生命倫理
Online ISSN : 2189-695X
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14 巻, 1 号
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  • 原稿種別: 表紙
    2004 年 14 巻 1 号 p. Cover1-
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2004 年 14 巻 1 号 p. App1-
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 目次
    2004 年 14 巻 1 号 p. Toc1-
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 目次
    2004 年 14 巻 1 号 p. Toc2-
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
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  • 平原 史樹
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 4-11
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    近年の生殖医療における著しい進歩のなかで、妊娠中のカップルはさまざまな局面で複雑な判断を求められることになってきた。現在、本邦では着床前診断はDuchenne型ジストロフィーに関するケース1件のみが日本産科婦人科学会において承認されている。多くの出生前診断法が開発されているが、その診断精度もあいまいなものから、精度の高いものまでさまざまであり、妊娠中のカップルにとっても、情報提供する側にとっても多くの問題に直面している。このようなめまぐるしい生殖医療における進歩のなかで、十分かつ迅速性のある倫理的総合判断が強く期待されている。
  • 森下 直貴
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
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  • 隅藏 康一
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 20-27
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    遺伝子研究、ならびにそれにもとづく医薬品や診断方法の研究開発は、市場原理に基づいて研究開発投資がなされることによって、はじめて可能となる。特許制度がなければ、医薬品や診断方法が開発されず、医療サービスの質が高まらないと考えられるが、特許の存在によって医療サービスへのアクセスが抑制されるケースがあることも事実である。現代の産業社会における遺伝子特許の倫理性を考えるにあたっては、次の二つの観点が重要であると考える。一つ目は、研究開発で新たな成果を出したプレイヤーに対してその貢献度に見合った適正な見返りを与えるということである。二つ目は、遺伝子特許の付与条件や使用許諾条件を、人類の健康と福祉の増進ならびにそれを目指した研究開発の促進に資するよう設定するということである。本稿では、このような意味での「遺伝子特許の倫理性」が問題となる具体的な局面を挙げた上で、それぞれについてどのような政策的解決が可能であるのかを検討する。
  • 位田 隆一
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 28-36
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
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  • ピタウ ヨゼフ
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
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  • 沼野 尚美
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 44-46
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    I have worked in six different hospices as chaplain being involved with over 2, 500 patients' life and death. The word chaplain was quite new to the staff, patients and their families and, therefore I had to explain what they should expect. Religion and medicine still in Japan cannot be incorporated, and when a religious person had to work together in the medical world with the doctors and nurses, I felt that there were problems that had to be confronted. I would like to convey the role and manner of a chaplain gained through my daily experience in the hospice. I. Being involved with the patients. 1. Although most patients have their family religion, they seldom have their own religion. When they are suffering and in such state of mind, they pray to God for help. They are slightly concerned about any specific religion. (1) To help them to create an image of consolation. (2) Religion that provides hope. 2. Consideration for those who do not wish to be forced to any religion. 3. To create a mutual trust so that they may share their physical pain. II. Being involved with the team workers. 1. Effort to put oneself positively on the team. 2. Attitude of involvement in spiritual psychological and religious care in general. 3. To be a good advisor to the staff. 4. Consideration for exchanging of information. 5. Correct understanding towards other jobs and the manner towards other occupations. III. Being a chaplain 1. One's own care being in a solitary position as chaplain. 2. Studying the technique of religious care. Understanding one's work as chaplain. 3. Understanding one's work as chaplain.
