日本救急医学会関東地方会雑誌
Online ISSN : 2434-2580
Print ISSN : 0287-301X
43 巻, 4 号
日本救急医学会関東地方会雑誌
選択された号の論文の35件中1~35を表示しています
原著論文
  • 大野 孝則, 伊藤 敏孝, 竹本 正明, 中野 貴明, 金沢 将史
    2022 年 43 巻 4 号 p. 92-97
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    【目的】新百合ヶ丘総合病院 (以下, 当院) でロナプリーブ®を投与した患者に対して治療経過を調査し重症化の要因を明らかにすることである。【対象】2021年8月6日~9月27日の間に当院でロナプリーブ®の投与を行った成人COVID-19患者52例に対して調査した。【結果】投与後に中等症 II 以上と判断し入院治療となった5例 (9.6%) を入院群, 自宅療養が継続できた47例を非入院群とし比較をした。CT検査の所見で肺炎像の占有率が高い症例がp=0.006と入院群で有意差をもって多くなっていた。肺炎像の占有率の高さは投与前のSpO2および発症から投与までの期間が関係していた。【結論】ロナプリーブ®の使用後に入院治療を要した症例の特徴は, すでに肺炎像の占有率が高い症例であった。症状が軽微であってもSpO2が低値である場合や発症からの時間が経過している場合はCTを撮影しておく意義があると考える。

  • 大村 拓, 服部 憲幸, 栗田 健郎, 古川 豊, 貝塚 伴子, 立石 梓乃, 中田 孝明
    2022 年 43 巻 4 号 p. 98-100
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    【目的】千葉大学医学部附属病院ICUにおけるCOVID-19の第5波の臨床的特徴を明らかにすること。【方法】第5波とそれ以前の患者群に分類し, 人工呼吸管理期間や転帰などについて比較検討する。【結果】第5波の患者群は, 年齢が有意に若く (第1~4波群 : 60歳 [51, 66] , 第5波群 : 53歳 [46, 59] , p=0.00074), 生存率も有意に高かった (第1~4波群 : 38/50人 (76%), 第5波群 : 45/47人 (96%), p=0.0086) 。人工呼吸管理期間や入院期間に有意差は認められなかった。【結語】第5波の患者群は, 第1~4波の患者群と比較して年齢が若く, 生存率が高い。

  • 山本 裕記, 船登 有未, 小林 憲太郎, 佐々木 亮, 木村 昭夫
    2022 年 43 巻 4 号 p. 101-106
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    さまざまな患者が訪れる救急外来では, 搬送後に新型コロナウイルス感染症 (以下, COVID-19) が偶発的に判明し, 感染対策上問題となることがある。そこで, 救急外来で来院時にCOVID-19を強く疑っていない患者のうち, COVID-19に罹患している患者の割合を明らかにし, 感染対策の観点からどのように対応をしていくべきかを検討した。2020年5月26日~2021年10月31日の間に国立国際医療研究センター病院救急外来を受診し, 来院時にはCOVID-19を強く疑わなかった患者のうち, COVID-19の併発が判明した患者の診療録を後方視的に調査した。偶発的にCOVID-19が判明した患者は49名 (0.20%) であった。偶発的にCOVID-19が判明した患者のうち, 41名はCOVID-19の蓋然性を評価したチェックリストに該当項目があり, 残りの8名は意識障害のため評価困難であった。COVID-19を疑う症状に乏しくても, チェックリストによるスクリーニングで検査前確率を上げる努力を行いながら, 大流行期ではその項目を評価できない患者に対してより積極的にPCR・抗原検査を行うことが感染対策上で重要である。

  • 山名 英俊, 岩田 累, 内 孝允, 石川 ルミ子, 中塚 智也, 粕谷 秀輔, 石上 耕司, 萩原 令彦, 片桐 美和, 一林 亮, 稲岡 ...
    2022 年 43 巻 4 号 p. 107-110
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    東邦大学医療センター佐倉病院は二次救急医療機関である。当直帯を中心に, 外傷に対するCT検査の際に, 損傷範囲が撮像範囲に収まりきっていない検査が散見された。そこで, 「体幹部の評価に際し不十分な撮像範囲としないこと」, および「頭部外傷には頸椎の損傷を合併しやすい」という2点を強調した当直帯における外傷用のCT撮像のプロトコルを作成した。その結果, 頭部外傷に対するCT検査実施時に同時に頸椎の評価も実施する件数が有意に増加した。

  • 柴田 あみ, 佐藤 慎, 金子 純也, 北橋 章子, 工藤 小織, 畝本 恭子, 横堀 將司
    2022 年 43 巻 4 号 p. 111-114
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    最重症のくも膜下出血は, 生命予後, 機能予後ともに不良であることから, 原則として急性期の再出血予防処置の適応は乏しいとされる。当救命救急センターに搬送されるくも膜下出血は重症例が多く, 致命的となる症例や重度の後遺症を残す症例も多いが, 術前管理および再出血予防処置と引き続く全身管理により比較的良好な転帰をたどるものもある。今回, 瞳孔異常を呈するような最重症のくも膜下出血の中にも救命可能かつ良好な転帰をたどる症例が存在することを紹介し, われわれの最重症のくも膜下出血に対する治療戦略について報告する。

