岩手医科大学歯学雑誌
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39 巻, 1 号
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研究
  • — functional MRIを用いた検討 —
    櫻庭 浩之, 小林 琢也
    原稿種別: 本文
    2014 年 39 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2014/04/23
    公開日: 2017/03/05
    ジャーナル フリー
    不適切な下顎位で補綴治療が行われると, 咬合の不調和を引き起こし咬合接触の異常や下顎運動の異常を生じ, ひいては全身機能に影響を及ぼすとされている. 下顎偏位がストレス反応を介して, 不快や痛みのネットワークを賦活させることはこれまで報告されているが, その偏位方向や運動の種類による賦活の差に関しては検討されていない. そこで本研究は, 下顎偏位が脳機能に及ぼす影響を明らかにするために, 下顎を水平的偏位させた状態で Tapping 運動と Clenching 運動を行い, 非侵襲的脳マッピング法の1つである functional Magnetic Resonance Imaging ( fMRI ) を用いて脳機能応答の変化を観察した.
    実験は右利きの健常有歯顎者10名に咬頭嵌合位 (コントロール) と前方,左方および右方の下顎偏位条件でTapping運動とClenching運動の2種類の課題を行わせた. 画像解析を行い賦活部位の同定を行った後, コントロール条件と偏位条件での脳活動量の比較を行った. その結果, Tapping 運動時に,下顎偏位条件ではコントロール条件で賦活が認められなかった扁桃体に賦活が認められた. 扁桃体における脳活動量を比較すると, コントロールと比較して各水平的偏位条件で有意に活動量が増加していた. 一方, Clenching運動時には,下顎偏位条件ではコントロール条件で賦活が認められなかった腹内側前頭前野と扁桃体に賦活が認められ, これらの部位における脳活動量もコントロールと比較して各水平的下顎偏位条件で有意に増加していた.
    これらの結果より,下顎の水平的偏位は偏位方向や運動の種類によらず不快を引き起こし, とりわけClenching運動においてより強い不快応答を伴うと推測される.
  • 古川 真司, 佐藤 和朗, 藤村 朗, 大塚 正人, 三浦 廣行
    原稿種別: 本文
    2014 年 39 巻 1 号 p. 14-28
    発行日: 2014/04/23
    公開日: 2017/03/05
    ジャーナル フリー
    赤色蛍光強発現遺伝子導入マウス(tdTomatoマウス)は再生医療研究において大変有用であると期待されている. tdTomatoマウスの組織より得られた細胞は非常に強い赤色蛍光を有し,動物生体内に移植された細胞はリアルタイムに体表からの観察が可能である.今回,我々はtdTomatoマウスの唾液腺における,赤色蛍光発現部位を組織学的に明らかにすると共に,唾液腺由来初代培養細胞のtdTomato赤色蛍光発現と細胞遊走能を評価した.さらに不死化細胞株を樹立し,細胞表面マーカーの発現について検討した.
    tdTomatoマウスの赤色蛍光の発現は組織切片上のみならず唾液腺由来初代培養細胞においても細胞質内のF-actinの局在と一致した.さらに顎下腺由来初代培養細胞の遊走能は舌下腺由来のそれと比較して有意に高かった. F-actinと共局在するtdTomato赤色蛍光の分布は,遊走能の高い顎下腺由来初代培養細胞において,核の周囲にフェルト様に分布し,核の輪郭が明瞭であったのに対し,遊走能の低い舌下腺由来初代培養細胞では,核の周囲に綿様に分布し,核の輪郭が不明瞭であった.加えて,遊走能の高い細胞が存在する顎下腺組織より遊走した細胞を不死化し, Sca-1+CD44+CD90+の未分化間葉細胞の可能性を示す細胞株を樹立することに成功した.
    本研究で得られた唾液腺由来の細胞は,その細胞骨格の変化と遊走能との関連性や,唾液腺における未分化間葉細胞の役割を明らかとするための研究ツールとして,極めて有用である.
症例
  • 四戸 豊, 三浦 仁, 坂本 望, 佐藤 雅仁, 羽田 朋弘, 古城 慎太郎, 八木 正篤, 水城 春美, 城 茂治
    原稿種別: 本文
    2014 年 39 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2014/04/23
    公開日: 2017/03/05
    ジャーナル フリー
    顎変形症の診断にて下顎枝矢状分割術が予定された症例に対して, 全身麻酔の麻酔導入時にアナフィラキシーショックを経験したので, 若干の考察を加えて報告する. 症例:42歳女性, 身長156cm, 体重48Kg. 顎変形症の診断にて, 下顎枝矢状分割術が予定された. 既往歴として, 38歳から無症候性原発性胆汁性肝硬変にて本学消化器肝臓内科にて通院加療中である他, 特記事項なかった. 経過:全身麻酔は, フェンタニルクエン酸塩50μg, プロポフォール100mg, ロクロニウム臭化物40mgを静脈内投与, レミフェンタニル塩酸塩を0.1γで持続注入開始し急速導入され,空気・酸素・セボフルランで麻酔維持された. 気管挿管約10分後に頸部および体幹に膨疹を認め, 血圧低下 (56/30mmHg) を伴うアナフラキシーショックを発症した.ガイドラインに基づき, アドレナリン0.3mg筋肉内注射,ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム500mgとクロルフェニラミンマレイン酸塩5mgを静脈内投与し, 2つの末梢静脈路から輸液負荷による処置がなされた. 幸い状態が重篤化することなく回復した. 後の皮膚テストで,ロクロニウムがアナフィラキシーの原因薬の一つであるとされた.
    アナフィラキシーは全身性のアレルギー反応である. そのため,発症後の急性期の治療ばかりでなく, アナフィラキシーショックの診断を確定し, その原因薬物を同定することは重要である. そして, 発症時には症状が重篤に進行しないように院内マニュアルに沿って迅速に対応しなければならない.さらに, 医師, 看護師との連携も図り, 協力体制を整えておかなければならない.
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岩手医科大学歯学会第76回例会抄録
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