  • 高木 美也子
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
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    ES細胞とは生体を構成するあらゆる組織・器官に分化する能力を持つ細胞のことであり、アメリカ、ウィスコンシン大学のJ.A.トムソンらは、1998年11月、ヒト胚から初めてES細胞を樹立した。ES細胞は新規の医療に結びつくものとして大いに期待される反面、不妊治療のために作られ凍結保存されているヒト受精胚(余剰胚)から採取されるため、生命の源を壊すという倫理問題が存在する。この問題の本質は、ヒト胚の潜在性をどのように捉えるかであろう。反対する人は、ヒト胚はまだ人間の状態ではなくても、人となる潜在性を持っており、それを遂行する権利があると主張する。しかしながら人になる潜在性とは、ヒト胚が人にまで成長することを、賦与するものではないと考える。文部科学省では、現在、特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会において、各研究機関から提出された樹立計画及び使用計画を審査している。私もその一委員として関わっており、審査で問題になった点等も考察した。さらにヒトES細胞研究では、文化的・宗教的な背景が大きく影響してくる。日本では、ヒト胚を壊してES細胞を樹立するという問題に、国民からのそれほど強い反対はない。反面、生命最後の部分では拘っており、国民的総意として心臓死しか受け入れられない。これが脳死問題である。日本は文化的にも、脳死体からの臓器、組織提供の医療ではなく、移植用材料を作り出すES研究に向かわざるを得ないのではないか。
  • 塚田 敬義
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 52-55
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    『ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律』は、「特定胚」の医学的有用性に着目して、胎内への移植を禁じた上で、厳重な取扱いがなされる研究に道を開くのが目的である。法律と『特定胚の取扱いに関する指針』との整合性に、当分の間とはいえ問題が生ずる。ES細胞、組織幹細胞そして、人クローン胚等が三位一体として研究対象にならなければ、それらの有効性と安全性の評価はできない。再生医療の研究は、生殖細胞、胚、胎児といった特異的な性格を有する細胞を使用しなければ成立しない。再生医療の医学的有用性に着目し、国家戦略の一翼を担う以上は、着実なる研究の進展を支える対応が求められる。その成果は、社会に還元されるのである。
  • 仁志田 博司
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    子ども・いのち・宗教という三つの命題をつなぐロジックの切り口として、いのちの始まりである周産期医療をめぐる問題を取り上げる。「6歳までは神の内」と言われるごとく、子どもは最も弱い生き物であると同時に、成人とは異なった、ある意味では神に近い精神状態と考えられていた。生物の生物たる所以は、子を産み育てることである。人間の人間たる所以は、そのような本能のレベルを越え、自己を認知すると同時に相手を愛し信頼し、共に生きる英知を持つことであろう。それゆえ、いのちの誕生とそのいのちを育むことが我々の世界の原点であり、妊婦死亡率、新生児死亡率および乳児死亡率が、その民族の文化のレベルのバロメーターとされていることが理解できる。幸い、日本は20世紀末にそのいずれにおいても世界のトップレベルとなった。日本がこのような幸運に恵まれた背景には、単に経済状況や医療のレベルの向上のみではなく、ダーウィニズムから脱却することができたからであると演者は信じている。「強いものが生き残るべきであり、それによって人類が進歩する」という思想では、多くの産まれたばかりのいのちは抹殺されるであろう。その社会が許容できる範囲で、最も弱い新生児のいのちが成人のいのちと同等に考えられる時、成人の行く末である弱い老人や障害者にもその考えが適応される。我々もかつては弱い新生児であったことを認知し、そのつながりを感ずる時、共に生きるやさしさを学ぶ。人は死の深淵に近づく時に生きることを学ぶ。出生はまさにその時である。2歳までの子どもの多くは、自己を認識しない上に他人と自分の区別も定かでない。しかし、いのちとは、そこに秘められた能力と可能性の存在である。現代科学は、幼い子どもが成人にとっては天才と評価されるような能力を備えていることを明らかにしている。それゆえ、子どもは弱い存在で死の近くにいる故に神の内というだけではなく、子ども自身が神に近い存在であるとも考えられる。「子どもを祈る」ということは、子どもに人類全体、さらには宇宙への広がりに続く存在を感ずるからである。
  • 田宮 仁
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 松井 美帆, 森山 美知子
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 65-74