  • ─COVID-19の影響も含め─
    松本 徹也, 手嶋 聖奈, 遠藤 智美, 小島 啓輔, 龍崎 亮太, 伊藤 俊孝, 佐藤 裕那, 須賀 弘泰
    2022 年 43 巻 4 号 p. 115-120
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    TMGあさか医療センターは, 1977年に朝霞台中央総合病院として開設され, 埼玉県朝霞地区を中心とした地域医療の一端を担っている。2018年1月, 新築移転に伴ってTMGあさか医療センターとなり, それまでの各科相乗り型からER型への救急外来の整備を行ってきた。今回, その効果, 問題点, 2020年からの新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) による影響を検討した。その結果, 救急隊入電から受入承認までの承認時間はER体制の導入, 整備により2019年内は短縮できたが, 2020年はCOVID-19の流行に伴い延長した。これに対し感染者ベッドの確保, 抗原検査等の感染対策強化により回復できた。これは, 救急科だけでなく他科の医師による他科群とも同様の傾向であった。一方, 搬入から医師接触までの接触時間では, 救急群は全期間を通じ1~2minを維持したのに対し, 他科群では当初は短縮できたがCOVID-19流行で延長した状態が持続していた。しかし全体の接触時間はほぼ流行前と同レベルを維持することができており, これは初期診療を救急科が担当とする症例が約2倍に増加したためと考えられた。この結果は, COVID-19等の感染症流行下での救急搬入患者の円滑な受け入れにはER体制の強化は効果があるとともにその重要性がさらに高まることが示唆された。

  • 椿 美智博, 長島 享史, 辻本 陽子, 安斎 亨, 小泉 秀子, 伊東 由康
    2022 年 43 巻 4 号 p. 121-126
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症の流行下において, 医療体制の最前線を担う救急・集中治療領域に所属する看護師のメンタルヘルスは重要な支援課題である。本研究は救急・集中治療領域に所属する看護師が求める政策支援とメンタルヘルスを明らかにする。2021年4月に神奈川県の医療機関に所属する看護師を対象にWeb調査を実施した。調査では, 看護師が求める政策支援とメンタルヘルスを評価した。2,431名の看護師が回答し, 救急・集中治療領域の看護師は325名であった。大うつ病性障害は35.1%, 全般性不安障害は17.5%, 心的外傷後ストレス障害は28.6%が高リスク群であった。救急・集中治療領域の勤務は, 大うつ病性障害の罹患リスクが増大し (AOR 1.462, 95%CI 1.044-2.048), 心的外傷後ストレス障害の罹患リスクが低減していた (AOR 0.632, 95%CI 0.475-0.840) 。救急・集中治療領域の看護師は大うつ病性障害のリスクが高く, 業務によるリスクの変化を踏まえた支援の適正な分配と, 症状スクリーニングによる支援対象の明確化が必要である。

総説
  • 古元 謙悟, 小森 大輝, 入山 大希, 日浦 とき雄, 戒能 多佳子, 阿部 智一
    2022 年 43 巻 4 号 p. 127-131
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
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    救急救命士は主に病院前救急医療を担っているが, 近年は病院に勤務する救急救命士が注目されている。2021年度から, 茨城県つくば市にある二次救急医療機関で新たに救急救命士の運用を開始した。現在の業務には, 救急外来での患者対応と自施設の救急車を用いた転院搬送がある。救急外来での患者対応には, 救急車到着前の受け入れ準備, 到着後の初期評価, 患者の移送, 静脈路確保を含む医療行為, 医師の処置介助が含まれる。緊急度や重症度の把握に長けた救急救命士は, スムーズな診療と外来ベッドコントロールの回転率上昇に貢献しているほか, 蘇生処置において気道管理や胸骨圧迫で診療に参加している。また, 転院搬送の際は自施設の救急車を用いることで迅速な対応が可能になり, 公的救急車の負担軽減にも寄与している。今後は, 救急外来で気管挿管を行う体制の確立や, 転院元へ転送患者を救急車で迎えに行くなどして, 地域医療へのさらなる貢献を目指していく。

