日本救急医学会関東地方会雑誌
Online ISSN : 2434-2580
Print ISSN : 0287-301X
41 巻 , 2 号
日本救急医学会関東地方会雑誌
選択された号の論文の36件中1~36を表示しています
総説
  • 中島 功, 大塚 洋幸, 市村 篤, 本多 ゆみえ, 梅澤 和夫, 関 知子, 中川 儀英, 猪口 貞樹
    2020 年 41 巻 2 号 p. 219-224
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    家禽や野鳥が保有する低病原性鳥インフルエンザウイルスであってもヒトが死に至る例が報告されており, これまで定説となっていた豚由来のウイルス感染とは違うルートが推測される。鳥からヒトへの感染に関する最近の文献調査, およびモンゴルへの調査視察を踏まえ鳥から直接感染するインフルエンザの動向を本稿では報告する。アザラシのインフルエンザ, 日本のイノシシのインフルエンザ, 豚便所, 北米大陸における豚のインフルエンザ, H7N9の動向, スペイン風邪, シアル酸レセプタなどを文献調査した。その結果, ヒト側の遺伝子の発現の仕方の違い (シアル酸レセプタ), ウイルス側遺伝子再集合, RNAポリメラーゼの読み違いなどにより, 鳥型インフルエンザが直接ヒトに感染し, 重篤な症状を引き起こす可能性がある。臨床医としてこれらの報告を鑑み, 患者の感染ルートには常に十分な注意を払うべきと考える。

原著論文
  • 宮崎 大
    2020 年 41 巻 2 号 p. 225-229
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    ICLSは蘇生シミュレーション教育コースとして開発されたが, 普及状況は明らかではない。2006年1月1日から2017年12月31日まで, 群馬県内の救急医療施設に所属するICLSコース受講者数を調査した。救急医療施設は, 県内には82施設であった。4施設が三次施設, 78施設が二次施設であった。救急医療施設に所属するICLS受講生数は3,063名であった。三次施設の受講生数は1,183名 (中央値306.5), 二次施設の受講生数は1,880名 (中央値2.0) であった (p-value=0.00741) 。受講生が0名の施設が最も多かった。そして, 臨床研修病院に受講生が多い傾向があった。ICLSは三次施設と臨床研修病院である二次施設を中心に普及しているが, 全く普及していない施設もある。

  • 出口 善純, 赤星 昴己, 安達 朋宏, 庄古 知久
    2020 年 41 巻 2 号 p. 230-233
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに】当院では2008年にChild Abuse Prevention (以下CAP) 委員会を発足させた。今回は当院各科受診した15歳以下のDV疑い症例475例を検討し, さらに児童相談所介入が必要だった11例に対し文献的考察を加え報告する。【方法】月に1回CAP委員会を開催し, 当院における対策ならびに児童相談所や警察通報等, 報告に挙がった症例の方針決定を行う。【結果】対象症例の大多数は小児科患者で, 家庭環境, 経済状態などに問題を抱えるケースが多かった。当科では心肺停止例で死因とDVの関与が否定できず検視となるケースがほとんどであった。そのなかには兄弟が不審死しており, すでに児童相談所が介入しているケースもあった。【結語】この地域ではCAP委員会を有する病院施設は少なく情報共有は困難だったが, 様々な被虐待児の死亡という最悪の結果を回避するために各関係機関と協力し一層努力をしていきたい。

  • 宮崎 善史, 岩瀬 史明, 井上 潤一, 松本 学, 河野 陽介, 柳沢 政彦, 笹本 将継, 萩原 一樹, 川島 佑太, 河西 浩人, 原 ...
    2020 年 41 巻 2 号 p. 234-237
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    大量出血を伴う外傷患者と心拍数の関係および乳酸値, ヘモグロビン値, プロトロンビン活性値, フィブリノゲン値について検討した。救急初療室において収縮期血圧が100mmHg未満に低下した外傷症例を対象とし, 後方視的に解析した。当院へ救急搬送された外傷症例の内, 血圧低下を来し来院後24時間以内に赤血球輸血を6単位以上施行した81例について, 頻脈 (心拍数≧100回/分以上) がみられなかった症例は25例 (30.9%) であった。頻脈がみられた症例とみられなかった症例で平均ISSと死亡率に有意差は認められなかった。また, 心拍数および乳酸値, ヘモグロビン値, プロトロンビン活性値, フィブリノゲン値と死亡率への影響では, 有意に寄与しているものはみられなかった。頻脈は循環動態が不安定であることを認知する指標の一つではあるが, これのみに頼るのではなく, その他の所見も集約して判断することが大切であると考えられた。