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、終末期ケアの啓発活動への高齢者の関心とその規定要因を明らかにすることである。対象は中国地方の老人クラブ会員258名で、医療保健専門家による終末期ケアに関する教育講演については58.9%に関心がみられた。関連要因として年齢があり、前期高齢者に関心が高い傾向であった他、終末期ケアに関する家族や医療従事者との話し合いをはじめ、かかりつけ医の有無、家族機能、手術経験などが関連していた。一方、延命治療の意向では医師や家族に判断を任すとした非自己決定群が58.6〜61.1%であり、リビング・ウイルをよく知っているものは12.2%であった。以上のことから、前期高齢者の世代から家族や医療従事者との関係に配慮した上で、自分の意向を事前に周囲と話し合っておくことやアドバンス・ディレクティブについて啓発活動を行なうことの重要性が示唆された。
  • 徳永 純
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 75-82
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    出生前診断を受けるかどうかの選択は完全に個人の自由に委ねられるべきなのか。自由放任は結果としてある属性の胎児、胚の排除を招きかねないため、この問いは新しい優生学の主要な倫理問題となっている。本稿は、遺伝子、胎児を経済的な価値を持つ資産とみなす仮説を前提に、経済学的なアプローチを試みることにより、この問題を医療、福祉資源の配分問題として捉えなおす。そうすることで、選択的中絶に踏み切る親と現存する障害者の間には、経済的な利益のトレードオフが生じることが明らかになり、新しい優生学が障害者差別に当たらないとするダブルスタンダードの矛盾点も浮き彫りになる。遺伝子の価値形成に大きな影響を与える市場は、特殊な構造をしているために不安定な変動に見舞われやすく、また情報の非対称、不確実性などによって市場の失敗を招きやすい性質がある。さらに準公共財としての医療、福祉の供給にも悪影響を与えることから、出生前診断への課税という具体的な規制案を提示する。
  • 栗原 千絵子
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 83-90
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    世界医師会によるヘルシンキ宣言の30条は、臨床研究の終了時に参加した患者はその研究によって最善と証明された予防・診断・治療方法へのアクセスを保障されなければならない、という重要な倫理原則を条文化したものである。この条文は、先進国が出資・主導し開発途上国で実施された臨床試験をめぐる論争を受けて、宣言の2000年改訂に向けての論争の結果新たに入ったものである。しかし、世界医師会の小作業部会は、30条を改訂するかまたは注記を設ける形でこの原則を覆そうとしている。日本では、人を対象とする医学研究全般についての法的規制が存在せず、臨床研究についての行政指針が2003年7月に告示された。しかし指針には30条に似た文脈の規律は入れられたが、指針作成プロセスでは30条の原則についてはほとんど議論がなされなかった。日本では、アジアでの臨床試験のコストが安価であるために、日本の製薬企業がアジア諸国で実施する試験が増加しつつある。また、行政の方針を受けて、小規模な診療所での「医師主導治験」も始動しつつある。このような状況において、臨床研究をめぐる国際的論争の内容について学ぶことが重要である。
  • 小出 泰士
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 91-99
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    フランスの生命倫理法には、「法律は人間の優位性を確保する」とあるが、「人間」及び「優位性」という言葉の多義性ゆえに、この原則を現実に適用する際、矛盾した態度が生じざるをえない。この条文に関わる問題を注意深く検討することにより、「人間の優位性」に関して、次の3つの側面を区別しなければならないことが明らかとなる。すなわち、1.生物学的次元:他の動物種に対する種としての人間の優位性。2.法的次元:生物学的人間に対する法人格の主体としての人間の優位性。3.社会的次元:社会全般の利益に対する個人の尊厳の優位性。だが、実生活においてこれら3つの次元の間に緊張関係が生じた場合には、ある利益を確保し他の利益を犠牲にするよりほかない。フランスの生命倫理法は、実際のところ、「人間」という概念に孕まれているこれら3つの側面の持つ諸価値の間で、いかに調整し均衡を見出すかという点にかかっている。結局、生命倫理法は、原則としては人の胚や胎児を尊重するものの、他の諸価値との均衡を図ることによって、一定の場合に、人の胚や胎児の生命を終わらせる可能性をも容認する。換言すれば、人の胚や胎児の生命の尊重に程度を許容する。生命倫理法に見られるのは、こうした柔軟な人格概念なのである。
  • 赤林 朗
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 100-106