症例報告
  • 磯川 修太郎, 志波 大輝, 赤穂 良晃, 白崎 加純, 岩崎 任, 一二三 亨, 大谷 典生
    2022 年 43 巻 4 号 p. 132-136
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    築地市場の魚屋に勤務する70歳代, 男性。来院4日前から悪寒と来院前日からの呼吸困難を主訴に聖路加国際病院救急外来を受診した。結膜充血や関節痛, 肝腎機能障害, 炎症反応やCK上昇, 血小板減少に加え, 築地市場内でネズミとの曝露歴があったことからレプトスピラ症が疑われ入院した。入院時に採取した血清および尿検体を使用したPCR検査でレプトスピラ鞭毛遺伝子flaBが検出され, レプトスピラ症と診断した。入院後は呼吸循環障害のため集中治療室に入室したが, 人工呼吸器や腎代替療法は要さず, 入院第14病日に自宅退院とした。来院当日と2週間後, 1カ月後, 3カ月後に実施した顕微鏡下凝集試験では, L. interrogans serovar Canicolaなどの複数の血清型で抗体価は陽転化していた。東京都内でのレプトスピラ症では, ネズミとの職業曝露歴を聴取することが, 診断やその後の管理に有用であった。

  • 堀江 勝博, 一二三 亨, 関森 淳, 白崎 加純, 辛 紀宗, 大谷 典生
    2022 年 43 巻 4 号 p. 137-139
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    うつ病の既往のある30歳代の男性。来院当日, 自宅の浴室内を目張りし, サンポールとハイターを混ぜて塩素ガスを発生させ, 救急要請した。救急隊接触時, 心肺停止状態であり聖路加国際病院に搬送された。覚知から約40分で自己心拍が再開し, 同日36℃で体温管理療法を行う目的で集中治療室に入院した。入院時尿中薬物スクリーニング検査ではバルビツールが陽性であった。入院時の胸部単純CT検査では塩素ガスに特徴的な肺炎像は認めなかったが, 頭部単純CT検査にて皮髄境界不明瞭で, 低酸素脳症を示唆する所見であった。入院5日後, 酸素化が悪化したため胸部単純CTを撮像し, 塩素ガスによる化学性肺臓炎が出現した。家族に病状説明を行い, best supportive careの方針となり, 入院16日目に死亡した。

  • 小田 有哉, 高橋 弘樹
    2022 年 43 巻 4 号 p. 140-142
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
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    肺炎・褥瘡で入院加療中に発症した破傷風の1例を経験した。症例は70歳代, 男性。X-2日に汚染環境下の自宅内で体動困難になり, X日に救急搬送された。搬送時, 複数の黒色痂皮を伴う褥瘡があり, 胸部CT検査で左上肺野に浸潤影があり, 肺炎, 褥瘡治療が必要と判断され入院した。X+7日に動揺性の構音障害, 座位保持が困難になり, X+8日に開口障害, 痙笑, 頻脈, 全身発汗著明, 項部硬直が出現し, 破傷風と診断され, 高次医療機関に転院搬送された。褥瘡を診療した際は, 適切な創処置を行い, 早期に発生状況, 破傷風トキソイド接種歴を聴取し, リスク評価したうえで, 破傷風予防を検討したほうがよい。

  • 高島 真帆, 瀬野 宗一郎, 綱島 仁美, 山田 誠吾, 岩本 慎一郎, 畑中 公輔, 永田 高志, 藤野 和浩, 西山 隆
    2022 年 43 巻 4 号 p. 143-145
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    腰痛や臀部痛は, 頻度的には整形外科的な疾患に起因することが多い。今回われわれは, 当初は整形外科的な疾患であろうと診断したが, 造影CT撮影後に, Stanford B型急性大動脈解離の診断に至った2症例を経験した。1症例目は, 2日前に自宅で転倒し臀部を打撲し体動困難な状況であったために救急搬送された。2症例目は, 腰痛のために最近2年間鍼治療を行っている患者であり, 腰痛の悪化が主訴で救急搬送された。もちろん急性大動脈解離は鑑別の一つにあげられるものの, 腰痛や臀部痛が主訴であるすべての症例に対して, 造影CT検査を行うのは実際には困難であろう。患者の主訴や病歴などの主観的になり得る評価だけでなく, D-dimerや白血球数といった血液検査データなどの客観的な評価を併せて診療を進め, 造影CTを撮影するタイミングを逸しないことが肝要であろう。

  • 小川 太志, 藤木 悠, 鈴木 剛, 直江 康孝
    2022 年 43 巻 4 号 p. 146-150
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    89歳, 男性。息子が自宅居室内で倒れて意識がない父親を発見し救急搬送された。搬送時, 意識レベル JCS III -300, GCS 3 (E1V1M1), 瞳孔2mm/2mm, 対光反射なし, バイタルサインは安定していた。身体所見は, 左眼周囲に皮下血腫, 左頰部に約3mmの挫創を認め, CT検査を施行したところ, 左前頭骨眼窩部骨折, 篩骨洞骨折, 脳室穿破を伴う脳出血, 気脳症, 左前頭葉脳挫傷を認め, 頭部外傷の診断がついた。家族に病歴を詳しく聴取したところ, 前日に自宅で転倒し工具が顔面に刺さったが自己抜去, 家族が病院受診を勧めるも本人が拒否, そのまま夕食をとり就寝したとのことであった。手術をしても神経学的予後が厳しいことを考慮し, 家族と相談のうえ保存的加療の方針となり第2病日に死亡となった。頭部, 顔面杙創は, 軽症にみえても全例CTなどの画像検査を施行し異物の侵入経路と臓器損傷の診断をつけるべきである。