  • 村山 ゆかり, 守田 誠司, 石塚 久美子, 鈴木 好, 白石 尚子
    2020 年 41 巻 2 号 p. 238-241
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    業務継続計画 (business continuity plan ; 以下BCP) 策定の義務化に伴い, 当院の問題となった夜間・休日の災害対応に対し, 災害対応の経験がない勤務者だけでも比較的円滑に災害対策本部の設置ができ, 院内情報を取りまとめられ, 病院の方針を決定することが可能な本部立ち上げツールを含めた災害初動用セットを作成し評価した。これらは, 災害時の心理状況や行動の性質を踏まえた行動誘導をとりいれたものである。作成した災害初動用セットを用いて, 災害対応の経験のない職員に使用方法の説明なく訓練を行った。その結果, いずれも病院方針まで決定することができた。また, アンケートでは9割以上の職員が使用可能と回答した。災害初動用セットは, 当院のみならず他院においても夜間・休日の災害対応に有効であると考えられた。当院では, 災害初動用セットの存在と意義に関して全職員に周知することが必要であることと, 様々な被害想定での検討が今後の課題である。

  • 米嶋 美晴, 井川 洋子, 上澤 弘美
    2020 年 41 巻 2 号 p. 242-247
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は, ICLSコース受講者が経験した院内急変時の対応で, 困難であった内容, 実践できた内容の実態を明らかにし, 課題を明確とすることである。【方法】研究対象者7名に対して半構造化面接法を実施し, Krippendorff'sの内容分析を参考に分析を行った。【結果】困難であった内容では300コードが抽出され, 【スタッフへ具体的な指示が出せない】, 【現場が煩雑化していることで必要な処置ができない】, 【医師とコミュニケーションがとれない】, 【マンパワー不足】などの7カテゴリ, 実践できた内容では, 215コードが抽出され, 【二次救命処置が大まかに実施できた】, 【スタッフのレディネスを考えて役割を指示した】などの5カテゴリに分類された。【考察】結果から, リーダーとしての役割, 急変現場の調整に対して困難を生じているため, コースプログラムにおいて, 実際の急変現場の状況を想定したシナリオやフォローアップを検討していく必要があると示唆された。

  • 戸塚 武美, 中村 秀明, 宮崎 康宜, 中村 哲久, 鈴木 宏昌
    2020 年 41 巻 2 号 p. 248-252
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    目的 : 機械的CPR装置 (MCD) が救急救命士の特定行為や予後に与える影響について検証した。方法 : 救急隊が積極的CPRを行った524症例を後方視的に調査し (A) 平均活動時間, (B1) 静脈路確保 (IVA) 試行率と (B2) 成功率, さらにアドレナリン適応123症例の (C) 投与率, (D) 病院前心拍再開率, (E) 予後について, 用手的CPR群 (HCC群) と機械的CPR群 (MCD群) に分け比較検討した。結果 : (A) HCC群13.2分, MCD群13.1分。 (B1) HCC群85.1%, MCD群92.5%。 (B2) HCC群59.6%, MCD群73.8%。 (C) HCC群32.2%, MCD群63.6%。 (D) HCC群13.3%, MCD群30.3%。 (E) 生存退院率はHCC群7.8%, MCD群12.1%。MCD群で有意にIVA試行率 (p<0.05) と成功率 (p<0.01), アドレナリン投与率 (p<0.01), 病院前心拍再開率 (p<0.05) が高かった。生命予後に有意差は認めなかったが, 脳機能良好で退院した7例はすべて病院前心拍再開例であった。まとめ : 現場活動におけるMCDの使用は, 活動時間を延長することなく効率的な蘇生処置を可能にし, 病院前心拍再開率を高めることから, 神経学的機能予後を改善することも期待される。

  • 宇佐美 諒, 村田 健介, 岡本 健, 田中 裕
    2020 年 41 巻 2 号 p. 253-256
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    近年, 救急救命士の新たな活動の場として病院の救急外来が注目されているが, 現行の法的制限から, その資格を十分に活用できるか疑問視されている。今回, 当院救命救急センターに常駐する救急救命士によるサポートが, 医師と看護師の業務負担の軽減にどの程度寄与しているかをアンケート調査により評価した。対象は, 救急外来に勤務する医師20名および看護師19名である。調査の結果, すべての医師は, 救急救命士による「救急隊との応答業務」が, 医師の業務負担を軽減すると考えていた。また, すべての看護師は, 救急救命士による「院内トリアージのサポート」が, 看護師の業務負担を軽減すると考えていた。救急救命士の専門知識による救急外来スタッフへのサポートが救命救急センターの質の向上に寄与する可能性が示唆された。現在許容されている範囲内の業務活動でも, 救急外来に常駐する救急救命士は有用である。

症例報告
  • 西澤 芙美香, 豊田 洋
    2020 年 41 巻 2 号 p. 257-261
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    【背景】脊髄梗塞は脳梗塞に比べ稀な疾患であり, 全脳卒中の1~2%といわれており未だ不明な部分が多い。生活レベルに大きく影響する緊急性の高い疾患であるため, 原因検索や診断, 治療に関する検討は重要であると考えられる。 【症例】脳梗塞の既往があり, 抗血小板薬を内服していた70代男性。第1病日に足底のしびれを感じ, 次第に立位歩行困難となり, 排尿感覚が消失した。当院来院時, 四肢の筋力低下はなくTh12~L1以下の左右対称性の触覚・温痛覚・振動覚・位置覚の著明な低下があり膀胱直腸障害も認めていた。第2病日に脊髄MRIを施行するも明らかな所見は認められなかった。第9病日の三度目に撮影した脊髄MRIにてTh12レベルの髄内にT2高信号域が出現し, 脊髄梗塞と診断した。 【考察】発症時に脊髄MRIのT2強調像で脊髄梗塞が描出されるのは4~6割であり, 発症時に陰性のこともあるため, 脊髄梗塞を疑った際には繰り返しMRIを施行することが重要である。

