岩手医科大学歯学雑誌
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8 巻, 3 号
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原著
  • 畠山 赳夫
    1983 年 8 巻 3 号 p. 113-124
    発行日: 1983/11/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    マウスの副交感神経性唾液分泌反応において薬理学的除神経後に減感現象(Sub s.)がアトロピン(ATR), クロルプロマジン(CPZ), アミトリプチリン(AMT)およびプロメタジン(PMZ) の連投により発現するかどうかについて検討した。

    方法: マウスの唾液分泌反応の測定には, 催唾剤としてピロカルピンを用いるRichter改良法を用いた。

    結果: Sub s. はATR 0.125または5mg/kg/dayx7日間, CPZ40mg/kg/day×7日間, AMT 12mg/kg/day x 7日間, PMZ 1.25または10mg/kg/day×7日間の投与後, 唾液分泌反応の増感現象が発現した後に生じ, その持続期間は被検薬の投与量に依存した。このSub s. の発現にはレセプターサイトの結合部位数の減少や伝達物質の作用部位からの消失速度の増大などが関与しているものと推測された。

  • 鈴木 尚英, 田中 誠, 中野 廣一, 亀谷 哲也, 石川 富士郎
    1983 年 8 巻 3 号 p. 125-130
    発行日: 1983/11/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    歯の移動時における Dexamethasone (DXM) の影響をみるため, ウィスター系雄ラット45匹を用い組織学的ならびに組織化学的検索を行った。

    動物は, 4群に分けられ, 第1群はcontrol, 第2群はDXM4または8mg/100g body weight を投与, 第3群はWaldo法20)による上顎臼歯の移動, 第4群は歯の移動とDXMの投与とした。

    その結果, 1)歯の移動群における歯根膜圧迫側のアルカリホスファターゼ活性 (ALP ase) は牽引側よりも低く, 酸ホスファターゼ活性 (ACP ase)は高い傾向を示した。2)DXM投与群のALPase, ACP ase 活性は非投与群より低値を示した。3)歯の移動にともなう破骨細胞の数の増大は, DXM投与により抑制され, 投与の中止により回復した。4)以上のことから, 歯の移動にともなう歯槽骨の改造はDXMにより抑制され, DXM投与の中止により改造の回復が見られることが示唆された。

  • Shuichi Iida, Yasunori Sakakura, Kiyoto Ishizeki, Tamiko Tachibana, To ...
    1983 年 8 巻 3 号 p. 131-145
    発行日: 1983/11/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    雄ラット(体重320-350g)20匹を4群に分け, 1群は対照群とし, 実験群に0.1, 0.5, 2.5 μg/kgの1α-OH-D3を30日間連続経口投与を行った。上顎切歯を材料として, ビタミンD3の象牙質形 成に及ぼす影響, 特にOsteodentin形成を光顕ならびに電顕により観察し, 次に示す結果を得た。

    1. ビタミンD3低投与群では変化はみられず, 高投与群で著明な形態的変化が認められた。

    2. 象牙質と象牙芽細胞の配列の乱れは最初に基底側⅓にみられ, 切端に向って周期的に生じる。

    3. 象牙質と象牙芽細胞の配列が乱れる部位では, 象牙前質が消失し, 退行性の象牙芽細胞が多数出現してその一部は不規則な象牙質中に埋入されていく。

    4. 象牙芽細胞の配列が乱れる部位では象牙芽細胞直下の歯髄側に前象牙質様の構造物が出現し, この構造物はコラーゲン基質から成っている。

    5. 上記の前象牙質様構造物に接する象牙芽細胞の近位端には象牙芽細胞の突起が出現し, 基質小胞様の構造物が出現してくる。

    6. 上記の結果からビタミンD3の過剰投与により, 周期的に象牙芽細胞に退行性変化が生じ象牙芽細胞は自ら分泌した基質中に埋入してOsteodentinを形成していく可能性が示唆される。