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    世界初の先端的医療の実施申請を受けた、医系大学の倫理委員会が果たすべき役割とは何か。平成14年11月から15年10月にかけて、京都大学大学院医学研究科・医学部医の倫理委員会は、「インスリン依存状態糖尿病に対する生体部分膵からの膵島移植の実施」について審議を行なった。本報告では、その審議経過を概観し、生体膵島移植実施申請を一例として、日本における施設内倫理委員会の果たすべき役割と社会的責任について論じる。そして「倫理委員会が適切に機能することは、ある新しい医療技術が社会的に信頼された形で定着して行く際の必要条件である」という仮説を提唱した。生体膵島移植の例は、生体肝移殖の例に加え、この仮説をさらに確かなものにした事例と考えられる。
  • 中尾 久子, 藤村 孝枝, 中村 仁志, 堤 雅恵, 森田 秀子, 大林 雅之, 小林 敏生, 長川 トミヱ
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 107-113
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    看護職は医療・保健・福祉の場で活動しているが、倫理問題に関する認識について臨床看護師以外の看護職を対象とした調査は少ない。本研究では、臨床看護師と保健師を対象に先行研究を参考に自記式調査を行い、看護資格による倫理問題の認識の違いについて検討した。看護職が認識する看護倫理上の問題場面では、悩むおよび直面したほぼ全項目において保健師より臨床看護師で該当すると回答した者が多かった。保健師が臨床看護師より回答率が高かった項目は虐待に対する介入困難だけだった。倫理問題を話合う場や機会をもっている者の割合は、臨床看護師45%、保健師7%と低く、施設に倫理委員会があると回答した者は、臨床看護師は30%であったが、保健師は2%だった。現在直面している倫理問題がないと回答した者の割合は、臨床看護師は40%であったが、保健師は70%程度だった。この結果には、各看護職の活動の場所や内容に伴い、臨床看護師に較べて保健師では倫理問題に直面する機会や検討の場および機会が少ないことが認識に影響していると考えられた。
  • 横山 朋子, 一杉 正仁, 黒須 明, 佐々木 忠昭, 今井 裕, 長井 敏明, 徳留 省悟
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 114-117
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    獨協医科大学口腔外科を受診し、外科的治療を必要とした、エホバの信者である成人患者3人を対象に、インフォームド・コンセントの過程および治療経過を検討した。現在、複数の科で1人の患者を診察し、特に輸血を伴う治療を行う場合には、各科の医師がそれぞれ輸血に関する説明を患者に行っている。しかし、輸血一般についての同様な説明および書類の取り交わしが繰り返されることがあり、時間的あるいは心理的負担が多いことがわかった。さらに、緊急時などには、同一機関内におけるスタッフ間で、対応方針が異なる可能性も予想された。したがって、施設として統一した見解を事前に明確にし、迅速かつ望ましい医療体系を作る必要があると思われた。
  • 掛江 直子, 野間 千夏子, 冲永 隆子
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 118-124
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    近年、生殖補助医療技術は急速に進歩し、不妊カップルが子どもをもうける選択肢の一つとして社会に浸透しつつある。しかしながらその一方で、排卵誘発剤の使用や体外受精-胚移植(IVF-ET)療法に伴う「多胎妊娠」「減数手術」という深刻な問題を生み出している。本研究では、生殖補助医療に際して、当事者である不妊カップルがどのような情報に基づき意思決定を行なっているのか、特に多胎妊娠のリスクについて十分な情報を得ているかに着目し、調査研究を行なった。生殖補助医療に関する情報は、一般書籍やインターネットを通じて自ら収集する以外では、不妊治療を受ける際の専門医からの説明が最も重要であると考えられる。そこで、インフォームド・コンセントの際に多胎妊娠等のリスク情報がどのように説明されているかを説明資料をもとに分析した。その結果、生殖補助医療に関する意思決定に際して、事前に多胎妊娠等のリスク情報が十分に知らされていない可能性があることが明らかとなった。
  • 宮嶋 淳
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 125-134
