伊豆沼・内沼研究報告
Online ISSN : 2424-2101
Print ISSN : 1881-9559
ISSN-L : 1881-9559
13 巻
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 棗田 孝晴, 田中 潤, 田中 芳彦
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 13 巻 p. 1-16
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    千葉県北東部の8 池を対象として,2012 年の夏期(7~8 月)と秋期(10~11 月)に淡水性カメ類と水生生物の捕獲調査を行った.8 池はいずれも国外外来魚オオクチバスMicropterus salmoides もしくはブルーギルLepomis macrochirus の侵入が見られ,うち2 池ではオオクチバスとブルーギルの2 種が,4 池でオオクチバスが,2 池でブルーギルが確認された.淡水性カメ類の生息が確認された6 池のうち5 池では,水生生物(小型魚類,甲殻類)が存在したのに対し,カメ類の生息が確認されなかった2 池では,水生生物は確認されなかった.両季節ともカメモンドリで最も多く捕獲されたカメの種はクサガメMauremys reevesii であった.クサガメの捕獲個体数と環境要因(水温,溶存酸素,pH,電気伝導度)との間には,両季節とも有意な相関は認められなかった.クサガメの捕獲個体数は夏期ではテナガエビ科及びコイ科魚類モツゴPseudorasbora parva の捕獲個体数と,秋期ではアメリカザリガニProcambarus clarkiの捕獲個体数とそれぞれ有意な正の相関を示した.ミシシッピアカミミガメTrachemys scripta elegans の夏期の捕獲個体数は,クサガメと同様にテナガエビ科の捕獲個体数と有意な正の相関を示し,両種は餌生物をめぐる競合関係にあることが示唆された.水生生物の捕獲数を説明する有意な重回帰式には,オオクチバスの侵入(負の影響)と水生植物の繁茂(正の影響)の2 変数が組み込まれ,池沼生態系の淡水性カメ類が餌料として潜在的に利用可能な水生生物に対する,オオクチバスの負の影響の存在が示唆された.

  • 秋山 吉寛, 水野 真希, 白井 正樹
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 13 巻 p. 17-26
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    イシガイ科貝類の幼生を魚体の特定部位へ寄生させるため,麻酔薬MS-222 を用いてウキゴリ,ヨシノボリ類およびミナミメダカの動きを1–3 分間止める方法を検討した.麻酔状態の持続時間は,魚種に関わらず,MS-222 の濃度の増加と共に延長した.本研究の方法に従う場合,ウキゴリとヨシノボリ類には100 mg・l-1,ミナミメダカには200 mg・l-1 のMS-222 の使用が適していた.

  • 速水 裕樹, 藤本 泰文, 横山 潤
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 13 巻 p. 27-32
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー
  • 速水 裕樹, 藤本 泰文, 横山 潤
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 13 巻 p. 33-36
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー
  • 嶋田 哲郎, 森 晃
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 13 巻 p. 37-43
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    宮城県は他県では年1 回であるガンカモ類の個体数調査を年3 回実施しているが,その意義を生かした解析はこれまでなかった.ここではハクチョウ類に着目し,11 月から1 月にかけて個体数増加率を秋の渡りの進み具合,1 月から3 月にかけての個体数減少率を春の渡りの進み具合とし,気象条件と給餌との関係を分析した.2000/01年から2014/15年までの15年間の調査において,宮城県で1 月に記録されたハクチョウ類の平均個体数は11月では3,870羽,1月では13,057羽,3月では3,230 羽であった.ハクチョウ類の増減率と環境要因の関係をみると,宮城県のハクチョウ類は12 月の降雪量が多いほど秋の渡りが早く進み,2 月の降雪量が少ないほど春の渡りが早く進んだ.一方で,増減率と給餌箇所数には有意性は認められなかった.

