伊豆沼・内沼研究報告
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11 巻
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 高橋 雅雄, 宮 彰男, 蛯名 純一, 三戸 貞夫, 麦沢 勉, 津曲 隆信
    2017 年 11 巻 p. 1-5
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/10
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    2012 年12 月8 日夕方と翌9 日早朝に伊豆沼・内沼の4 ヶ所のヨシ原でオオセッカの生息調査を行い,伊豆沼の北岸で6 個体,内沼の南岸で2 個体を確認した.この結果,伊豆沼・内沼は宮城県内におけるオオセッカの越冬地のひとつであることが確かめられた.

  • 児玉 敦也, 木村 泰史, 池田 雄基, 河合 幸一郎, 斉藤 英俊
    2017 年 11 巻 p. 7-15
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    伊豆沼・内沼におけるユスリカ相を明らかにすることを目的とし,2011 年9 月,2015 年10 月, 2016 年9 月の3 回にわたってユスリカ成虫の採集を行い,3 亜科15 属25 種の成虫を得た.このうち 23 種は伊豆沼・内沼周辺での過去の記録はなく初記録となった.今回の調査において優占種となったトラフユスリカPolypedilumPentapedilumtigrinum(Hashimoto)は,幼虫が水生植物を摂食するとされている.ほかにも水生植物から記録されているユスリカ数種が得られた.これは,水生植物の繁茂する伊豆沼・内沼の環境を反映していると考えられる.

  • 浅香 智也, 内山 りゅう
    2017 年 11 巻 p. 17-24
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/10
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    2016 年5 月2 日18:13–19:30 に,愛知県豊川市の源流河川でトウカイナガレホトケドジョウ(Lefua sp.2)の追尾行動を確認した.この間に,このドジョウは,大礫と大礫の隙間に入って,それぞれの臀鰭を合わせた.そして,木の枝や大礫の上に乗った卵が確認された.この行動は本種の産卵行動であると思われるため報告する.

  • 嶋田 哲郎, 高橋 佑亮
    2017 年 11 巻 p. 25-27
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    One pied avocet Recurvirostra avosetta was observed in lotus Nelumbo nucifera fields around Lake Izunuma-Uchinuma, Miyagi Prefecture, from 20 April to 2 May 2017. This is the first record of the occurrence of this species at Lake Izunuma- Uchinuma.

  • 今村 彰生, 橋本 果穂, 丸山 敦
    2017 年 11 巻 p. 29-40
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/10
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    近年の琵琶湖での漁獲減少が著しい魚食性の在来魚ハス(絶滅危惧II 類)を,夏期の琵琶湖北湖沿岸において刺網によって捕獲調査した.オス51 個体,メス14 個体が捕獲され,性比はオスに偏った.メスでは捕獲した全個体の腸管が空であった.雌雄あわせた捕獲個体の空腸率は0.83 であり,季節を問わず空腸率が0.5 を下回る1963 年の琵琶湖での報告とは大きく異なった.体長–体重曲線による分析においても,データ数は不十分ながら,食物不足の可能性を示す負のアロメトリー成長がメスで示唆された.本研究でのデータ数はやや少ないため,生活史全体および繁殖期と非繁殖期を通じたハスの個体群構造およびその動態などを詳細に調査し,漁獲減少との関連を検証することが急務であると考えられる.

  • 安野 翔, 鹿野 秀一, 藤本 泰文, 嶋田 哲郎, 菊地 永祐
    2017 年 11 巻 p. 41-53
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    動物プランクトンが,浮遊性のメタン酸化細菌を摂食することでメタン起源の炭素原子を同化する経路を浮遊系メタン食物連鎖と呼ぶ.浅い富栄養湖である伊豆沼において,浮遊系メタン食物連鎖を,炭素安定同位体比(δ13C 値)を用いて検出することを試みた.動物プランクトン(枝角類および橈脚類)のδ13C値は,2006年6月から2008年9月にかけて-38.4‰から-26.5‰の間で変動し,特に2007 年8,9月および2008 年8 月に低下する傾向が認められた.動物プランクトンは,懸濁有機物(POM;-33.5‰~-27.8‰)よりもしばしば低いδ13C 値を示したが,POM のC/Chl 比(全有機態炭素量とクロロフィル量の比)から推定した植物プランクトンのδ13C 値は,多くの月においてさらに低いδ13C 値を示した.つまり,動物プランクトンは,大部分の月においてPOM 中の植物プランクトンを選択的に摂食していることが示唆された.一方,2007 年8~9 月および2008 年8 月では,動物プランクトンのδ13C 値は,推定した植物プランクトンよりもさらに低い値であったことから,メタン食物連鎖を通じてδ13C値の低いメタン起源の炭素原子を同化したことが示唆された.混合モデルにより,動物プランクトンに対するメタン食物連鎖の寄与率を推定したところ,2007 年8 月で6.5~9.6%,同年9 月で2.3~3.5%,2008 年8 月で7.3~10.9%であったが,それ以外の月ではメタン食物連鎖の寄与は検出されなかった.8~ 9 月に湖底直上の溶存酸素濃度が低下することで,堆積物中のメタンが水中まで到達し,浮遊系メタン食物連鎖が駆動したものと考えられる.