  • 重松 咲智子, 久村 正樹, 久野 慎一郎, 中村 元洋, 淺野 祥孝, 橋本 昌幸, 安藤 陽児, 園田 健一郎, 輿水 健治
    2020 年 41 巻 2 号 p. 262-266
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    喘息死の症例を経験した。患者は53歳男性, 動物病院で清掃作業中に喘息発作を起こし救急要請された。救急隊接触時は心静止であり特定行為で気管挿管され, 心肺蘇生を継続しながら病着した。病着後も心静止で蘇生処置にも反応はなかったため, 覚知から128分に死亡確認した。死因は気管支喘息増悪による呼吸不全と診断した。吸入ステロイド薬の普及により喘息死は減少したが, ここ10年は年間2,000人前後で推移しており, 吸入ステロイド薬普及の限界がいわれている。厚生労働省が展開する「喘息死ゼロ作戦」において消防などと病院前救急医療体制を構築している自治体は少ないが, 喘息死は予期せぬ急激な悪化が多く, 喘息発作に対しては患者に早期接触し治療を開始することが重要である。本症例は救急ワークステーションの救急車使用により患者に早期接触ができた。喘息死を減らすには, 病院前救急医療体制を構築していくことも有効であると考えられた。

  • 久村 正樹, 百瀬 ゆずこ, 久野 慎一郎, 福島 憲治, 有馬 史人, 今本 俊郎, 大井 秀則, 重松 咲智子, 中村 元洋, 淺野 祥 ...
    2020 年 41 巻 2 号 p. 267-270
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は44歳男性。救急搬送3カ月前より原因不明の右下腿全体の疼痛を自覚し, 整形外科, 脳神経外科で精査され, 線維筋痛症の診断で整形外科からプレガバリンの投薬治療が開始された。疼痛は改善せず, 程なく睡眠障害を自覚するようになった。救急搬送1週間前からは改善しない疼痛を悲観し, 希死念慮を訴えるようになった。X月Y日, 自宅で頸部と胸部を自ら刺し, 倒れているところを家族に発見され救急搬送された。病着時は心停止であり, 蘇生に反応せず死亡確認した。線維筋痛症は原因が不明の「身体疾患とも精神疾患とも言い切れない」疾患であり心身両面の治療が必要である。本症例は投薬治療のみがされていたが, 救急医療者が線維筋痛症などの慢性疼痛を正しく理解すること, また救急現場から慢性疼痛患者に標準治療を提供することは, 慢性疼痛治療を望ましい方向にするのみならず, 患者の救急医療受診を回避できる可能性があり重要であると考えられた。

  • 進藤 博俊, 山岸 利暢, 長岡 毅, 坪井 謙, 松本 建志, 守谷 俊
    2020 年 41 巻 2 号 p. 271-273
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は67歳男性。腰痛のために鍼灸院で治療を受けた。治療後3時間半後から呼吸困難感が出現した。徐々に増悪し, 当院に救急搬送された。来院時は著明な頻呼吸と酸素化低下, 両側呼吸音減弱を呈していた。肺エコーで両側性気胸を疑い, 胸部X線で両側性気胸と診断した。両側に静脈留置針で緊急脱気し, 続けて胸腔ドレーンを留置し入院した。経過は良好で第5病日に退院となった。鍼灸治療の合併症としての両側性気胸は稀である。鍼の安全刺入深度は前胸部8〜26mm, 背部20mm前後と報告されている。本症例では, CTで両側気胸を起こし得る基礎疾患を認めなかったこと, 鍼治療に40mmの鍼を使用していたこと, 鍼治療後から症状が出現したことなどから鍼治療に伴い両側性気胸を発症したと考えられた。診断には身体所見や, ベッドサイドでの画像診断が肝要である。肺エコーは有用なツールであり迅速な早期診断, 治療介入において有用である。

  • 浪方 悠, 大屋 聖郎, 森野 杏子, 竹下 諒, 水野 廉, 植地 貴弘, 入福浜 由奈, 柏 健一郎, 三田 直人, 中森 知毅, 木下 ...
    2020 年 41 巻 2 号 p. 274-276
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    今回われわれはカルシウム拮抗薬, アンジオテンシン II 受容体拮抗薬, ベンゾジアゼピン系抗不安薬中毒によるショック状態に陥った症例を経験したので報告する。症例は61歳, 女性。ショック状態にて当院へ搬送された。聴取した病歴からカルシウム拮抗薬中毒が主病態であることが推測された。輸液に対する循環動態の改善に乏しく, ノルアドレナリンに加え, グルカゴン, グルコン酸カルシウムによる治療が奏功した。カルシウム拮抗薬中毒は徐脈, 低血圧の遷延によりしばしば致死的となり得る。薬剤の作用機序と疾患特異的な治療法を習熟し治療を行う重要性が示唆された症例である。