  • 多田野 康太, 諸江 雄太, 長嶺 圭祐, 廣嶋 俊, 戸塚 亮, 乃美 証, 鷺坂 彰吾, 山下 智幸, 林 宗博
    2022 年 43 巻 4 号 p. 151-153
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は20代, 男性。都内駅構内で何者かに突然液体をかけられ受傷した。現場で脱衣, 少量の流水で洗浄し日本赤十字社医療センターへ搬送された。現場で活動中の消防隊により液体はオキシ硫酸バナジウムと判明した。硫酸による化学熱傷と診断し, 来院時に多量の流水で洗浄し外用薬剤治療を開始した。受傷後約1週間後に上記受傷部を計10%程度のSDB~DDB相当と診断し, その後も軟膏による保存的治療を行った。さらに両側の角膜損傷も認めたため, 生理食塩液で眼球洗浄を行った。角膜損傷は両側角膜上皮欠損と診断され, ステロイドの内服と羊膜移植の後に, 治療用ソフトコンタクトレンズを使用した。皮膚, 角膜ともに良好な上皮化を得て, 受傷後約1カ月で退院した。その後外来治療を継続し, DDB相当の受傷部位は一部ケロイド瘢痕化, その他の部位は色素沈着となった。アシッドアタックによる化学熱傷は初期の十分な洗浄が重要である。

  • 垣 明歩, 中込 圭一郎, 金子 直之
    2022 年 43 巻 4 号 p. 154-158
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    破傷風は予防できる疾病で, 先進国での発症は少ないが0にした国はない。今回, 受傷後に近医を受診したが消毒と抗菌薬投与だけが行われ, その後に破傷風を発症した高齢者2例を経験した。受傷後の破傷風予防には, 適切な創処置と, 破傷風トキソイド (TTd) ・抗破傷風ヒト免疫グロブリン (TIG) の使い分けが重要で, ここに啓発の必要性を感じ, 報告する。症例1は84歳男性。右母指爪部を木屑で受傷。受傷7日目に構音障害で当科に紹介された。破傷風を疑い, 当初外来通院で創処置とTTd・TIG投与を行ったが, 開口障害が進行し入院した。ジアゼパム投与と部分抜爪を行い, 9日間の入院を要した。破傷風第1・第2期の治療であった。症例2は70歳男性。釘を踏み受傷。受傷7日目に開口障害・痙笑で当科に紹介された。破傷風と診断しTTd・TIG投与, 創部デブリドマン, 人工呼吸器管理等の集中治療を行い, 81日間の入院を要した。第2~第4期の治療であった。

  • 藤森 玲, 金子 直之, 中込 圭一郎, 長島 真理子
    2022 年 43 巻 4 号 p. 159-163
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    【症例】89歳, 女性。不眠症に対して処方されていた複数の向精神薬とともに第1世代クマリン系殺鼠剤 (ワルファリン 0.1%) を約35 g摂取しているところを家族に発見された。病院到着時に出血症状はなかったため経鼻胃管を挿入し, 胃内容物吸引と活性炭投与を行った。第3・5病日にプロトロンビン時間国際標準比 (prothrombin time-international normalized ratio ; PT-INR) が延長したため, それぞれビタミンK (Vitamin K ; VK) 投与で正常化し, 合併症なく退院した。殺鼠剤誤食は, 認知症と向精神薬による脱抑制・せん妄が原因と診断した。【考察】クマリン系殺鼠剤はVK代謝拮抗作用を有し, 凝固因子生成を抑制する。本症例ではワルファリン35mg相当の摂取だったが, 数日後に二度にわたりPT-INRが延長し, VK投与により改善した。PT-INRはVK投与なくPT-INRが正常化するまで, 十分長期に観察する必要がある。また本症例での誤食の原因には向精神薬が強く影響したと考える。高齢者に対する向精神薬使用には十分な配慮が必要であろう。

  • 伊藤 響, 加藤 史人, 宮崎 百代, 廣瀬 恵佳, 福島 憲治, 小林 憲太郎, 佐々木 亮, 木村 昭夫
    2022 年 43 巻 4 号 p. 164-169
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    われわれは皮下出血と活性化部分トロンボプラスチン時間 (APTT) 単独延長の凝固異常を契機に判明した後天性血友病Aの2例を経験したので, 文献的考察を含めて報告する。1例目は62歳, 男性。胸部腫瘤からの出血を主訴に救急搬送された。ヘモグロビン (Hb) 6.1 g/dLの貧血, 胸部皮下血腫, APTT 134秒の凝固異常があった。第2病日に出血性ショックとなり, 輸血療法, バイパス止血療法, 免疫抑制療法を行った。第7病日に第 VIII 因子インヒビター高力価が判明し後天性血友病Aと診断した。血液内科へ転科し免疫抑制療法を継続したがAPTT改善に乏しく, 入院46日目に脳出血を発症し死亡した。2例目は80歳, 女性。痙攣重積で救急搬送され多発皮下血腫, 脳出血, Hb 3.8 g/dLの貧血, APTT 70秒の凝固異常があった。第5病日に後天性血友病Aと診断し血液内科へ転科した。輸血療法, 免疫抑制療法を継続しAPTT値, 出血傾向は改善したため入院65日目に転院した。高齢者でAPTT単独延長があった際には後天性血友病Aを鑑別する必要がある。

