岩手医科大学歯学雑誌
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5 巻, 2 号
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巻頭の辞
原著
  • 佐藤 方信, 畠山 節子, 鈴木 鍾美
    1980 年 5 巻 2 号 p. 65-69
    発行日: 1980/07/20
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    ラット舌における組織肥満細胞の分布状態を病理組織学的に検索した。

    材料は体重250g前後の Wister 系成熟雄ラットを用いた。 舌は左右側的横断として舌尖部, 舌体中央部, 舌根部の3ヵ所に区分し, これらを通常の方法でパラフィン切片を作り, それぞれ0.1% Toluidine blue (TB)染色およびOrcein-Water blue(OWB)染色を施して観察した。

    TB染色群では舌尖部60.6±8.2個mm2/5μ, 舌体部36.8±7.7個mm2/5μ, 舌根部16.7±3.8個mm2/5μで, OWB染色群ではそれぞれ39.5±5.0個mm2/5μ, 19.2±4.7個mm2/5μ, 10.3±3.0個mm2/5μで, いずれの群においても有意の差(P<0.001)をもって舌尖部に多く, また舌のどの部位においてもTB染色群で検出される細胞数はOWB染色群の細胞数よりも多かった。

  • 増田 義勝, 村井 繁夫, 畠山 赳夫, 米倉 秀夫, 伊藤 忠信
    1980 年 5 巻 2 号 p. 70-76
    発行日: 1980/07/20
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    我々は教室の村井, 増田らが開発したモルモットのオトガイ神経ブロック法を用いて, 2%リドカイン溶液にノルエピネフリン(1.25万倍から5万倍稀釈濃度), フェニレフリン(0.5万倍から2万倍)またはメトキサミン(0.5万倍から2万倍)を添加したときの麻酔深度をエピネフリン10万倍稀釈濃度添加群のそれと比較検討した。

    (1)エピネフリン5万倍添加群と10万倍添加群との間の麻酔深度には有意差は認められなかった。

    (2)ノルエピネフリン, およびフェニレフリンの添加はいずれも麻酔深度増強効果を発揮したが, エピネフリン10万倍添加群のそれよりも劣っていた。 一方, メトキサミン0.5万倍の添加による麻酔深度はエピネフリン10万倍添加群のそれに匹敵した。

    (3)麻酔深度と麻酔作用の持続時間との間には相関関係は認められなかった。

    以上の結果より, 完全麻酔に達していない場合にはいずれの血管収縮薬の添加によっても麻酔深度の増強効果が認められるが, この効果には血管収縮薬間で著しい差異があり, エピネフリンが最も強く, フェニレフリンが最も弱いと考えられる。

  • 名和 橙黄雄, 石関 清人, 坂倉 康則
    1980 年 5 巻 2 号 p. 77-83
    発行日: 1980/07/20
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    ヒトロ腔癌由来細胞(KB細胞株)を用い, 培養液中にサイトカラシンBを0.5, 2.5, 5μg/mlの割合で添加し, 処理後24時間と48時間に固定して, 多核細胞, 1核細胞, 分裂細胞に分けて各々の1細胞あたりの核DNA量と核面積を走査顕微濃度計(ニコン・ビッカースM85)で測定した。

    その結果, 1核細胞のDNA量と核面積はいずれの実験群においても大きな変動はみられなかった。 DNA量は多核細胞>分裂細胞>1核細胞の順で1%の危険率で有意の差がみられた。サイトカラシンBの濃度と処理時間の長さにともなって多核細胞のploidyが増加し, 同時に分裂細胞のDNA量の増加がみられた。 このことは多核細胞ないしはpolyploid細胞の分裂を示唆している。 一方, 多核細胞のDNA量と核面積は比例の関係を示すが, 分裂細胞ではこのような関係はみられなかった。