  • 田中 由基子, 栩木 愛登, 新井 晶子, 阿竹 茂, 河野 元嗣
    2020 年 41 巻 2 号 p. 277-280
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は40歳代男性。オートバイ事故により受傷した。CT画像より胸椎脱臼骨折 (Th4/5), 胸髄損傷, 弓部大動脈損傷, 右血気胸を主とする多発外傷と診断した。右血気胸に対し胸腔ドレーンを留置した。持続性のエアリークが認められたが, 呼吸は安定していたため, 胸椎固定術を予定した。しかし, 気管挿管し, 腹臥位にしたところ, 換気を維持できなくなった。気管支鏡検査で右中間幹の中葉枝・下葉枝分岐部に1cm程度の気管支裂傷が明らかになり, 呼吸管理困難なため手術中止となった。集中治療室で保存的治療を行い良好な結果を得たが, 経過中に膿胸となり洗浄ドレナージ術を要した。気管支損傷が小裂傷であれば, 人工呼吸器による管理下であっても保存的に治療可能である。一方で膿胸に移行するリスクもあり, 保存的治療を選択するときには, そのリスクも考慮すべきである。

  • 山本 太平, 室谷 直樹, 本間 佐和子, 小林 祐介, 藤沢 篤夫, 渡瀬 瑛, 太田 慧, 鈴木 亮, 尾本 健一郎, 菊野 隆明
    2020 年 41 巻 2 号 p. 281-284
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    70歳代男性。痙攣重積状態で入院し, 挿管管理とした。入院後は痙攣の再発はなく経過し, 意識状態が改善したため第2病日に抜管をした。しかしその後呼吸状態の増悪を認めたため肺炎の診断で第3病日に再挿管を行い, 抗菌薬の投与を開始した。同時に理学療法の介入も試みたが頻脈性発作性心房細動の合併などによるバイタルサインの変動が大きく, 積極的な介入は行うことができなかった。喀痰培養ではKlebsiella pneumoniaeを検出し, 使用抗菌薬に感受性も認められたが, 呼吸状態の改善は乏しく, 第6病日になっても39℃台の発熱と炎症反応の高値が遷延していた。その後検出したKlebsiella pneumoniaeがstring test陽性の過粘稠性であることが判明し, 第9病日より安静度を上げて積極的に理学療法を行ったところ, 状態の改善を認めた。Klebsiella pneumoniae肺炎を認めた際には, 過粘稠性の評価を行い, 過粘稠性であればより積極的な気道クリアランスを図ることが重要であることが示唆された。

  • 柿 佑樹, 加藤 晶人, 内山 美緒, 鈴木 恵輔, 中島 靖浩, 前田 敦雄, 森川 健太郎, 八木 正晴, 小林 一女, 土肥 謙二
    2020 年 41 巻 2 号 p. 285-289
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    頸部ガス壊疽は非常に重篤な感染症であり, 早期に診断して的確な治療を行うことが重要である。原因として扁桃周囲膿瘍などの急性炎症由来と齲歯などの歯性由来が大半を占める。重症化することや多剤耐性菌による感染を繰り返すことで治療に難渋することも多い。今回, 齲歯から波及した頸部ガス壊疽に対して高気圧酸素療法を併用し良好な経過をたどった1例を経験したため報告する。症例は既往のない42歳男性, 開口障害と右頸部の腫脹を主訴に前医を受診し, 頸部ガス壊疽と診断され当院へ搬送された。外科的処置と抗菌薬治療に加え, 第4病日から高気圧酸素療法を施行し, 炎症反応や頸部の腫脹は改善を認め第19病日に退院した。症状の進行が急速である頸部ガス壊疽において, 早期の外科的処置, 抗菌薬治療に加え, 高気圧酸素療法の併用が症状の改善に役立つと思われた。

  • 井上 聡, 塩島 裕樹, 金尾 邦生, 齋藤 豊, 田熊 清継
    2020 年 41 巻 2 号 p. 290-293
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    【背景】ガス壊疽はガス産生菌による進行性の軟部組織感染症である。治療は早期かつ徹底的な外科手術が提唱されている。広範囲のガス壊疽では抗菌薬による治療に反応しないことが多く, 下肢切断が必要となることもある。【症例】50歳代男性。数カ月前より左下腿の腫脹を認め歩けなくなり, 救急要請した。大腿部から足趾まで腫張, 発赤, 一部壊疽を認め, CT検査でガス産生を伴っており, ガス壊疽が疑われた。抗菌薬投与, デブリードマンを施行したが術後に全身状態の悪化を認め, 左大腿切断術を施行した。大腿切断術後は全身状態も改善し, 第40病日に転院となった。【考察】本症例では抗菌薬投与のうえデブリードマンを試みたが, 術後に血圧低下が遷延し, 全身状態, 局所所見の悪化を認めたため下肢切断術を施行し, 救命できた。下肢切断術を施行するかは判断に難渋するが全身状態が悪い場合やリスク因子が多い場合は救命のため下肢切断が必要であると考えられた。

