岩手医科大学歯学雑誌
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5 巻, 3 号
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原著
  • 池田 政明, 兼子 研一, 神 達宏, 松崎 愛一郎, 田口 博康, 桂 啓文
    1980 年 5 巻 3 号 p. 119-126
    発行日: 1980/11/30
    公開日: 2018/12/30
    ジャーナル フリー

    従来, 金属焼付用陶材は外国製品がほとんどであったが, 最近国産品が数種市販されるようになった。 そこで国産の3種(UNIBOND, METALBOND, CERACHROME)と臨床で定評のある外国製品のVMK68を用いて, まげ強さ, 硬さ, 熱膨張を測定し, それぞれの結果を比較検討し, 次の様な所見が得られた。

    1)まげ強さは, VMK68 の opaque 色陶材では1,080kg/cm2, UNIBOND のopaque色では1,120kg/cm2, METALBOND の opaque色では1,060kg/cm2でいずれも同じ強さであった。 CERACHROME の opaque色では860kg/cm2を示し, 前者三種より弱かった。 VMK68, UNIBOND, METALBOND の dentin色や enamel色の陶材のまげ強さは opaque色陶材より弱く, CERACHROMEの enamel色陶材では opaque色や dentin色の陶材より強かった。

    2)硬さは, どの陶材でも差がなく, opaque色陶材や enamel色陶材では520Hv前後, dentin色陶材では500Hv前後であり, 天然歯の enamel質400Hvより硬かった。

    3)熱膨張率は, どの陶材においても opaque色陶材の場合が大で, dentin色や enamel色の陶材では opaque色陶材より0.2~0.5%低い値を示した。

    4)陶材の熱膨張率は, ガラス転移点以下の温度域では金属(KIK)のそれより小さく, 転移点以上では金属のそれより大きかった。

    5)物理的性質の比較では, VMK68が最も良好であった。しかし国産の UNIBONDも VMK68に劣らない良い陶材であったが, 他の2種には若干の問題があった。

  • 村田 厚, 藤沢 容子, 野田 三重子, 守田 裕啓, 佐藤 方信
    1980 年 5 巻 3 号 p. 127-135
    発行日: 1980/11/30
    公開日: 2018/12/30
    ジャーナル フリー

    日本人における悪性喉頭腫瘍の実態の一部を解明する目的で, 日本病理剖検輯報第15~第19輯をもとに過去5年間の悪性喉頭腫瘍の剖検例を集計し, 統計的に観察した。

    この期間における悪性喉頭腫瘍は363例(男性326例, 女性35例, 性別不明2例)みられ, その性差は 9.3: 1 となり男性が圧倒的に多かった。組織学的分類では扁平上皮癌が318例と全症例の大半を占めていた。剖検時の年齢別分布では男女あわせて60歳代が144例と最も多く, また, その平均年齢は65.0歳(男性64.8歳, 女性66.5歳)であった。 転移の頻度に関しては, 臓器部位別では肺に転移のみられた症例が119例と最も多く, 次いで頸部, 食道, 甲状腺の順に転移がみられた。 リンパ節転移では頸部リンパ節に転移していた症例が77例と最も多く, 次いで気管周囲, 肺門部の順であった。 また, 悪性喉頭腫瘍と他部位原発癌との重複癌が65例(二重癌60例, 三重癌5例)みられた。

  • 鈴木 隆, 平 孝清, 松本 範雄, 林 謙一郎, 八幡 文和, 佐藤 匡
    1980 年 5 巻 3 号 p. 136-147
    発行日: 1980/11/30
    公開日: 2018/12/30
    ジャーナル フリー

    ネコの歯牙8本 (上顎, 下顎, 左右の犬歯および臼歯) に順次電気刺激を与え, 大脳皮質体性感覚野 S より細胞外的に単位放電を記録しその細胞の性質を調べた。 この部位では口唇, ヒゲなどの触刺激と共に, ある特定歯髄の電気刺激にも応ずる細胞が見出され, これを歯髄応答細胞 (tooth pulp neuron) と命名した。 この歯髄応答細胞は, 放電様式によって短かい潜時 (5-15msec) の initial burst で応答するもの (Ⅰ型細胞) と, 長い潜時 (10-50msec) の initial burst で応答し, かつ after discharge を伴うもの (Ⅱ型細胞) に大別された。 また, ただ1歯だけを選択的に受容野としてもつ細胞 (1歯型細胞) は全体の 38% をしめて一番多く見出され, 歯髄情報の位置的特徴抽出機構との関係が論じられた。 さらに歯髄応答細胞を犬歯支配と臼歯支配に分類すると, 圧倒的に臼歯支配が優勢であった。 しかし対側, 同側, 両側の各支配性を調べたところ, それぞれほぼ同じ割合で見出され, S領域は歯髄に関しても, 両側からの支配を受けていることが確認された。

  • 一早期接触歯の識別について一
    中野 廣一, 三浦 廣行, 亀谷 哲也, 石川 富士郎
    1980 年 5 巻 3 号 p. 148-153
    発行日: 1980/11/30
    公開日: 2018/12/30
    ジャーナル フリー