  • 村井 繁夫, 斉藤 弘子, 平井 俊英, 船越 正夫, 武田 則行, 伊藤 忠信
    1983 年 8 巻 3 号 p. 146-150
    発行日: 1983/11/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    交感神経性唾液分泌に対する抗精神病薬クロルプロマジン(CPZ)の作用を明らかにするため, マウスのフェニレフリン(PHE)誘導唾液分泌反応に及ぼすCPZの1回および3週間連続投与の影響について検討した。実験方法: マウスにおけるPHE (20mg/kg, s. c.) 誘導唾液量の測定には, Richter 法を改良した方法を用いた。CPZ (2, 40mg/kg, s. c.) とフェノキシベンザミン(PBZ, 0.05, 2.5mg/kg, s. c.) は, 1日1回21日間投与した。結果および考察: (1). CPZおよびPBZの1回投与はPHE誘導唾液分泌反応を用量依存的に抑制した。(2). これらの被検薬の抗唾作用は大量のCPZ (40mg/kg/日×21日間) 投与群の場合を除いて, 連続投与期間中ほとんど変化を示さなかった。(3). CPZ40mg/kg/日×21日間の抗唾作用は減弱した。この減弱は薬理学的除神経増感の発現によると考えられる。(4). CPZの長期服用時に起る口渇や dry mouth などはCPZのもつ副交感神経抑制作用ばかりでなく, 交感神経抑制作用も含めた総合的な作用により誘発されると考えられる。

  • 伊藤 一三, 藤村 朗, 大沢 得二, 都筑 文男, 横須賀 均, 中居 浩司, 阿部 真裕, 佐々木 利明, 野坂 洋一郎
    1983 年 8 巻 3 号 p. 151-162
    発行日: 1983/11/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    ミニブタ雄6頭の石膏模型とX線写真を用い, 歯の方向や位置を確認しながら, 生後6.5ヵ月齢から36ヵ月齢まで毎週1回観察し, データを集積しミニブタにみられる横口蓋ヒダからヒトの場合のこのヒダの機能などについて考察したところ以下の如くであった。

    1. ミニブタの横ロ蓋ヒダは片側20~25本であり, 22本のものが最も多かった。

    2. 横口蓋ヒダの数は乳歯列期より永久歯列期に至るまで変化はなく一定であった。

    3. 最後方の横ロ蓋ヒダは常に最後臼歯の遠心部に位置していた。

    4. 機能としては食物摂取と咀嚼および嚥下作用の補助的役割が考えられる。

  • 伊藤 一三, 藤村 朗, 大沢 得二, 都筑 文男, 横須賀 均, 中居 浩司, 阿部 真裕, 佐々木 利明, 野坂 洋一郎
    1983 年 8 巻 3 号 p. 163-175
    発行日: 1983/11/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    上下顎および歯列の成長発育についてミニブタ6頭を用い, 生後6.5ヵ月齢から36ヵ月齢までの約30ヵ月間にわたり, 毎週1回, 印象採得して得られた上下顎累年石膏模型を観察した結果, 以下のことが明らかとなった。

    1. 上顎長径は生後24ヵ月までに成長が著しく生後36ヵ月までに初めの約1.5倍に達する。

    2. 下顎では生後12ヵ月まで成長が著しく, 犬歯部で特に著しい。

    3. 第2大臼歯の萌出の場は上顎では第2大臼歯萌出前に準備され, 下顎では萌出中に歯槽突起が発育していた。

    4. 発育の中心は第1小臼歯部にあった。

  • 一臨床所見とその処置一
    野坂 久美子, 袖井 文人, 丸山 文孝, 甘利 英一
    1983 年 8 巻 3 号 p. 176-186
    発行日: 1983/11/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    著者らは, 小臼歯咬合面に発現した中心結節が, 破折などで種々の障害を呈した9症例を経験した。そこで, これらの症例の臨床所見ならびに治療法について検討した結果, 次のような結論を得た。

    中心結節の破折などで, 併発症を起こした年齢は平均10.7歳であった。また, 歯種ならびに中心結節の存在部位は, 下顎第2小臼歯の中央溝部が最も多く, その時の状態は破折しているものがほとんどであった。臨床症状はほとんどが急性炎症であり, その処置として, 根末完成歯の感染根管治療が多かったが Vilapex® による根管充填は根尖の閉鎖に非常に有効であった。なお, 9症例中8例において, 患歯以外にも中心結節を有する歯が存在しており, このことは, 併発症を起こしている患歯発見の一つの目安になるものと思われた。