  • 植地 貴弘, 浪方 悠, 西田 耕太郎, 村上 悠平, 竹下 諒, 水野 廉, 森野 杏子, 柏 健一郎, 入福浜 由奈, 三田 直人, 大 ...
    2020 年 41 巻 2 号 p. 294-298
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    今回, 心停止に至った産褥婦の肺血栓塞栓症患者を院内外の医療者間の連携により救命し, 神経学的後遺症を残さず退院できた症例を経験したので, 考察を加え報告する。症例は, 33歳女性。来院前日に近医産婦人科で帝王切開を行った。その19時間後に胸痛・呼吸苦を訴え, SpO2 80%, 収縮期血圧70mmHgに低下, 肺塞栓症の臨床診断で総合周産期母子医療センターへの搬送が決定されたが, 搬出直前に心停止となり, 直近救命救急センターである当院に搬送された。救急車内収容から10分後に当院に到着した患者は, 一度自己心拍再開したが再度心停止となり, 心停止から17分後にECPRに移行した。その後, 血栓溶解療法を行い, 神経学的予後良好で自宅退院した。本症例では, 救急指令センターから連絡が入った段階で, 事前に取り決めていたルールに則りECPRの準備を行ったことで, 心停止からECPR導入までの時間を短縮できた。

  • 毛利 晃大, 鈴木 茂利雄, 佐藤 裕一, 鈴木 大聡, 清水 敬樹
    2020 年 41 巻 2 号 p. 299-301
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は18歳女性。巨大卵巣囊腫があり, 左付属器摘出術を行った。手術後に頻脈, 血圧低下を認め, ヘモグロビン4g/dLと貧血の進行もあり, 出血性ショックと判断した。再手術までの循環維持としてIABO留置を行った。導入後から脈拍と血圧の改善が得られ再手術へと移動でき, 卵巣固有靱帯結紮部の縫合不全を再度結紮し終了とした。その後合併症もなく, 全身状態は安定したため退院となった。産婦人科領域の術後出血性ショックに対してもIABOを導入することは根治的治療の橋渡しとして有用性であるといえる。

  • 苛原 隆之, 小西 愛美, 藤木 悠, 鈴木 剛, 米沢 光平, 田上 正茂, 小川 太志, 直江 康孝, 横田 裕行
    2020 年 41 巻 2 号 p. 302-306
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    27歳男性。ハンドルと塀の間に体幹部を挟まれ搬送された。初療時は明らかな臓器損傷を認めなかったが, 第2病日に上腹部痛が出現しS-AMY値が上昇した。造影CT再検にて膵体部に線状の造影不良域を認め, 第4病日ERPにて主膵管損傷を認めIIIb型膵損傷と診断したが, 損傷部より尾側の膵管は描出されENPDチューブの留置が可能であったため膵管ドレナージによる非手術治療を選択した。その後所見は改善傾向となり, 第21病日ENPD造影にて造影剤漏出の消失を確認し経口摂取を再開した。第26病日ENPDをERPDチューブに交換し第36病日に退院した。受傷3カ月後ERPD抜去し終診とした。IIIb型膵損傷は従来外科的治療の絶対適応とされてきたが, 近年内視鏡的膵管ドレナージによる非手術療法の報告が増加している。本治療法は低侵襲的に治癒させ得るメリットがあるが, 明確な適応基準や治療方針について症例の集積と検討が必要である。

  • 村田 健介, 岡本 健, 池上 さや, 川崎 喬彬, 唐津 進輔, 近藤 豊, 松田 繁, 田中 裕
    2020 年 41 巻 2 号 p. 307-309
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    家庭常備薬の「正露丸」を200錠内服し, 木クレオソート中毒に至った1例を経験した。症例は67歳の女性で, 原因不明の意識障害で当院に救急搬送された。意識レベルはGlasgow Coma Scale E3V1M4であり, 気管挿管し入院とした。CTや血液生化学検査で明らかな意識障害の原因は断定できなかった。第2病日に意識が改善し, 入院前日に下痢症状に対して正露丸を200錠内服したことが判明した。第5病日をピークとした軽度の肝逸脱酵素の上昇が出現したが改善し, 第6病日に精神科に転科となった。正露丸は日本において家庭常備薬の下痢止めとして長年親しまれている薬である。その主成分は木クレオソートであり, 大量内服症例では木クレオソートに含まれる少量のフェノールによる嘔吐や血圧低下, 意識障害, 遅発性肝障害等の症状が出ることがあり注意が必要である。