  • 大島 綾乃, 柚木 良介, 金子 直之
    2022 年 43 巻 4 号 p. 170-174
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    ハーレクイン症候群は, 顔面半側の多汗・紅潮, 対側の無汗を特徴とする身体所見で, 交感神経障害によるとされる。今回, ハーレクイン症候群に類似するが顔面紅潮に左右差を認めず, 胴部にも左右別の所見がみられた症例を経験したので報告する。【症例】33歳男性。自動車単独事故で受傷。来院時, 顔面左側のみ発汗し, 胸腹部は左側のみ発汗, 右側は紅潮して正中で境界線を呈していた。眼球運動異常, 眼瞼下垂や瞳孔径異常はみられなかった。CT検査で多発胸椎圧迫骨折, 多発胸椎右横突起骨折, 多発右肋骨背側骨折があったが, 胸腰椎MRI検査で胸髄損傷はなかった。疼痛の訴えが強く, アセトアミノフェン1,000mg点滴静注したところ, 疼痛の改善とともに皮膚所見は消失し, その後再燃はなかった。【考察】本症例は非典型的ハーレクイン症候群で, 疼痛刺激と, 第2~9胸髄の神経振盪による交感神経障害が交錯して生じた一過性障害と考えられた。

  • 石井 美凪, 柚木 良介, 金子 直之
    2022 年 43 巻 4 号 p. 175-178
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    【はじめに】電撃傷では電気エネルギーや熱エネルギーにより, 熱傷, 神経筋損傷, 不整脈, 横紋筋融解に伴う腎障害などさまざまな合併症をきたし得る。われわれは過去14カ月間に経験した4例の電撃傷について検討した。【症例】33~80歳の男性で, 6,000~60,000Vの高電圧で受傷し, 全症例に小範囲熱傷と軽度creatine kinase (以下, CK) の上昇 (最高値649~2,022IU/L) があり, 入院中には特記すべき異常がなく, 重篤な病態には至らなかった。1例 (6,000V, CK最高値1,130IU/L) で指切断と皮弁形成術を要した。また他の1例 (6,600V, CK最高値 649IU/L) で退院後に胸椎圧迫骨折が判明した。【考察】CKは高電圧ほど高値を呈し, 減張切開や皮弁形成の要と有意に相関するとされるが, 本検討では無関係であった。また電撃傷では外表面に現れない損傷が潜む可能性があり, 症状に応じて積極的精査が必要であると考える。

  • 沼田 櫻華, 太田 慧, 石澤 嶺, 栗原 智宏
    2022 年 43 巻 4 号 p. 179-182
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は70歳男性。意識障害, 発熱を呈し救急搬送された。造影CT検査にて食道穿孔による縦隔炎と診断した。また, 同部位に一致して前方に突出したびまん性特発性骨増殖症 (diffuse idiopathic skeletal hyperostosis ; DISH) を認め, 転倒による外力がDISHに加わったことによる外傷性食道穿孔を疑った。敗血症の状態であり, 広域抗菌薬で治療導入した。その後, 状態悪化して敗血症性ショックとなり, 人工呼吸器管理を要したが, 食道造影で膿瘍が縦隔内に限局し, 食道内にドレナージされていたため, 抗菌薬投与による保存的加療で治癒を目指す方針とした。第30病日の造影CT検査で膿瘍消失を確認し, 第32病日に施行した上部消化管内視鏡検査では食道粘膜は炎症瘢痕を残すのみであり, 抗菌薬は第38病日に終了した。食道穿孔による縦隔膿瘍に対する治療として, 膿瘍が縦隔内に限局しているなど条件を満たせば, 抗菌薬治療による保存的加療も適応になり得る。

  • 吉田 耕輔, 河口 拓哉, 村松 俊, 原田 尚重, 高野 日出志, 渡辺 真那斗, 松浦 暢孝
    2022 年 43 巻 4 号 p. 183-187
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は40代, 女性。ウイルス性腸炎の疑いで入院となった。入院後, 血圧低下と意識障害をきたし, 集中治療室に入室となった。原因不明の血圧低下から離脱後, 全身に急速進行性の紫斑が出現した。紫斑の原因としては急性感染性電撃性紫斑病 (acute infectious purpura fulminans ; AIPF) や薬剤による中毒性表皮壊死症 (toxic epidermal necrolysis ; TEN) が考えられた。メチルプレドニゾロンの点滴投与を行ったが皮膚所見の改善が乏しく, 血漿交換療法を施行したところ改善を認めた。入院時に提出したリケッチアの血清学的検査でペア血清が4倍以上の抗体価の上昇を認めたため, 日本紅斑熱による敗血症性ショックと診断した。入院時に施行した病理組織学的検査ではAIPF, TENの双方に矛盾しない結果であったが, TENに特徴的な表皮の全層性壊死を認めた点からは紫斑の原因はTENであった可能性が高い。日本紅斑熱によるAIPFはまれではあり報告数は少ないが, 紫斑の鑑別疾患として考えることが重要である。

