岩手医科大学歯学雑誌
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40 巻, 1 号
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研究
  • 味岡 均, 鬼原 英道, 大平 千之
    原稿種別: 本文
    2015 年 40 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2015/04/23
    公開日: 2017/03/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,デジタルスキャニングデバイスである口腔内スキャナーと歯科技工用スキャナーを用いてインプラントアバットメント間の距離の真度と精度を比較し,その有用性を評価検討することである.インプラント実習用顎歯模型に外側性六角構造を有する2本のインプラント体を埋入した.それぞれのインプラント体にボールアバットメントを装着し,ボールの中心間の距離の測定を行った.接触式三次元座標測定機による測定値と,口腔内スキャナーであるLava COSとTRIOS,歯科技工用スキャナーであるARCTICAの測定値を比較し,それぞれの距離の真度と精度を評価した.真度に関して,Lava COSはTRIOS,ARCTICAと比較して有意な差(p<0.05)を認めた.また精度に関しては,Lava COSとARCTICAの間に有意な差(p<0.05)を認めた,真度と精度の偏差はARCTICAが最も小さく,Lava COSが最も大きかった.さらに,口腔内スキャナーによる測定誤差は,術者によっても有意な差(p<0.05)が認められることがあった.本研究の結果より,歯科技工用スキャナーは一度に広範囲の撮影が可能なため,安定した真度と精度を有すると考えられる.一方,口腔内スキャナーは小さな三次元画像をつなぎ合わせることでデータの結合を行なうので誤差が蓄積しやすいと考えられる.そのため口腔内スキャナーは長い区間の撮影において誤差が増大する傾向がみられたが,口腔内スキャナーの中には歯科技工用スキャナーと同等の真度と精度を有するものも存在した.口腔内スキャナーは印象材の歪みや石膏膨張の影響を受けないという特徴より真の値に近い寸法再現性が期待されたが,上記結果から,口腔内スキャナーは従来の印象法に比較して,真度の点でわずかに劣る可能性が示唆された.
  • 松本 知生, 下山 佑, 丸尾 勝一郎, 木村 重信
    原稿種別: 本文
    2015 年 40 巻 1 号 p. 14-25
    発行日: 2015/04/23
    公開日: 2017/03/05
    ジャーナル フリー
    オッセオインテグレーション成功のためにはチタン骨内インプラント上の骨芽細胞の分化が必須で,それは種々のサイトカインにより制御されている.最近の研究では,前炎症性サイトカインの一つであるIL-17Fが骨芽細胞分化の初期段階で作用することが示唆されている.しかし,IL-17FおよびIL-17Fとは異なるIL-17スーパーファミリーの一員であるIL-17Aの,チタン表面上での骨芽細胞分化過程への作用は依然明らかではない.本研究では,まずラット動物実験系を用いて検討した.すなわち,ラットの上顎両側第一臼歯を抜去し,その一方の抜歯窩にチタン棒(φ1.0mm×2.4mm)を埋入した.埋入後1から7日目にラットを屠殺,両抜歯窩およびその修復組織を採取し,IL-17FおよびIL-17Aの動態をnested RT-PCRにより検索した.次にin vitro実験系で,IL-17FおよびIL-17Aの,チタンdisk上で培養したMC3T3-E1細胞の骨芽細胞分化マーカーの発現に対する直接的な作用を検討した.In vivo実験の結果,チタン埋入により処置後3日目でIL-17Fの産生頻度が有意に上昇すること,一方,IL-17Aの産生頻度は,チタン埋入の有無に関わらず,処置後3日目まで徐々に上昇することが明らかとなった.In vitro実験の結果からは,IL-17F添加によりチタンdisk上で培養したMC3T3-E1細胞が刺激され,アルカリフォスファターゼおよび骨シアロタンパクの発現が増強されることが示唆された.これらの結果から,IL-17Fは,骨芽細胞分化マーカーの発現増強を介して,チタン表面での骨芽細胞分化を促進することが示唆された.
  • 岩崎 賢介, 松本 直子, 佐々木 実
    原稿種別: 本文
    2015 年 40 巻 1 号 p. 26-37
    発行日: 2015/04/23
    公開日: 2017/03/05
    ジャーナル フリー
    Streptococcus anginosus感染が口腔扁平上皮癌と深く関連していることが示唆されているが,その発癌機序については未だ明確にはなっていない.最近の研究から,上皮細胞における活性化誘導シチジン脱アミノ酵素(AID : activation-induced cytidine deaminase)の異所性発現が癌関連遣伝子に変異を誘発し,癌化へと繋がる可能性が示唆されている.そこで本研究では,17例の口腔癌患者から組織サンプルを採取し,口腔扁平上皮癌におけるS. anginosus感染とAID異所性発現の有無とその関連性について,菌種特異的PCRおよびreal-time RT-PCRを用いて検討した,さらに,3種の株化上皮細胞とヒト正常歯肉上皮細胞を用いて,S. anginosus由来の特異的生理活性物質であるSAAによる刺激後の,AID異所性発現とNF-κBの活性化についてreal-time RT-PCRとdual luciferase assayを用いて検討した.その結果,今回調べた口腔扁平上皮癌組織中ではS. anginosus感染(47%)とAID異所性発現(41%)がともに高頻度で観察されること,S. anginosus感染とAID異所性発現の間に有意の正の相関関係があることが明らかとなった.培養上皮細胞を用いた実験からは,調べたすべての培養上皮細胞においてSAA刺激によりNF-κB活性化とAID異所性発現が誘導されること,さらに,NF-κB阻害剤の添加によりAID異所性発現の抑制が認められることが明らかとなった.以上の結果より,S. anginosus感染は,その特異抗原によるAID異所性発現の誘導を通じて,口腔扁平上皮癌の発症に深く関連していることが示唆された.