  • 長村 龍憲, 中野 諭, 井上 和茂, 菱川 剛, 吉岡 早戸, 岡田 一郎, 長谷川 栄寿
    2020 年 41 巻 2 号 p. 310-313
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    症例 : 56歳男性。強迫性障害で抗精神病薬内服中。搬送数日前より高温環境下で過ごし, 居室内で倒れているところを発見され救急搬送された。来院時現症 : GCS 8 (E1V3M4), 体温40.5℃, 心拍数 178 回/分, 血圧 148/115 mmHg, 呼吸数 26 回/分, SpO2 99% (酸素10Lリザーバーマスク) 。 III度熱中症の診断にて加療を開始し, 抗精神病薬は継続していたが, 発熱やCK高値は持続した。第5病日より眼球上転や口唇ジスキネジアが出現し, 第6病日にはCK 16274 U/Lまで上昇したため悪性症候群と診断した。抗精神病薬を中止しダントロレン投与を開始したところ, 発熱やCK値の改善が得られた。本症例では悪性症候群に特徴的な筋強直を認めなかったが, 典型的症状が軽いもしくは出現しない症例も存在する。抗精神病薬内服中の患者では, 熱中症を強く疑う病歴であった場合でも常に悪性症候群の可能性を念頭に置く必要がある。

  • 田中 保平, 伊澤 祥光, 渡邊 伸貴, 山黒 友丘, 富永 経一郎, 新庄 貴文, 太田 真, 米川 力, 間藤 卓, 青木 裕一, 笹沼 ...
    2020 年 41 巻 2 号 p. 314-317
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は40歳代男性。仕事中に弾き飛ばされた3kgのアルミ塊が胸腹部に当たり受傷した。造影CTで肝内側区域に著明な血管外漏出像を伴う日本外傷学会分類IIIbの肝損傷を認めた。経カテーテル動脈塞栓術で肝動脈の一部を塞栓して止血が得られたため, 非手術治療 (以下NOM) を選択した。しかし入院6日目に胆汁性腹膜炎を併発し, 開腹ドレナージとENBD留置を行い, いったん全身状態は改善した。その後, 腹痛と発熱が再燃し, CTで肝壊死と肝膿瘍を認めたため経皮的ドレナージを施行したが, ドレナージ後も胆汁漏は持続したため肝左葉切除術を施行し, 最終的に良好な経過を得た。 肝損傷に対するNOMの成功率は高いが, NOM中に合併症のため手術が必要になる症例も存在する。特に重症度が高い損傷は合併症の頻度が高く, 手術が必要となる可能性も高いため, 厳重な経過観察と機を逃さぬ対応が必要なことを改めて認識した。

  • 大竹 成明, 植村 樹, 佐藤 琢紀, 小林 憲太郎, 佐々木 亮, 木村 昭夫
    2020 年 41 巻 2 号 p. 318-321
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    外傷性血胸への止血戦略としてtranscatheter arterial embolization (TAE) が用いられるようになったが, 中にはCT検査や血管造影検査で指摘困難な出血があり, TAEを施行するも止血を得られない症例もある。右胸背部痛を訴え救急搬送となった83歳男性で, 来院2日前に転倒し右背部を受傷していた。CT検査で第9から11肋骨骨折および外傷性血胸と診断し, 胸腔ドレーンを留置して入院となった。入院後に100mL/hr以上の血性胸水の排出が持続し, CT検査で造影剤漏出像が認められたため, 出血源と思われる肋間動脈にTAEを行った。しかし, TAE後も血性胸水の排出は継続し, 入院翌日に開胸術を施行した。術中, 横隔膜に直径1cmの裂傷があり同部位から出血を認め, 縫縮により止血を得た。術後, 血性胸水の排出はおさまり, 合併症なく経過し, 第18病日に自宅退院となった。横隔膜損傷による外傷性血胸では画像診断が困難なことがあり, 下位肋骨骨折を伴う外傷性血胸では横隔膜損傷も念頭に入れた診療が肝要といえる。

  • 福田 有, 小林 憲太郎, 佐々木 亮, 佐藤 琢紀, 植村 樹, 廣瀬 恵佳, 松田 航, 山本 真貴子, 木村 昭夫
    2020 年 41 巻 2 号 p. 322-325
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに】信号機のある交差点を歩行者が横断中に車が突っ込み, 多数傷病者が発生した。当院へ多数傷病者が搬送されたため報告する。【症例】46歳, 男性。一次triageは赤。車に接触し臀部, 両側大腿部を受傷。右恥骨骨折, 左寛骨臼骨折, 左横突起骨折 (L3-4) の診断となり入院。二次triageは黄となった。55歳, 男性。一次triageは赤。車に接触し5m飛ばされ腰を受傷。Th12に圧迫骨折あり入院。二次triageは黄となった。27歳, 女性。一次triageは黄。受傷機転不明, 左大腿遠位~足関節にタイヤ痕あり同部位に皮下血腫, 下腿に1cm大の挫創, 大腿外側に及ぶポケット形成ありデグロービング損傷の診断となり入院。二次triageは赤となった。27歳, 43歳, 54歳, 男性。一次triageは緑。外傷性頸部症候群や腰部打撲傷の診断で帰宅。【考察】START法で待機群とした症例の60%が緊急, 重症症例との報告あり。【結語】待機群に関してはより経時的に精査をする必要がある。特にデグロービング損傷は過小評価されることがあり注意が必要である。