  • 田中 里奈, 内藤 啓子, 船越 雄太, 白根 翔悟, 田中 駿, 小野寺 隆太, 溝辺 倫子, 高橋 仁, 舩越 拓
    2022 年 43 巻 4 号 p. 188-191
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    高トリグリセリド (以下, TG) 血症による軽症急性膵炎を発症した37歳の女性に対し, 患者から入院の同意が得られずやむなく外来治療とし, 経過が良好であった症例を経験した。救急外来における初療では細胞外液補液と鎮痛による支持療法のみ行った。帰宅にあたり水分摂取励行と高脂肪食制限を伝え, フィブラート系薬剤を内服処方して, 後日外来フォローとした。2日後の外来診察時は臨床症状, 血清リパーゼ値, 血清TG値はともに改善傾向を認め, 臓器不全の併発はなかった。急性膵炎は軽症例であっても重症化するリスクを考慮して経時的なモニタリングが勧められており, 帰宅時のリスク評価は一般的ではない。軽症であっても外来治療という選択肢は一般化できないが, 入院の同意が得られない場合は内服処方で最大限の治療効果を目指すことが必要となり, フィブラート系薬剤の処方はその選択肢となり得る。

  • 池谷 友里, 野口 航, 兼島 博嗣, 白水 翔, 迫田 直樹, 辻 友篤, 山本 理絵, 守田 誠司, 中川 儀英
    2022 年 43 巻 4 号 p. 192-194
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は急性カフェイン中毒の36歳男性。嘔吐, 不穏状態, 頻脈性不整脈を認め, 摂取量が致死量を超えていたため, 緊急血液透析を行った。この症例では, 血液透析前後で血中カフェイン濃度に比例して乳酸値も低下した。その後, 合併症もなく, 8日目に退院した。これまでの研究で, 血中カフェイン濃度と乳酸値の正の相関が報告されており, 血液透析前後でも正の相関を示す可能性がある。乳酸値は血液透析の効果を判断する指標となる可能性がある。

  • 早野 大輔, 加地 正人, 坂本 由美子, 大森 啓介, 松田 出
    2022 年 43 巻 4 号 p. 195-197
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

     【はじめに】全力疾走により運動後急性腎不全 (acute renal failure with loin pain and patchy renal ischemia after anaerobic exercise ; ALPE) をきたした症例を報告する。【症例】25歳, 男性。全力疾走した後に, 背部痛が持続するため救急外来を受診した。腰背部と嘔気を訴えていた。採血検査ではCr 1.4 mg/dL, 尿酸値 5 mg/dL, CK 621 U/Lであった。腹部単純CT検査では, 両側腎臓に浮腫性の変化が描出された。ALPEと診断され鎮痛薬を投与し保存的に治療された。【考察】ALPEはほぼ若年男性に発症する。腰背部痛, 腹痛, 嘔吐を訴える。腎性低尿酸血症の基礎疾患をもつ患者に発症することが多く, 酸化ストレスの増大による腎血管の攣縮が原因として推測されている。ALPEでは時として血液透析が必要となるため注意が必要である。

  • 鈴木 桜子, 若竹 春明, 斎藤 浩輝, 金澤 実, 森内 麻美, 栗栖 美由希, 永冨 彰仁, 桝井 良裕
    2022 年 43 巻 4 号 p. 198-201
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    緑膿菌の敗血症の所見から壊疽性膿瘡と判明した1例を経験した。壊疽性膿瘡は緑膿菌敗血症を伴う敗血疹の一つとして知られるが, 紅斑を伴う壊疽性潰瘍があった場合には, 本疾患を念頭に迅速な細菌検査と早期治療開始が重要であると考えた。

  • 寺谷内 泰, 五十嵐 豊, 生天目 かおる, 平野 瞳子, 溝渕 大騎, 中江 竜太, 横堀 將司
    2022 年 43 巻 4 号 p. 202-206
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    抗melanoma differentiation-associated gene (MDA) 5抗体陽性皮膚筋炎は, 予後不良な急速進行性の間質性肺炎を高頻度に合併する。今回, 当施設で経験した2例を報告する。症例1 : 44歳, 男性。呼吸苦を自覚し救急要請した。検査の結果, 重症肺炎と診断し, 人工呼吸器および体外循環管理を開始した。その後, 抗体陽性の判定を受けステロイド, シクロホスファミドによる加療を行ったが, 救命には至らなかった。症例2 : 68歳, 女性。倦怠感を自覚して近医を受診し, 肺炎像があったため入院した。その後, 呼吸不全が増悪し人工呼吸器管理を開始した。抗体陽性の判定を受け, ステロイド, シクロホスファミド, タクロリムスによる加療を行ったが救命には至らなかった。重症呼吸不全で新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) を疑うような画像所見を呈する症例では本疾患も鑑別疾患としてあげられる。

