生命倫理
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20 巻, 1 号
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  • 原稿種別: 表紙
    2010 年 20 巻 1 号 p. Cover1-
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2010 年 20 巻 1 号 p. App1-
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 目次
    2010 年 20 巻 1 号 p. Toc1-
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 目次
    2010 年 20 巻 1 号 p. Toc2-
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 武部 啓
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 3-
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 金城 隆展
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 4-12
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本稿の第1の目的は、現在、米国内の医療現場で広く定着している倫理コンサルタントの役割が「倫理的な助言をする専門家」から、関係者の間の対話とコミュニケーションの促進を通して患者ケアの向上を目指し、ケース関係者間の共同決断を支援する「倫理促進者」に移行しつつあるということを紹介することである。本稿の第2の目的は、1)倫理的助言の能力、2)意思疎通プロセスの能力、3)人間関係の能力に加えて、「ナラティヴモデル」を採用する倫理コンサルタントが習得すべき4番目の能力として「ナラティヴの能力(1.ナラティヴに耳を傾ける能力、2.筋を辿り隙間を埋める能力、3.ナラティヴの間の均衡を取る能力)」を提案することによって、「有能な倫理コンサルタントはナラティヴの実践者でもあることが望ましい」ということを示唆することである。
  • 勝又 純俊
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    平成12年の「東大医科研病院事件」最高裁判決で「エホバの証人」の輸血拒否への対応の一応の基準が示されたと考えられた。しかし,「エホバの証人」の無輸血治療に関する最近の民事訴訟と,「エホバの証人」の輸血拒否に関する報道をみると,同最高裁判決に依拠するだけでは,信仰に基づく輸血拒否によって発生する民事的,刑事的,あるいは倫理的諸問題を解決できないと思われる。これらの問題点を提示し,今後の検討の材料としたい。
  • 林 芳紀
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    研究者は、研究の過程で発見された偶発的所見に対して、どのように対処すべきか。そもそも、なぜ研究者は偶発的所見に対処しなければならないのか。本論文では、研究者の偶発的所見への対処義務の基礎付け問題に関する既存の文献の中から抽出される二つの倫理的源泉、すなわち、(1)一般的善行と、(2)被験者の個人情報やプライバシーに対する特権的なアクセス権の取得について、概観する。そのうえで、この基礎付け問題の結果が、研究者の偶発的所見への対処義務の具体的な内容、とりわけ、研究者は偶発的所見をめぐる偽陽性・偽陰性エラーの危険性に対してどこまでの対策を講じることが要求されるのかという問題に対して、どのような含意を持つかを検討する。以上の議論を通じて、最終的に、偶発的所見の対処義務の倫理的源泉に関する問題は、人を対象とする研究に従事する研究者のインテグリティをめぐる重要な問題を提起していることを、明らかにする。
  • 本田 まり
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本稿は、脳神経倫理に関する研究および臨床応用が、フランスの法制度上どのように規制されるか分析することを目的とする。2004年に"一本化"された「生命倫理に関する法律」を見直す国務院の報告では、脳神経倫理は言及されていない。議会科学技術評価局の公聴会および国民議会の情報調査団による報告では、脳研究を考慮に入れることが主張されていた。「生物医学研究対象者〔参加者〕の保護に関する法律」(1988年)の改正も議論されている。国民議会議員ジャルデ氏らによる法案は、人を対象とする研究の3つのカテゴリーを定め、手続の明確化を図る。元老院第1読会による修正法案では、そのカテゴリーが大きく2つに分けられた。脳神経倫理として挙げられる問題は、研究関連の法律で扱われるとしても、その成果が臨床応用され、患者本人の同意能力が十分でない場合には、生命倫理の問題として扱われるべきである。そもそも、先端科学研究における倫理的問題は、生命倫理の中核をなす。
