ヒト上気道に常在する菌として知られているHaemophilus 属菌の口腔内における実態を明らかにする目的で健康な成人38名の唾液と歯垢からの分離を試み, その分離株について生化学的性状による分類と薬剤感受性について検討したので報告する。
38名の唾液, 歯垢中の Haemophilus 属菌の菌量はそれぞれ平均6.6×106/ml, 6.0x105/gであった。分離した316株を生化学的性状に従って分類した結果, H. influenzae は11株でbiotype I~V型が分離され, Ⅵ型は分離されず, いずれも唾液からのみ分離された。H. parainfluenzae は229株で全体の72.4%であり, biotype別にみると1型173株(75.5%), Ⅲ型38株(16.6%)が唾液と歯垢の両方から, Ⅱ型18株(7.9%)は唾液からのみ分離された。H. aphrophilus 5株は歯垢からのみ分離され, H. paraphrophilus 64株は唾液と歯垢から分離された。また H. parahaemolyticus 7株は唾液からのみ分離された。
各検体から分離されたH. influenzae, H. parainfluenzae, H. aphrophilus, H. paraphrophilus, H. parahaemolyticus を含む101株についてペニシリン系薬剤6剤, セフェム系薬剤8剤, アミノグリコシド系薬剤2剤, マクロライド系薬剤1剤, テトラサイクリン系薬剤2剤と Chloramphenicol の計20剤を用い, 最小発育阻止濃度を測定した。その結果ペニシリン系6剤のうち, PCGはやや抗菌力が劣り, 他の合成ペニシリン系5剤, なかでもPIPC, APPC, MZPCは優れた抗菌力を示した。セフェム系8剤のうちCZXは0.05μg/mlにピークがあり, 最も強い抗菌力を示した。
またPCG, ABPC, SBPC, CXM, CZX, CMX, CEX, CCL, CMZにMIC≧100μg/mlの高度耐性を示す株がみられ, そのうちペニシリン系耐性株に β-lactamase 産生を確認した。
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