  • 武田 道寛, 西野 智哉, 滝沢 志絵, 櫻井 馨士, 若井 慎二郎, 守田 誠司, 中川 儀英, 猪口 貞樹
    2020 年 41 巻 2 号 p. 326-328
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    浸水性肺水腫 (immersion pulmonary edema, 以下IPE) は, 本邦での報告例はいまだ少ないため認知度が低い。症例は既往のない50歳代女性で, 潜水中に呼吸困難を自覚し救急要請された。救急隊接触時の動脈血酸素飽和度は80% (室内気) であり, 来院時は両側肺野に水泡音を聴取し, 重度の低酸素血症と肺水腫を呈していた。心電図, 心臓超音波検査では心原性を示唆する所見は認めなかった。意識清明であったため, 非侵襲的陽圧換気 (noninvasive positive pressure ventilation, 以下NPPV) による治療を開始したところ速やかに自覚症状と酸素化は改善した。チョークスや動脈空気塞栓症を疑う所見に乏しく, また海水誤嚥のエピソードもなかったため, IPEの可能性が高いと考えられた。

  • 道下 貴弘, 大井 康史, 山縣 英尋, 高橋 充, 白澤 彩, 伊巻 尚平, 竹内 一郎
    2020 年 41 巻 2 号 p. 329-332
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    70歳代女性。既往歴に糖尿病, 高血圧, 慢性腎臓病 (StageG4) を認め, 変形性膝関節症のためリハビリを行っている患者。リハビリ中に体調不良を訴えたため救急要請された。救急隊接触時BP 64/39mmHg, HR 32/分と血圧低下, 徐脈を認め当院救命救急センターに搬送となった。来院時HR 29/分の徐脈が持続しており, 心電図ではP波の消失を認め, 採血でカリウム8.7mEq/Lと高カリウム血症を認めた。高カリウム血症に伴う徐脈と診断し, 血液透析と一時的ペースメーカーの挿入を施行した。血液透析にて高カリウム血症は改善し, 自己脈も安定してきたため第3病日にペースメーカーを抜去した。その後カリウム値の再上昇はなく, 第7病日に退院となった。高カリウム血症の原因として2週間前より通常量の3倍以上の青汁を摂取していたことがわかり, 原因として青汁の過剰摂取が考えられた。慢性腎不全の患者においては栄養指導等のサポートも重要であり, 健康食品は本人の状態に応じた適切な使用法が望まれる。

  • 藤井 公一, 加瀬 建一
    2020 年 41 巻 2 号 p. 333-335
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    甲状腺中毒性周期性四肢麻痺は, 甲状腺機能亢進に伴って低カリウム血症をきたし脱力発作を呈する疾患で, ほとんどが20〜40歳代の男性に発症する。甲状腺機能亢進の原因は, ほとんどがバセドウ病であり, 発症を契機に診断に至ることが多い。発症の誘因としては, 運動, 飲酒や炭水化物の大量摂取があり, 自験例でも, 2例で運動または炭水化物摂取との関連を疑った。甲状腺腫大があることや血液検査でクレアチニンが低値であることが診断の手がかりとなる。 著明な低カリウム血症により致死的不整脈を合併することがあるため, 早期のカリウムの補正が必要である。ただし, 甲状腺中毒性周期性四肢麻痺の低カリウム血症の機序は細胞内移動であり, 補正も速やかに可能となることが多く, 逆に高カリウム血症に至らないよう補正速度に注意を要する。

  • 谷河 篤, 井上 和茂, 岡田 一郎, 長谷川 栄寿
    2020 年 41 巻 2 号 p. 336-339
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    79歳女性が入院中に急性胆囊炎を発症した。30年前にくも膜下出血後の水頭症に対して脳室-腹腔シャント (ventriculoperitoneal shunt, 以下VPS) が留置されていた。VPS留置下だが耐術はあるため, 腹腔鏡下胆囊摘出術 (laparoscopic cholecystectomy, 以下LC) を施行した。シャントチューブをクランプするなどの処置は破損や閉塞などのリスクがあるため行わず, 手術はCO2気腹法 (最大気腹圧12mmHg) でシャントチューブに注意し, 従来通りのLCを施行した。術中術後に明らかな頭蓋内圧亢進や逆行性感染は認めず, チューブトラブルなく経過は良好であった。VPS留置下の急性胆囊炎であっても従来通りのLCが安全に施行できると考えられた。