  • 大垣 拓郎, 藤野 昭宏
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 38-46
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    1990年代後半に発展途上国で実施された「HIV母子感染予防臨床試験」を大きな契機として、臨床試験でのプラセボ対照群に関する国際論争が活発化した。近年では、欧米諸国を中心にプラセボ対照臨床試験が肯定的、積極的に実施されている。この間、国際倫理指針(ヘルシンキ宣言、ICH-E10、CIOMSガイドライン)が策定・改訂され、ある一定の条件下でのプラセボ使用が容認されている。RCTをはじめとするプラセボ対照試験により科学的信頼性の高い知見が得られる一方で、有効な治療法が既にあるにもかかわらず被験者を無治療な状態にするなど倫理上の問題点は少なくない。プラセボ対照試験を行う場合には、被験者の福利という倫理的側面を十分に考慮した上で、できるだけ高い質の科学性を担保できるような研究デザインを工夫することが医学研究者に求められる。一律なプラセボ対照試験に頼ることなく、科学性が保証されるデザインの非プラセボ対照試験を選択することも考慮すべきである。
  • 荒木 利卓, 浅井 篤
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    研修医に対して倫理問題と倫理教育に関する意識調査を行った。熊本大学医学部附属病院群で初期研修を行っている研修医120名に対し、質問紙調査を実施し内容分析を行った。有効回答は、37通(30.8%)であった。初期研修では、倫理問題を経験することが多く、内容は、「蘇生を試みないという指示」、「インフォームド・コンセント」、「誠実なコミュニケーション」、「限られた医療資源の配分」などに分類された。研修医は倫理問題に直面した場合、問題解決のために指導医に相談することが多かった。その際、指導医の意見が強く診療方針に反映されていた。初期研修において倫理教育の必要性を感じている者が多かった一方、倫理教育よりも手技の取得を重要視する意見も見受けられた。研修医は倫理問題に困っているが、十分な指導体制がないため、教育プログラムの構築が必要と考えられた。なお、本研究は小規模予備調査であり、全国横断研究の実施が必要である。
  • 圓増 文
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 55-63
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    慢性疾患医療に関わる倫理的ジレンマの例として、生命倫理の領域で度々取り上げられる事例の一つにいわゆる「コンプライアンス/アドヒアランスのよくない患者」の事例がある。すなわちそれは、治療に必要と医療従事者が判断し患者に指示する療養行動を、患者が実践しようとしない事例、もしくは患者の実践する療養行動が医療従事者の判断からすると適切ではない事例である。本稿では、こうしたジレンマの背景には療養行動支援のアプローチとして「指導・教育」が主流を成しているという現状があることを指摘し、そこにおいて前提とされているQOLやEBMの考え方に考察を加える。考察を通じて、「QOLの維持」という医療の目的に照らすなら、個別の医療においては、「適切な治療の実施」に加えて、QOLの各要素への配慮・確認の作業が求められることを示し、これに基づいて、指導・教育アプローチの問題点を指摘する。最終的には、本稿において先のジレンマの解決のためのひとつの方途を示す。
  • 吉次 通泰
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 64-75
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    先端医療が不要な終末期医療は、アーユルヴェーダ的には、人間を構成する身体、精神、アートマンの3者を含む全人的医療である。わが国では、末期患者の身体的治療は進歩してきたが、精神的およびWHOの定義する意味での霊的支援は不十分である。本研究の目的は、インド、ギリシア、エジプトの古代社会における終末期医療を検討することである。古代アーユルヴェーダ医学原典、『ヒッポクラテス全集』、『エドウィン・スミス・パピルス』と『エーベルス・パピルス』につき、終末期医療に関する記載を検討した。古代インドでは、医師は不治の患者の治療を放棄したが、医師自身の学識・名声・富を失い、非難を受けるためであった。また、患者あるいは家族に不治の疾患の病名や予後を伝えると、彼らに苦痛・悲嘆を与えるため告知しないのが一般的であった。古代ギリシア、エジプトでも不治の患者の積極的治療を避けたが、告知するのが一般的であった。これは、古代社会における文化の差異によるのかもしれない。本研究は、わが国の終末期医療の議論に新しい視点を提示するものである。
