日本救急医学会関東地方会雑誌
Online ISSN : 2434-2580
Print ISSN : 0287-301X
43 巻, 2 号
日本救急医学会関東地方会雑誌
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
研究速報
症例報告
  • 藤井 公一, 加瀬 建一
    2022 年 43 巻 2 号 p. 45-48
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    左冠動脈のmalperfusion合併Stanford A型急性大動脈解離は血行動態が破綻するため救命率がきわめて低い。75歳の男性が胸背部痛を主訴に救急搬送された。ショック状態であり, CTで大動脈解離の診断後に心停止したため経皮的心肺補助装置 (PCPS) を装着し, 左冠動脈主幹部 (LMT) にステント留置された。その後, 手術を施行したが出血が制御できず死亡した。左冠動脈のmalperfusion合併Stanford A型急性大動脈解離はPCIを先行することで血行動態を改善し心筋障害を最小限にできる可能性があるため, 治療の選択肢として考慮するべきである。

  • 荒巻 裕斗, 澤田 悠輔, 市川 優美, 一色 雄太, 大嶋 清宏
    2022 年 43 巻 2 号 p. 49-54
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は80代女性。自宅浴室内で灯油の浸された新聞紙上に仰臥位でいるところを発見され前医に救急搬送された。搬送時, 意識障害, 全身皮膚からの著明な刺激臭, 背部を中心とした化学損傷を認めた。胸部CT上, 化学性肺炎を指摘され, 精査加療目的に当院へ転院搬送された。化学性肺炎については, 左肺が一時多房性膿瘍となり完全にその機能が失われたと思われたが, シベレスタット, メチルプレドニゾロン, 抗菌薬使用により, 若干の瘢痕を残して改善した。化学損傷は軟膏と被覆材により全て上皮化した。前医搬送時からの意識障害は, 経過中に徐々に改善し, 灯油中毒による中枢神経障害と考えられた。灯油による化学性肺炎, 化学損傷や中枢神経障害に関する報告は比較的稀であり, 特に灯油による化学性肺炎は少量でも致死的になりうるが, 本症例はいずれの障害も保存的に加療でき良好な転帰を得たため報告する。

  • 多賀 匠, 太田 慧, 栗原 智宏
    2022 年 43 巻 2 号 p. 55-57
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    血清神経特異エノラーゼ値は蘇生後脳症の神経学的予後を予測する指標の一つである。今回, 血清NSE高値であったが良好な転帰を辿った1例を経験した。症例は43歳, 男性。暑熱環境下で卒倒し, bystanderの市民による一次救命処置により心拍再開した。救急隊接触時, 腋窩温38.8℃と高体温であり, 熱中症の合併を疑われ, 体表冷却されながら搬送された。当院到着時, GCS E1V1M2と意識障害を呈した。二次性脳損傷予防目的に目標体温34℃の体温管理療法を導入し, 第28病日にはGCS E4V4M6まで改善した。入室43時間後に測定した血清NSE値は47ng/mLであった。血清NSE値 33ng/mL以上は神経学的予後が不良とされるが, 本症例は良好であった。その要因として, 熱中症の合併が血清NSE値に影響を与えた可能性が考えられる。熱中症を合併した蘇生後脳症症例においては血清NSE値の解釈に注意が必要である。

  • 山村 恭一, 小山 知秀, 佐藤 裕一, 三森 薫, 松吉 健夫, 鈴木 大聡, 光銭 大裕, 金子 仁, 三宅 康史, 清水 敬樹
    2022 年 43 巻 2 号 p. 58-62
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は30代の女性。既往歴は帯状疱疹。突然の発熱と全身痛が出現し, 右腋窩痛が増悪したため近医を受診し, その後精査治療目的に当院ERを紹介受診した。来院時, 高熱以外のバイタルサインは異常なかった。緊急CT検査では右腋窩の脂肪織濃度上昇を認め, 右腋窩リンパ節炎の診断で同日緊急入院した。入院後数日間は右腋窩痛は不変のままで, 第4病日に突然ショックとなった。さらに, 入院後の血液培養からStreptococcus pyogenesが同定され, 同菌による右腋窩の壊死性筋膜炎および敗血症性ショックと診断し, ショックに対する集中治療の開始とともに, 緊急デブリードマンを行った。術翌々日, 局所の発赤拡大を認めたため, 2回目の緊急デブリードマンを行った。以後も循環動態は改善せず, 局所所見の悪化を認める度に3回目, 4回目の緊急デブリードマンを行った。4回目の手術以降, 循環動態は改善し, 第17病日に昇圧剤中止および人工呼吸器離脱, 第30病日に自宅退院となった。

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