伊豆沼・内沼研究報告
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1 巻
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 斉藤 憲治, 川岸 基能, 進東 健太郎
    2007 年 1 巻 p. 1-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2017/11/10
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    アカヒレタビラ Acheilognathus tabira (a) sensu Nakamura (1969) の卵は鶏卵形で,稚魚の背びれにはセボシタビラ A. tabira subsp. (b) sensu Nakamura のような黒斑がないことが知られている.宮城県名取川水系の農業水路で採集したアカヒレタビラの成魚および稚魚を観察したところ,搾出完熟卵は長楕円形で(長径2.50±0.063mm,短径1.22±0.085mm),稚魚の背びれには黒斑がなく,黒色素胞が広い範囲に散在していた.種としてのタビラまたはアカヒレタビラには従来知られていない変異がある.

  • 川岸 基能, 藤本 泰文, 進東 健太郎
    2007 年 1 巻 p. 7-10
    発行日: 2007年
    公開日: 2017/11/10
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    2006 年秋にゼニタナゴを伊豆沼・内沼集水域内で採集した.ゼニタナゴは,環境省のレッドデータリストにおいて,絶滅危惧種IB 類に指定されている小型のコイ科魚類である.伊豆沼・内沼集水域内では,ゼニタナゴの生息が,2000 年以降に確認されていなかった.採集した水域では,魚食性の魚類であるオオクチバスやハスも採集された.この水域でのゼニタナゴの生息状況は極めて厳しいと考えられる.伊豆沼・内沼集水域内で保護を進めるため,採集した水域を中心に,伊豆沼・内沼集水域での本種の詳しい生息状況を早急に調査する必要がある.

  • 藤本 泰文, 進東 健太郎, 北島 淳也
    2007 年 1 巻 p. 11-19
    発行日: 2007年
    公開日: 2017/11/10
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    絶滅が危惧されるゼニタナゴと移入種であるタイリクバラタナゴの仔魚の浮上時期を,両種が同所的に生息する場所で調査した.浮上直後のゼニタナゴ仔魚の出現数は,浮上時期の初期の5 月下旬の水温約18.6℃の時期にピークを示し,その後減少した.浮上直後のタイリクバラタナゴ仔魚の出現数は,6 月初旬から序々に増加し,6 月下旬から7 月中旬まで高値を示した後減少し,10 月下旬まで低値を示した.ゼニタナゴ仔魚の浮上は,タイリクバラタナゴ仔魚の浮上よりも早期に生じた.ゼニタナゴ仔魚の出現が浮上開始後1 ヶ月間以内に集中したことから,ゼニタナゴの保全に取り組む生息地で本種の生息状況を把握するには,ゼニタナゴの浮上開始後2-3 週間以内に仔魚の調査を実施することが適切だと考えられる.

  • 藤本 泰文, 川岸 基能, 進東 健太郎
    2007 年 1 巻 p. 21-26
    発行日: 2007年
    公開日: 2017/11/10
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    2006 年秋に外来種であるブルーギルを伊豆沼・内沼の集水域内にある照越ため池で確認した.採集したブルーギルは当歳魚と成魚であった.照越ため池でブルーギルが繁殖していると考えた.照越ため池からの排水が流入し,伊豆沼・内沼に流入する河川でもブルーギルの当歳魚を採集した.照越ため池からブルーギルが流出した可能性が高く,今後も伊豆沼へのブルーギルの流出が生じる危険性がある.現時点では伊豆沼・内沼でブルーギルが繁殖している可能性は低い.しかし,伊豆沼・内沼でブルーギルが繁殖し定着した場合には,生態系への新たな被害が生じ,伊豆沼・内沼で取り組まれているオオクチバス駆除活動などの生態系復元を目指した保全活動に大きな悪影響が生じるだろう.ため池からの拡散を防止しつつ,照越ため池に生息するブルーギルを確実に駆除する必要がある.

  • 嶋田 哲郎
    2007 年 1 巻 p. 27-34
    発行日: 2007年
    公開日: 2017/11/10
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    伊豆沼・内沼周辺の水田生態系を代表するガンカモ類であるマガンとオオハクチョウを対象に,沼北部の水田地域で2004/05 年の越冬期に環境利用の調査を行なった.マガンは10 時以降調査地域に飛来して活動した一方で,オオハクチョウは調査地域へ午前中,順次飛来した.マガンとオオハクチョウの主な行動は採食と休息であった.環境利用をみると,マガンでは12 月に秋耕水田で個体数密度が高かったが,11,2 月ではコンバイン水田,畦での密度が高く,特に採食個体の密度はコンバイン水田と畦で高かった.マガンとは対照的に,オオハクチョウは採食,休息ともふゆみずたんぼとその周辺の畦の密度が高かった.両種の違いは,マガンが主につまみ取り型の採食方法をもつのに対し,オオハクチョウは水と籾を一緒に食べて水を嘴の脇から出すという漉し取り型の採食方法をもつことによると考えられる.

