浮葉植物の一種アサザ(ミツガシワ科)は,日本各地で絶滅が危惧される植物である.本研究では本種の有性生殖に関連する生物間相互作用を明らかにする目的で,伊豆沼のアサザ個体群を対象に訪花昆虫相を調査した.2009, 2010年の観察の結果,2目5種の訪花昆虫が記録され,モンシロチョウを除いていずれの種も送粉昆虫と判断された.主要な訪花昆虫はハナバチ類で,特にクロマルハナバチとセイヨウミツバチの訪花頻度が高かった.本研究の観察結果は,ハナアブ類など双翅目昆虫を欠くことを除けば,ヨーロッパでの観察例と類似しており,イチモンジセセリが主要な送粉昆虫となっている関東地方での観察例とは傾向が異なっていた.これはアサザの開花期における東北地方と関東地方の各昆虫群の相対的な頻度の違いに起因すると考えられる.
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