  • 岸本 真治, 立石 順久, 奥 怜子, 橋口 直貴, 中西 加寿也
    2022 年 43 巻 4 号 p. 207-211
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    心筋炎など呼吸不全以外のCOVID-19に伴う病態についてはいまだ不明な点が多い。今回, 呼吸不全を伴わない重症心筋炎症例を経験したので報告する。症例は新型コロナウイルスワクチン未接種の47歳, 女性。倦怠感を主訴に来院した。SARS-CoV-2関連検査が陽性で, 血液検査や心臓超音波, 心電図, 冠動脈造影検査の結果からCOVID-19関連心筋炎と臨床的に診断した。来院時ショック状態でVA-ECMOでの補助を要したが, 次第に心機能は回復し離脱できた。なお経過中, 呼吸状態は安定していた。COVID-19には呼吸不全を伴わない心筋炎のみの症例も存在することに留意し, ショックを呈する症例では, 心筋障害を評価する目的で心筋トロポニンを測定することがCOVID-19早期発見のために有用と考えられる。またCOVID-19関連心筋炎は急速に劇症化し得ることから, 早い段階から集学的治療が可能な医療機関での治療が望ましい。

  • 田中 智秀, 栗原 貫, 北薗 雅敏, 桒本 健太郎, 佐藤 秀貴
    2022 年 43 巻 4 号 p. 212-215
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    Crowned dens syndrome (CDS) は, 軸椎歯突起周囲へピロリン酸カルシウムまたはカルシウムヒドロキシアパタイトが沈着することで生じる関節炎である。発熱・頸部痛・炎症反応を認める疾患であり, 頸部CT画像において軸椎歯突起周囲に石灰化病変を合併するのが特徴であるが, 発熱を伴わないCDSの場合, くも膜下出血との鑑別を早期に行うことが必要である。今回われわれは, 画像検査により診断に至った3例について, 文献的考察を含めて報告する。

  • 山本 大輔, 勅使河原 勝伸, 五木田 昌士, 坂本 早紀, 鈴木 源, 清田 和也
    2022 年 43 巻 4 号 p. 216-219
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は, 神経因性膀胱をもつ75歳, 女性。自宅で倒れているところを発見され救急搬送された。来院時ショックで, 全腹部圧痛と筋性防御があり, 汎発性腹膜炎を呈していた。CT検査で大量腹水, 腸管拡張があり, 急性腹症として試験開腹術を行った。腸管虚血や穿孔はなく, 臨床所見と開腹所見は解離していた。腹水と尿の性状が淡血性で類似していたことから膀胱破裂を疑い, 尿道カテーテルからエアを注入しリークが確認できた。検索すると膀胱頂部で全層性に破裂しており, 縫合修復を行った。急性腎障害は術後速やかに改善し, 偽性腎障害 (pseudo renal failure) と考えられた。抜管後に外傷歴が判明し, 外傷性腹膜内膀胱破裂と診断した。外傷性膀胱破裂の多くは骨盤骨折に合併するが, 本症例のように排尿障害による膀胱過伸展状態では, 軽微な外傷でも腹膜内破裂をきたし得るため, 高齢者ではとくに重要な鑑別疾患であると考えられた。

  • 川端 彩紀, 島田 航輔, 高橋 航, 酒井 和也, 豊田 洋
    2022 年 43 巻 4 号 p. 220-223
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    症例は80歳代の男性。血便を主訴に救急搬送され, 来院時ショックであった。造影CT検査で上行結腸に造影剤の血管外漏出があり, 上行結腸憩室出血と診断した。大量輸血を継続したが心肺停止に至り, 心肺蘇生で自己心拍が再開した。緊急手術が困難であったため経カテーテル動脈塞栓術を実施して出血をコントロールした後, 開腹止血術を行った。術中所見で滲出性出血が持続するため, 腸管吻合, 閉腹せずに腹腔内にガーゼパッキングするdamage control surgery (DCS) を施行した。手術後に循環動態は安定し, 術後3日目に閉腹し, 術後7日目にICU退室とし, 術後21日目に転院した。大腸憩室出血の死亡率は高くなく保存加療で自然止血する症例が多いが, 本症例では心肺停止に至ったものの経カテーテル動脈塞栓術とDCSによって神経学的異常なく救命し得たので報告する。