  • 横瀬 利枝子
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 76-84
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    日本社会の高齢化の中で,男性介護者も増加している。本稿では,筆者が2008年におこなった,認知症の母親が施設入所に到った娘介護者の困難・葛藤を調査した研究「介護施設利用に到るプロセスへの一考察-認知症の母親と娘の関係性の視点から-」を比較検証すべく,息子介護者特有の介護特性・困難・問題点を明らかにすることを目的として,施設入所に到った認知症の母親を介護する息子介護者を対象に面接調査をおこなった。その結果,娘介護者との相違点として,息子介護者には,認知症に関する詳細な知識・情報の収集,成年後見制度の積極的な導入,介護サービスなどへの委託が顕著であり,またその一方,介護をひとりあるいは家族で抱え込む閉鎖的な環境に起因する虐待の危険があることなどが判明した。このような男性介護者特有の介護特性・問題点の認識が今後の認知症高齢者への対応・対策の基本になるであろう。
  • 田村 京子
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 85-93
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    小論の目的は、全国の医療安全管理者への調査結果のなかから、医療安全管理者の医療資格によって統計的有意差が見られた内容を報告することにある。小論では特に、看護師が医療安全管理者である場合を、医師が安全管理者である場合と比較し、看護師の医療安全管理者が病院内でかかえている問題に焦点をあて、それらを看護師の立場とその専門性に照らして考察する。看護師が医療安全管理者である場合の方が、医師が医療安全管理者である場合よりも、安全管理業務を遂行する上で、病院内での他の資格の人たちとの関係に困難を感じる傾向がある。インシデント・アクシデントレポートの収集・分析についても、医師より困難を感じており、医師の安全意識について低い評価を下す傾向にある。また、院内の問題点として第一に医療従事者の安全意識が低いことをあげており、医療過誤訴訟が引き起される第一の要因としてICの不徹底をあげる傾向にある。これらの特徴は、看護師の院内での地位を反映しているものと推測されるが、同時に看護の専門的視点から把握されたものであると解釈することができる。看護師の医療安全管理者には、その困難さを解消するためにも明確な権限が付与される必要がある。また、医療安全はたんにリスクマネジメントの視点からだけではなく、医療従事者一患者間の信頼や医療従事者の安全の問題でもあるから、看護の専門的視点が生かされることが望まれる。
  • 大北 全俊
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 94-101
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本論考では、感染症対策、なかでも薬剤を使用しない非医療的な対策(nonpharmaceutical interventions:NPI)である隔離や検疫などの感染症対策をめぐる倫理的な問題とそのような対策を実施するにあたって必要と考えられる倫理的な配慮について明らかにすることを目的としている。主な倫理的な問題は、感染拡大の防止という社会的な利益を保全するために、個人の移動の自由やプライバシーの保護などの諸権利を制限せざるを得ないところに生じる。社会的利益と個人の権利・利益、両者をなるべく一致させる考えもあるが、個人の権利・利益の制限という事実は依然として残る以上、両者の均衡を図ることが不可避となる。しかし、両者の均衡を実現するということも根本的な困難をはらんでいる以上、当該施策が適切なものであるか否かということを公的に議論する過程や施策の対象となる個人への意見聴取など、両者の均衡を不断に模索する過程が倫理的な配慮として不可欠である。
  • 荒川 迪生, 平野 高弘, 五味渕 諒一
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 102-110