  • 一初年度における調査成績一
    田中 誠, 伊藤 修, 三浦 廣行, 三條 勲, 亀谷 哲也, 石川 富士郎
    1980 年 5 巻 2 号 p. 84-94
    発行日: 1980/07/20
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    進行性筋ジストロフィー症(以下PMDと略す)は, 進行性の筋の消耗と, 衰弱を特徴とする広義の進行性筋萎縮症の一型で, 未だ根本的な治療法はない。 そこで, 本疾患の病因を明らかにし, その治療法を確立するため, 1968年以降, 厚生省は「進行性筋ジストロフィー症の成因と治療に関する臨床的研究」の一連の研究を進めてきている。

    著者らは, その中で1976年より国立岩木療養所に入所中のPMD患者51名について, 頭部X線規格写真の撮影, 歯列咬合の印象採得および咬筋筋電図の記録を主体にした調査をもとに研究を進めてきている。 本論文はその初年度における調査成績から, とくに顎顔面の形態についての報告である。

    本症患者に見られた不正咬合は, 開咬(41.2%)と, 反対咬合(47.1%)が最も多く, とくにこれらは Duchenne型, 機能障害度Ⅱ型の患者に集中して認められた。これらの不正咬合の形態的特徴は, 主に下顎角の開大による下顎骨の形態異常と, それに伴うオトガイ部の下方位が強く, 骨格型の開咬の所見を呈していた。 また, 歯列咬合では歯列弓幅径が臼歯部において増大し, 長径では短縮の傾向が認められた。これらの形態的所見については咀嚼筋を含めた顔面筋の障害が成長期の顎顔面の形成に異常をもたらすことを示唆しているものと考える。

  • 酒井 百重, 伊藤 修, 田中 誠, 亀谷 哲也, 石川 富士郎
    1980 年 5 巻 2 号 p. 95-102
    発行日: 1980/07/20
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    日常の臨床で, 埋伏歯を伴う不正咬合に遭遇する機会は多い。 埋伏歯は智歯を除くと, とくに上顎前歯部に多発するが, その処置として, 開窓および牽引, 放置および観察, 抜歯の三種類の手段が挙げられる。 しかしながら, 咬合の安定, あるいは審美的な面から, 臨床上は可及的に埋伏歯を歯列内へ牽引, 誘導することが多い。

    本論文は, この埋伏歯を歯列内へ移動した後の安定, およびそれに影響を与えると思われる諸因子について検討を行ったものである。

    その結果, 埋伏歯を歯列内に牽引, 誘導した場合, 牽引後に安定しているものはその後も安定した経過を辿ることが認められた。 また, 牽引に際して, 歯根吸収あるいは歯周組織に与える影響については, 埋伏歯の形態, とくに歯根の彎曲の程度と, その歯槽骨内における位置にもとづく歯の移動量がもっとも大きな因子と考えられた。

  • 平田 佳子, 本田 寿子, 田近 志保子, 金子 克
    1980 年 5 巻 2 号 p. 103-110
    発行日: 1980/07/20
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    S. mutans の SM耐性化に伴う諸性状の変化の有無を調べる目的で S. mutans の標準株5株と分離保存株10株のSM耐性(SM600-1000μg/ml)株をつくり, 生物学的ならびに血清学的性状, ガラス壁付着能および産生するグルカンの性状を感受性株と比較した。 SM耐性化によるコロニー形態, 糖分解性, arginine 水解性, acetoin 産生性, 溶血性, 発育阻止活性および抗原性の変化は標準株においては全く認められなかったが, 分離保存株においてコロニーからの粘液性物質の流出増加, arginine 水解性の消失が観察された。う蝕との関り合いが深いとされているガラス壁付着能, 不溶性グルカン産生能についてみると, S. mutans GS5株はSM耐性化によりガラス壁付着率および不溶性グルカン(ad-1分画中のIG-1)の産生量が増加した。 ガラス壁付着能の低い S. mutans Fa-1株のSM耐性株43株を分離し, これらのガラス壁付着率を調べたところ60%以上の高い付着率を示す菌株が7株存在した。

    口腔外科の入院患者歯垢から分離した S. mutans の新鮮分離株141株中85株が 50μg/ml SM含有平板培地で発育し, 発育を阻止された菌株よりも高いガラス壁付着率を示した。

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