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    ソーシャルワーカーの職能団体は、法的規制を越える自律的規制を組織のシステムとして構築するための指針である倫理綱領を定めている。わが国の社会福祉制度改革は、ソーシャルワーカーの倫理綱領の内容に大きな影響を与え、その改革がめざす理念に対応でき得るソーシャルワークの倫理思想を探求していく必要性を生じさせた。本稿は、ソーシャルワークの倫理思想を体系化していく前提となる「歴史性」「普遍性」「機能と構造」「理念と価値」について包括的に論じた。その上で、「社会福祉士事務所」が行うソーシャルワーク実践が、コミュニティ・ソーシャルワークの固有な機能と構造を有していることを実証した。このような先行研究と実践の分析は、コミュニタリアニズムを包含した、新たなソーシャルワークの倫理思想のパラダイムを確立していくための創造的な考察である。結論として、コミュニタリアニズムは、ソーシャルワークの倫理思想を確立する上で重要な示唆を与えるという仮説を得るに至ったものである。
  • 一杉 正仁, 木戸 雅人, 川戸 仁, 横山 朋子, 黒須 明, 長井 敏明, 徳留 省悟
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 135-138
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    異状死体からの眼球摘出例をもとに、法的および倫理的問題を検討した。角膜移植実施のためには、眼球提供者の死体血を採取して、適応基準検査を実施することが必要となる。異状死体では、法医解剖終了後の採血が困難であるため、事前の血液採取が必要である。そのためには、死因究明の目的で採取した血液を使用するか、あるいは解剖時に採血をする必要がある。異状死体からの眼球摘出および諸検査をすみやかに行うために、本問題について幅広い理解が必要であり、かつ、司法当局、一般臨床医、異状死体の検案や解剖に携わる医師が密接に連絡を取り合うことが重要である。
  • 浅井 篤, 尾藤 誠司, 千葉 華月
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 139-146
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    2002年4月、1998年に川崎で起きた「安楽死」事件(筋弛緩剤投与事件)が報道された。意識不明の喘息患者から気管内挿管チューブが抜去され、大量の鎮静剤と筋弛緩剤が投与された。本稿では、この事例で医師が致死的薬物を投与するという行為に至る過程で、何が欠けていたのか、何がなされなくてはならなかったかを考察する。この事例をイギリスで初めて尊厳死を認めたと解されている人工呼吸器治療打切り事例と比較検討し、どのような行為がいかなる根拠に基づき倫理的に許容されるのかを論じる。その上で、高齢慢性呼吸不全患者からの気管内挿管チューブ抜去という極めて日常的な症例における判断を、倫理的に行うには何がなされなければならないかを提案する。そして、倫理的行為を行うためには時には法的根拠が必要であり、医療専門家、司法専門家、生命倫理の専門家等が共同し、医療現場の倫理的法的行為規範を充実させる必要があると結論する。
  • 谷口 泰弘, 塚田 敬義
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 147-153
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    バイオエシックスを倫理的・法的・社会的問題として捉え、学際的に考究する方向性は広く認知されている。しかし医療の経済的問題は個別に扱われる傾向にある。患者の高齢化と消費者志向が進む中、医療資源配分等の問題は生命倫理の問題と切り離すことはできない。本研究は、医療サービス市場から生ずる生命倫理の問題点を経済学の視点で検討した。医療評価に注目し、マクロ的視点から政府の医療政策における取り組み(保険制度・医療費抑制)、ミクロ的視点から医療の質・医療の効率性を考量する臨床経済学の手法(エビデンス集積状況)を考察した。さらに英国の医療改革と米国式医療経済学(新古典派経済学)の動向を参考にした。医療には保健医療の場と個々の臨床の場が存在する。両者の優先順位決定は困難である。しかし、持続発展可能な医療システムを構築するには、配分規制ルールが必要であり、保健医療制度および医療者のための経済倫理を確立することが重要である。自律尊重の原則は維持しながらも、医療の評価を進め、得られた知識の蓄積とその利用方法を検討する枠組の構築が不可欠である。
  • 中野 東禅
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 154-159
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    ヒト胚性幹細胞(ES細胞)の医学利用につて、法律はできたが、哲学的な論考が十分尽くされたとは思えない。あっても、浅薄な一般論で、生命の発生段階に立ち入っての人間考察になっているものは少ない。人間の識の構造を考察した仏教の「唯識思想」では、自我を成立させる根源的な能力を「阿頼耶識」という。そこからヒト受精胚は自立した人間かどうかを考察したい。特に生命の最初期の胚は、生命の全体を包含する情報を持つが、いまだ、身体の各機能へと分化してはいない。また、人として「自立」するのは母胎などの必要な環境との互縁で成立するが、その互縁が成立していないのであれば、自立した生命とは言えない。そうした点から可能態としての生命と、部分化して個体として自立する生命とを分けてみる必要があるということを論考したい。
  • 須長 一幸