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    リビング・ウイル(LW)を初めて提案したカットナーの原点を再考した。彼は次のように主張した:「判断能力がない時には、治療に同意すると法は推定する。死に至らしめる意図的な不作為は殺人である。医師が患者の苦痛を長引かせないことを意図した不作為による消極的な死は、作為による積極的な死(慈悲殺)とは明らかに異なる。同意に基づく積極的安楽死は犯罪であるが、消極的安楽死は犯罪ではないという根拠はない。治療により生存が延びるとしても、治療を拒否する権利がある。そうすると医師の治療は許されなくなり、不作為による死が許容される。自己決定能力のあるときに、将来意思決定できない時に備えて、同意する治療範囲を指示するLWを提案する。」彼の言う事前の指示は、自己決定権に基づく治療の不開始・中止による意図的な生命短縮を目的とした自発的消極的安楽死、と考えられる。つまり、死の過程を遷延させるに過ぎない延命措置の不開始・中止による自然死(尊厳死)の概念とは異なると考えられた。LWの原義と変容を研究し、LWの合理性と多様性における問題点を検討した。
  • 大桃 美穂
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 111-119
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    透析医療に携わる現場では、長期間の維持透析生活の後に終末期を迎える患者の看取りについて検討を要するケースが増加している。本稿では維持透析患者に焦点をあて、「透析と終末期医療のあり方」を検討した。日本の医療現場では一般に事前指示書が尊重されているとは言い難い。ことに透析医療においては、透析導入から終末期を迎えるまでの長期の間に、患者個人の病状や心理も変化してゆくので、患者の意思を把握する機会をたびたび設けることが必要であると考える。医療者には患者・家族と共に個人に即した終末期医療を作り上げるという姿勢で臨むこと、患者の意思決定を支援することが求められている。実際の事前指示の運用場面では、医療者と患者の橋渡し役として、透析導入期・維持期・終末期と長期にわたる関わりの中で患者との人間関係を構築している透析看護師が担う役割が大きくなるだろうと推測される。
  • 福田 八寿絵
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 120-128
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    EUでは、わが国と同様、慢性的な提供臓器の不足が生じており、これを解消するため、EUレベルで政策的対応がなされてきている。本稿では、欧州における臓器提供の同意方式をめぐる国際的調整のあり方と同意方式の倫理性をめぐる議論に焦点を当てる。第1に、EU各加盟国における脳死を含む死体からの摘出による臓器移植の現状について概観し、EUレベルの臓器移植政策が要請されることになった背景とその行動計画を明らかにする。第2に、加盟国レベルでどのようにドナーの意思表示の評価が制度化され、実施されているのかを検討する。第3に、同意方式のドナー数への影響を検討し、ドナーの同意方式のEU加盟国間における収斂可能性とその倫理性について考察する。明示的同意方式から推定的同意方式へと向かう方向にはあるもののドナー数増大への効果は明確ではなく、その倫理性についても課題は少なくない。意思表示評価制度は、各国の文化的、歴史的、倫理的背景に基づいて形成されてきていることに鑑み、各国が臓器取引や移植ツーリズムなどに対処するため、臓器の需要と供給のギャップを縮小するという共通の目標に向け、各国の社会的合意を得られる対策が必要となる。
  • 水澤 久恵
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 129-139
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、臨床看護師の倫理教育に関する実情と道徳的感性と関連要因について明らかにし、看護師の倫理的な行動力の向上に向けての倫理教育の方途を提示することを目的とした。1,746名の臨床看護師を対象とした質問紙調査を行い、欠損値のある者を除く722名のデータを分析した結果、67.6%の看護師は看護基礎教育機関で倫理を学んだ経験があり、卒後の倫理研修の受講に関しては、39.8%の看護師が受講の経験があった。これらの倫理教育機会の有無に関わらず、倫理に関する知識の程度に関しては、91.1%の看護師が「全く知識がない」「あまり知識がない」と回答していた。更に、道徳的感性と看護師や病院の特性等との関連を調べた結果、有意差のみられた項目は殆どなく、既存の倫理教育が道徳的感性に影響を与えていないことが明らかとなった。これらの結果を踏まえ、看護職者に対する倫理的判断や行動に関わる能力評価における課題を考察した。
  • 堀田 義太郎, 櫻井 浩子
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 140-148