  • 増田 崇光, 庄古 知久, 竹内 誠人, 麻喜 幹博, 三木 靖雄
    2020 年 41 巻 2 号 p. 340-343
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    【症例】60代男性。歩行中の患者に乗用車が衝突する高リスク受傷機転で搬送された。病着時, 呼吸循環動態は安定していたがGCS 8の昏睡状態であった。頭部CTで迂回槽に外傷性くも膜下出血を認め, MRIでは大脳白質を中心に散在性に高信号を認め, びまん性軸索損傷が疑われた。第3病日にGCS 6, SBP 68mmHgとショック状態に至り, 炎症反応の上昇と肺浸潤から敗血症性肺炎, ショック状態と診断し集学的治療により救命した。第14病日にMRIを再検し脳梁, 脳幹に高信号を呈する重症びまん性軸索損傷と診断し, リハビリ継続の結果, E4VtM6の意識まで回復し第70病日に転院となった。【考察】びまん性軸索損傷は広汎性脳損傷に含まれる損傷概念で頭頸部の急激な回転運動や加減速力により発症する。初療時には画像検査による正確な重症判断は困難であることを留意する必要がある。

  • 高瀬 士龍, 松本 佑啓, 鈴木 貴明, 小山 泰明, 井上 貴昭
    2020 年 41 巻 2 号 p. 344-347
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    化膿性胸鎖関節炎 (Septic arthritis of sternoclavicular joint ; SASCJ) は化膿性関節炎のうち比較的まれな疾患であり, 縦隔や胸腔内へ波及して重篤化することがある。SASCJに多発性膿瘍を併発し, 集学的治療を要した症例を経験したので報告する。79歳男性, 基礎疾患として未指摘の糖尿病を有する。悪寒戦慄と右頸部痛を自覚し, SASCJと診断され前医で抗菌薬投与及び胸鎖関節の切開排膿ドレナージを行ったが軽快せず, 造影CTで右膿胸, 深頸部膿瘍, 両側腸腰筋膿瘍を指摘された。培養からはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌が検出された。第15病日に当施設へ転院後, 胸鎖関節拡大切除と各膿瘍の切開排膿ドレナージを行ったが, 消耗が進み多臓器不全で第80病日に死亡した。SASCJは易感染性素因などリスク因子を有する患者が多く, しばしば血行性の感染波及がみられる。治療初期から全身の感染巣を検索し, 外科的介入を含む治療方針を迅速に決定することが重要である。

  • 鈴木 好, 守田 誠司, 石塚 久美子, 村山 ゆかり, 白石 尚子
    2020 年 41 巻 2 号 p. 348-351
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    70歳代男性, 血圧低下を主訴に救急外来を受診した。救急外来受診日の午前中に歯科で抜歯していた。その日の夕方より気分不快があり血圧を測定したところ収縮期血圧85mmHgであった。救急外来来院時バイタルサインでも収縮期血圧96mmHg。バイタルサイン測定と同時に既往歴および現病歴を確認し直ちにトリアージを中断, 蘇生室へ移動した。蘇生室へ移動後, モニタリング開始と同時に12誘導心電図 (以下ECG) を実施したところ心拍数 150回/分, wideQRS regular tachycardilaであった。循環器内科医へコンサルテーションしアデノシン三リン酸 (以下ATP) 施行後, カルディオバージョンを実施した。洞調律へ戻り入院となった。本患者は左室心尖部起源のVTと診断され入院後第9病日に心臓カテーテル検査を実施, 第29病日にImplantable Cardioverter Defibrillator (以下ICD) 植え込みとなり第38病日で軽快退院となった。看護師の臨床推論によりトリアージを中断した症例を報告する。

  • 福嶋 沙織, 松田 秀一, 石倉 愛, 増田 正和, 丸橋 孝昭, 大井 真里奈, 浅利 靖
    2020 年 41 巻 2 号 p. 352-355
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    覚醒下の体外式膜型人工肺 (ECMO) 管理を行った患者に多職種でアプローチし, 良好な転帰が得られた例を経験した。神経性やせ症のため行動制限療法中であった10歳代女性。溺水による急性呼吸窮迫症候群のため人工呼吸器管理を行った。鎮静管理やせん妄の治療に難渋し, 人工呼吸器との非同調による難治性気胸・縦隔気腫を併発したため, ECMOを導入した。患者の訴えは生理的欲求が未充足によるものが多いことがわかり, 多職種で協議しそれぞれ各職種の専門性を生かしたアプローチを行った。看護師では, マズローの理論に着目し, 生理的欲求が満たされるよう看護ケアを行ったことでせん妄を発症せず, 覚醒下のECMO管理へ移行できた。覚醒下のECMO実現には多職種のアプローチが必要である。生理的欲求の充足に向けた看護的アプローチは有効であった。

  • 後藤 陽子, 迫田 典子
    2020 年 41 巻 2 号 p. 356-359
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー

    心原性脳血栓症により失語症を発症し, 緊急入院した70代女性のコミュニケーションの確立への介入方法について症例より明らかにした。障害の程度は, 失語のみで嚥下障害は認められなかった。これらの状況より, 絵カードの作成, Yes/No反応での質問形式, 家族支援を実施した。この結果, 患者とともに家族も含めて良好なコミュニケーションが確立された。今後は支援方法の有効性を検討していくことが必要である。

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