  • 折祖 研太, 小林 琢也
    原稿種別: 本文
    2015 年 40 巻 1 号 p. 38-50
    発行日: 2015/04/23
    公開日: 2017/03/05
    ジャーナル フリー
    本研究では超高磁場MRI装置を用いた生体検査時の歯科用金属の安全性と歯科用金属が及ぼす画像診断への影響を検討することを目的に7T装置における歯科用金属の偏向角測定と歯科用金属の高周波による発熱およびアーチファクトの測定を行った.偏向角測定は3T,7T装置を使用し,牽引力によって生じる偏向角が測定できる装置を作成し,測定を行った.検体は9種の歯科用金属とした.発熱試験とアーチファクトの測定は7T装置を使用し,アガロースゲルを充填した頭頚部ファントムに埋入した検体の温度変化とアーチファクトを測定した.検体はTi 20 g ingotとCo-Cr 20 g ingotとした.発熱試験においては,controlとして金属を埋入していないアガロースゲルのみの温度測定も行った.7T装置における偏向角はNi-Crで31.0°,Co-Crで17.0°であった.Ni-CrはASTMが規定している45°に近い偏向角を認めたため注意が必要であり,取り外してからの検査が必要であることが示唆された.他の金属は7T, 3T装置のどちらにおいても10°未満の軽度の偏向角であったため装着した状態で安全に検査が行える.発熱試験は2D-SE T2WI撮像時のTi ingotとcontrolが0.5℃と最も大きな温度上昇を認め,他の検体はすべての撮像法において0.5℃以下の温度上昇であったことから,これらの材料が超高磁場MRI装置を使用した検査において生体へ影響を及ぼす危険性は低いことが示唆された.アーチファクトはTi ingotにおいてaxialで検体の約3〜8倍,coronalで約4〜7倍の範囲に認め,axialは3D-FSE T2WI,coronalは2D-SE T2WIが最も大きなアーチファクトを認めた.上記より,各撮像法によって得られる画像は,金属の種類によって異なることが示唆された.
  • ― 7T-MRIを用いた客観的評価 ―
    久保田 将史, 小林 琢也
    原稿種別: 本文
    2015 年 40 巻 1 号 p. 51-68
    発行日: 2015/04/23
    公開日: 2017/03/05
    ジャーナル フリー
    高齢者人口の増加に伴い,味覚障害患者が増加している.味覚障害の病態と原因は多岐にわたり,歯科領域では口蓋を被覆する床義歯を装着した患者がしばしば味覚障害を訴えることがある.しかし,その因果関係は未だ明らかでない.本研究で義歯装着による味覚障害の原因を明らかにすることを目的に,従来までの主観的評価による検討ではなく,上位中枢より客観的評価が可能な非侵襲的脳マッピング法の1つであるfunctional Magnetic Resonance Imaging (fMRI)を用いて,口蓋の被覆が味覚応答に及ぼす影響を脳機能応答の観点から検討した.実験は,口蓋単独での味覚応答を脳機能応答として捉えるため,右利き健常有歯顎者15名を対象とし,口蓋に限局した味刺激を与えた.次に,口蓋被覆が味覚応答に及ぼす影響の検討を行うため,右利き健常有歯顎者14名に口蓋を被覆しない状態(コントロール)と口蓋を被覆した状態(口蓋被覆)で味刺激を与えた.両実験は,味刺激試液として各被験者の認知閾値に設定したキニーネ塩酸塩,洗浄用試液として人工唾液(25mM KCl, 25mM NaHCO_3)を用いた.本研究より,口蓋へ限局した苦味刺激により一次味覚野の島と前頭弁蓋部に賦活が認められた.また,口蓋被覆時の刺激では,コントロールと同様に一次味覚野の島と前頭弁蓋部,そしてさらに二次味覚野の眼窩前頭皮質に賦活が認められた.しかし,両条件間の脳活動範囲と脳活動量を比較したところ,口蓋被覆により一次味覚野と二次味覚野での賦活範囲は有意な減少が認められ,脳活動量においても一次味覚野で有意な減少が認められた.以上より,口蓋での味覚刺激応答が上位中枢で行われていることを客観的に捉えることができた.また,義歯による口蓋粘膜の被覆が,脳内の味覚応答を低下させることが明らかとなり,床義歯装着が味覚障害を惹起させることが示唆された.
岩手医科大学歯学会第78回例会抄録
一般演題
演題1
演題2
優秀論文賞受賞講演
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