  • 高橋清孝・須藤篤史・花輪正一
    2007 年 1 巻 p. 35-46
    発行日: 2007年
    公開日: 2017/11/10
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    オオクチバスの産卵を抑制するため,人工産卵床を検討し開発した.15 タイプ128 個の人工産卵床を伊豆沼南岸の天然産卵場 (砂質帯,水深40-140cm) に設置した.8 個の人工産卵床は110~140cm の深すぎる水深帯に設置したため産卵状況を観察できず,また,14 個は主にバス釣り人によって破壊された.オオクチバスは5 月上旬から6 月下旬にかけて32 個の人工産卵床に産卵した.産卵箱としてはプラスチックネット構造のトレーがプラスチック製コンテナなどに比べ産卵率が高い傾向を示した.また,産卵基質としては砕石を用いた人工産卵床で産卵率が高く,遮蔽物としては三方の視界を遮るプラスチックネットのコの字型カバーが有効であった.これらを組み合わせた人工産卵床を5 個作製して設置したところ,5 個全てで産卵が認められた.

  • 坂本 啓・大浦 實・二宮景喜・高橋清孝
    2007 年 1 巻 p. 47-51
    発行日: 2007年
    公開日: 2017/11/10
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    環境省レッドデータブックに絶滅危惧ⅠB 類として記載されているシナイモツゴ Pseudorasbora pumila pumila は,近縁種モツゴ P. parva との交雑により生息範囲が狭められ,また近年問題化しているオオクチバス Micropterus salmoides 等の外来魚により,絶滅の危機に追い込まれている.そこでシナイモツゴ郷の会では,シナイモツゴの人工繁殖・飼育方法を確立し,その技術を用いた生態系復元へ取り組むこととした.産卵基質として従来型の塩化ビニル樹脂パイプの代わりにプラスチック製植木鉢を用いたところ,100%の産卵率を得た.卵の移動時期は,ふ化直前の発眼卵での移動が最も高いふ化率を示した.これらの方法を併用することにより,シナイモツゴの人工繁殖技術は飛躍的に向上した.

  • 齋藤 大, 鴨下 智裕, 平出 亜, 佐藤 好史, 進東 健太郎, 嶋田 哲郎
    2007 年 1 巻 p. 53-63
    発行日: 2007年
    公開日: 2017/11/10
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    伊豆沼において,サイドスキャンソナーによるオオクチバス産卵場の調査を行なった.サイドスキャンソナーの音響画像のみでは個々のオオクチバス産卵床を判別することはできなかったが,産卵場の条件となる底質や障害物の区分の他に,リップル (砂漣されん) を識別することにより波浪の影響についても考慮することができた. さらに,伊豆沼における主要な産卵場である人工産卵床設置範囲は,底質が主に砂で構成されており,なおかつ波浪の影響が弱い箇所であることが確かめられた. 一方,人工産卵床設置範囲以外は主に泥や砂泥で構成されており,砂で構成されている範囲においては,周囲のリップルの分布状況から波浪の影響を受ける環境であることが推察された.本手法により,濁りの強い水域であっても,水深1m 以上であればオオクチバスやコクチバスの産卵場をある程度絞り込むことが可能であり,今後の外来魚防除に向けた有効な手法の一つになり得ることが示された.

  • 進東 健太郎, 太田 裕達, 藤本 泰文
    2007 年 1 巻 p. 65-72
    発行日: 2007年
    公開日: 2017/11/10
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    宮城県に位置する伊豆沼・内沼では,1996 年以降北米原産のオオクチバスが急増し,漁業被害のほか生態系への悪影響が生じた.伊豆沼・内沼に生息するオオクチバスの駆除を目的として,人工産卵床を利用した卵の駆除,小型刺網による親魚の駆除,三角網による稚魚の駆除を2004 年から2006年にかけて行なった.オオクチバスの人工産卵床への産卵は5 月初旬から6月中旬の水温16-24℃の時期に生じた.人工産卵床へのオオクチバスの産卵は122-252回行なわれ,全ての卵を駆除した.人工産卵床への産卵は5 月下旬の水温20℃前後の時期にピークを示した.オオクチバスの産卵と水温の関係は他の事例と一致した.オオクチバスの人工産卵床への産卵は,天然湖底での産卵状況を示すと考えた.小型刺網による親魚駆除数は13-56 個体で,産卵確認数に対する捕獲割合は11-22%と低かった.三角網による稚魚駆除数は約100-500万個体であった.2004 年と2006年には最初の産卵確認の21 日後に浮上前の稚魚を駆除した.2005年には31日後で,他年と比べ10日遅かった.稚魚の駆除数には年変化が大きく,透明度の低い水域では駆除結果にばらつきあるものと考えた.

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