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    母体胎児外科手術は、妊娠した女性の健康な身体に対する大きな侵襲を伴うため、その同意の真摯性への考慮が不可欠の条件である。本稿では、母胎に対する侵襲性に留意して母体胎児外科治療をめぐる倫理的問題について吟味する。まず、母体胎児外科手術に肯定的な立場をとる「患者としての胎児」論を検討する。そして、仮に胎児を一人の患者とみなすことが妥当だとしても、妊婦の同意の真摯性に対する考慮の重要性を確認する。次に、母体胎児外科手術に同意する妊婦の意思決定に影響を与えている諸要素を検討する。母体胎児外科手術に対する妊婦の評価は、手術の危険性と害と手術の利益との比較衡量に基づいて下される。母体胎児外科手術そのものは妊婦にとって身体的利益はない。妊婦にとって想定されうる利益は、子の障害が軽減されることによる心理的・社会的利益である。この心理的・社会的利益の内実を検討し、障害者とその家族、とくに女性に対する社会的支援の重要性とともに、母体胎児外科手術が許容されるための必要な条件を明らかにする。
  • 蒲生 忍, マッコーミック トーマス
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 149-157
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    米国の終末期の医療選択としては1998年にオレゴン州で発効した尊厳死法Death with Dignity Act(以下DWDA)が最も先鋭的な枠組みとして取り上げられる。これは医師による自殺幇助Physician-Assisted Suicideとも呼ばれ、その施行状況が米国内のみならず日本を含めた諸外国の注目を集めている。オレゴン州はDWDAのみならず、緩和医療が最も活発に行われる州としてもよく知られている。オレゴン州に隣接するワシントン州でも、2008年にDWDA案が住民発案された。その可否を問う住民投票が大統領選挙と同時(2008年11月4日)に行われ、58%の支持を受け可決され2009年3月5日に発効した。筆者らは投票日に先立ちワシントン州で、DWDA案の立案にかかわった元ワシントン州知事Gardner氏はじめワシントン大学の医療提供者と面談し意見を聞く機会を得た。面談した様々な医療提供者の多くは、法案が自己決定に固執する一部の層のためであること、オレゴン州DWDA施行後の緩和医療を含め医療技術に大きな進歩があり、尊厳死を含め終末期の医療選択への要求が変化していることなどを指摘した。投票前の諸氏との議論を踏まえ、ワシントン州DWDA発効後の実施状況も報告したい。
  • 鶴若 麻理, 仙波 由加里
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 158-164
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本論文は、高齢者を主体とした看取り介護を行う為には、本人の意向を初期段階から確認したケアの展開が重要であるとの視点にたち、看取り介護を実施している特別養護老人ホームでの、入居時の看取り介護に関する意向確認の実施状況を把握し、意向確認のあり方について検討することを目的とした。特養1000施設(看取り介護実施施設)を無作為抽出し、2008年8月に郵送調査を実施し有効回答の336票を得た。入居時の意向確認は76.2%実施されていたが、意向確認の難しい理由として、判断能力がない、死について語ることのタブー、精神的ショックを与える、高齢者と家族の実感のなさ等が挙げられた。高齢者に判断能力があっても、28.6%は家族のみにしか意向確認を行わず、入居時の意向確認後は、終末期と判断された時がほとんどであった。入居から最期の看取りまでのプロセスを重視した意向確認方法の構築、看取り介護の説明者や窓口の明確化、説明内容の統一化等が求められると示唆された。
  • 新名 隆志, 林 大悟, 寺田 篤史
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 165-173
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    2009年7月13日に「臓器の移植に関する法律」が改正された。しかし、法改正に至るまでの国会審議には混乱があり議論が尽くされているとは言えず、その結果改正法にも、とりわけ第六条に関して疑問が残るものとなった。それゆえ本稿は、改正法やそれにまつわる議論の問題点を明らかにし、それに代わる臓器移植制度を構想する。一では、六条二項改正の問題を扱う。改正法が取り入れる「脳死は人の死」という考え方について、国会では説得力ある説明が提示されず、かえって問題点や不明瞭さを残す結果となったことを指摘する。二では、六条一項における臓器摘出の条件について、臓器提供の決定者に関する規定やそれに関する思想の変更等についての問題を提示する。三では、これまで無批判に前提され続けた善意(自発性・利他性)に基づく臓器提供に代わる制度の可能性として、互恵性に基づくオプトアウト型の相互保険的な臓器移植制度を提示する。
  • 柴田 恵子, 川本 起久子
