日本救急医学会関東地方会雑誌
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最新号
日本救急医学会関東地方会雑誌
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
症例報告
  • 岩本 泰樹, 鈴木 恵輔, 須郷 加奈子, 富田 佳賢, 島田 拓哉, 菊地 一樹, 井上 元, 八木 正晴, 佐々木 純, 土肥 謙二
    2025 年46 巻4 号 p. 219-222
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー
    心房細動は臨床診療で遭遇する最も一般的な不整脈で、有病率は年齢が進むにつれて上昇する。DOAC はモニタリング不要の経口抗凝固薬として処方が増えつつあるが、出血性合併症の懸念がある。今回DOAC内服患者の鈍的外傷による出血に対し経カテーテル動脈塞栓術 (以下TAE) を施行した1例を経験したので報告する。60代の男性。既往歴に心房細動、心室性期外収縮があり、DOACが導入されていた。自転車で走行中に、左大腿を路上のポールにぶつけて転倒した。当日中に近医受診したが骨折はなく、帰宅した。翌日、強い大腿部痛とふらつきを自覚したため救急要請し、搬送されたA病院から当院に紹介搬送された。当院で血管造影検査をしたところ、左大腿に活動性出血を伴う筋肉内血腫があったためTAEの治療適応と判断し、TAEを施行し止血した。抗凝固薬内服中の患者では、筋肉内出血であっても出血が持続し、合併症を発症する危険性があるため、十分な経過観察が必要であると考える。
  • 高野 彩音, 中村 元保, 吉田 絵理子, 佐藤 純基, 井形 聡, 野本 朋宏, 四方田 薫, 大平 泰之, 和田 浄史
    2025 年46 巻4 号 p. 223-226
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー
    症例は70代の女性。身長149cm、体重36.5kg (BMI 16.44kg/m2) と低身長、小柄であった。リハビリテーション目的の入院中に意識障害を呈し、その後に心停止に至り、50分間の心肺蘇生術 (cardiopulmonary resuscitation ; CPR) を行ったものの蘇生はかなわず、永眠された。死亡時画像診断で、蘇生時には確認できなかった腹水貯留と大動脈の著明な虚脱があった。病理解剖では腹腔内に900mLの新鮮血液の貯留があり、胸骨圧迫位置と一致した肝左葉が鈍的に損傷しており、肝損傷による腹腔内出血が蘇生困難の一因になったものと考えられた。 一次救命処置 (basic life support ; BLS) 研修実施後のCPRスキルは時間の経過とともに低下していくため、医療従事者は常に質の高いCPRを行えるよう、定期的なBLS研修を受ける必要がある。
  • 勝見 大誠, 福島 史人, 速水 宏樹
    2025 年46 巻4 号 p. 227-230
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー
    淡水エイ刺傷は海水エイ刺傷と比較し報告が少なく、より重篤な経過を辿ることがある。今回我々は、観賞用に飼育されていたPotamotrygon leopoldiに刺され、アナフィラキシーおよび手内在筋障害を呈した10代男児の1例を経験した。来院時、SpO2の低下と膨疹があり、アナフィラキシーと診断しアドレナリン0.5mgを筋注した。手掌に約3mmの刺傷があったため、刺傷部の温水洗浄、破傷風トキソイド接種、セファゾリンナトリウムの投与を行った。第3病日に左手指の伸展障害とintrinsic minus肢位が出現し、MRIで手内在筋の腫脹および炎症所見があった。温浴療法を施行し、リハビリテーションを継続した結果、第95病日に後遺症なく終診した。淡水エイの飼育数増加に伴い刺傷例も増加傾向にあり、毒成分の違いや受傷部位の特性から重症化しやすく、危険性の周知と温浴療法を含む適切な初期治療の普及が急務である。今後さらなる症例の蓄積と治療法の確立が望まれる。
  • 前田 敦雄, 清水 吹紀, 河北 光, 八嶋 朋子, 内野 正人
    2025 年46 巻4 号 p. 231-235
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー
    【背景】たこつぼ心筋症は、精神的または身体的ストレスを契機に発症する一過性の心筋機能障害である。典型的には胸痛や心電図異常を伴うが、無症候性の症例も存在し、診断が遅れることがある。大腿骨頸部骨折を含む外傷が誘因となることが報告されているが、無症候性の発症例に関する報告は少ない。
    【症例】90代の男性。転倒して大腿骨頸部を骨折し入院した。心症状はなかったが、術前12誘導心電図で陰性T波があり、心エコーで心尖部のバルーニングがみられた。冠動脈造影で有意狭窄はなく、たこつぼ心筋症と診断された。第9病日に心機能の改善を確認し、第15病日に整形外科手術が施行され、術後経過良好で、リハビリテーション目的に転院した。
    【結論】無症候性のたこつぼ心筋症は、高齢外傷患者において診断が困難であり、術前の心臓スクリーニングが重要である。
  • 大場 賢生, 福島 史人, 伊勢 義仁, 速水 宏樹
    2025 年46 巻4 号 p. 236-239
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー
    近年洗濯用パック型液体洗剤 (LDPs) の摂取による中毒が問題となっている。今回LDPsの内容物を自殺目的に直接摂取し遅発性に喉頭浮腫を呈した成人症例を経験したため報告する。60歳代女性が自殺目的でLDPs 5個 (約90g) を摂取し、嘔吐から4.5時間後に救急搬送された。来院時は頻脈あり、咽頭痛と咽頭部の発赤があった。胃管吸引で洗剤臭がする液体400mLを回収し、ICUに入室した。第2病日に咽頭痛の増悪、嗄声、呼吸困難感が出現した。上部消化管内視鏡検査で喉頭浮腫と食道びらんを確認し、アドレナリン・デキサメタゾン混合液のジェットネブライザー吸入を開始したところ、症状は速やかに改善した。第5病日に喉頭浮腫の改善を確認後、第6病日に退院した。LDPsは高濃度界面活性剤を含み、直接摂取により遅発性の重篤な喉頭浮腫を引き起こす可能性がある。本症例ではジェットネブライザー吸入が有効であった。LDPs中毒において気道合併症を念頭に置いた慎重な経過観察と迅速な治療介入が重要である。
  • 下西 颯, 山村 英治, 河野 陽介, 中野 公介
    2025 年46 巻4 号 p. 240-243
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー
    くも膜下出血の典型的な症状は「突然の激しい頭痛、嘔気・嘔吐」である。くも膜下出血で背部痛を主訴に受診する例は極めて稀であり、背部痛の原因精査時に偶発的に早期診断・治療し、救命できたくも膜下出血の1例を教訓的な症例として報告する。
    症例は70歳代の女性。搬送当日の昼頃から突然の背部痛が出現し、痛みは背部から頸部に移動し大動脈疾患疑いで救急搬送された。
    来院後の血圧は高値が継続していたが左右差はなかった。軽度だが後頸部痛の訴えもあり体幹造影CT検査に加え頭部CT検査も行い、くも膜下出血の診断に至った。第1病日に開頭クリッピング術、スパイナルドレナージ術が施行され、第50病日に独歩で自宅退院した。非典型的な症状であっても致死的な頭蓋内病変が隠れていることに留意しなくてはならず、詳細な問診・身体診察をもとに本疾患を早期発見・治療し社会復帰が可能となった症例であった。
  • 内田 碧輝, 柏浦 正広, 平良 悠, 森 仁志, 岸原 悠貴, 田村 洋行, 富永 経一郎, 安田 英人, 守谷 俊
    2025 年46 巻4 号 p. 244-246
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー
    症例は統合失調症に対してパリペリドン持効性製剤を投与されていた60代の女性。意識障害で救急搬送され、来院時はショック状態であった。各種検査から尿路感染に伴う敗血症性ショックと診断した。切迫心停止と判断してアドレナリン0.5mgを静注したが、血圧は上昇せず心拍数のみ増加し、アドレナリン反転と判断した。高用量ノルアドレナリン持続投与でも血圧は上昇せず、バソプレシン0.03単位/分とヒドロコルチゾン50mg投与により血圧は上昇した。第3病日にショックを離脱し、第17病日に退院した。アドレナリン反転時にはα1受容体刺激作用を介さないバソプレシンの有効性が示唆された。
  • 本橋 悠, 三浦 健, 下條 信威, 井上 貴昭
    2025 年46 巻4 号 p. 247-251
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー
    腸球菌属は菌血症や尿路感染症の原因菌となり得るが、Enterococcus hirae (以下E. hirae) のヒト感染は稀である。E. hiraeにより複雑性腎盂腎炎を発症した一例を報告する。80代の女性。胸痛と呼吸困難感を主訴に救急搬送された。体幹部CT検査で右腎周囲から後腹膜にかけての脂肪織濃度上昇がみられ、急性腎盂腎炎の診断で入院した。尿のグラム染色でグラム陽性球菌がみられ、ピペラシリン/タゾバクタムを開始した。尿培養でE. hiraeを同定した。第12病日に撮像した腎の単純MRI画像では右腎囊胞による腎盂圧排と腎盂内の拡散強調画像で高信号がみられ、複雑性腎盂腎炎と診断し、アンピシリン/スルバクタムを7日間追加投与し、軽快した。非免疫抑制状態の患者に本菌が検出された場合、膿瘍や物理的閉塞機転の有無を慎重に検索する必要がある。
  • 井田 利香, 佐藤 秀貴, 工藤 小織, 北薗 雅敏, 松川 紘之
    2025 年46 巻4 号 p. 252-255
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー
    当院には閉鎖病棟がなく、継続的な精神科専門加療が必要な場合は、精神科医療機関への転院を行っている。症例は40歳代の女性。既往歴に神経性食思不振症、解離性障害、アルコール依存症がある。1ヶ月前から食事摂取量が減少し、1週間前から体動困難となっていた。訪問看護師が遠方の父親に連絡し、父親から救急要請された。初診時、身長150.0cm、体重 21.8kg、BMI 9.7kg/m2と著明なるいそう状態であった。電解質補正、栄養投与を開始したところ、第6病日に腹部膨満著明となりrefeeding症候群が疑われた。電解質補正継続により内科的疾患は改善した。今後の神経性食思不振症への継続介入のため、転院調整を行ったが、各精神科医療機関の受け入れ条件が厳しく、転院調整に難渋した。帰宅願望が強く、転院調整中の第30病日に独歩介助を要したが、自己退院した。重度の身体的合併症を伴う精神科救急においては、地域の医療連携など、より良い連携システムの構築が必要である。
調査報告
  • 藤井 遼, 和田 崇文
    2025 年46 巻4 号 p. 256-259
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー
    【目的】上尾中央総合病院では消防との連携を密にし、重症患者を迅速に応需することと、搬送困難症例を減少させることで現場滞在時間を短縮するため、救急科医師直通の重症患者専用ホットラインを増設した。また、緊急性が疑われる入電内容を救急隊員より現場到着前に一報していただくStep 1 callのシステムを開始した。今回、システムの有効性を評価することを目的とした。【方法】消防本部よりシステムの運用開始前後の搬送人員と時間のデータと自由記載の意見を入手して評価した。【結果】システムの運用開始後より、重症患者の搬送困難症例の減少、現場滞在時間の短縮の傾向があり、消防からも好意的な評価が多かった。【結語】救急科医師直通ホットラインにより消防との連携が密となり、現場滞在時間が短縮する可能性が示唆されたが、統計学的評価のためにはさらなる検証が必要である。
  • 野田 彰浩, 澤田 奈実
    2025 年46 巻4 号 p. 260-264
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー
    東京都は2022年COVID-19国内流行の第8波にインフルエンザの流行が重なるツインデミックによる年末年始の患者数が過去最高になると想定し、都立病院の診療体制強化を打ち出した。当院では病院敷地内に別棟発熱外来を増築し、内部では2種類の感染症患者と陰性者がそれぞれ交差しないよう設計した。スタッフは臨時に非常勤職員を採用した。一次救急施設であり、予約時のオンライントリアージが必要とされた。別棟で臨時職員により運営された発熱外来により一般診療や救急診療が制限されることはなく、当院の救急患者数は例年より増加し地域の医療ニーズに応えることができた。一方でパンデミック時には人件費等の費用が高騰した。別棟で臨時スタッフにより運営する発熱外来は一般診療への影響を抑える面では有効であったが、費用面で課題がみられた。
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