  • 北野 大輔, 鈴木 誉士, 中川 雅博, 浅香 智也
    2017 年 11 巻 p. 55-66
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/10
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    マシジミCorbicula leana は,全国的に減少傾向にあり,生息域での有効な保全策の検討が遅れている.本研究では,淡水産のシジミ類の管理手法を見出すため,琵琶湖につながる農業水路で(1)シジミ類の個体数の変動と,(2)底質の厚さと個体数の関係を調べた.さらに,室内実験で(3)アメリカザリガニProcambarus clarkii の捕食がシジミ類の個体数に及ぼす影響を調査した.その結果,水路で のシジミ類の個体数は調査期間中に3.9 個体~34 個体/m 2 の範囲で変動し,夏期から秋期の調査時には再生産個体の増加がみられた.また,底質として砂が堆積する場所に多く生息することが分かった.室内実験では,特に底質が無い条件下で小型シジミ類の捕食圧が高まることが示され,コンクリートが露出した水路において捕食圧が高まる可能性が示唆された.以上のことから,農業水路でのシジミ類の管理には,底質の堆積に着目することが重要で,個体数の減少やその兆しがあるときには,アメリカザリガニを取り除くとともに,泥溜めの設置などの工夫をすることが望ましい.

  • 高橋 佑亮, 前田 琢, 本田 敏夫
    2017 年 11 巻 p. 67-74
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    An immature Golden Eagle Aquila chrysaetos was observed at Lake Izunuma-Uchinuma, Miyagi Prefecture, Japan, on December 9, 2016. This is the first record of this species from Lake Izunuma-Uchinuma. An individual reasonably presumed to be the same bird, based on plumage peculiarities, was observed around Mt. Goyo, Iwate prefecture, on March 28, 2017. These observations reveal a 72 km northeastward migration of this individual.

  • 萩原 富司
    2017 年 11 巻 p. 75-81
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/10
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    霞ヶ浦の江戸崎入り奥部において2009~2017 年の期間に中国原産のコイ科魚類ダントウボウMegalobrama amblycephala が7個体採集された.このうち2016~2017年の短期間に採集された4個体の体長からは2年連続して再生産されており,本種はすでに霞ヶ浦で再生産しているであろう.関東地域において霞ヶ浦は高い生物多様性を有し,多くの希少種の生息地である.このため本種の定着と増殖により在来生態系に予知できない影響が及ぶ恐れもあり,増殖と他水域への拡散を防止するための漁業者や釣り人への周知と早期防除が望まれる.

  • 芦澤 淳, 長谷川 政智, 高橋 清孝
    2017 年 11 巻 p. 83-93
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/10
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    アメリカザリガニProcambarus clarkii が生態系に及ぼす被害を防止するために,本種の駆除活動が各地で行なわれている.アメリカザリガニの駆除活動においては,餌で誘引する罠を用いた捕獲が一般的に行なわれている.罠に使用する餌には生餌(魚肉、牛レバー)が使用されることが多いが,生餌の価格は高く,保管にコストがかかることが問題である.また,これまでに国内で行なわれた罠の餌に関する研究においては,生餌以外の餌についてアメリカザリガニに対する誘引効果が示されたが,これらの餌には誘引効果や費用の面で課題がある.そこで,本研究では,アメリカザリガニの捕獲罠に使用する餌について,誘引効果や費用対効果がより高い餌を明らかにすることを目的とし,配合飼料(ドッグフード,マス用飼料,およびコイ用飼料)と,従来から使用されている生餌および糠団子の間で,アメリカザリガニに対する誘引効果および費用対効果を比較した.その結果,マス用飼料によるアメリカザリガニの誘引効果は,生餌および糠団子と同程度であったが,ドッグフードの誘引効果は糠団子よりも高かった.また,ドッグフードとマス用飼料の費用対効果は,どちらも生餌よりも高かった.これらの結果から,ドッグフードはアメリカザリガニの誘引効果と費用対効果がともに高い餌といえた.また,脂質含量が少ないコイ用飼料については,ドッグフードに比べて費用対効果がやや劣るものの,誘引効果はドッグフードおよびマス用飼料と同程度であった.以上より,アメリカザリガニの捕獲罠に使用する餌としては,誘引効果と費用対効果の面ではドッグフードが適していたが,油膜の発生による生態系への影響が懸念される場合には,コイ用飼料を使用することで,アメリカザリガニを効率よく捕獲できるだろう.

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