都市部における日本紅斑熱の報告は稀であり, 今回本症により敗血症性ショック, 播種性血管内凝固症候群を呈し, 診断に苦慮した症例を経験したので報告する。症例は40歳代の男性。来院5日前から全身倦怠感, 関節痛, 紅斑を自覚し近医で解熱薬を処方されたが改善せず, 近医を再受診し, 敗血症が疑われ当院に紹介搬送された。敗血症性ショック, 播種性血管内凝固症候群と診断し, 広域抗菌薬の投与を開始したが全身状態の改善は得られなかった。再度病歴聴取, 診察をしたところ, 直前の野外活動歴と右下腿に痂皮があったことからリケッチア感染症を考慮し, ミノサイクリンを投与した。その後, 全身状態は改善し, 第23病日に自宅退院した。退院後にRickettsia Japonicaが陽性と判明し, 日本紅斑熱と診断した。発生が稀な地域でも日本紅斑熱を念頭におき, 丁寧な病歴聴取と身体診察を行い, 早期に適切な治療を開始することが重要である。
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