  • 池田 万優子, 廣瀬 陽介, 湯澤 紘子, 近藤 乾伍, 細野 一樹, 貞広 智仁
    2022 年 43 巻 4 号 p. 224-227
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    74歳男性が意識障害と直腸温26.7℃の高度低体温で搬送された。意識レベルはGCSでE4V1M4。血圧57/31mmHg。心電図では49/分の洞性徐脈がみられた。初療室で加温輸液を約2時間で2,500mL急速投与したが, 徐脈を経て心静止した。速やかに心肺蘇生法 (cardiopulmonary resuscitation ; CPR) を施行し自己心拍は再開し, その後, 加温輸液とブランケットによる復温を継続した。また, カテコラミンの持続投与も行っていたが血圧への反応は乏しく, 再び徐脈から心静止へ移行したが, 再度CPRを施行し自己心拍は再開した。腹部CT検査で急性化膿性胆管炎の所見がみられ, 敗血症性ショックの併発が示唆され, 直ちに広域抗菌薬による治療を開始し, 翌日には覚醒が得られた。低体温症はとくに高齢者では感染症を疑い, 復温と同時に原因検索とその治療を迅速に行うべきである。また, 低体温症例の復温中は心室頻拍/心室細動だけでなく, 心静止となることも念頭に置き治療を行う必要がある。

  • 山本 翔太, 古郡 慎太郎, 菊池 優志, 白澤 彩, 桐ヶ谷 仁, 岩下 眞之, 竹内 一郎
    2022 年 43 巻 4 号 p. 228-231
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    たこつぼ型心筋症は精神的・身体的ストレスにより一過性の左室壁運動障害を呈する症候群である。今回, 気管支喘息発作に対して投与されたアドレナリンによりたこつぼ型心筋症を発症した症例を経験した。アドレナリンの投与機会が多い救急領域において教訓的な症例であるため報告する。症例は43歳男性で, 気管支喘息重篤発作による呼吸性アシドーシス, 意識障害を呈し, 他院より当院へ転院された。来院時の12誘導心電図検査でV2-V5にST上昇があり, 心臓超音波検査では左室心尖部の壁運動が低下していた。心電図変化と左室壁運動低下の領域が一致しないことからたこつぼ型心筋症の可能性が高いと考えた。気管支喘息発作による内因性カテコラミンの上昇に加え, アドレナリン投与による外因性アドレナリンによりたこつぼ型心筋症が誘発されたと考えられた。アドレナリン投与によるたこつぼ型心筋症の発症を早期から認知し, 合併症予防を行う必要があると考えられた。

  • 池邉 怜寛, 大久保 ひかり, 小坂 眞司, 朴 栽完, 大城 拓也, 齊藤 眞樹子, 齋藤 倫子, 並木 みずほ, 武田 宗和, 矢口 有 ...
    2022 年 43 巻 4 号 p. 232-236
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    85歳の女性。自宅にて全裸で倒れているのを訪問した親族が発見し, 意識障害のため救急要請した。来院時膀胱温28.0℃の低体温と高度の脱水を示唆する所見があり, ブランケットによる復温と補液を行った。ICUでモニター管理下での復温と補液を継続し, 第2病日に腋窩温36℃台となり, 第4病日に脱水も補正されたと思われたが傾眠傾向が継続した。入院時の血液検査で甲状腺機能低下があり, 意識障害, 低体温と併せて, 粘液水腫性昏睡の診断基準を満たしたことからレボチロキシンナトリウム水和物の内服を開始し, 投与開始以降は意識清明となった。血清TSH値の低下があり, レボチロキシンナトリウム水和物は維持量で継続し, リハビリテーション目的に転院した。粘液水腫性昏睡は意識障害の原因疾患の一つにあげられる甲状腺機能障害であり, まれな疾患ではあるが死亡率が高く, 早期診断と治療が重要であると考えられた。

  • 猪瀬 美咲, 中村 香代
    2022 年 43 巻 4 号 p. 237-241
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    手術は, 術後に合併症を発症する可能性があり, 患者は苦痛や不安, 恐怖を経験することがある。その一つに術後悪心・嘔吐 (postoperative nausea and vomiting ; PONV) がある。患者A氏 (以下, A氏) はPONVの発症歴があり, 今回の術後に再発症しないかと不安を感じていた。A氏は壮年期であり, 理解度も良好であることから, オレムが提唱するセルフケア・エージェンシーを補完することで, A氏を主体とした症状マネジメントが可能であると判断した。術前の時点でPONV発症リスクは4項目中2項目に該当し, 40%であった。術前にA氏とPONVやリスク因子について情報共有したうえで, 看護計画を立案した。術前看護計画を実行したが, 手術当日にPONVが出現し, 症状が改善せず, A氏自身が次なる選択を意思決定したことで, 症状を緩和することができた。術前からの準備が患者の主体的な症状マネジメントへの取り組みにつながり, 不安を軽減し, 術後のセルフケアにも影響を与えることができたといえる。

  • 2022 年 43 巻 4 号 p. 242-
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/08
    ジャーナル フリー
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