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 160-167
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    ギリガンは、ケアの倫理と正義の倫理が統合されるべきであると主張した。しかし彼女は、統合が具体的にどのような形をとるのかについては論じてはおらず、また正義の倫理とケアの倫理は相互排他的な性質を持っているように見えるため、両者の統合が可能であるとしたら、それがいかにして可能であるかが説明されなければならない。そこで本稿は、ケアの倫理、正義の倫理のそれぞれがモラル・ジレンマにどのような行為を導き、またどのような行為を正当化するか、という問題に焦点を当て、その検討を通じて、ケアの倫理と正義の倫理の統合の可能性を模索する。結論として二つの倫理の統合は、モラル・ジレンマを、それに対して採るべき行為の選択前と選択後に区分し、コールバーグによる改訂後の道徳性とケアの倫理について、それぞれの持つ特徴と機能を吟味することによって与えられる。
  • 宮城 昌子
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 168-175
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    近年、米国ではHIV迅速検査(ラピッドテスト)の開発と普及が急速に進んでいる。また、諸国では個人がインターネットを通じてこのキットを手に入れることができる。このキットを用いれば、誰にも知られずに自宅でHIV検査を行い、自分のHIVステイタス(HIVに感染しているかどうか)を知ることができる。このキットの普及の是非をめぐっては、これまでにも賛否両論の様々な議論がかわされてきた。その悪用・濫用を懸念して普及に反対する声が多いのが現状だが、そうした現実的な問題点を別とすれば、倫理的問題としてはまだ正面から充分に議論されていない。また、検査結果判明後のHIV感染者の利益を理由に専門機関で検査を行うべきと主張する論の裏には、同時にHIV感染者の動向に関する国家の管理欲求があると考えられる。本稿では、医療機関を介さずに自分以外の誰にも知られずにHIV自宅検査を行うことは認められるかという視点からHIV自宅検査の是非を問う。結論としては、自宅検査を用いて自分のHIVステイタスを知る権利は認められるべきである。なぜならHIV感染の有無に限らず、体重や血圧のように自分の身体状態についての情報を自分で把握することは、基本的な権利として認められてよいはずだからである。知るということは、抗体陽性だった場合に医療機関にアクセスするか否かということとは切り離して、保障されるべきものである。もちろん、自宅検査の普及に際して何の問題も無いわけではないが、検査にアクセスする場合の選択肢のひとつとして用意されていてよいと考える。
  • 茶谷 直人
    原稿種別: 本文
    2004 年 14 巻 1 号 p. 176-183
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本稿は、インフォームド・コンセント(IC)の基本的要素の一つである情報開示のあり方について、「如何に理解を促し得るか」という限定的観点から検討する。ICにおいて理解を妨げる諸要因の存在を考えればそうした観点から説明様式を探ることは必要だが、開示基準をめぐる議論はこの問に十分な答えを与えない。理解を促すための説明の諸策としては、(1)情報過多の回避と(2)適切な解釈の促しが考えられるが、(2)に関してはアナロジーによる説明が、従来示唆に留まったものの有効である。ICにおけるアナロジーとは、説明すべき情報(ターゲット)と何らかの対応関係を持つ、患者に馴染みの事象(ベース)を医師が選択し、そこからターゲットを説明するというものである。他の諸策と共にアナロジーを活用することで、説明は理解を促す様式を持ち得る。アナロジーの悪用(自律の侵害)は避けるべきだが、それを留意した上であれば、説明内容の理解を促すのみならず、医師が患者に最適と判断した選択肢へと患者の同意を促すというアナロジーの活用も可能である。
  • 原稿種別: 付録等
    2004 年 14 巻 1 号 p. 185-188
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2004 年 14 巻 1 号 p. App2-
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2004 年 14 巻 1 号 p. App3-
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2004 年 14 巻 1 号 p. App4-
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 表紙
    2004 年 14 巻 1 号 p. Cover2-
    発行日: 2004/09/17
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
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