傾向を示めす,ある種の骨格系の異常に起因する不正咬合の治療の場合に,ほとんど小臼歯と同じ比重で抜去される場合がある。このような例でぱ治療の進め方の上で種々の問題点をもつことが多い。とくに,永久歯咬合のすでに完成した症例では,第1大臼歯の抜去によって生ずる広範な歯の移動と,それに伴なう咬合の変化を制御してゆくことは,治療の展開を極めて困難 にする場合が多い。 ここに報告する2症例は,いずれも下顎第1 大臼歯を抜去して治療を行なった反対咬合の症例である。この2例をとおして第1大臼歯の抜去による治療の進め方と,その臨床上の意義に ついて考えてみたい。

  • 島田 隆夫, 佐々木 哲正, 森 豊, 関 重道, 小守林 尚之, 水野 明夫, 関山 三郎
    1978 年 3 巻 2 号 p. 189-194
    発行日: 1978/07/30
    公開日: 2018/12/24
    ジャーナル フリー

    最近2年6ヵ月間の抜歯後感染症20例について臨床的観察を行った。 年齢および性別は40歳代が最も多く,女性にやや多かった。主訴は自発痛が15例,開口障害2例,腫張2 例などであった。原因となった抜歯部位は下顎が上顎の約2倍で,下顎智歯が最も多く,症状出現は全例とも抜歯後3日以内であった。症状発現から来院までの期間は2日から3週間におよび,その間になされた処置は投薬13例,膿瘍切開1例などであり,まったく処置を受けなかったもの5例であった。初診時病状を採点制で評価し軽症,中等症,重症の3段階に分けた結果,軽症12例,中等症4例,重症4例であり,よく臨 床状態を反映した。膿汁の細菌検査は6例に行われ,4例に Streptococcus, Neisseria などが分離された。当院で行われた治療は化学療法19例でその平均投与日数は6.4日で外科的療法は抜歯窩再掻爬6例,膿瘍切開4例であった。

  • 山田 芳夫, 小竹 秀樹, 清野 和夫, 小林 琢三, 田中 久敏
    1978 年 3 巻 2 号 p. 195-205
    発行日: 1978/07/30
    公開日: 2018/12/24
    ジャーナル フリー

    上下顎残存歯の一括的抜歯を必要とする患者に対しては,抜歯と同時に義歯を装着し,患者がうける心理的,機能的影響を積極的に緩和する治療法が試みられる。 抜歯後の即時的な義歯としては,上下顎残存前歯を抜去し,それと同時に装着する即時義歯がある。すなわち,これは前歯部の審美性の回復を即時的に処置することを目的としたものである。移行義歯はこの即時義歯とは異なり,上下顎前歯,臼歯を含む残存歯の一括的抜歯と同時に装着する全部床義歯である。 しかし,臨床において即時的義歯を応用した治療法は,義歯製作法が難解であることや,即時的義歯の持つ他面にわたる有意性についての理解が不十分なため,しばしば回避されてきた。 上下顎残存歯の一括的抜歯と同時に装着する移行義歯は,義歯上に天然歯歯列弓形態,個々の歯牙の頬舌的位置,咬合平面の高さ,上下顎歯牙の対合関係をそのまま再現できる。そのため患者の咀噛,発音機能はもとより,審美性も早期に回復でき,義歯への順応性も早いと考える。また,移行義歯は,抜歯後におこる歯槽骨の吸収をできるだけ防止し,義歯の維持安定に適する残存歯槽堤の形態を修復保存できる利点がある。 今回新しく試案した移行義歯製作法は,技工操作も簡単で,患者に十分な満足感を与えることができた。

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岩手医科大学歯学会第5回例会抄録
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