日本救急医学会関東地方会雑誌
Online ISSN : 2434-2580
Print ISSN : 0287-301X
最新号
日本救急医学会関東地方会雑誌
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
症例報告
  • 田中 翔悟, 舩冨 裕之, 高橋 仁, 舩越 拓
    2024 年 45 巻 3 号 p. 144-146
    発行日: 2024/06/28
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    症例は60代の女性。来院2日前に心窩部不快感と嘔気, 食思不振を自覚し, その後, 発熱と右下腹部痛が出現した。初診時, 右下腹部に限局する強い圧痛と反跳痛があり, 急性虫垂炎を疑った。腹部造影CTでは虫垂腫大はなく, 右卵巣に囊胞構造を伴う腫瘤および壁側腹膜の肥厚や散在する小結節, 囊胞壁の破綻と内容物の流出があった。卵巣癌の囊胞性成分の微少破裂により急性発症の右下腹部痛が出現し, 急性虫垂炎に類似した経過を辿ったと考えられた。急性腹症の症例を診療する際には, 頻度は少ないものの悪性腫瘍の可能性があり, 患者説明に配慮する必要がある。

  • 高根 祐希, 岡田 一郎, 小山 智士, 小原 佐衣子, 菱川 剛, 長谷川 栄寿, 平木 咲子, 大杉 真也
    2024 年 45 巻 3 号 p. 147-151
    発行日: 2024/06/28
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    症例は66歳の男性。当院搬入11日前に心窩部不快感が出現した。9日前に右側腹部痛を自覚し, 2日前には右胸痛が出現したため救急要請した。CT画像で右胸水貯留に加え腫大した虫垂が右後腎筋膜に接し, 右後腎傍腔に液体貯留とガス像があり右横隔膜沿いに広がっていた。右胸腔にドレーンを留置したところ膿性胸水があり, 緊急手術として開腹虫垂切除と腹腔内洗浄ドレナージを行った。その後, 胸水から腸内細菌が検出された。術後も膿胸と腹腔内膿瘍が遷延したが, 胸腔および腹腔ドレナージと抗菌薬療法にて炎症反応は徐々に改善し膿瘍は治癒した。経過中に行った造影検査では後腹膜膿瘍と膿胸の連続性が確認できた。第84病日にリハビリテーション目的で他院へ転院した。本例では胸水培養および造影検査所見から複雑性虫垂炎が後腎傍腔膿瘍を形成した後, 頭側へ進展し, 横隔膜を介して膿胸に至ったと推測された。

  • 清水 亮祐, 海田 賢彦, 大津 晃康, 清水 裕介, 吉川 慧, 山田 賢治, 山口 芳裕
    2024 年 45 巻 3 号 p. 152-156
    発行日: 2024/06/28
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    都市部における日本紅斑熱の報告は稀であり, 今回本症により敗血症性ショック, 播種性血管内凝固症候群を呈し, 診断に苦慮した症例を経験したので報告する。症例は40歳代の男性。来院5日前から全身倦怠感, 関節痛, 紅斑を自覚し近医で解熱薬を処方されたが改善せず, 近医を再受診し, 敗血症が疑われ当院に紹介搬送された。敗血症性ショック, 播種性血管内凝固症候群と診断し, 広域抗菌薬の投与を開始したが全身状態の改善は得られなかった。再度病歴聴取, 診察をしたところ, 直前の野外活動歴と右下腿に痂皮があったことからリケッチア感染症を考慮し, ミノサイクリンを投与した。その後, 全身状態は改善し, 第23病日に自宅退院した。退院後にRickettsia Japonicaが陽性と判明し, 日本紅斑熱と診断した。発生が稀な地域でも日本紅斑熱を念頭におき, 丁寧な病歴聴取と身体診察を行い, 早期に適切な治療を開始することが重要である。

  • 春日 武史
    2024 年 45 巻 3 号 p. 157-159
    発行日: 2024/06/28
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    緊張性気腹は腹腔内遊離ガスの貯留によって腹腔内圧が上昇し, 循環障害や換気障害が出現し, 急激な経過を辿り, しばしばショックや心停止となる疾患である。これまで上部消化管内視鏡後の消化管穿孔に起因する症例の報告は複数あるが, 下部消化管内視鏡に起因する報告は少なく, 粘膜切除を伴わない症例での発症報告はない。今回, S状結腸腫瘍による閉塞性大腸炎に対するステント留置目的で行われた下部消化管内視鏡後に緊張性気腹を発症し, 緊急経皮的穿刺脱気で蘇生された症例を経験した。緊張性気腹では身体診察や画像検査で特徴的な所見を呈し, 脱気により速やかな改善が得られるため, 急変までの臨床経過や既往歴を念頭に, 適切な診察や検査を行い, 治療に繋げることが重要である。

feedback
Top