動物の行動と管理学会誌
Online ISSN : 2435-0397
55 巻 , 4 号
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Review
  • 中嶋 紀覚, 八代田 真人
    2019 年 55 巻 4 号 p. 143-153
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2020/01/28
    ジャーナル フリー

    放牧は行動学的見地及び動物の臨床症状の観点からアニマルウェルフェア上有用と考えられているものの、健康に対する効果の検証例は少なく、特に放牧の生理学的及び免疫学的効果は明らかになっていない。本稿の目的は、近年の知見を元に生理学的、免疫学的、栄養学的観点から放牧の影響を評価し、その影響度をどのように評価するべきか明らかにすることである。栄養面では、タンパク質とエネルギーの摂取アンバランスやエネルギー不足が放牧によってしばしば引き起こされ、家畜のホルモン生産、繁殖、免疫を害することが報告されている。また、放牧は免疫関連細胞の動態に変化を与えることが示されているものの、免疫機能への効果は明らかになっていない。一方で、多様な植生を持つ草地に放牧することはミネラル摂取バランスの改善に有効であることや林内放牧が酸化ストレスの軽減に有効であることが報告されており、放牧方法とこれら項目との関連性が示されつつある。しかしながら、これらの効果は放牧条件に依存しているため、放牧に関わる条件を考慮した上で生理・免疫・栄養学といった多面的指標を用いて放牧の効果を評価していくことが今後必要不可欠である。

原著論文
  • 岩田 惠理, 澤田 明子
    2019 年 55 巻 4 号 p. 154-164
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2020/01/28
    ジャーナル フリー

    動物福祉の観点からも、動物介在活動(AAA)は参加者のみならず参加動物にとっても楽しく、また負担にならないものであるべきである。AAAの参加者への利益と動物福祉との両立を目的として、大学の心理・教育的支援の中核である学生相談室が運営する「学生サロン」へ訪れる学生を主な対象とし、イヌを用いたAAAを実施した。本研究のAAAでは、参加学生を床に着座させ動きを制限した一方、イヌには室内で自由行動をとらせ、参加学生とふれあうかどうかの選択権をイヌに与えた。イヌが参加学生とふれあった時間の割合は、個体により大きくばらついた(18.18~68.32%)。一方、参加学生にはAAA参加中、向社会的な行動上の変化があったことが参与観察により明らかになった。AAA実施前後の唾液中コルチゾル値は参加犬、参加学生ともに有意に低下した(P<0.05)。AAA実施前後の唾液中オキシトシン濃度は参加犬、参加学生共に有意差は認められなかった。以上の結果から、ふれあうかどうかの選択権をイヌに与えても効果的なAAAを実施することが可能であり、イヌへのストレス負荷も軽減されることが明らかとなった。

Short Report
  • 岡部 光太, 河村 あゆみ, 福泉 洋樹, 石内 琴音, 加瀬 ちひろ
    2019 年 55 巻 4 号 p. 165-173
    発行日: 2019/12/25
    公開日: 2020/01/28
    ジャーナル フリー

    近年、動物福祉の観点から飼育動物の環境の改善が多くの動物園で行われている。特にキリンでは、口の常同行動の減少のために複数の採食エンリッチメントの実施が行われている。先行研究では、複数の給餌器の設置や乾草の給餌量の変更、樹木給餌の実施が常同行動の減少に効果があったとされている。しかし、樹木給餌は冬季の実施が困難であり、冬季においてはその効果も明らかとはなっていなかった。そこで今回、全ての季節において樹木給餌を行い、樹木摂食量と口の常同行動の調査を行った。観察には京都市動物園で飼育する3頭のキリンを供試した。その結果、樹木摂食量は季節間で有意な変化は見られず、ほぼ同量の摂食が確認された。一方、全ての個体で口の常同行動が観察され、有意に冬に増加する結果となった。樹木摂食量と口の常同行動の発現量には相関は見られなかった。そのため、今回の観察において、樹木摂餌量ではない、例えば本来の生息地との間に生まれる気候的なギャップが要因となっている可能性が考えられた。それゆえ、口の常同行動に与えるその諸要因は未だは明らかではないため、今後さらなる研究が必要である。

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