    本研究は, 咬合を機能面から解析するために咬合音を利用して, 早期接触歯の識別を試みたものである。

    左右の側頭部にトランスジューサー (セラミック型マイクロフォシ) を設置して,

    (a)上顎各歯に直接 1,000Hz の振動を加え, その信号が左右のトラソスジューサーに達するまでの伝達 時間差を測定した。

    (b)プラスチック冠装着による人工的早期接触時の咬合音について, 同様な測定を行った。

    歯種別の伝達時間の差については, (a) および (b) の測定結果はほぼ一致していた。 この結果, 早期接触時の咬合音から早期接触歯が識別できる可能性が見出された。

  • 一観察法による差異の検索一
    都筑 文男, 藤村 朗, 伊藤 一三, 佐々木 利明, 野坂 洋一郎
    1980 年 5 巻 3 号 p. 154-162
    発行日: 1980/11/30
    公開日: 2018/12/30
    ジャーナル フリー

    微細循環の観察計測法には種々の方法がある。そのうち血管鋳型法はアクリル樹脂の改良などにより近年広く用いられている。しかし, この方法を用いて血管径を計測した報告は比較的少ない。そこで, ラットの空腸を用い, 血管鋳型法と他の観察法 (毛細血管顕微鏡法, 透過型電子顕微鏡, 血管内墨汁注入法, Microangiogram) との比較検討を行い, 合わせて血管構築についても観察した。

    1. 血管鋳型法による血管径の計測値は Microangiogram を除いた他の方法の値とほぼ近似し, 血管計測法として有効な手段といえる。

    2. ラット空腸の血管構築は吸収・分泌に適し, 流量調節が容易に行える形態をなしていた。

  • 藤村 朗, 都筑 文男, 伊藤 一三, 野坂 洋一郎
    1980 年 5 巻 3 号 p. 163-169
    発行日: 1980/11/30
    公開日: 2018/12/30
    ジャーナル フリー

    ヒト完全埋伏智歯頬側エナメル質を用いて, 酢酸 (1N,0、5N,0.01N), 塩酸 (0.01N,0.001N), 燐酸(0.1N,0.01N,37%,50%) で処理したエナメル質表面のエッチング像を走査型電子顕微鏡にて観察し, その深さをステレオスコープにて計測した。結果は以下のごとくである。

    1) 各種酸をエナメル質表面に作用させた場合, そのエッチング像はエナメル質表面が一層剥離したように見えるもの, エナメル小柱端の中央が陥凹しているもの, エナメル小柱端の周辺が陥凹しているものなどが観察された。

    2) 各種酸によるエッチングの深さは,酸の種類に関係なく, pH 値が低くなると深くなる傾向を示した。

    3) エナメル質表面の酸によるエッチングにおいて酢酸は濃度が濃くてもエヅチング量が少なく, さらにエッチング像においても表面の一層が剥離したような像を示すなど, 他の酸との違いが観察された。

  • Keigo Kudo, Kaoru Ishibashi, Takanori Ohya, Yukio Fujioka
    1980 年 5 巻 3 号 p. 170-178
    発行日: 1980/11/30
    公開日: 2018/12/30
    ジャーナル フリー

    我々は1965年から1976年までの過去12年間に, 下顎骨の良性腫瘍28症例に対し, 顎切除後に骨移植による再建術を実施した。最近, これらの予後を追跡調査した結果, 5例の広範なエナメル上皮腫例に術後の異常経過が認められていた。そこでこれらの原因と再骨移植処置について以下のような検討を加えた。

    2例の術後感染例では, 下顎角部の内側に死腔を残したことに起因するものと思われ, これらは移植骨の一部を摘出後に肋骨移植による再々建を行った。また2例の移植骨骨折のうち, 1例は延長骨移植による不安定な下顎運動に起因するものと思われ, 腸骨の再移植による再々建を行った。他の1例はオトガイ部形成のため, 移植骨骨皮質の一部を削除したことに起因するものと思われ, 下顎骨下縁の移植と同時にキルシュナー鋼線を使用して固定した。偽関節形成の1例は, 無歯顎例で接合部の固定が不十分であったので, 金属プレートと腸骨の添加移植を追加した。

    以上, 5例とも再骨移植処置を追加することによって, 2~3年後の現在, 義歯が装着され, 形態的ならびに機能的に良好に経過している。

  • 斉藤 弘子, 村井 繁夫, 畠山 魁夫, 米倉 秀夫, 五日市 治, 小山 英子, 伊藤 忠信
    1980 年 5 巻 3 号 p. 179-185
    発行日: 1980/11/30
    公開日: 2018/12/30
    ジャーナル フリー

    CPZ の唾液分泌抑制作用に及ぼす反復投与の影響を明らかにするため, マウスにおけるピロカルピンの唾液分泌促進作用に及ぼす CPZ の1回および 3 週間反復投与の効果を検討した。

    実験方法はウレタン麻酔したマウスを用いる Richter の方法に従った。 CPZ (2,4,8,40mg/kgs. c.) の1回投与により, ピロカルピン (1.25mg/kg, s. c.) による唾液分泌促進作用は明らかな抑制を示したが, CPZ40mg/kg 投与群でもその抑制は, 50% を越えなかった。 CPZ4mg/kg あるいは40mg/kg を 1 日 1 回, 3 週間 (21 回投与) にわり反復投与した場合, CPZ 4 mg/kg による抑制効果は減少した。一方, CPZ40mg/kg による抑制効果は3週間にわたり初回投与の効果が維持された。

    以上の結果より, CPZ は唾液腺の唾液分泌機能を抑制するが, 低用量を反復投与した場合, CPZ のこの抑制効果に耐性が発現することが示された。

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