骨欠損に対して再生医学的アプローチをする上で,骨再生組織への新生血管による血液の供給や循環は,安定した骨の形成や感染防御の面において重要であると考えられる.本研究は,bFGF徐放システムによる骨再生モデルを用いて,マイクロフォーカスCTにより同一個体の経時的な骨再生の経過を観察し,連続組織標本を作製することで,骨再生と血管新生の関係を明らかにすることを目的とした.実験方法は,10週齢のWistar系ラットの頭頂骨に直径7mmの骨欠損を形成し,実験群にはbFGF 10μg含有酸性ゼラチンディスクを埋入した.また,対照群には同ディスクに生理食塩液を含浸させたものを埋入した.埋入後2日,1週,2週,4週に同一ラットをマイクロフォーカスCTにて撮影し,三次元画像解析ソフトにて三次元的に骨再生の経過を観察した.また,埋入後1週と4週に連続組織標本をFilm-transfer法にて作製し,H-E染色を行った後,冷却3CCDカメラ装着光学顕微鏡にて二次元コンピューター画像に入力し,再生骨と新生血管の同定を行った.実験の結果,マイクロフォーカスCT所見では,実験群は埋入後2日で再生現象を確認することができなかったが,埋入後1週,2週になると軽度の骨再生が認められ,4週まで継続していた.骨体積計測の結果,埋入後2日,1週,2週では実験群と対照群との間に有意差は認められなかったが,4週には対照群に対し実験群では有意に体積が増加していた(P<0.05).このことから,bFGFによる骨再生誘導は埋入後1週から2週の時期から行われ,4週には骨再生が行われていることが示唆された.組織学的評価では,埋入後1週において,新生血管は,対照群に対し実験群は有意に多く観察された(P<0.001).また,埋入後4週においても実験群は有意に多くの新生血管が観察された(P<0.001).これにより実験群は多数の新生血管により継続的に栄養供給が十分に行われていることが示唆された.以上のことから,骨欠損部へのbFGF含有のAGD埋入によりbFGFが徐放され,血管新生により血液循環と骨断端部への栄養供給が行われ,骨再生誘導に効果を現していることが考えられた.
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