伊豆沼・内沼研究報告
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8 巻
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 高橋 清孝, 藤本 泰文, 根元 信一, 芦澤 淳, 池田 洋二
    2014 年 8 巻 p. 1-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    オオクチバスによる生態系への影響が深刻化した伊豆沼・内沼では,この防除のため,2000年よりオオクチバスの各成長段階に対応する総合的防除技術の開発と導入が進められてきた.沼に生息するオオクチバスを調査した結果,産卵期に大量に出現していたオオクチバス稚魚は体長20mm以上に成長すると魚食性を示し,コイ科魚類などの仔稚魚を捕食していた.そのため,沼の魚類相を復元するにはオオクチバスの繁殖抑制が不可欠と判断した.そこで,繁殖抑制を図る目的で,オオクチバスに営巣させ,産み付けられた卵を巣ごと駆除することが可能な人工産卵床の開発に取り組んだ.さまざまな形式の人工産卵床を試作して沼に設置したところ,プラスチックトレーの中に産卵基質となる直径4-5cmの砕石を入れ,トレーの側面3方にプラスチックネットの衝立を取り付けたコの字型衝立形式の人工産卵床に対し,オオクチバスは高い頻度で産卵することが確認された.そこで,この人工産卵床を用いた防除活動をボランティアの協力を得て2004年より開始した.しかし,人工産卵床に産み付けられた卵は3-4日でふ化して逸出するため,週2回の駆除作業が不可欠であった.そこで,省力化を目的とした2段式人工産卵床を開発した.これは,オオクチバスがふ化後の数日間,石の下などの間隙に潜んで発育する習性を利用し,細かい網を張ったトレーを下面に装着して2段構造とする事により,人工産卵床の砕石などでふ化した仔魚を下段のトレーで回収できるようにしたものである.この改良により,水温21℃以下であれば週1回の作業で人工産卵床の仔魚を確実に回収することが可能となり,また,1産卵床あたりの卵や仔魚の回収数も増加した.更なる省力化を図るため,ふ化仔魚を他の魚類に捕食させる構造への改良といったメンテナンスフリーを図る試験を3種類実施したが,メンテナンスフリーに繋がる成果は得られなかった.現時点では,2段式人工産卵床が作業コストや回収数の観点から最善の人工産卵床であり,この沼での防除活動に用いられている.

  • 浅香 智也, 鳥居 亮一, 中川 雅博
    2014 年 8 巻 p. 17-21
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    2012年9月に愛知県矢作古川において,外来魚のオオクチバス,カムルチーおよびオヤニラミを捕獲し,その胃内容物を調べた.その結果,国外外来種で特定外来生物のオオクチバス9個体のうち4個体から魚類とエビ類を確認した.一方,国外外来種のカムルチーと国内外来種のオヤニラミ各1個体の胃からは内容物を確認できなかった.

  • 田尻 浩伸, 松本 潤慶, 田米 希久代, 中野 夕紀子
    2014 年 8 巻 p. 23-34
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    ラムサール条約登録湿地である石川県加賀市の片野鴨池において,野外調査および採集した植物をもちいた実験によって溶存酸素量の経時変化と水生植物の関係についての調査を行なった.野外調査,実験とも,溶存酸素量は日の出直前にもっとも低くなり,南中時刻からその直後にもっとも高くなったことから,植物の光合成と呼吸の影響を受けていると考えられた.さらに,実験の結果からオニビシは溶存酸素量の低下に影響し,マツモやホソバミズヒキモなどの沈水植物は照度が高い時間帯には上昇,低い時間帯には低下に影響していると考えられた.

  • 溝口(久保) 和子
    2014 年 8 巻 p. 35-43
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    ハゼ科魚類のアベハゼは,特に高密度での飼育下で,長時間空気中で過ごすことがしばしばある.その生態的理由を探るため陸上部を備えた2種類の実験水槽を用意し,その中でのアベハゼの行動を断続的に目視観察した.スロープ状の陸地で区切られた大小2つの水域をもつ水槽で,小水域にのみ多数のアベハゼを入れて極端な高密度状態にすると,ほぼ1日以内に約8割の個体が水際近くに上陸した.数日後には,上陸個体のいくつかが陸上を通過して対岸の水域に移動した.水域を分けず水面の一部を覆う形で陸上部を設置した水槽での観察(密度は1/4程度)でも上陸は速やかに行なわれたが,水中に留まる個体数は増えた.上陸割合の変化は飼育水の汚れの進行とは無関係なようであった.これらの観察から,アベハゼは過密状態緩和のために上陸すると思われる.また陸上移動行動には,生息域を広げるという意義もありそうだ.

  • 青山 茂
    2014 年 8 巻 p. 45-50
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    兵庫県加古川水系に生息するホトケドジョウとナガレホトケドジョウについて,約1 年間の個体識別・再捕調査によって成長を比較した.その結果,ホトケドジョウはナガレホトケドジョウより大きな成長を示した.

  • 浅永 梨紗, 花﨑 勝司, 近藤 茂則
    2014 年 8 巻 p. 51-55
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    外来種であるカダヤシの芥川における近年の生息状況やメダカとの相互関係に関する詳細な報告はない.そこで,2012年7月下旬~11月上旬に芥川での採集調査を行なった.全21地点で調査した結果,カダヤシとメダカは,それぞれ4地点での生息が確認された.両種が共に採集された地点もあり,2種が地点内で細かな棲み分けを行なっている可能性も考えられる.また,産仔に近い状態であったと考えられるカダヤシの雌が4個体採集された地点があったことから,その地点で繁殖したカダヤシが下流に流される形でその生息域を維持していることも否定できない.

  • 萩原 富司
    2014 年 8 巻 p. 57-66
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    霞ヶ浦におけるイシガイ科二枚貝の分布に関しては,1996年における40地点の調査において,イシガイとドブガイ類の生息が報告されたが,それ以降は生息数を著しく減少させている.余郷入り導水路は,霞ヶ浦の小さな湾入部を干拓した際に,その旧湖岸線沿いをかんがい用水路として残したもので,霞ヶ浦に接続する水域の中で,近年でも二枚貝の生息が確認されていた水路の一つである.2012年に当水路において土砂堆積による浅化改善のため浚渫工事が実施され,浚渫土砂とともに多数の二枚貝が陸揚げされていたため,浚渫土砂を対象とした二枚貝の定量調査を実施した.調査の結果,調査区間3,500mのうちイシガイは上流から2,000m下流の地点を中心とした約1,000mの範囲に局在し,ドブガイ類は調査範囲全域に分布していた.数多くの二枚貝が確認されたことから,環境悪化が問題となっている霞ヶ浦と比較して,当水路は,二枚貝の生息に適した何らかの好適な環境が保たれており,霞ヶ浦のイシガイ科二枚貝個体群にとってレフュージアの機能を果たしているものと考えられた.また,浚渫土砂で表出している二枚貝を調べる手法は,既存の手法と比較して広い範囲にわたる二枚貝の生息情報を効率的に得られることがわかった.

  • 曽我部 共生, 小島 翼
    2014 年 8 巻 p. 67-70
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    We first documented the predation of a waterfowl chick by the largemouth bass although a few lines of circumstantial evidence have suggested this predation taking place in the past. We dissected a male bass (421 mm in standard body length) caught in Anjiki river, a small creek that flows into Lake Biwa, and found in the stomach an unimpaired chick (55.4 g in wet weight) of either Anas platyrhynchos, A. poecilorhyncha, or the hybrid.

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