  • 第4報 線維性病変
    藤沢 容子, 戸塚 盛雄, 武田 泰典, 鈴木 鍾美, 工藤 啓吾, 藤岡 幸雄
    1983 年 8 巻 3 号 p. 187-195
    発行日: 1983/11/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    顎骨中心性に生じた良性線維性病変22例について WHO の分類に基づきその病理組織像を中心に検討した。症例の内訳は化骨性線維腫4例, セメント質形成線維腫5例, 線維腫6例, 粘液腫5例, 線維性骨異形成症2例であった。臨床的に症例の大部分は下顎臼歯部の腫脹を呈しており, 病変は多数歯にわたる広範囲なものが多くみられた。性差はみられなかった。

  • 太田 耕造, 坂巻 公男
    1983 年 8 巻 3 号 p. 196-202
    発行日: 1983/11/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    上顎咬合法軸位撮影における撮影条件の見直しと散乱線除去格子 (Grid) の配置によるX線写真の診断精度の向上を試みた。方法は, スクリーン・フィルム組み合わせを用い, これに Grid を配置し管電圧を 60kV, 70kV, 80kV と変化させ, 頭部ファントームを被写体として各管電圧による写真の黒化度がほぼ同一になるように上顎咬合法軸位撮影を行った。3枚の写真について, 良いものは +1, 劣るものは -1, 同等であれば0のスコアを与え, 9人 (歯科医7名, 診療放射線技師2名) の観察者によるスコアの合計から写真の診断精度を評価した。また, 歯科用X線装置を用い, Grid を配置した場合と配置しない場合について実際の患者撮影を想定して同様の撮影, 評価を行った。

    スクリーン・フィルム組み合わせに Grid を配置した場合, 撮影管電圧による写真の診断精度には明らかな差がなかった。歯科用x線装置を用いた場合, Grid を配置したX線写真の診断精度が高かった。上顎咬合法軸位撮影にスクリーン・フィルム組み合わせを使用する場合, Grid を配置することによって臨床的により診断精度の高いX線写真が得られると考えられた。

  • 濱田 育男, 金子 克
    1983 年 8 巻 3 号 p. 203-211
    発行日: 1983/11/15
    公開日: 2018/12/31
    ジャーナル フリー

    Streptococcus sanguis Ⅰ を好気培養し, lysozymeで消化後, Brij 58で処理, そしてSephadex G-100によるゲル濾過で菌体表層からDNase活性分画であるFr. ⅠとFr. Ⅱを得た。これらの酵素の至適pH域値は8.5であった。また, 酵素活性は Mg2+, Mn2+, Ca2+, Cu2+ の存在によって影響されなかった。一方, 菌体外 DNase はMg2+とMn2+の添加によって活性化され, Ca2+, Cu2+ ではその活性が抑制された。特にCu2+の高濃度(0.1mol/ml)では完全に阻害された。 SDS-PAGEによる分子量測定でFr. Ⅰ の分子量は約85,000~90,000, Fr. Ⅱ のそれは約40,000~45,000であった。これらの値は菌体外 DNase の分子量24,000とは大きくかけ離れている。0.8%アガロースゲル電気泳動分析において, Fr. Ⅰ とFr Ⅱ はともにnative thymus DNA, λDNA, fd viral DNA そして熱変性 thymus DNAを分解したことを示した。さらに native thymus DNA に対しこの比活性はFr. Ⅰ がFr. Ⅱ よりも大であったが, λDNA, fd DNA そして熱変性 thymus DNAに対するそれは, Fr. Ⅱ がFr. Ⅰ より大であった。

    以上のことから, 菌体表層 DNase はnative thymus DNA だけに作用する菌体外 DNase と比較して, 数種のDNA基質を分解することから特異性の低い酵素であり, さらにFr. Ⅰと Fr. Ⅱ はそれぞれ異なる酵素活性を有することが示唆された。

例会記事
岩手医科大学歯学会第16回例会抄録
総索引(総目次) 第8巻(昭和58年)
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