  • 寺本 匡寛
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 13 巻 p. 45-56
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    カヤネズミの生息環境は,通常,低地の草地,水田,畑,休耕地,沼沢地などのイネ科・カヤツリグサ科の植物が密生する水気の多いところに多いとされる.一方,全国的に河川敷・堤防が最もよく利用されているとの報告もあるが,河川敷・堤防の植生と営巣との関係についての報告は少ない.さらに,都市域の河川敷緑地における生息状況と植生面積との関係について調査検討した事例は見られない.そこで,名古屋市西部の庄内川の河川敷・堤防においてカヤネズミの球状巣を調査し,分布と周辺植生の関係を解析することで,都市域の河川敷緑地に生息するカヤネズミの営巣環境の特徴を把握した.その結果,確認された球状巣を中心に20m バッファ内の周辺植生は,セイバンモロコシやオギが優占する草地面積が745.4–860.9m2(65.1–79.3%)と多くを占め生息適地と考えられるものがあった.一方で,人工裸地や公園・グラウンドが優占し,草地面積が114.2–297.8m2(9.2–30.1%)と少ないにも関わらず営巣していることが確認された.名古屋市のような都市部の人為的影響の強い河川敷緑地において,わずかな植生を営巣場所として活用していることが明らかとなった.

  • 浅香 智也, 鈴木 誉士, 中川 雅博
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 13 巻 p. 57-65
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    愛知県東三河地方の豊川におけるエビ類の報告は少ない.このため,環境保全活動を行う基礎資料が必要と考えた.そこで2010 年から2013 年までに,豊川でエビ類相の調査を行った.調査を行った場所は豊川の下流域と中流域で,ここに13 地点を設けた.採集道具は,タモ網である.その結果, 7 科16 種のエビ類が確認され,個体数が多く確認されたエビ類はアキアミで,広域で確認されたエビ類はテナガエビであった.確認されたエビ類のなかで明らかな外来種は,アメリカザリガニのみであった.生息環境に対応したエビ類の分布の傾向を把握するために,クラスター分析を行った.汽水域下部には海水種,汽水域上部と淡水域下部には両側回遊種,淡水域中上部には陸封種の分布が関連するという3 つのグループに分けられた.

  • 渡辺 朝一, 鈴木 康
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 13 巻 p. 67-73
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    2005 年12 月11 日,越後平野の水田地帯の一角にある休耕田において,コハクチョウ137 羽がケイヌビエの種子を採食していた.コハクチョウによる休耕田の利用は希である.

  • 関野 遼, 大森 健策, 山本 天誠, 荒山 和則, 加納 光樹
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 13 巻 p. 75-81
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    霞ケ浦の伝統食材「ごた煮干し」に含まれる魚類・エビ類の種組成について,2018 年8–9 月に製造業者11 店舗で購入したサンプルを用いて調べたところ,計6 科10 種51,231 個体が出現した. 最も個体数が多かったのはテナガエビで全個体数の 43 .4 % を占め,次いで,ヌマチチブ(29.6%),シ ラウオ(25.3%),ワカサギ(0.8%),アシシロハゼ(0.7%)の順であった.ごた煮干しの種組成の類似性から,各サンプルは2 つの店舗グループに分けられたものの,グループ間での種組成の違いは店舗の位置や購入日のデータとは関連付けられなかった.

  • 安野 翔, 藤本 泰文, 嶋田 哲郎, 鹿野 秀一, 菊地 永祐
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 13 巻 p. 85-96
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    2006 年に伊豆沼において,中国大陸原産の肉食性魚類であるカムルチーChanna argus の炭素・窒素安定同位体比を用いた食性解析をするとともに,オオクチバスMicropterus salmoides の食性との比較を行った.ベイズ推定を用いた混合モデル(Stable Isotope Analysis in R)による推定の結果,全長100mm 未満のオオクチバスは橈脚類,次いで魚類を捕食していたのに対し,カムルチー稚魚(全長56–69mm)は,主に枝角類を餌としており,魚類をほとんど餌としていないことが示唆された.これは,カムルチー稚魚にとって捕食可能な体サイズの魚類が伊豆沼にはほとんど生息していなかったためだと考えられる.全長300mm 以上のオオクチバス成魚は同じく外来生物であるアメリカザリガニProcambarus clarkii を主に捕食していた.カムルチー成魚(全長530–780mm)は,オオクチバス成魚よりも割合は低いものの,アメリカザリガニProcambarus clarkii を主要な餌としており,次いで小型雑食魚を餌として利用していた.今後,オオクチバス駆除に伴いアメリカザリガニが増加した場合,カムルチーがアメリカザリガニに一定の捕食圧を与えると考えられる.一方で,在来魚に対しても捕食圧を与える可能性があるため,本種の個体数や食性を注視する必要があるだろう.

feedback
Top