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 174-182
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    看護学実習での経験と生命倫理の講義で学んだ5項目との関連性を見いだすことを目的として、自由記述による質問紙調査を実施した。実習を経験した1年と4年の看護学生に調査を実施した。98名の1年生と73名の4年生の調査用紙を質的に分析した。5項目は「いのちの尊さ」「患者のQOL」「患者の自己決定」「インフォームド・コンセント」「患者の最善の利益」で、カテゴリー数は順に15、27、13、35、18であった。分析結果の信用性確保は、本研究に関係しない質的研究の経験者2名が確認した。看護学の臨地実習を経験することでの主要な学びは『意思の尊重』であった。そして、重要なカテゴリーには『生命維持』『個別性』『自立』『自己決定』があり、これらは医療における生命の維持を基にした生命倫理の本質についての学びであった。
  • 神里 彩子, 武藤 香織
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 183-193
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    近年、研究倫理に対する社会的関心・要求は高まりを見せ、これに伴い、研究の「現場」にいる研究者が、倫理申請等に関して疑問や問題を抱えたときにすぐに相談できる体制の整備が求められている。アメリカでは、研究者への支援策として「研究倫理コンサルデーション」を提供する機関が増えている。しかし、「研究倫理コンサルテーション」の内容や方法等については各機関で異なり、その概念化や評価についての議論は緒に付いたばかりと言える。東京大学医科学研究所では、2008年8月に、日本で始めて教員を中心に構成する「研究倫理支援室」を設置し、2009年4月より倫理審査申請書等の事前チェックを含む「研究倫理コンサルテーション」を行っている。本稿では、医科学研究所の経験を紹介し、そこから見えた課題を考察したい。また、アメリカの状況を参考にしながら、「研究倫理コンサルテーション」の概念や位置づけについて検証する。
  • 小松 明, 田中 美穂
    原稿種別: 本文
    2010 年 20 巻 1 号 p. 194-208
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    臨床で働く看護師がおこなっているプラシーボ治療の現状を、全国300床以上の病院955施設および東京都内20〜299床の病院337施設の内科系・外科系の病棟看護責任者を対象に無記名自記式質問紙にて調査を行った。過去1年間にプラシーボ与薬が実施されていると答えた者が、全国300床以上の病院で22.4%、都内20〜299床の病院で59.0%であった。実施されている場合、医師による説明なしが各々53.4%と45.7%、患者側の同意に関しては同意なしが各々66.1%と52.8%であった。このようにかなりの割合でインフォームド・コンセントのないままプラシーボ治療が行われている実態が分かった。また、「プラシーボ与薬は倫理に反すると思うか?」という設問に対して、各々の病棟看護責任者の53.5%と81.5%が「思わない」と答えた。これらの結果は、半数以上の病棟看護責任者がプラシーボ治療に関してパターナリスティックな態度を有していることを示す。
  • 原稿種別: 付録等
    2010 年 20 巻 1 号 p. 209-214
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2010 年 20 巻 1 号 p. 215-
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
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  • 原稿種別: 付録等
    2010 年 20 巻 1 号 p. App2-
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
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  • 原稿種別: 付録等
    2010 年 20 巻 1 号 p. App3-
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
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  • 原稿種別: 表紙
    2010 年 20 巻 1 号 p. Cover2-
    発行日: 2010/09/23
    公開日: 2017/04/27
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